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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:赤単錬金術師(スタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:赤単錬金術師(スタンダード)

by 岩SHOW

 赤単デッキというものは、他の単色デッキ以上にカードプールに左右されるものだと思っている。《火葬》《火炎破》という強力な火力に《ジャッカルの仔》《モグの狂信者》《ボール・ライトニング》と軽量クリーチャーも素晴らしかった1998年。《ラクドスの哄笑者》《灰の盲信者》から《地獄乗り》《雷口のヘルカイト》と軽いとこから重いとこまで揃っていた2013年あたりが印象深いなぁ。

 それから、忘れちゃいけない2015年。《僧院の速槍》《ケラル砦の修道院長》《鐘突きのズルゴ》といった軽量クリーチャーに《かき立てる炎》《軍族童の突発》《灼熱の血》など優秀な呪文が揃ったことで赤単のアグロデッキが大暴れ、緑を足して《アタルカの命令》を採用した「アタルカ・レッド」なんかも猛威を振るったのも、もう懐かしい話だなぁ。

 『タルキール覇王譚』『運命再編』を失ったことでこれらのデッキも鳴りを潜めていた。赤単愛好家は意気消沈したことだろう。だが、『異界月』にて久しぶりの2マナ3点火力である《焼夷流》が登場。また《騒乱の歓楽者》のような使い甲斐のありそうなクリーチャーも登場したことにより、「赤単、いけるんじゃないか?」という機運は高まっていた。

 あと個人的な体験談になるのだが、プレリリースの時に使って「コイツ強いな」と思ったカードが1つ。《熱錬金術師》だ。これ1枚で5点は軽々と削れるし、2マナでタフネス3というボディがなかなかに頼りになる。最序盤の《森の代言者》を止めつつ火力絡めて......なんて良いんじゃないかなと思っていた。ただ、デッキを作る自信は全くなかったんだけどもね。

 では、本題に入って今日のデッキを。『異界月』から赤のカードをふんだんに取り入れたデッキがあったので、これは紹介するしかないなと。「赤単錬金術師」とでも呼ぼうか、アグロなデッキの登場だ!

Max McVety - 「赤単錬金術師」
StarCityGames.com Standard Open Columbus 59位 / スタンダード (2016年7月23〜24日)[MO] [ARENA]
20 《
2 《ガイアー岬の療養所

-土地(22)-

4 《傲慢な新生子
4 《ケラル砦の修道院長
4 《熱錬金術師
4 《雷破の執政

-クリーチャー(16)-
4 《焦熱の衝動
4 《龍詞の咆哮
4 《焼夷流
4 《集団的抵抗
4 《癇しゃく
2 《極上の炎技

-呪文(22)-
4 《稲妻織り
3 《カラデシュの火、チャンドラ
3 《騒乱の歓楽者
2 《引き裂く流弾
2 《極上の炎技
1 《

-サイドボード(15)-
StarCityGames.com より引用)

 使用者はMax McVety。今年4月のStarCityGames Invitationalで優勝、5月のグランプリ・ミネアポリス2016でもTOP8入賞と、勢いのある実力者だ。「白単人間」に「アタルカ・レッド」など、アグレッシブなデッキを好む印象があるプレイヤーだが、プロツアー『マジック・オリジン』では緑白のエンチャントが30枚以上投入された実に面白いデッキで7勝3敗の結果を残していたりする。

 今回もユニークな赤単で、StarCityGames Openで2日目に進出していたので紹介させていただこう。《》×20から始まる、ほとんどが4枚積みの美しいリストで、まず目を引くのは《熱錬金術師》じゃないだろうか。22枚のインスタントとソーサリーで、これをガッションガッションとアンタップしては1点飛ばすのを目的としたデッキだ。

 《ケラル砦の修道院長》《傲慢な新生子》は火力呪文を探して来て錬金術師をガッションさせるためのカードなので、そのあたりを考えて運用してやりたい。新生子は《癇しゃく》をマッドネスで唱えるために用いることもできる。相手のクリーチャーをブロックしてダメージを防ぎつつ、《癇しゃく》マッドネスで本体に撃ち込んで錬金術師がアンタップ、という動きがベストムーブだろう。

 《集団的抵抗》も『異界月』で登場した期待の新星。3マナでクリーチャーに4点かプレイヤーに3点だと少々物足りないが、増呪コストを払ってやってこれを両方満たしてやればなかなかのコストパフォーマンスを誇る呪文になる。手札が土地まみれとかいう赤単にとって地獄のような状況も、これの手札入れ替え効果を追加選択してやることで打開できるかもしれない。あんまり選ぶものではないとは思うが、そういう選択肢もあるってのがマジックにおいては重要なのだ。

 手札が土地でパンパンといえば、《ガイアー岬の療養所》も素晴らしい土地だ。各プレイヤーはカードを1枚引いて1枚捨てるということで、敵に塩を送る結果となることもあるかもしれないが、自分の手札の不要な土地が火力に入れ替わるのであれば御の字。これもまた《癇しゃく》を投げつけるサポートをしてくれることだろう。

 サイドボードにも《稲妻織り》《騒乱の歓楽者》といったニューフェイスが並ぶ。《稲妻織り》はこれまた『異界月』で新戦力を得て流行りそうなスピリット・デッキに対して文字通り火を噴くだろう。他にもトークン・デッキなどを相手取った時に火力をプレイヤー本体に撃ち込んでいるだけで盤面にも干渉できるのは頼もしい。《騒乱の歓楽者》もデッキとは合っていると思われるし、むしろメインで採用しても良いんじゃないかなとも思うのだが、今回は《龍詞の咆哮》とのシナジーを重視してメインは《雷破の執政》を優先したようだ。

 どの火力をプレイヤー/クリーチャーに撃ち込んでいくのか、そういった計算を瞬時に行わなくてはならず、見た目以上に難しいデッキだとは思う。使い込めば、ガッション1点ガッション1点で最高効率のダメージを刻むのが癖になること間違いなし! まだまだチューンのし甲斐のあるデッキ、この環境で戦っていけるのか? 末期にはどのような姿へと進化しているのか? 楽しみに見守っていきたい!

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