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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:青黒ゾンビ(スタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:青黒ゾンビ(スタンダード)

by 岩SHOW

 近年のプロツアーは、最新セットが発売されてから2週間後に開催される。かつてはそうではなく、1か月もの調整期間が与えられたりしていた。この差が如何に大きいかは、日頃デッキ構築に頭を悩ませる皆さんならご存知の通り。まあ、かつてはブロック構築やエクステンデッドなどのスタンダード以外の構築フォーマットや、あるいはリミテッドオンリーで開催されていたりしたので、今とは随分と条件も異なってくる。

 そういった変更もあってか、実況・解説・スタッフ陣でイベント終了後のディナーへと繰り出すと、決まって話題は「昔よりも最新セットのカードが活躍している」「セットの看板として作られたカードがしっかりと活躍している」「予想していたよりもデッキのバリエーションが富んでいた」というものになる。限られた期間の中で新戦力の強さを見定め、ベストのデッキを作るというのは難しいことで......だからこそ、各国・各チームが様々なアプローチのデッキを持ち込むことになる。プロツアーは予測不能のもの、混沌の戦場と化すわけだ。

 今回もそうだ。『異界月』の参入により、大幅に強化されたデッキは「バント・カンパニー」のみ、プロツアーでの使用者数も下手すりゃ30%を上回ってくるのではとスタッフミーティングでも話題になるほどだったが......既知のデッキで恩恵を受けたのはそれだけかもしれないが、未知のデッキがこのステージに集結した。「バント・カンパニー」が多いならそれを食う、それを食うものが多いのであればさらにそれらのデッキを踏みつぶす、そんなアプローチで組まれた新デッキが大暴れしたのだった。「青黒ゾンビ」もそんな、未だ見ぬデッキの1つであり、大いに活躍したデッキである。

Ondrej Strasky
プロツアー『異界月』スタンダード部門 7勝2敗1分け (2016年8月5〜7日)[MO] [ARENA]
12 《
2 《
4 《窪み渓谷
4 《詰まった河口
2 《水没した骨塚

-土地(24)-

4 《墓所破り
4 《ヴリンの神童、ジェイス
4 《無情な死者
4 《秘蔵の縫合体
4 《憑依された死体
4 《ヴォルダーレンの下層民

-クリーチャー(24)-
4 《闇の掌握
1 《集団的蛮行
3 《闇の救済
2 《破滅の道
2 《最後の望み、リリアナ

-呪文(12)-
2 《ゲトの裏切り者、カリタス
1 《龍王シルムガル
3 《膨らんだ意識曲げ
2 《強迫
2 《否認
1 《精神背信
3 《衰滅
1 《最後の望み、リリアナ

-サイドボード(15)-

 このデッキはTOP8入りこそは果たせなかったものの、オンドレイ・ストラスキー/Ondrej Straskyがスタンダードラウンドを7勝2敗1分けの好成績でフィニッシュし、またフィーチャーマッチにもちらほらと顔を覗かせ、その脅威の粘り腰を全世界のプレイヤーに披露したのだった。早くデッキリストが見たい!そう思いながら観戦していたプレイヤーも少なくないだろう。

 このデッキの売りは先述したように「粘り腰」。ゾンビといえば、魂なき朽ちた肉体。緑の持つ生命力とはまた別の不死身さを持った黒のクリーチャーたちが、ゾンビ映画の如く何度倒してもウジャウジャ湧いてすがりついてくる、恐怖の中速デッキである。

 まずは《墓所破り》《ヴリンの神童、ジェイス》のいずれかを展開したい。そしてこれらの能力を使って、ゾンビを作り出すかカードを引くかしつつ《憑依された死体》を捨てて墓地に置く。《最後の望み、リリアナ》の[-2]能力で墓地に置いても良いね。

 何かしらの手段でこのカードを墓地に置いたら、その起動型能力を用いて墓地から戦場に出そう。この時、手札から捨てるカードは《憑依された死体》2号機か《秘蔵の縫合体》であると嬉しい。死体を戻せば2/2のゾンビと1/1飛行のスピリット、2体のクリーチャーを得つつ、さらに縫合体も一緒にやってくる怒涛の展開を決めるのがこのデッキの狙いだ。そう、浅原さんの「現出ドレッジ」がやりたがっていた動きと近いね。あのデッキの、よりゾンビに特化したデッキだと思ってもらえれば問題ない。

 この《憑依された死体》《秘蔵の縫合体》をグルグルと回しながら相手のクリーチャーを受け止めたり、除去を撃ちながら殴ったりしていくのがデッキの目指すところだ。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》のような厄介な地上クリーチャーは死体でブロックしつつ、戦場に戻してやればスピリットがどんどん増えて航空戦力が整っていくという寸法だ。

 この不死の集団により地上を固めたら、あとはじっくりと《最後の望み、リリアナ》の[-7]能力で決着を狙うと良い。他のデッキと違って素でゾンビが戦場にいるので、1回目の解決で6体出てくる、なんてこともざらだ。即ち、勝ち。

回転

クリックで変身

 これらのゾンビ集団とシナジーを形成するのが《ヴォルダーレンの下層民》。5マナ3/3飛行とやや重いものの、手札からカードを捨てる能力のコストに充ててやれば、マッドネスで{B}{B}{B}で唱えることが可能だ。《憑依された死体》の能力でこれと《秘蔵の縫合体》を捨ててマッドネスで唱えれば、5マナでクリーチャーを4体も同時に展開できる。さらに、この下層民以外のゾンビ&スピリットを生け贄に捧げて《血統の撤廃者》に変身すれば、6/5飛行となった上に対戦相手のクリーチャー3体を生け贄に捧げさせることもできる。何もない戦場から一転、対戦相手の戦場は壊滅し、こちらの戦場にはドラゴンのような大きさの吸血鬼が残るというのは、相手にとってはこの上ない悪夢だ。

 そして、悪夢は終わらない。生け贄に捧げられたクリーチャーたちも、次のターンには平気な顔をして戦場に帰還していることだろう......いや、ゾンビに表情もへったくれもないか。クリーチャーでの殴り合いであれば、どんなに苦しい状況に陥っても上記のようなムーブを繰り返し行うことで、いつかは形勢逆転できる構成になっている。

 このデッキを使う時は、慌てず騒がずゾンビのように淡々と展開、ゆっくりと確実に、そして一切の無駄のないようにプレイすることを心がけよう。一番ダメなのは、手札を無駄に消費した結果《憑依された死体》のコストである2枚の手札を確保できなかった、という展開だ。意思なき死者とは言え、大群を引き連れるには的確なリーダーシップと運用術が必要だということだね。

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