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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:死の影アグロ(モダン)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:死の影アグロ(モダン)
by 岩SHOW
先日、アメリカで開催された音楽フェスに参加してきた。好みのジャンル・敬愛するバンドがズラリと名を連ねる、それはもう僕にとっては楽園であった。ただロケーションは砂漠で、照り付ける太陽に身を焼かれ......体格で勝る海外の方々との押し合い圧し合いを繰り返すフェスの場は、言い換えるならば地獄。僕も最前線でライブを楽しむために文字通りの死闘を繰り広げて、あわやぶっ倒れそうになったものだが......命がけで得たものは何にも代えられない、まさしく「勝利」であった。
マジックでも命を捨てて瀕死の状態で対戦相手をぶん殴るデッキが好きだ。命をかけたからこそ、得た勝利の味も他とは比べ物にならない芳醇なものになることだろう。かつて紹介した「ヘイトレッド」なんてその最高のものだ。己の身を削り、血肉を捧げて骨と魂だけになって20点ダメージ! そんなデッキの精神を受け継いでいるデッキが、現在モダンでも大暴れ中だ。
1 《血の墓所》 1 《草むした墓》 1 《神無き祭殿》 1 《踏み鳴らされる地》 1 《聖なる鋳造所》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《吹きさらしの荒野》 2 《新緑の地下墓地》 2 《樹木茂る山麓》 -土地(17)- 4 《死の影》 4 《僧院の速槍》 4 《野生のナカティル》 3 《ステップのオオヤマネコ》 4 《通りの悪霊》 -クリーチャー(19)- |
4 《ミシュラのガラクタ》 4 《ギタクシア派の調査》 4 《変異原性の成長》 3 《思考囲い》 2 《稲妻》 4 《ティムールの激闘》 4 《強大化》 -呪文(25)- |
1 《イーオスのレインジャー》 3 《わめき騒ぐマンドリル》 2 《信仰の盾》 2 《コジレックの審問》 2 《流刑への道》 1 《墓掘りの檻》 1 《古えの遺恨》 1 《紅蓮地獄》 1 《石のような静寂》 1 《四肢切断》 -サイドボード(15)- |
環境を定義するデッキの1つとなっている「死の影アグロ」だ。「Super Crazy Zoo」や「Suicide Zoo」等とも呼ばれ、その名の通りイカれてしまったかのように自身のライフをすり減らして対戦相手の20点のライフを削り取ろうというものだ。
デッキの名前にもなっており、このカードがなければこのデッキが作られることもなかったであろう1枚は《死の影》。1マナ13/13という気が狂ったようなスペックを誇るこのクリーチャーは、あなたのライフ1点につきそのサイズを縮める。ライフが20点ある状態だと−7/−7で戦場に出て即死する。少なくともライフが12点以下の状態にならないと戦場に出せない。ただそれを越えていけば......1マナで3/3、十分強力。4/4、バケモノだ。5/5、手が付けられない。それ以上......出せれば勝ち! そんな《死の影》をダメージレースの末に出すのではなく、早いターンで巨大に成長させて殴るというのがこのデッキの目的だ。
自らのライフを支払ってプレイするカードがマジックには数多く存在する。古来より、そういったカードはスーサイド(自殺的)なカードだと呼ばれ、リターンの大きなものは愛好家に重用されてきた。モダンという広い環境には、海千山千のスーサイドカードが大集結。《血染めのぬかるみ》のようないわゆるフェッチランドで1点のライフを支払い、《血の墓所》をアンタップイン。この時点で3点喪失。《ギタクシア派の調査》《通りの悪霊》でカードを引き、手札を確認したら《思考囲い》で脅威を排除。この1ターン目の動きだけで、ライフは何と9点減っている。残りライフ11点、次のターンには2/2の《死の影》を出すことができるという寸法だ。
それを出しながら上記のカードをさらに用いて他のクリーチャーも戦場に出し、ビートダウン! 《変異原性の成長》なんてファイレクシア・マナをライフで支払えば《死の影》のサイズを+4/+4させることができる恐ろしい呪文だ。なんと《稲妻》も自身に撃ち込むことがある。《死の影》が2体並んでいたりすると、そうした方が打点が跳ね上がるためだ。
この《死の影》による殺戮を更に後押しするのが《強大化》《ティムールの激闘》コンボだ。上記のフェッチランドやファイレクシア・マナの呪文などを連打することで早期に墓地を肥やして《強大化》の探査コストの支払いを可能にし、《死の影》のパワーをとんでもないものへと上昇させ、《ティムールの激闘》で二段攻撃とトランプルを与えてやれば......20点のライフを削るなど容易いもの。《強大化》をいち早く唱えるために採用されているのが手札の損失なく0マナで墓地を肥やす《ミシュラのガラクタ》だ。
《死の影》が安定して2ターン目くらいに出せればよいが、デッキに4枚のカードにそこまで頼るわけにはいかない。そこで他にも1ターン目から展開できて高い打点を叩きだすクリーチャーを採用している。呪文連打と相性の良い《僧院の速槍》、フェッチランドでサイズを上昇させる《ステップのオオヤマネコ》、そして安定して1マナ3/3を得られる《野生のナカティル》だ。ナカティルは軽量マナ高パワーの動物クリーチャーを召喚して殴りまくるビートダウン「Zoo」の代名詞であり、このデッキが「○○Zoo」と呼ばれるのもこのカードが採用されているからというのが大きな要因だろうね。
これらのクリーチャーと《死の影》、そして上記のスーサイドな呪文を絡めて、早ければ3ターン目に勝利することすら出来る恐ろしいビートダウン......というよりも最早コンボの域に達しているデッキだ。
このデッキを相手取るのであれば...まずは軽い除去を用いてしっかりとクリーチャーを潰していくこと。これに尽きるね。《稲妻》で除去できるクリーチャーがいるのであればさっさと焼いてしまおう。インスタントだから相手のターンに......と思っていると《変異原性の成長》《強大化》でかわされて大ダメージを受けるハメになってしまうだろう。落ち着いて対処できるものは即座に対処するように心がければ......最序盤の猛攻を耐えることができれば、後は純粋なカード1枚が持つパワーの差で勝利することができるはずだ。
使う側は、スタートダッシュにすべてを賭けて、勇気をもってライフを限界まで削って攻め立てよう! マジックは対戦相手のライフが0、こちらのライフが1あればそれでOKなゲーム! 躊躇しない性格の君の挑戦を、モダンは待っているぞ。
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