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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ティムール現出(スタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ティムール現出(スタンダード)

by 岩SHOW

 プロツアー『異界月』でその存在感をさらに増したプレイヤーが一人。オーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwaldだ。

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 オーウェンはこの2015−2016シーズンにてプロツアー初参戦より10年が経ち殿堂候補に名を連ねると同時に、70%の票を獲得して殿堂顕彰選出者となった。殿堂入りが決まった勢いをそのままに、スイスラウンドでは10連勝を達成してTOP8へと勝ち残る。同じ殿堂顕彰者の大先輩であるルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargasにも勝利して、決勝の舞台へと進み......優勝こそ逃したものの、セス・マンフィールド/Seth Manfieldと大差をつけられていたプロポイントレースも抜き返し、準優勝と同時に逆転のプレイヤー・オブ・ザ・イヤーを勝ち取った。自身2度目の同称号を受賞して、やり残したことはプロツアー王者くらいじゃなかろうかってなもんである。

 彼の活躍をリアルタイムで目にすることができて、幸運だったとさえ思える。そんなオーウェンが使用したデッキがこれだ!

Owen Turtenwald
プロツアー『異界月』 準優勝 / スタンダード (2016年8月5〜7日)[MO] [ARENA]
7 《
3 《
1 《
4 《ヤヴィマヤの沿岸
3 《獲物道
3 《シヴの浅瀬

-土地(21)-

4 《節くれ木のドライアド
3 《巡礼者の目
2 《墓後家蜘蛛、イシュカナ
1 《不憫なグリフ
3 《老いたる深海鬼
3 《約束された終末、エムラクール

-クリーチャー(16)-
2 《崩れた墓石
4 《発生の器
4 《群れの結集
4 《過去との取り組み
4 《コジレックの帰還
4 《ニッサの巡礼
1 《炎呼び、チャンドラ

-呪文(23)-
2 《ヴリンの神童、ジェイス
1 《棲み家の防御者
2 《失われた業の巫師
2 《払拭
2 《焦熱の衝動
2 《侵襲手術
1 《翼切り
1 《否認
1 《久遠の闇からの誘引
1 《即時却下

-サイドボード(15)-

 ティムールカラー(緑青赤)の現出と昂揚にフィーチャーしたデッキで、使用したオーウェン本人はこのデッキを「ターボ・エムラクール」と呼んでいる。その名の通り、《約束された終末、エムラクール》を可能な限り速く呼び出すことを目的としたデッキで、リストを見てもギャンギャンに尖ったものとなっている。

 まずは《発生の器》《群れの結集》《過去との取り組み》で墓地にカードを落としつつ、クリーチャーか土地を手札に入れていきたい。状況にもよるが、序盤は土地を手札に入れることを優先していこう。

 《崩れた墓石》《ニッサの巡礼》も使ってマナを伸ばしていくことも大事で、最初の数ターンは相手がクリーチャーを展開してこようがお構いなしに自身の戦場と墓地を作りあげていこう。《巡礼者の目》も土地をサーチしつつ、相手のクリーチャーをブロックすれば墓地のカードタイプが増えて昂揚とエムラクール召喚へ一歩近づく。

 これらのアクションを行いながら、《節くれ木のドライアド》も戦場に投下していこう。1マナと軽いので、他の動きを阻害せずに出すことのできる万能ブロック役として活躍するだろう。接死でどんなクリーチャーとも相討ち、流行りの「バント・カンパニー」が使用する《ドロモカの命令》でも一方的に討ち取ることは不可能、昂揚すれば3/3となって殴りだす...良いことしか書いていないが、まあ終盤引くとちょっと弱いということぐらいしか実際に悪い点がないので褒めるしかない(プロツアーのゲームを見る限りでは)。1ターン目ドライアド、2ターン目に《群れの結集》で、一瞬で昂揚に達成することもあるというのは恐ろしい。

 序盤はドライアドでの食い止めとマナの安定を図り、ついでに墓地にカード・タイプをもりもりと増やしていくことに尽力する。この時、《コジレックの帰還》も墓地に落とすことを優先していきたい。手札に来れば普通に唱えるようにしよう。相手がクリーチャーを展開して来れば《コジレックの帰還》、動きがなければ《過去との取り組み》といった具合に、構えてプレイするのも良いんじゃないかな。

 で、このインスタント全体火力が墓地にある状況で現出持ちのエルドラージを唱えて能力を誘発させ、盤面を更地に......というのが1つの狙い。ドライアドか《巡礼者の目》を食べさせて《不憫なグリフ》《老いたる深海鬼》をこの世界に顕現させよう。これら高コストのエルドラージを唱えることで帰還の能力が誘発......ってそれはここ最近ずっと言い続けている「現出ドレッジ」と狙いは同じで。このデッキは、ドレッジ戦略(墓地を肥やしてゾンビを戦場に出しまくる)を捨てて、現出×帰還コンボに特化した形のものとなる。

 《不憫なグリフ》はマナ・コストが現出も通常のものも比較的低くて唱えやすく、相手のクリーチャーが《コジレックの帰還》の誘発型能力で焼き尽くされた後に出てくる3/4飛行はなかなかに頼もしい。《老いたる深海鬼》の強さについてはもはや語るまでもないだろう。プロツアーでもたびたび見られた、これを相手のアップキープに唱えてクリーチャー全滅・土地4枚タップの動きは強いなんてもんじゃない。

 これらの現出持ちか、あるいは《墓後家蜘蛛、イシュカナ》で1〜2ターン稼げばこのデッキではもう十分。9〜8マナでエムラクールを唱えてやろう(このデッキでの最軽量コストは7マナ)。エムラクールは、唱えられれば往々にして勝てる文字通りの「フィニッシャー」。これを唱えて、対戦相手のコントロールを奪ったら次のターンは思いつく限りのめちゃくちゃなことをしてやろうじゃないか。

 この凶悪な夢を叶えるため、他の昂揚デッキなどと違って《約束された終末、エムラクール》が3枚もメインデッキに採用されているのも特徴だ。確実に引き込みたいため《ウルヴェンワルド横断》も使いたくなるところだが、このデッキではそれをグッとこらえてか採用は0枚というのも特徴的。墓地を耕す系の呪文すべてでエムラクールを手に加えることができるので、そこまでせずとも手に入るということなのだろう。《ニッサの巡礼》などを経由して6ターン目に唱えれば、まさしく「ターボ・エムラクール」!

 オーウェンはさも当たり前のように動かしていたこのデッキだが、いざ回すとなると無茶苦茶に難しいデッキだ。キープ基準に、現出するか否か、呪文の唱える順番など......慣れていないと一人回しでもちぐはぐな動きになってしまう。

 プロツアーで実況していて《発生の器》《過去との取り組み》で積極的に土地を拾うなぁと思ったら、なんとデッキの土地の枚数は21枚と極限まで絞り込んでいることを知って驚いたものだ。この極限まで研ぎ澄まされた刃......メインデッキもだが、サイドボードのイン/アウトとか考えだすともうなんもわからん!

 《久遠の闇からの誘引》は《精神背信》《無限の抹消》などのエムラクールや深海鬼対策で用いられるカードへの対策となる。これを黒いデッキ相手にインするとして、何をアウトするのか? こういったコンボ系のデッキではなかなかに難しい点ではある。

 本人の経験談はもとより、このリストを基にあなたにとってもっと使いやすいマイルドなメイン/サイドに調整しても良いかもしれないね......なんて思ったが、尖っているからこそ強いデッキだとも思うわけで。

 ともかく、一度回してみてほしい! 体験は説明の100倍は情報量があるからね! このデッキを完璧に使いこなすことができるようになれば、オーウェンという現役最強プレイヤーへと一歩近づくことになる......のかもしれない(光の速さで引き離されながら)。

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