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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:現出ドレッジ(スタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:現出ドレッジ(スタンダード)

by 岩SHOW

 Mr. Masterpieceといえば浅原晃に他ならない。......まあ、鍛冶友浩さんと僕とで遊びに行った社内プレリにて「Masterpiece Series」を引き当てたからってのはあるけど。自身で「今が俺の全盛期。若い者にはまだまだ負けん」と豪語するように、この2016年はトーナメントシーンで多数の勝ち星を挙げ、優勝こそないものの安定した成績を残し続けている。

 浅原さんは『オデッセイ』頃からデッキビルダーとして広く知られるようになり、勝利手段を極力排除したコントロール「みのむしぶらりんしゃん」や《さまようもの》入りの245枚デッキ「The One」といった一見ネタに見えるデッキで好成績を残したり、《戦隊の鷹》を採用したコントロールデッキ「Caw-Go」の原型を生み出したりと、マジック史にその名を刻みつけてきたビルダーの鑑である。

 『異界月』発売後、浅原さんが手掛けた「現出ドレッジ」が大いに話題となった。この一見ぶっ飛んだデッキは、予測不可能な動きでいわゆる「わからん殺し」を連発。デッキの土台は強力であることを証明して見せた。このデッキは、一説にはその後に控えたプロツアーに大きな影響を与えたとも言われている。

 そんな「現出ドレッジ」、以前も紹介したが浅原さんが使用したものはわずか20分ほどで作り上げて調整もしないままトーナメントに出たものなので......いろいろと不要なカードもあり、まだまだ形にはなりきっていないものだった。それから2か月ほどの時が流れて、世界中のプレイヤーたちによって使用されたこのデッキは「これだ」という形にたどり着いている。

Jim Davis - 「現出ドレッジ」
StarCityGames.com Classic Orlando 11位 / スタンダード (2016年9月18日)[MO] [ARENA]
2 《
4 《
2 《
3 《ラノワールの荒原
3 《窪み渓谷
4 《ヤヴィマヤの沿岸
4 《進化する未開地

-土地(22)-

4 《ヴリンの神童、ジェイス
1 《首絞め
4 《秘蔵の縫合体
4 《憑依された死体
1 《縫い翼のスカーブ
1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ
4 《老いたる深海鬼
1 《膨らんだ意識曲げ

-クリーチャー(20)-
4 《ウルヴェンワルド横断
2 《発生の器
4 《群れの結集
4 《過去との取り組み
4 《コジレックの帰還

-呪文(18)-
1 《光り葉の選別者
2 《集団的蛮行
2 《精神背信
2 《究極の価格
2 《ムラーサの胎動
2 《餌食
1 《無限の抹消
1 《苦い真理
1 《衰滅
1 《

-サイドボード(15)-
StarCityGames.com より引用)

 《ヴリンの神童、ジェイス》《首絞め》《発生の器》《過去との取り組み》《群れの結集》と、墓地にカードを落とす手段が豊富に取り揃えられたデッキである。これらのカードを使って《憑依された死体》《縫い翼のスカーブ》《秘蔵の縫合体》を墓地に落とす。

 《憑依された死体》《縫い翼のスカーブ》は墓地から自力で戦場に戻ってくることができる。これらが墓地から戦場に出たことにより、《秘蔵の縫合体》の能力が誘発し、これもまた戦場に戻る。これら大量のクリーチャーで殴っても良いし、マナ・コストが比較的重めなこれらを餌に《膨らんだ意識曲げ》《老いたる深海鬼》を現出コストで唱えるのも良い。

 これらヘビー級のエルドラージが唱えられたことにより、墓地にある《コジレックの帰還》の能力が誘発し、大抵のクリーチャーは破壊されることになる。自身の戦場はまたすぐに立て直せるので、ゾンビとエルドラージで殴って勝利!というデッキだ。

 色事故は怖いが、そのリスクを背負ってでも《憑依された死体》を使えるように青緑黒の3色デッキにシフトしたのが今の「現出ドレッジ」の定番の形である。「スゥルタイ現出」と呼んだ方が良いのかもしれない。特に墓地から戻るクリーチャーとして《憑依された死体》を使えるようになった点は大幅な強化だ。2/2のゾンビ本体とは別に1/1飛行のスピリット・トークンを生み出せるため、《縫い翼のスカーブ》よりもブロッカーに回った時のいやらしさは遥かに上だ。これがグルグルと戦場と墓地を行きかうことを嫌がって、対戦相手が攻撃を躊躇する場面もあることだろう。

 また、墓地に大量にカードが落ちる=昂揚を達成しやすいため、《ウルヴェンワルド横断》が採用されているのもポイントだ。

 最序盤は3色揃えるための基本土地サーチとして役に立ち、中盤以降は先に挙げたエルドラージをサーチして《コジレックの帰還》を誘発させる動きを確立させたり、1枚挿しの《墓後家蜘蛛、イシュカナ》をサーチして大量のブロッカーを配置したり、なんて動きが可能になった。元々《老いたる深海鬼》含む現出エルドラージをしっかりと引けるか、ということが試されていたデッキだったので......このカードの採用は純粋にエルドラージを水増しするよりも正しいチョイスと言えるだろう。

 また、サイドボードも黒いカードを多く採用し、さまざまなデッキ相手に戦えるように調整されている。最近では昂揚系のデッキへの対抗策として「バント・カンパニー」などの青いデッキが《過去に学ぶ》や《一日のやり直し》といったカードを採用してきている。これらを《集団的蛮行》《精神背信》で処理してしまえるのは、黒を採用する大きなメリットである。対戦相手が《コジレックの帰還》でも対処できないダメージ源として《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》をサイドから投入しているようならば、《餌食》で美味しくいただいてしまおう。

 現出およびそれらとシナジーを形成するカードは、『異界月』環境にて大活躍だった。リストも煮詰まったところで、さあ次は『カラデシュ』だ。数々の発明品を用いた戦いは、もうすぐそこまで迫ってきている。一体どんなデッキが生まれるのだろうか? 今からワクワクしながら、最初のトーナメント結果に目を通すその時を待つとしよう。

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