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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:おにぎりシュート(古のデッキ)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:おにぎりシュート(古のデッキ)
by 岩SHOW
谷間の時期だ......ネタがない!わけでもないが、久しぶりに何を書こうか悩んだ。これがこのコラムを書いていくという仕事で最も困る瞬間だ。
自分が書きたいものは何なのか? ある種の「自分との対話」を必要とする。いや、まあそんな大げさなものでもないが、リフレッシュが必要と考え、書庫へ。引っ越してまだ整理できていなかった資料・ハードカバー・コミックに雑誌......書物を新しい本棚へと納める作業を行うことにした。
皆も部屋の片づけと銘打って取り組んだは良いが、ついついお気に入りの漫画や小説を手に取ってしまい読みふけってしまう経験、あることでしょう。それをしたいという気持ちもあった。やけに巻数の多い麻雀漫画を整理しつつ「これは読み始めたら終わってまう」と自制をかけたり、さすがにもう要らないかという結論に達した古い雑誌を処分したり。
で、その過程である一冊のムックが出てきてしまった。これは......もしかしてこれと出会うためにこの部屋へ吸い寄せられたのかもしれない。これこそ救世主、メサイア! この一冊があるということは......第2巻もすぐそばに! いやぁ、歓喜!僥倖! 僕を喜ばせたのはこの2冊だ。
マジックのデッキ大全集! 実に懐かしい。Twitterでこんなの出てきたよとつぶやいたところ、同い年のあんちゃん(高橋優太)も反応していて、30代前半の僕らはやっぱりこれを読んで育ったよなぁと再確認。このコラムの原点みたいなもので、今改めて目の当たりにすると「まさかこういう仕事を自分がやることになるなんてな」と感慨深くなってしまうものだ。
とりあえず、出典としては申し分がない貴重な資料。使わせていただきます、というわけで読み進めたのだが、やはり過去の逸話を伝えるのであればコレかなという、物語性の強いデッキがあったのでご紹介させていただこう。「おにぎりシュート」とくとご覧あれ!
2 《島》 4 《Tundra》 4 《Volcanic Island》 4 《Badlands》 4 《地底の大河》 3 《真鍮の都》 3 《宝石鉱山》 -土地(24)- 2 《Phyrexian Devourer》 -クリーチャー(2)- |
4 《渦まく知識》 4 《魔力の櫃》 3 《吸血の教示者》 4 《投げ飛ばし》 4 《衝動》 4 《マナ漏出》 3 《リム=ドゥールの櫃》 4 《修繕》 4 《意志の力》 -呪文(34)- |
-サイドボード(不明)- |
初見では少々わかりにくいコンボなので、細かく説明しなくちゃね、まずはキーカード、おにぎり!
その見た目が三角形という、ただそれだけの理由で日本人が最も馴染み深い三角形である「おにぎり」の異名を与えられた《Phyrexian Devourer》。このアーティファクト・クリーチャーの能力は、こんな感じ。
Phyrexian Devourerのパワーが7以上になったとき、それを生け贄に捧げる。
あなたのライブラリーの一番上のカードを追放する:Phyrexian Devourerの上に+1/+1カウンターをX個置く。Xはその追放されたカードの点数で見たマナ・コストである。
ライブラリーを餌に大きくなるけど、パワー7以上になることができない。6マナ6/6になれる可能性を持った1/1、そんなカードである。一言、むっちゃ弱い。これ1枚では、今のクリーチャーが優秀とかそんなのを抜きにしてどんなデッキでも採用されることはない、コストに見合わないサイズ・能力のどうしようもないクリーチャーだ。
しかし、このファイレクシア産のおにぎりは、ルール変更によって輝きを放つことになる。『基本セット第6版』が発売されると同時に、能力や呪文はスタック領域に置かれた後に解決されるというルールが導入された。これにより、それまではパワー7以上になったら即死亡していたおにぎりは、その誘発型能力がスタックに置かれた状態で起動型能力を起動しまくることで、パワー7以上へと成長することが可能となった。いずれにせよ、スタックに置かれた能力はいつか解決されるので戦闘を行う前に死んでしまうのだが、そんなことは大した問題ではない。《投げ飛ばし》で射出すればよいのだ。というわけで、このデッキはおにぎりを最速で投げ飛ばすことに特化した瞬殺コンボデッキなのだ。
キーとなるのは《修繕》《魔力の櫃》。《魔力の櫃》で《修繕》のマナおよび生け贄アーティファクトの2つのコストを払って、おにぎりを戦場に直接出してしまう。そしてそのままライブラリー喰ってエンドロール!
この2枚と《投げ飛ばし》さえあればコンボが決まるので、要求されるパーツがかなり少ないのが良いところ。2ターンキルも可能、3ターンキルとなると《吸血の教示者》などを挟めるのでかなり安定して狙っていける。打ち消し呪文もしっかりと備えており、対戦相手が青いデッキでも問題ない。これは......強い、強いぞ!
世界選手権1999に臨む日本代表のプレイヤーたちは、エクステンデッドにてこのデッキを使う予定だった。日本初のシークレットデッキ、大暴れするのではと期待に胸を熱くしたのではないだろうか。
しかし、その光景は幻に終わることとなった。どういう経緯かは不明だが、世界選手権前日に「世界選手権特別措置」としてこのデッキの肝である《Phyrexian Devourer》にエラッタ(修正)が入ることとなった。パワーが7以上になると生け贄に捧げるという誘発型能力は、独立したものから起動型能力の一部となった。これにより、能力でパワーが7以上になった後に《投げ飛ばし》を挟めなくなってしまったのだ。
このコンボによりエクステンデッドが、いわゆるコンボゲーになることを恐れての措置だったのだろうか。それにしても、当時の日本代表は無念だったことだろう。「おにぎりシュート」は日の目を浴びることなく、トーナメントで活躍する前にこの世を去った稀有なデッキである。なのでサイドボードも不明となっている。
悲劇のデッキとして、このコンボは語り継がれていく必要があるんじゃないか......そんな使命感に似た気持ちもあって、今回はこの「おにぎりシュート」を紹介させてもらった。
これで終わっては、当時の日本代表の方々もおにぎりも、救いがなくBAD ENDとなってしまう。このデッキが紹介された2001年においては、そうだった。でも、今は違う。この物語には続きがある。それを伝えること、それもこのコラムの使命だ。というわけで、次回をお楽しみに!
(つづく)
あ、あとひとつ。このリストを見た時からもう長いこと気になってしょうがないことがある。《地底の大河》、絶対《Underground Sea》の誤植やんね!? 12枚も他のデュアルランドを使っていて、ここだけ躊躇する理由はないッ(笑)
出典
[ホビージャパンMOOK 72]マジック:ザ・ギャザリング デッキ大全集 vol.2 伝説の必殺コンボデッキ編(64、65ページ)
- 著者:鶴田慶之
- 発行者:佐藤光市
- 発行所:株式会社ホビージャパン
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