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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:「ジェスカイGPG」を検証!(スタンダード)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:「ジェスカイGPG」を検証!(スタンダード)
by 岩SHOW
『破滅の刻』発売以降のスタンダード環境は実に面白い。強いデッキがしっかりと中心にいながら、その周りにさまざまなアプローチでトップメタの座を狙うデッキが、週末ごとにわらわらと発生してくる。デッキバリエーションが豊富で、トーナメントを通じて飽きることなくゲームができる。個人的にはかなり良い環境だなと、すっかりスタンダードにハマってしまっている。
さて、当コラムでもそれらのデッキは多数取り上げてきたが......あえてこれまで紹介してこなかったデッキがある。《王神の贈り物》を用いた、墓地利用系デッキだ。
僕は墓地利用デッキが好きなのだが、環境最初期に出てきた青白のこのアーティファクトを軸としたデッキに関しては「本当に強いのか?」と懐疑的な目で見ていた。結果としてはプロツアーでフィーチャーマッチに登場することもなく、そもそも使用者も少なかった。この頃のリストを見ると、「《機知の勇者》を引けなかった時に一体どうするんだ」というような形のものが多く、まだまだ未完成のデッキだなと思ったものである。
自分でも使ってみたくなるようなリストが出てきたら取り上げよう、そんなことをうっすらと思いながら過ごしていると......ある日、魅力的なリストに出会ったものである。
3 《平地》 4 《感動的な眺望所》 4 《尖塔断の運河》 4 《霊気拠点》 1 《産業の塔》 1 《シェフェトの砂丘》 4 《イプヌの細流》 -土地(21)- 4 《傲慢な新生子》 4 《査問長官》 4 《スレイベンの検査官》 4 《機知の勇者》 4 《発明の天使》 4 《歩行バリスタ》 -クリーチャー(24)- |
3 《安堵の再会》 4 《来世への門》 4 《復元》 4 《王神の贈り物》 -呪文(15)- |
4 《陽光鞭の勇者》 4 《難題の予見者》 2 《削剥》 2 《否認》 2 《燻蒸》 1 《黄昏 // 払暁》 -サイドボード(15)- |
ゴールドレベル・プロで、プロツアー参戦記や解説、自身の配信などで人気のせばちゃん(市川ユウキ)がTwitterに投稿していたリストである。今まで見た《王神の贈り物》デッキの中で一番「美しい」と思わされ、これは使ってみようと早速Magic Onlineを起動したものである。このリストの制作者は、ワールド・マジック・カップ2016日本代表の一人・竹下徹さんとのこと。良い仕事してますねぇ~これは逸品に違いないと、リーグ戦でその強さを検証してみることにした。
と、このタイミングでプロツアー地域予選の裏で開催されていたグランプリ・デンバー2017の結果も出てきた。そっちも目を通すか......と上位デッキリストを眺めていると、11、12位と並んで、上記のデッキと同じくジェスカイ(白青赤)カラーの贈り物デッキが勝っているではないか。しかもその内容は、竹下さんの作成したものとはかなり異なる形に仕上がっている。
4 《島》 3 《山》 4 《尖塔断の運河》 4 《感動的な眺望所》 4 《霊気拠点》 4 《イプヌの細流》 -土地(23)- 4 《傲慢な新生子》 4 《査問長官》 1 《霊廟の放浪者》 1 《光り物集めの鶴》 4 《機知の勇者》 4 《戦利品の魔道士》 4 《発明の天使》 2 《激変の機械巨人》 4 《歩行バリスタ》 -クリーチャー(28)- |
3 《安堵の再会》 4 《来世への門》 2 《王神の贈り物》 -呪文(9)- |
2 《霊廟の放浪者》 3 《栄光をもたらすもの》 2 《チャンドラの敗北》 2 《払拭》 4 《否認》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -サイドボード(15)- |
同じカラーリング、同じカードを軸としたデッキでありながら、両者は全くの別デッキと言っても良い。
竹下さん型は白を中心の色とし、《復元》で墓地から《王神の贈り物》を引っ張り上げる動きを、赤の《傲慢な新生子》《安堵の再会》といった手札を捨てるカードがサポートする。
対して、このデッキ......使用者はマイク・シグリスト/Mike Sigristなのでシグリスト型は、赤と青が主色で、白マナは《発明の天使》《激変の機械巨人》を素出しするためにしか用いない。その代わりに贈り物にアクセスするカギとなる《来世への門》をサーチ可能な《戦利品の魔道士》が採用されているのが面白い。
シグリストは個人的に好きなプレイヤーなのもあって、この2つのデッキを使い比べてみようと思い立った。今回は2つの「ジェスカイGPG(God-Pharaoh's Giftの略)」を検証ッ!
竹下さん型
- ○ 黒単ゾンビ (2-0)
- ○ ラムナプ・レッド (2-1)
- × 副陽コントロール (1-2)
- ○ スゥルタイ昂揚 (2-0)
- ○ ティムール・エネルギー (2-0)
GPG系初回しで4勝1敗、ビジュアル通りの強いデッキでゲームが楽しくてしょうがなかった。
このデッキの強さは、動きの安定感。《スレイベンの検査官》が軽量クリーチャーを受け止めながら土地が詰まらないようにドローを供給してくれて、この上なく頼りになる。4枚採用した《王神の贈り物》は《査問長官》《イプヌの細流》から墓地に落ちやすく、4ターン目に《復元》でこれを戦場に出して《発明の天使》が走って...という動きで「ラムナプ・レッド」は苦にすることはなかった。白をマナベースの中心としているので、いざともなれば《発明の天使》素出しで盤面の打点を上昇させて勝つという動きも取れる。
何よりサイドボードが強い! クリーチャーデッキには《燻蒸》で掃除してやることで大変気持ちよくなれる。《黄昏》も自分のクリーチャーは被害ゼロ、相手のハイドラやドラゴンを一方的に薙ぎ払うという動きができる。しかも墓地のクリーチャーカードを回収する《払暁》が、贈り物を封じられた状況で役に立った(天使を複数回収して一気に展開!)。
そして《難題の予見者》、コイツが無茶苦茶に強かった。対戦相手の妨害手段を抜き去り、贈り物から復活して相手の逆転の芽を摘み取る。
青白の「副陽コントロール」にのみ負けとなったが、これは2ゲーム目がとんでもなく長引いてしまい、お互い持ち時間が3分とかで3ゲーム目を迎えてしまい、結果時間切れで負けてしまったというもので......難題連打モードに突入できていて勝てそうだっただけに、悔しさが残る。ただ相性で言えば不利そうではあった。向こうはこちらのブン回りムーブに抗う除去があり、贈り物にも《排斥》で対処可能。《副陽の接近》連打はどうしようもないからだ(《否認》2枚と難題で頑張るしかない)。
シグリスト型
- ○ ティムール・エネルギー (2-0)
- × 緑白ランプ (1-2)
- ○ 黒単ゾンビ (2-1)
- ○ 副陽コントロール (2-1)
- ○ ラムナプ・レッド
竹下さん型がしっくりきすぎていたため、回す前は「《復元》に検査官もないとか...贈り物も2枚だけだし...」と不安でしょうがなかった。実際に「ティムール・エネルギー」には勝利したものの、先ほどまでとは異なる動きに違和感を覚えながら、それでも《来世への門》から贈り物へとスムーズにつなげることができての勝利。
続く「緑白ランプ(これもデンバーで好成績を残したデッキだ)」には最速《世界を壊すもの》《絶え間ない飢餓、ウラモグ》と動かれコテンパンにやられてしまうも、ただ段々とデッキが手に馴染んでくる。《戦利品の魔道士》から《来世への門》を持ってきつつ、魔導士本人をブロックさせるなり除去されるなりで死亡させて墓地のクリーチャーカウントを増やせるのは、見た目以上に強かった。同デッキで11位だったコーリィ・バークハート/Corey Burkhartはこの魔導士のサーチ先として1枚《霊気圏の収集艇》を潜ませており、それを持ってくる動きも確かに強そうだなと。
サイドボードは「ラムナプ・レッド」のそれのような、墓地に頼らず中速デッキとして勝てる手段に割かれている。《栄光をもたらすもの》はほとんどケアされていないので、予想外の一撃を放ちつつ、消耗戦の果てに贈り物から復活して決め手となってくれた。
そして竹下さん型では勝てなかった「副陽コントロール」に勝利できたのは、《否認》4枚に加えて《払拭》まであり、さらには《霊廟の放浪者》まで採用されているおかげだろう。コントロール側はこの放浪者を放置もできず、除去を撃つのもバカらしいと実に鬱陶しそうだった。
今回は同じようなデッキに見えてアプローチが異なる2つのデッキを試してみた。結論として...サイドボードの強さおよびデッキの安定感は竹下さんが作成したものが勝るかなと。シグリスト型はよりテクニカルであり、《戦利品の魔道士》のサーチ先を他に用意するなどデッキをさらに発展させることができる可能性を感じた。総じて、どちらもめっちゃ良いデッキ! なぜならうっかりミス連発おじさんの僕が初回しで4-1できたから(笑)。
もし日本選手権への参加権利を持っていたら、このどちらかのデッキをベースにしたもので出たいなと、そう思わせるぐらい魅力的なデッキだった。贈り物デッキに懐疑的だった皆さん、これらはきっと「本物」ですよ!
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