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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:白赤機体(スタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:白赤機体(スタンダード)

by 岩SHOW

 新・環・境ッ。ウ~ン、良い響きだ。ここでおさらい。9月30日を境に、スタンダードはどのような世界へと生まれ変わったのか。『カラデシュ』の発売により、新カードがざっくりと200枚以上追加された。そして同時に、『タルキール龍紀伝』『マジック・オリジン』が退場。500枚ほどのカードが去って行ったのだ。《ヴリンの神童、ジェイス》《巨森の予見者、ニッサ》《集合した中隊》《衰滅》《ドロモカの命令》《雷破の執政》《棲み家の防御者》《ニッサの巡礼》《焦熱の衝動》《龍王オジュタイ》、《ヤヴィマヤの沿岸》をはじめとするダメージランド......などなど、時代を築いたカードが引退だ。

 このローテーションにより存続できなくなったデッキは......多数あれど、前環境では実質一強であった「バント・カンパニー」が勇退することが最も注目を集めたことは間違いない。ついに、環境の支配者が去ったのだ。グンタイアリの一群が通り過ぎた後のジャングルのようなものである。青緑白の《集合した中隊》に染めつくされた大地に、ようやく自由な生態系が還ってきた! この可能性に満ちた新たなるスタンダード環境で、特大の産声をあげたデッキを紹介しよう。「白赤機体」だ。デッキ名の時点でもうワクワクしてしまう!

Chris VanMeter - 「白赤機体」
StarCityGames.com Standard Open Indianapolis 優勝 / スタンダード (2016年10月1~2日)[MO] [ARENA]
10 《平地
6 《
4 《感動的な眺望所
4 《鋭い突端

-土地(24)-

4 《スレイベンの検査官
4 《模範的な造り手
4 《無私の霊魂
4 《経験豊富な操縦者
3 《模範操縦士、デパラ
2 《ピア・ナラー

-クリーチャー(21)-
4 《石の宣告
2 《蓄霊稲妻
4 《密輸人の回転翼機
3 《高速警備車
2 《領事の旗艦、スカイソブリン

-呪文(15)-
3 《稲妻織り
4 《流電砲撃
2 《断片化
2 《空鯨捕りの一撃
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン

-サイドボード(15)-
StarCityGames.com より引用)

 『カラデシュ』で機体という新しいタイプのアーティファクトが登場したことにより生まれた、最新のビートダウンデッキがこの「白赤機体」だ。機体とは普段はただのアーティファクトだが、自身のクリーチャーが搭乗することでクリーチャー化して戦闘を行えるようになる。装備品の変形版とも言えるこの機体は、クリーチャーという他のパーマネントに依存する代わりに、点数で見たマナ・コストに良い意味で見合わない、破格のスペックのクリーチャーとなってくれるところがポイントだ。

 特にセット発売前から注目されていたのは《密輸人の回転翼機》。たった2マナで3/3飛行+攻撃かブロックに参加すると手札を1枚引いてその後1枚捨てる、いわゆるルーター能力を持った超優秀アタッカーが得られる...もう一度言うが、たった2マナで! 搭乗もパワー1のクリーチャーを1体タップするだけというトータルのコストの安さで、これは構築シーンでも活躍間違いなしと多くのプレイヤーが睨んでいた。そして実際、その通りだったのである。

 『カラデシュ』における赤と白は、久しぶりにその姿を見るドワーフが主要部族として担っている。この次元のドワーフたちは発明品の機能性と美しさの両立を目指しているらしい。またカードを見るに、彼らは整備士や操縦士としても類稀なる才能を発揮する者が多いようである。

 マジックの23年の歴史で遂に登場したドワーフのロード(全体強化能力持ち)である《模範操縦士、デパラ》(※1)も、模範操縦士の肩書が示すように機体に関する能力持ちだ。そんなわけで、赤白のドワーフたちと機体を併せてデッキにしたのがこの「白赤機体」だ。

(※1:ドワーフ・カードの登場は『イーブンタイド』以来、実に8年ぶり。それ以前のドワーフはシナジーが希薄なもので、ドワーフ・デッキというものが成立しなかった。ロード能力を持つ《頑強なるバルソー》《汚らわしき者バルソー》も、それぞれバーバリアンとミニオンという他のタイプのロードであった。ドワーフ・デッキを初めて成立させたデパラの功績をマジック・マニアの1人として称えたい。)

 赤白の軽量クリーチャーを展開し、ドワーフたちはデパラで強化してビートダウンしていくのが基本戦略。《スレイベンの検査官》のような、サイズの小ささからすぐに攻撃にいけなくなるクリーチャーも、機体に乗り込んで最後までしっかりと殴りにいけるよう作られている。早いターンからガンガン展開して、手札が尽きればデパラで機体とドワーフを補充しよう。

 ゲーム終盤には《高速警備車》や《領事の旗艦、スカイソブリン》のような大ダメージを弾きだす機体を叩き付けて、残り数点のライフを削り切ってしまおう。その際は《ピア・ナラー》が最後の押し込みを助けてくれることだろう。1枚のカードで機体2枚に搭乗することも可能なのもイイネ。

 サイドボードにも新カードの姿を見ることができる。《空鯨捕りの一撃》《断片化》は万能除去だが、《稲妻織り》と合わせて対戦相手の《密輸人の回転翼機》への対抗手段として用いる意味合いが強いのだろう。

 相変わらず強力な《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》はコントロール系を相手に絶大な力を発揮する。クリーチャーの枚数を減らしても機体を動かし続けることができるプレインズウォーカーなのもポイントが高く、まだまだ彼の天下が続きそうである。

 新環境のスタンダードということで何が勝つかわからない混沌とした状況ではあるが、参加者500名を超える大会での優勝というのは並大抵のデッキでできることではない。この機体デッキ、プロツアーの台風の目となるか? あるいは対抗するデッキが台頭してくるのか......今から試合を実況するのが楽しみだ。

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