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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:バント人間カンパニー(スタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:バント人間カンパニー(スタンダード)

by 岩SHOW

 今年も夏を彩るイベント、ワールド・マジック・カップ予選大会のシーズンに突入し、先日大阪大会が終了した。僕もイベントの空気・激闘の模様を伝えるために生放送のお仕事をさせてもらっていたのだけど......その際に思ったのは、このスタンダード環境のデッキはどれも粘る力がすごいなぁということ。

 少し前のスタンダードでは、こちらが3マナで詰まって相手だけ4マナ以上に到達すると、《包囲サイ》を一方的に連打されてあっという間に負けてしまう。しかしこの環境では、低コストでタフネスの高い《森の代言者》のようなクリーチャー・《石の宣告》《ドロモカの命令》など軽い除去の存在により、土地が置けなくなった方が相手の攻勢をある程度受け止めることができる。耐えて土地を引ければ《集合した中隊》や《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》に繋げられてそこから逆転、というのも少なくない。どのデッキも粘る力が強いのでスコンスコーンと勝負がつくことは珍しく、制限時間いっぱいの勝負が多く見られた。

 そんな中、あっという間に20点のライフを削り切り、恐ろしいまでの速度で2本先取したフィーチャーマッチは特に記憶に残っている。日本最強と言っても過言ではない、マジックの申し子・渡辺雄也の試合だ。彼は東京・ミネアポリス・コスタリカと3つのグランプリに参加していずれも初日を無敗で終え、10位・TOP8・14位という鬼神の如き戦績を残している。

 この勢いを支えているのが、彼が作り上げたあるデッキなのは......もう皆も知っての通りだよね。

渡辺 雄也 - 「バント人間カンパニー」
グランプリ・コスタリカ2016 14位 / スタンダード (2016年6月4〜5日)[MO] [ARENA]
3 《
6 《平地
1 《
2 《梢の眺望
4 《要塞化した村
3 《大草原の川
2 《ヤヴィマヤの沿岸
4 《進化する未開地

-土地(25)-

4 《スレイベンの検査官
4 《ラムホルトの平和主義者
4 《サリアの副官
3 《薄暮見の徴募兵
2 《白蘭の騎士
4 《反射魔道士
4 《不屈の追跡者

-クリーチャー(25)-
4 《ドロモカの命令
4 《集合した中隊
2 《オジュタイの命令

-呪文(10)-
2 《棲み家の防御者
1 《白蘭の騎士
2 《巨森の予見者、ニッサ
3 《グリフの加護
3 《否認
2 《悲劇的な傲慢
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン

-サイドボード(15)-

 グランプリ・東京2016にてデビューした「バント人間カンパニー」。青白緑(バントカラー)のデッキと言えば、「バント・カンパニー」が環境初期より存在しているが、このデッキはその色とカンパニー=《集合した中隊》、そして《ドロモカの命令》《オジュタイの命令》という呪文構成は同じ。

 要するに、クリーチャーが人間でまとめられているデッキが「バント人間カンパニー」である。エルフ・エルドラージ・天使が混在する一般的なカンパニーとは違って、メインデッキの25枚のクリーチャーすべてが人間だ。

 人間でまとめられている理由は、より攻める展開に強いデッキにするためだ。元より「バント・カンパニー」には《反射魔導士》《不屈の追跡者》と強い人間は多数搭載されているが、これらで殴り切るのにはそれなりの時間を要する。これをグッと縮めるカードが《サリアの副官》だ。

 本人は2マナ1/1と小さなクリーチャーだが、戦場に出た時に既にスタンバイしていた他の人間の上に+1/+1カウンターを乗せて打点を大幅アップ!本人も後から人間が戦場に出るたびに+1/+1カウンターを得ていくので、4/4くらいには簡単に成長してくれる。優秀な人間のアタッカーで、「バント・カンパニー」よりも早期の決着が狙える。

 優秀なカードの寄せ集め、いわゆるグッドスタッフ・デッキである「バント・カンパニー」の方が《森の代言者》など1枚のカードのパワーは高いが、ゲームを決める速度では人間側に軍配が上がるのだ。《サリアの副官》が2枚同時に《集合した中隊》から展開される様を想像してみてほしい。

 また、《サリアの副官》が戦場に出てその能力が誘発したタイミングで《集合した中隊》を唱えることによって、副官含むすべての人間にカウンターが乗るようにするプレイングは基本テクらしく、フィーチャーマッチでもそれを行うプレイヤーの姿を見ることがあった。しっかり覚えておこう。

 使い方としては、軽量で優秀な人間を展開し、各種命令でサポートしてやりながらビートダウンするというシンプルなものではあるが、それゆえに奥が深いものとなっている。あっという間にライフを削り切るデッキだが、決して速攻デッキというわけではない。1~2ターン目は土地を置くだけなんてこともザラだ。

 慌てず騒がず、最大効率で20点削り切る展開をイメージしながらプレイすれば、世界の頂点を争うプレイヤーが生み出した珠玉のビートダウンの恩恵にあずかることができるかもしれない。本当にシンプルにしてディープなデッキなので、使うという人は寝る前の一人回しを毎日欠かさずに。《変位エルドラージ》を入れるか否か、また同型をどう戦うか、やり込み甲斐のあるデッキなのは間違いない!

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