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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:デザート・レッド(スタンダード)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:デザート・レッド(スタンダード)
by 岩SHOW
ビートダウンデッキが強い時に起こる、ある現象がある。それは、同型に強い形へと進化を遂げる......僕が勝手に「中速化現象」と心の中で呼んでいるものだ。こんな単語は覚える意味がないのでまあスルーしてくれ。
これは一体どういうことかというと......強いビートダウンデッキが作られ、それが本当に強くてコントロールデッキも跳ねのけるものだった場合、
- そのデッキを使用するプレイヤーは増える
- →環境に同じデッキが溢れかえり、同型同士でのマッチアップが頻発する
- →こういうビート同士の対戦は先手が有利になりがちである、すなわち運の要素が強くなる
- →だったら、メインデッキから同型に強い要素を搭載してみよう
- →デッキのブン回り要素はある程度残しつつ、同型に効く除去やアドバンテージを稼げるカードを割り増しにして、やや速度の落ちた中速デッキが誕生する......
と、思ったより説明が長くなってしまったが、そんなことがスタンダード環境で昔から時折起こっている。古くは、《ヤヴィマヤの火》から《ブラストダーム》《はじける子嚢》を投げつけるビートダウン「Fires」が同型において《ヤヴィマヤの火》によって速攻を与える意味が薄いと判断し、より軽量のクリーチャーと同型及びその他のクリーチャーデッキを意識したカードに置き換えた「No-Fires」が誕生するという事例がある。生物の進化を見ているようで、なかなか面白いものだ。
今日もそんな、同型への強さを突き詰めて姿形を変えたデッキを紹介しよう。プロツアー殿堂顕彰者ベン・スターク/Ben Starkがグランプリ・アトランタ2017で使用した「デザート・レッド」だ!
13 《山》 4 《ラムナプの遺跡》 3 《死者の砂丘》 3 《陽焼けした砂漠》 2 《屍肉あさりの地》 -土地(25)- 4 《ボーマットの急使》 3 《損魂魔道士》 2 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 3 《暴れ回るフェロキドン》 3 《砂かけ獣》 1 《熱烈の神ハゾレト》 3 《栄光をもたらすもの》 -クリーチャー(19)- |
2 《マグマのしぶき》 2 《ショック》 4 《稲妻の一撃》 3 《削剥》 2 《宝物の地図》 3 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文(16)- |
1 《損魂魔道士》 1 《暴れ回るフェロキドン》 2 《熱烈の神ハゾレト》 1 《栄光をもたらすもの》 2 《チャンドラの敗北》 2 《マグマのしぶき》 1 《削剥》 2 《木端 // 微塵》 2 《グレムリン解放》 1 《反逆の先導者、チャンドラ》 -サイドボード(15)- |
「ラムナプ・レッド」のようで......かなり違う? 速攻アタッカー兼ブロッカー排除役の《地揺すりのケンラ》《アン一門の壊し屋》の姿はなく、デッキの象徴的な存在である《熱烈の神ハゾレト》もなんと1枚だけだ。速度はかなり落としてある、ギア二段階くらい違うんじゃないかな。その上で採用されているのは、プロツアー王者を助けた1枚でもあるアイツだ......
「デザート・レッド」の名の通り、「ラムナプ・レッド」よりもデッキ内の砂漠の比率が高い。《死者の砂丘》という見慣れないカード名があるが、これが追加された砂漠だ。
この砂漠は、戦場から墓地に置かれた際に2/2のゾンビ・トークンを生み出すという能力を持っており、《ラムナプの遺跡》《屍肉あさりの地》で生け贄に捧げるとクリーチャーが増えるというわけだ。無茶苦茶強い、というカードではないが、重心を後半戦に置いているデッキであればその恩恵を受けることができるだろう。
そこまでして砂漠を増やした理由はアイツこと、《砂かけ獣》のメイン採用!
パカァンと砂をかける躍動感溢れるイラストが素敵なビーストは、4マナ3/3とド平均のボディに、砂漠をコントロールしているか墓地にある状態で戦場に出ればクリーチャーに3点ダメージという能力を持っている。これをかつての《火炎舌のカヴー》のようにメインからガッツリ採用し、速攻で殴るのではなく相手と自分の盤面に差をつけるというアプローチを取っている。
クリーチャーデッキ全般に効果的なカードであり、プロツアー『破滅の刻』を優勝したPVことパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosaの「ラムナプ・レッド」のサイドボードにも採用されており、決勝ラウンドでは砂をパカァンと撒く雄姿を見せ、PVを優勝まで導いた。なんでもこのサイドボードは、ベン・スタークが設計したものだったという話で......ベンさん、《砂かけ獣》が随分とお好きのようだ。
まあどのぐらい好きかはともかく、環境にハマれば相当に強いクリーチャーであることには違いない。このリストがそのアトランタにて準優勝しているという事実もそれを証明している。《砂かけ獣》→《栄光をもたらすもの》というムーブが本筋で、このアクションにより相手のクリーチャーを盤面から消し去りつつライフも詰めていこうというわけだ。
《砂かけ獣》に加えて、対クリーチャー用の火力呪文もメインからしっかり取りつつ、呪文枠にはさらに目玉となる《宝物の地図》が採用されている。
赤単でこれを使うとは、たまげたね! そんな発想、誰にもなかったんじゃないかな。占術でドローの質を高めつつ、変身すると宝物・トークンをドローに置換。お互いが手札を吐き出した後のトップデッキ対決を制するためのアドバンテージ源の役を担っている。こういうリミテッドっぽいチョイスが、世界最高峰のリミテッドプレイヤーならではだね。
殿堂入りしているようなプレイヤーだって、こういう野心的な構築でトーナメントに臨むことがある。皆も一見変なデッキでも、自分に合っていると思った構築ができたなら、周りの目は気にせずに自信を持ってマイデッキでトーナメントに出てみよう! 結果が出れば、これほど嬉しいこともないだろうからね!
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