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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ジャンド・エネルギー・アグロ(スタンダード)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ジャンド・エネルギー・アグロ(スタンダード)
by 岩SHOW
プロツアー『霊気紛争』無事閉幕。今回のプロツアーは、特に2日目後半から決勝ラウンドにかけて、僕の中継経験の中でも特に面白かったトーナメントとなった。何が面白かったのか? それはもうご覧になられた方は「あれね」と思い出し笑いしてもらえることだろう。いやー、とにかく凄かったね。あんなプロツアーは初めてだ。...何かわからないって? 今からでも間に合うから、ちゃんとこれ観てよ~。手に汗握って、笑って、そして感動してほしい。毎回言っているが、観なきゃ損!
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さて、今回のプロツアーではTOP8に多数の「マルドゥ機体」がその名を連ねることになった。今回は(すでに取り上げちゃったデッキというのもあって)あえてそれらではなく、その他のデッキから「ジャンド・エネルギー・アグロ」をピックアップして紹介しよう。まずはリストから。
4 《森》 2 《山》 1 《沼》 4 《獲物道》 1 《燃えがらの林間地》 4 《花盛りの湿地》 4 《霊気拠点》 -土地(20)- 4 《緑地帯の暴れ者》 4 《牙長獣の仔》 4 《屑鉄場のたかり屋》 4 《通電の喧嘩屋》 2 《不屈の追跡者》 1 《ピーマの改革派、リシュカー》 -クリーチャー(19)- |
4 《霊気との調和》 2 《ショック》 2 《蓄霊稲妻》 4 《無許可の分解》 3 《キランの真意号》 2 《高速警備車》 3 《反逆の先導者、チャンドラ》 1 《生命の力、ニッサ》 -呪文(21)- |
2 《不屈の追跡者》 3 《新緑の機械巨人》 4 《致命的な一押し》 1 《ショック》 2 《領事の旗艦、スカイソブリン》 1 《反逆の先導者、チャンドラ》 2 《生命の力、ニッサ》 -サイドボード(15)- |
以前より存在する「エネルギー・ステロイド」の亜種とでも呼ぶべきデッキリストだ。赤と緑により構成されたエネルギーを用いるビートダウンは、環境の変化によって失ったものがさしてなく、《緑地帯の暴れ者》の獲得により恩恵のみを受けて活躍するのではないか、と目されていたデッキであった。
ただ、この暴れ者こと象。かなり癖の強い1枚であり、ただデッキに入れるだけではそのポテンシャルを引き出せない......というか、扱いきれずに何のためにデッキに入っているのかわからないカードになりかねない能力の持ち主である。今一度そのテキストを確認しても、これ単体ではとても扱いづらい。かつて同じ1マナで《はぐれ象》というクリーチャーがいたが、暴れ者も負けず劣らずの簡単に従わせることのできない暴れ象にデザインされている。
マーティン・ジュザ/Martin Juzaはこの象を乗りこなす術を見つけた。1つは、やはりエネルギー。エネルギー・デッキが多数生み出すことのできるエネルギーを消費して、早いターンで戦場に出し、その1マナ3/4という現スタンダードでは比類なきスペックを活かす。1ターン目《霊気との調和》で土地をサーチしつつ、2ターン目に暴れ者を出しながら相手のクリーチャーへと《ショック》を撃ち込む......このデッキのベストムーブの形の1つである。
《牙長獣の仔》《通電の喧嘩屋》といったクリーチャーとも相性は悪くない。これらのクリーチャーに注ぐエネルギーが枯渇したゲーム終盤、確実にエネルギーをもたらしてくれるカードとして機能してくれることもある。
ただ前述のとおり、これじゃ前環境のデッキにただ象を放り込んだだけで、それだけじゃ物足りないしプロツアーでこれを用いる決め手にもならないかなと。というわけで、もう1つの活かし方が《キランの真意号》などの機体カードとともに用いる、というアプローチだ。
《キランの真意号》は2ターン目に設置、3ターン目にクリーチャー化させて攻撃へと移れれば、これほど頼りになるダメージ源もない。ただ、搭乗3と乗り手のパワーを要求してくる。これはそう簡単に用意できるものではないが、暴れ者なら話は別だ。
1マナ払って、暴れ者を戦場に出す。これがエネルギーを払えずに手札に帰ろうとしても問題はない。その能力が誘発しているタイミングで、これを真意号に乗せてしまえばよいのだ。象が真意号コクピットに乗り込み、その鼻でレバーを引いて、そして去っていく。なんともシュールな光景だが、マジックのルール的には何ら問題はない。
かつてのマジックのルールでは、クリーチャーは戦闘ダメージをスタックに乗せて、与えるダメージ値を確定させてから、それを手札に戻して一方的に相手のクリーチャーを破壊するというテクニックがあった。これを「当て逃げ」と呼んだものだが、手札に戻るクリーチャーを機体に乗せるこの様はまさしく「乗り逃げ」。その見た目の面白さもさることながら、思いがけないパンチ力に生放送を視聴していたユーザーもテンションが上がったものである。
機体デッキのみが機体を扱うデッキにあらず、ということでジュザのこのリストには《キランの真意号》以外にも《高速警備車》《領事の旗艦、スカイソブリン》といった機体がメイン・サイド合わせて複数採用されている。《高速警備車》は対コントロールを強く意識して採用されたものだろう。スカイソブリンはクリーチャーデッキ全般に、とんでもない制圧力を発揮する。いずれも象が操縦することができる。これは忘れずに。手札から出て機体に乗って帰って、その置き土産のエネルギーを他のクリーチャーのパワー上昇や《霊気拠点》のコストに充てることができれば、ザッツベストムーブ!
ジャンド、と名にあるからにはジャンドカラー(黒赤緑)で構成されるデッキである。従来の赤緑のエネルギー系ビートダウンをそのベースとし、取り入れたのは黒い除去呪文。《無許可の分解》、そして《致命的な一押し》だ。
《無許可の分解》は戦場の脅威やブロッカーを排除しつつ、対戦相手にダメージを与えることの出来る鬼の3マナ呪文。今回のプロツアーでもこれを用いて《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が簡単に対処されている光景を何度か見ることがあった。クリーチャー同士で殴り合う現環境には非常に嚙み合ったカードである。
《致命的な一押し》はサイドボードに4枚という特徴的な採用法が取られている。おそらくはメインの《高速警備車》同様、ジュザは対コントロールデッキを強く意識して、それらに対してほぼ使い道のないこのカードをサイドに採ることにしたのだろう。《ショック》がメイン採用という点からもこれは伺い知ることができる(《ショック》は本体に撃てるからね)。ただし軽量クリーチャーを多数用いるデッキ相手には容赦のない4枚が火を噴くことになる。
このデッキ、その見た目のワクワク感に誘われて回してみたが......難しい。現スタンダードでもかなり難しいデッキの1つである。土地が20枚と削られているため、常に安定して動いてくれるというデッキではないのだ。実際にジュザ自身、サイドから投入した《新緑の機械巨人》を戦場に出すことができずに手札に抱え込み続ける「ギアハルクホールド」状態に陥っていることがしばしばあった。《霊気との調和》がしっかりとゲーム開始時の手札にあることを確認してゲームを始めたいところ。
個人的にはコントロールが少なければ《高速警備車》の枠をもっと軽いカードや土地に変更すると使いやすくなるかなと思っている。このデッキを設計したのもすごいし、これを使いこなしてTOP8に進出したのも素晴らしい。さすがはチェコが世界に誇るジュザ!牛丼と乳酸菌飲料をこよなく愛するジュザが、プロツアー『破滅の刻』で来日した際には次は何にハマるのか、その辺も楽しみな今シーズンだったりする。
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