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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:Madcap Moon(モダン)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:Madcap Moon(モダン)
by 岩SHOW
グランプリ・千葉2016も終了し、これで国内の大型イベントもひと段落......といきたいところだが、一部のプレイヤーにとってはまだまだ戦いは続くもので......12月4日(日)にはプロツアー『霊気紛争』のための地域予選(RPTQ)が開催される。
西と東で、それぞれプロツアー参戦の権利を懸けて、予備予選(PPTQ)を突破してきたプレイヤー、あるいはシルバー・レベルのプロプレイヤーなど、腕に自身のある猛者たち日本全土より集結。自分より強いヤツらがうじゃうじゃひしめくプロツアーという戦場に挑むため、熱戦を繰り広げるのだ。僕もトーナメント主催側のスタッフなので、当日はどんな熱戦を皆さんにお届けできるのか、今から楽しみだ。
このトーナメント、フォーマットはモダンで競われる。モダンはデッキ選択が難しいフォーマットであり、多くのプロプレイヤーもそれに悩まされている。選択肢はスタンダードやレガシーよりも多く、そして環境全体におけるデッキ相性というものが他に比べて顕著でもある。○○には絶対に勝てるレベルだが××には手も足も出ない、というデッキが複数存在し、ゆえにどのデッキを切り捨てどのデッキを斬るのか、そのために何を用いるのかという選択肢が重要になってくる。
正しい判断を行うには、環境に存在するデッキを知る必要がある。本日ご紹介するのは、以前よりモダンに存在していたデッキだが......ちょっとした裏技で強化され、今後活躍するかもしれない、なかなか気になるデッキである。まずはそのリストをご覧いただこう。
8 《島》 1 《山》 2 《蒸気孔》 4 《沸騰する小湖》 1 《汚染された三角州》 3 《尖塔断の運河》 3 《硫黄の滝》 1 《僻地の灯台》 -土地(23)- 4 《瞬唱の魔道士》 2 《ヴェンディリオン三人衆》 2 《白金の帝像》 -クリーチャー(8)- |
4 《稲妻》 1 《噴出の稲妻》 4 《血清の幻視》 2 《呪文嵌め》 1 《払拭》 2 《マナ漏出》 2 《差し戻し》 1 《収穫の火》 1 《イゼットの魔除け》 4 《血染めの月》 1 《神々の憤怒》 4 《向こう見ずな実験》 2 《謎めいた命令》 -呪文(29)- |
1 《イゼットの静電術師》 1 《白金の天使》 2 《外科的摘出》 2 《汚損破》 1 《払拭》 1 《炎の斬りつけ》 2 《否認》 2 《突然のショック》 2 《神々の憤怒》 1 《炎呼び、チャンドラ》 -サイドボード(15)- |
青赤のコントロールデッキ、「ブルームーン」がベースとなっている。「青い月」の名の通り、青の打ち消し呪文と赤の火力を用いてコントロールし、《血染めの月》で基本でない土地に依存する対戦相手の行動を封じて勝利するデッキである。プロツアー『神々の軍勢』にてリー・シー・ティエン/Lee Shi Tianが使用してTOP8の成績を収めたことで一気に注目を浴びるようになり、その頃から使用者も増えてマイナーな存在からメジャーなデッキへと急成長した。
かつてのこのデッキは、《血染めの月》にハマらないように出された基本土地も《拡がりゆく海》で《島》に変えて、とことん相手の土地をいじめよう+青い信心がこれで稼げるのでフィニッシャーは《波使い》にしようというコンセプトが取られていたが、今ではよりコントロール重視の構成となっている。
このデッキに裏技として採用されたのが、『カラデシュ』のもたらした《向こう見ずな実験》コンボだ。このカードはアーティファクトをライブラリーから直接戦場に出す、大げさに言えば現代の《修繕》である。かなり盛ったような気もするが、まあ良いでしょう。
この呪文を唱えると、ライブラリーを上から公開していって、最初に出たアーティファクトを戦場に出す。すなわち、アーティファクトを1種類のみに絞って採用しておけばそれが必ず戦場に出るというわけ。《荒廃鋼の巨像》でもなんでもござれ、というわけだが......そのアーティファクトが公開されるまでにめくられたカードの枚数分ダメージを受けるというデメリット付きである。これにより、そう簡単には悪さができなくなっているのだが......このデッキが実験の結果生み出そうとしているアーティファクトは《白金の帝像》だ。
このアーティファクト・クリーチャーをコントロールしている限り、あなたのライフは変動しない。すなわち、《向こう見ずな実験》で例え40枚めくろうが、これより受けるダメージは0。ノーリスク4マナで8/8のゴーレムを呼び出すことができるというわけだ。これはすごい。
「ブルームーン」は元来、《血染めの月》の効果が薄い「バーン」を相手にした時は勝つまでに時間がかかってしまい、火力を捌ききれずに負けということがあったが、この帝像さえ戦場に出せばもう負けることはない。《破壊的な享楽》《流刑への道》を唱えるための基本でない土地を《血染めの月》で抑えてやれば、対戦相手の心も折れる。同様にダメージで勝ちを狙う基本でない土地満載デッキ「死の影アグロ」も手も足も出なくなってしまう。《頭蓋囲い》での大ダメージを狙う「親和」も、ライフを不動にして《墨蛾の生息地》を《山》にしてやれば怖いものなしだ。
一見ギャグのような《向こう見ずな実験》→《白金の帝像》コンボだが、多くのアグロデッキに対する回答としてしっかりと機能を果たすキラーコンボなのだ。もちろん、出せば勝ちと言うわけではなくその後守ってやる必要があるので、打ち消し呪文はしっかりと温存しておきたい。このデッキにおける非常事態は手札に帝像が2枚とも来てしまうこと。この最悪の状況は《ヴェンディリオン三人衆》の能力で自分を対象にして、ライブラリーに送り返すことで乗り切ろう。
「ブルームーン」は《血染めの月》で動きを封じ、《白金の帝像》でライフを護りながら殴るという骨太なデッキ「Madcap Moon」へと生まれ変わった。かつてのモダン環境の象徴であった「青赤双子」のような、新たなる青赤の定番デッキとなるか? その行く末が今から楽しみだ。
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