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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:親和(モダン)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:親和(モダン)
by 岩SHOW
マジックの次元の中でもその様相が他と大きく異なるのはミラディンではなかろうか。プレインズウォーカーとなった銀のゴーレム、カーンが作り出した人工の次元であり、元々の名前はアージェンタムであった。アージェンタムはすべてが金属で構成され、次元一面が銀一色で染められていた。そこは無生物で、完全なる秩序が保たれた世界だったのだが、この次元の管理をカーンに託された《メムナーク》は、彼が《ミラーリ》だった頃に探査した次元・ドミナリアに憧れ、この次元に生物を住まわせることを決意。各次元に探査機を放ち、呼び寄せた生物たちがこの金属次元で独自の進化を遂げる。こうしてアージェンタムは我々がよく知るミラディンへと生まれ変わったのだ。
この金属次元を舞台とした『ミラディン』ブロックおよび『ミラディンの傷跡』ブロックでは多数のアーティファクト、アーティファクト・クリーチャー、それらとシナジーを形成するカードが登場した。
初代『ミラディン』では親和(アーティファクト)というキーワード能力が登場。「この呪文を唱えるためのコストは、あなたがコントロールするアーティファクト1つにつき{1}少なくなる。」という能力で、これを持った《金属カエル》《マイアの処罰者》らを《教議会の座席》のようなアーティファクト・土地などを並べて高速で展開するビートダウンデッキ「親和」が誕生することになる。
『ミラディン』しかない頃でも《ブルードスター》などを用いた「ブルード親和」が活躍したものだが、『ダークスティール』の登場を受け、いよいよ支配的な存在へと成長することになる。展開を助ける《霊気の薬瓶》、アーティファクトを喰らって絶大なパワーを得る/また与える《電結の荒廃者》、そしてイカれたアドバンテージをもたらす《頭蓋骨絞め》だ。これらを搭載した「電結親和」「薬瓶親和」は、思い出すだけでも悪夢......。
そんな「親和」デッキの系譜が、現在でもモダンで活躍している。まずはリストをご覧いただこう。2014~2015プレイヤー・オブ・ザ・イヤーのマイク・シグリスト/Mike Sigristが直近のトーナメントで使用したものだ。
1 《島》 1 《山》 4 《ダークスティールの城塞》 4 《ちらつき蛾の生息地》 4 《墨蛾の生息地》 3 《空僻地》 -土地(17)- 4 《羽ばたき飛行機械》 3 《メムナイト》 4 《信号の邪魔者》 4 《電結の荒廃者》 4 《鋼の監視者》 4 《大霊堂のスカージ》 2 《刻まれた勇者》 2 《エーテリウムの達人》 -クリーチャー(27)- |
4 《オパールのモックス》 4 《バネ葉の太鼓》 4 《感電破》 4 《頭蓋囲い》 -呪文(16)- |
2 《刻まれた勇者》 3 《呪文貫き》 2 《墓掘りの檻》 2 《古えの遺恨》 2 《鞭打ち炎》 2 《四肢切断》 2 《ギラプールの霊気格子》 -サイドボード(15)- |
まず、1つ大事なことがある。「親和」と分類されるこのデッキには、親和能力を持つカードは1枚も採用されていない。......じゃあなんで「親和」って呼ぶんだよ!という声もごもっとも。今現在もこのデッキタイプで使用されている親和能力持ちと言えば《物読み》くらいか(このデッキではそれも不採用だが)。アーティファクトを高速で並べるビートダウンという点だけでかつての「親和」と同様のものとして分類されている。古くからやっているプレイヤーには分かりやすいからね......ただ最近では、その矛盾したデッキ名に異を唱えてか「ロボッツ」という呼称を用いることも増えてきた。確かに、《鋼の監視者》とかロボットそのもの。
このデッキには0マナで展開できるアーティファクトが15枚(土地含む)、1マナのそれが12枚入っている。これらの中には《オパールのモックス》《バネ葉の太鼓》とマナを伸ばすアーティファクトが含まれている。この軽量アーティファクト群をばらまき、マナを生み出して手札を吐き出して1~2ターン目には手札が空になるくらいの怒涛の展開で対戦相手を圧倒するデッキだ。《オパールのモックス》はアーティファクトを3つ以上コントロールしていないと何もしないが、このデッキであればその条件を1ターン目に満たすことも容易だ。
アーティファクトが戦場に並べば並ぶほど効果を発揮する《電結の荒廃者》《鋼の監視者》《エーテリウムの達人》そして《頭蓋囲い》で対戦相手のライフを詰めにかかる。これらによって強化されれば《メムナイト》《羽ばたき飛行機械》もダメージ源として十分なパワーを得る。《大霊堂のスカージ》は度々《悪斬の天使》となってダメージレースという概念を破壊する。邪魔なクリーチャーは《感電破》で排除すればいいし、なんだったらこの1マナ4点火力で対戦相手にトドメの一撃を与えてもイイネ。
たとえ対戦相手がこれらの猛攻をものともしない、無限ライフコンボを決めたとしても勝つ方法はまだある。《墨蛾の生息地》を用いた毒殺プランだ。感染と飛行を持つクリーチャーになるこの土地を強化してやって、ワンパンチで勝利なんてこともザラにある。メインデッキでは多くのデッキをその展開力で薙ぎ倒すことが出るだろう。
問題は2ゲーム目以降。サイドボーディングにより対戦相手のデッキに強烈なアンチ親和カードが搭載されてしまうと、メインデッキでの対戦とは比較にならない、辛く苦しいゲーム展開になることも。《石のような静寂》ではこのデッキのクリーチャーでないアーティファクトが文字通り何もしない石榑となってしまう。《粉砕の嵐》《忍び寄る腐食》でパーマネントは吹き飛んでいく。《引き裂く突風》なんてこれに回復のオマケがついてインスタントだ。ここまで派手じゃなくても《古えの遺恨》で2枚抜きされるだけでも十分に苦しい。一時期は他のデッキへの対抗手段である《魂の裏切りの夜》なんてカードにもいじめられることも。
なんだかんだ言って最大の敵は《石のような静寂》だろう。これに対抗するために手札破壊や打ち消しを採用するのが定番で、このデッキでは《呪文貫き》がその役目を担っている。また《ギラプールの霊気格子》も起動型能力を失ったアーティファクトに使い道を与えてくれる良いカードだ(《罠の橋》など攻撃による勝利を封じてくる相手にも効果アリ)。
脆く壊れやすいが、エンジンがかかった時の爆発力は他のモダンのデッキの比ではない。そんな危険な魅力にあふれた、モダンの顔の1つである「親和」。このフォーマットを遊ぶのであれば、アーティファクト対策は忘れずに!
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