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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:現出ドレッジ(スタンダード)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:現出ドレッジ(スタンダード)
by 岩SHOW
「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である」
かのトーマス・エジソンの言葉だ。有名なこの表記だと、ひらめきよりも努力が大事という美談に聞こえるが、彼の言いたかったことはそうではないらしい。ほんの少しのひらめきが無ければ、どんな努力も無駄になる、と言いたかったのだとか。発明王が言うのであれば、そういうものなのだろう。
発明王、と言えば......この称号がマジック界で最も似合う人物を僕達は知っている。
デッキビルダーは世界中・さまざまな時代に多数存在する。マイク・フローレス/Mike Flores、サム・ブラック/Sam Blackなどはその歴史に名を残すビルダーだ。しかし発明王、という称号を名乗れてかつ似合う、となればこの男しかいない。
浅原晃、その人である。
他のプレイヤーとまるっきり異なる着眼点と奇抜な発想、それを現実世界でデッキの形に仕上げる構築力。これらを併せ持つ我らがAAさんは、それはそれは魅せるデッキを作り続けてくれたものだ。
ここのところグランプリでも立て続けに賞金圏内でフィニッシュ、ワールド・マジック・カップ予選でもTOP8とプレイヤーとしても好調だった彼が、久しぶりに世界に投下した問題作がこちらだ。
5 《森》 5 《島》 4 《伐採地の滝》 3 《ヤヴィマヤの沿岸》 2 《窪み渓谷》 4 《進化する未開地》 -土地(23)- 4 《首絞め》 4 《秘蔵の縫合体》 4 《縫い翼のスカーブ》 2 《改良された縫い翼》 3 《老いたる深海鬼》 3 《厄介な船沈め》 -クリーチャー(20)- |
4 《群れの結集》 4 《過去との取り組み》 4 《棚卸し》 4 《コジレックの帰還》 1 《墓所粛正》 -呪文(17)- |
4 《ヴリンの神童、ジェイス》 2 《巨森の予見者、ニッサ》 1 《州民を滅ぼすもの》 1 《約束された終末、エムラクール》 3 《払拭》 1 《ナヒリの怒り》 2 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》 1 《山》 -サイドボード(15)- |
彼が『異界月』の新戦力を用いて創り上げたのは、ご覧の通りの美しくも禍々しいデッキリストだ。デッキの動きを以下に紹介しよう。
1.墓地を肥やせ!
このデッキは、まず墓地にカードがある程度落ちているという状況を目指す。そのために採用されたカードは《群れの結集》《過去との取り組み》そして《首絞め》だ。これらの2マナのカードを使って、墓地に多数のカードを置いて肥やしていこう。
《群れの結集》は一気に5枚ものカードをライブラリーから掘り起こし、墓地を耕すとともにこのデッキが目指すキーカードへのアクセスを可能とする。
《過去との取り組み》は3枚と枚数は落ちるものの、インスタントで使いやすく、またすでに墓地に落ちているクリーチャーか土地を拾うことができるので、事故を回避したりもできて便利な1枚。
《首絞め》はこれらと違ってライブラリーを掘り起こすわけではないが、手札に来たカードを墓地に埋めることが可能。地上も空中も睨みを利かせるブロッカーとしての役目を果たす、頼れる蛇さん。
これらの2マナ域のカードを手札に持ってゲーム開始に臨みたい。12枚もあればいずれかを引くことができるだろう。
2.ゾンビを掘り起こせ!
では積極的に墓地に落としていきたいカードとは? 《縫い翼のスカーブ》《改良された縫い翼》《秘蔵の縫合体》《コジレックの帰還》だ。
《コジレックの帰還》については次項で述べるとして、ここではゾンビたちの話を。縫い翼はどちらも「手札を捨ててマナを支払うと墓地から戦場に戻る」能力を持っている。
本来なら4マナ・5マナのクリーチャーだが、墓地を経由すれば2マナ・3マナと軽いコストで戦場に出すことが可能。これらの飛行持ちゾンビを、墓地肥やしカードで埋めては蘇らせる、というのがこのデッキの狙い。
これらが蘇れば、《秘蔵の縫合体》の能力も誘発し、これらも戦場に姿を表す。2ターン目にゾンビを埋めて、3ターン目にまとめて蘇らせてパワー3が戦場に3体......なんてのが最高のシナリオだ。
縫い翼の起動型能力のコストで捨てる手札をこの縫合体にしても、その帰還する能力は誘発する。また縫合体の能力は、墓地からクリーチャーが戦場に出た時に誘発し、「次の終了ステップの開始時」に戦場に戻ってくるというもの。なので、対戦相手のターンの終了ステップに縫い翼シリーズの能力を起動すると、縫合体達は次の終了ステップの開始時、即ち続く自分のターンの終了ステップに戦場に戻ってくることになる。
この意図的に引き起こせるタイムラグが意味を持つこともある。次のターンにゾンビ軍団で殴りたいのであれば、対戦相手が終了ステップに入る前に縫い翼の能力を起動しよう。
3.取れたて!海産物BBQを召し上がれ
墓地からゾンビを引っ張り出して、そのままリリアナのように屍術師として勝利を収めることができれば御の字ではあるが、最近のマジックではそうも簡単にはいかないもの。対戦相手の方がより強固なクリーチャーを展開してきて、攻めあぐねたり逆に攻め返されたりすることもあるだろう。
そんな状況を打破するのが、カニとタコ。シーフードだ。《厄介な船沈め》と《老いたる深海鬼》、現出という新能力をひっさげやってきた、新たなるエルドラージである。
これらのエルドラージを、その現出能力で唱えるのがこのデッキの真の狙い。縫い翼や縫合体を餌に、大物を釣り上げるのだ。
墓地から出されたゾンビを餌に、大型エルドラージを唱える。すると......すでに墓地に仕込んでおいた、《コジレックの帰還》の能力が誘発。すべてのクリーチャーに5点のダメージを与えて一面焼野原!
この予想もしない角度からのリセットが、このデッキの持ち味。5点のダメージを与えれば、環境で最も使われているクリーチャーである《森の代言者》すら破壊することが可能で、さらにその後に大型エルドラージがズシンッと着地。
船沈めは墓地を耕す呪文を回収して再度の使用を可能とする。そして深海鬼が......こちらはその名の通り鬼だ。瞬速を持つため、対戦相手のアップキープに唱えれば土地やクリーチャーをタップしてそのターンをスッ飛ばしてしまう。この4枚タップ能力と《コジレックの帰還》が合わされば、劣勢からでも逆転することができるだろう。
以上がこのデッキの動き解説となる。非常に面白く、またしばらくスタンダードでは見ることのなかった奇妙な動きをするデッキだ。《コジレックの帰還》で薙ぎ払いつつ、更地に《秘蔵の縫合体》が蘇る、なんていう動きも可能で、対戦相手の思いもよらぬうちに逆転する恐ろしいデッキである。まさしく、発明王の手による2016年の大発明!
このデッキが世にその姿を披露したことで、プロツアー『異界月』のメタゲームは影響を受けた、とプロプレイヤーたちも語っている。そう、発明は新たなる発明を呼ぶ......今後はこのデッキの目指した動きを継承しつつ、より進化させたデッキについても紹介していこう!お見逃しなく!
ちなみに......我らが発明王は、このデッキをトーナメント開始前の20分そこらで組み上げてTOP8入りというとんでもないことをやらかしているが、本人いわく「(ちゃんと作っていないから)メインデッキ弱すぎ」とのこと。このデッキについて意見を求めたプレイヤーたちに対しても「回らんでしょ」と語っていたとのこと。明らかに適当に組んだサイドボードといい、未完成にもほどがあるこのリスト。進化形を生み出すのは、君の役目かもしれない!
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