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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ジェスカイ・コントロール~王神を添えて~(スタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ジェスカイ・コントロール~王神を添えて~(スタンダード)

by 岩SHOW

 王にして神。王神という称号、英語でもGod-Pharaohと、初見の時は何とも大仰な称号だなぁなんて思ったが......口にすればするほど馴染む。そして『破滅の刻』にて《王神、ニコル・ボーラス》をこの目にした刻。ボーラスのパワフルさを表現するには、この称号がまさしくうってつけだと心から納得した。絶対的な強者を示す王と神が合わさり、最強にしか見えない。

 今回のプロツアーは特別に優勝者にこの称号を与えて、向こう1年「私が王神である」と名乗る権利を授与しても良いんじゃないかなんて思ったり。王神・渡辺雄也とか、良いじゃないすか。Owen "God-Pharaoh" Turtenwaldとかわけがわからなくて最高だ。

 さて、そんな王神ボーラスを用いたデッキが出てこないか、とワクワクしながら結果が出るのを待っていた、環境の最序盤を定義するトーナメント・StarCityGames.com Standard Open。そんな心を見透かしてか、我らが王神は優勝デッキに黒幕的な形でその溢れる魔力を忍ばせていたのだった!

Michael Hamilton - 「ジェスカイ・コントロール~王神を添えて~」
StarCityGames.com Standard Open Cincinnati 優勝 / スタンダード (2017年7月15~16日)[MO] [ARENA]
3 《平地
2 《
2 《
4 《灌漑農地
2 《港町
4 《感動的な眺望所
2 《尖塔断の運河
3 《さまよう噴気孔
1 《異臭の池
4 《霊気拠点

-土地(27)-

1 《保護者、リンヴァーラ
1 《奔流の機械巨人

-クリーチャー(2)-
2 《マグマのしぶき
2 《削剥
2 《検閲
2 《本質の散乱
2 《蓄霊稲妻
2 《否認
1 《神聖な協力
3 《至高の意志
1 《光輝の炎
4 《天才の片鱗
2 《排斥
2 《燻蒸
1 《明日からの引き寄せ
2 《ドビン・バーン
1 《先駆ける者、ナヒリ
1 《秘密の解明者、ジェイス
1 《王神、ニコル・ボーラス

-呪文(31)-
3 《呪文捕らえ
3 《栄光をもたらすもの
1 《チャンドラの敗北
1 《払拭
1 《本質の散乱
1 《ジェイスの敗北
1 《俗物の放棄
1 《光輝の炎
1 《慮外な押収
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン

-サイドボード(15)-
StarCityGames.com より引用)

 ボーラスはあくまで1枚だけ潜んでおり、メインとなるのは白青赤のジェスカイ・カラー。王神たるもの、己が行動するよりもまずは配下の者に対処させないとね。というわけで、プレインズウォーカーをアドバンテージ源に据えながら、古より伝わる「ドローゴー戦術」で戦うデッキを紹介しよう。

 このデッキを見てもらえばまずわかることだが、土地が27枚とたっぷり採用されているのに対して、クリーチャーはたったの2枚。ここからクリーチャーを全く展開しないデッキであり、かつマナを重視するデッキ=ヘビーコントロールということがわかる。その分類名の通り、ずっしりどっしりと戦う長期戦狙いのデッキのことだ。

 そして、呪文群を確認すればわかることだが、青を中心にインスタントも多数採用されている。こういった構成のデッキは、自分のターンではカードを引いて、土地を置く程度で自分のターンには特に何もせずにターン終了する。「ドロー」と「ゴー(ターン終了)」しか宣言しないその様から、先述のドローゴーという戦術を用いることがわかる。2002年くらいまでは、こういったデッキが常にトーナメントで首級を挙げていたものだ。

 このデッキの場合、カードを引いて土地を置いてゴーしたら、相手のターンには《検閲》《本質の散乱》などの打ち消しを構える......という動きを繰り返していく。対戦相手が動いてきた場合、構えていたそれを用いて打ち消しても良いし、他の呪文、すなわち除去で対処できるレベルのクリーチャーであればそちらを用いても良い。どちらでも対処できるが、目先の脅威ではないクリーチャーなんかは泳がせて、後々対処しても良い。ギリギリまで引き付けて《燻蒸》などの全体除去でまとめて消し飛ばすという手もある。

 そうやって相手の行動にどう対処するのかを判断しながら、自分のターンというよりは相手のターンで勝負するデッキだ。相手が打ち消しを嫌って動いてこなかったり、割とどうとでもなる動きしかしてこなかった場合は、余ったマナを《天才の片鱗》などのドローに回して手札を整えていく。これをゲーム序盤から終始続けていけば、自ずとマナと手札両方でコントロール側が勝っている状態となる。こうなれば勝負ありだ。ゲームを終わらせるパワーを持ったカード=フィニッシャーを戦場に投下し、楽しませてもらったロングゲームにケリをつけてやるのだ。

 じっくり構えながら、自身のターンで動くのは全体除去か安全な盤面でプレインズウォーカーを戦場に出す時くらい。それ以外はビシッと構え続けよう。このための打ち消し呪文というものはゲーム後半では不要になりやすいのが難点。在りし日の《対抗呪文》などであればともかく、最近の打ち消しはなんらかの制限や賞味期限が設定されているものばかりなので、さっさとフィニッシャーを引いてゲームを終わらせないといけない場面で引いてきたりすると嬉しくない。この弱点を少しでも緩和してくれるのが《至高の意志》だ。

 3マナで《マナ漏出》相当の打ち消しモードと、《衝動》相当のドローサポートモード、2つの顔を持つ便利な呪文だ。序盤、まだ相手のマナが伸びきっていない時には対象を選ばない万能打ち消し呪文として活躍し、打ち消しとしての賞味期限切れになっても4枚見て今欲しい1枚を手に入れるドローサポートとしてプレイヤーを支える。27枚土地を採用していても、うまく引き込めずに土地が詰まることはある。そういう状況で緊急の土地サーチとしても使える、実に良いデザインのカードだ。3マナとやや重たいコストだけが難点であり、両モードの本家呪文のように気軽に扱えるものではないが、あまり贅沢は言えない。

 このデッキには他にも《削剥》や《神聖な協力》など、モードが選べるインスタントが複数枚採用されている。これにより、《奔流の機械巨人》ができることのバリエーションが増えていることも見逃せない。ジェスカイカラーのセールスポイントと言えよう。

 ジェスカイのセールスポイントと言えば、プレインズウォーカーの多彩さも忘れちゃいけない。このデッキでは珍しい《ドビン・バーン》の姿を見ることができる。

 プロツアー『カラデシュ』で脚光を浴びるも、それから今ひとつパッとしなかった彼だが、このデッキではクリーチャーを封じ込めドローと回復を同時にこなす能力が再び火を噴くか? 「ジェスカイ・コントロール」にチャンスがあれば浮上してくる可能性のあるカードなので、侮っていては痛い目を見そうだ。

 後は定番の《秘密の解明者、ジェイス》に《先駆ける者、ナヒリ》。手札を安定供給しつつパーマネントに触れることのできる頼りになるヤツらだが、これらも結局はいつか戦場に降臨する王神のための露払いに過ぎない。ボーラスが戦場に出れば、能力を起動する前に対戦相手が投了してしまってそのパワフルさを満喫することは恐らくできないとは思うが、まあそれで良いのだ。跪かせることに意味がある。

 今後はこのデッキのように、青黒赤の3色のうち2色を用いるデッキが、王神をフィニッシャーとしてタッチして(色をほんの少し足すこと)採用するケースが増えるかもしれない。プロツアーにて、王神が戦場に出た際には......盛り上がるだろうなぁ。TOP8に何枚、黒幕的採用されているかが今から楽しみである。

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