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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:青単プリズン(スタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:青単プリズン(スタンダード)

by 岩SHOW

 グランプリ・ミネアポリス2016およびグランプリ・マンチェスター2016が5月最後のグランプリとして開催され、どちらも(細部は異なるとは言え)「緑白トークン」デッキの優勝で幕を閉じた。プロツアーにより形成された現環境、多様性に溢れていることが話題となった環境初期より一歩進んで、勝ち残るデッキは絞り込まれてきたように思う。

 TOP8デッキリストを見て「う〜ん同様のデッキばかり勝ってるなぁ〜刺激的なデッキが見たいのになぁ」と思っているそこの君。視野を拡げてみよう! TOP8からTOP16、TOP32へと......例えば今回のマンチェスターの場合、1696名のプレイヤーが参加している。その中で上位32位に名を連ねることは決して容易なことではなく、TOP8との勝ち星の差も1つ2つほど。結局はその差が決定的な差にはなるわけだが、そのラインまでたどり着けるデッキだということも確かだ。

 個人的にはこのTOP8まであとわずか及ばずなデッキ群を見るのが楽しみだ。底引き網にかかった、未知の魚を見るかのようで......今日もそんなデッキを1つ紹介したい。グランプリ・マンチェスター2016であのデンマークの若きエース、マーティン・ミュラー/Martin Mullerが使用して25位に入賞、500米ドルを勝ち取ったデッキがこの「青単プリズン」だ!

Martin Muller - 「青単プリズン」
グランプリ・マンチェスター2016 25位 / スタンダード (2016年5月28〜29日)[MO] [ARENA]
24 《

-土地(24)-


-クリーチャー(0)-
4 《プリズムの指輪
4 《予期
4 《収まらぬ思い
4 《水撃
3 《一日のやり直し
4 《岸の飲み込み
4 《ジェイスの聖域
4 《熟読
4 《水の帳の分離
1 《潮からの蘇生

-呪文(36)-
4 《ヴリンの神童、ジェイス
4 《氷の中の存在
2 《侵襲手術
4 《否認
1 《変位の波

-サイドボード(15)-

 現代マジックではおよそ考えられない、《》24枚から始まる異形のデッキリスト。採用されている呪文も、スタンダードでは見かけることがないものばかりだ。こういう時はお約束の、「役目別にカードを分ける。」これによりデッキの全貌を把握しにかかろう。

(1) 生き延びるためのカード:《水撃》《岸の飲み込み》《プリズムの指輪

 文字通り、自身のライフが0にならないようにするためのカード。トークンデッキなど面で攻めるデッキ相手の《水撃》は下手な除去よりも生き延びるターンを伸ばしてくれる上に、1ドローもついており手札が減らない。

 同じように並んだクリーチャーに対抗するには《岸の飲み込み》が強烈。4ターン目に唱えてもこのデッキなら《》が4枚並んでいるので、タフネス4以下のクリーチャーを全て手札に戻してしまえる。おまけにこんな能力の割にインスタントなので、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》のようなソーサリーでは対処できないアタッカーもシュバッと流し去ってくれるのが頼もしい。

 《プリズムの指輪》はリミテッドでも使うことがないので「こんなカードスタンダードにあったっけ?」感が拭えないが、これらの生き延びる呪文と後述のドロー呪文を連打していれば、モリモリとライフを回復させてくれることだろう。2枚3枚と並べば、最初は笑っていた対戦相手も青ざめてくること間違いなし。


(2) ドロー&サポート:《予期》《収まらぬ思い》《熟読》《一日のやり直し》《ジェイスの聖域

 このデッキを形成する、最も多いカードがドロー呪文だ。《予期》《収まらぬ思い》《熟読》でしっかりと土地と生き延びるためのカードを引き込んでいく。頃合いを見たら《一日のやり直し》で手札を大量チャージ&薄くなったライブラリーを修復。《岸の飲み込み》でクリーチャーをどっちゃり戻してこれで手札シャッフルとかやると気持ち良さそうだ。

 これらのドロー呪文と生き延びるための呪文をサポートするのが《ジェイスの聖域》だ。インスタントとソーサリーのコストを1マナ軽くし、それらを唱える度に占術1のオマケをつけてくれる。これを貼り、ドロー呪文を連打して《水撃》《岸の飲み込み》を何度も唱えて《プリズムの指輪》でライフを回復し、それらの呪文を《一日のやり直し》で何度も使いまわす。対戦相手がゲームに勝てない状態を作り出すのだ。


(3) フィニッシャー:《水の帳の分離》《潮からの蘇生

 上記の、いわゆる嵌めパターンに持ち込んだ後に勝負を決めるのがこれらのカード。《水の帳の分離》を覚醒で連打し、相手にターンを渡さぬまま無人の荒野を6/6が走り抜ける。《潮からの蘇生》はゾンビを20体くらい生み出して一度のアタックで勝負を決めてくれることだろう。いずれにせよ、完全に相手が無抵抗になった状態で攻勢を仕掛けるため、この枠は合計5枚に抑えられている。大事なのは、これらを唱えるまでの戦場作りである。


 というわけで、現スタンダードのどのデッキとも異なるアプローチで勝利を目指すデッキとなっている。対戦相手の行動を封じることに全力を注ぐデッキを昔から「プリズン」と呼んだ。牢獄(Prison)に閉じ込めるかのようなデッキ、ということだ。《冬の宝珠》のような土地を縛り上げるカードが多かったマジック黎明期では有力なデッキタイプであったが、近年ではそのようなカードが意図的にデザインされていないこともあってその姿を見ることはなかった。この2016年に、土地を封じるのではなく対戦相手のクリーチャーによる勝利を奪う、というアプローチで「プリズン」が還ってくるとは、誰も想像できなかったんじゃないだろうか。

  ほとんどのデッキがクリーチャーによる勝利を目指す今のスタンダードには向いているデッキであると言えるが、注意したいカードもある。《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》や《死の宿敵、ソリン》だ。このプレインズウォーカー、こちらがクリーチャーを出してこずライフも詰めてこないデッキであるため、ニクシリスは[+1]能力を連打してドローするたびにライフを失う[-8]能力を、ソリンは[+1]能力でのライフ直接喪失を目指してくることだろう。

 これらのプレインズウォーカーと相対すると、悠長に構えている時間がなくなってしまうので......黒いコントロール系のデッキを相手にした時は《潮からの蘇生》を積極的に唱えてプレインズウォーカーへのプレッシャーを盤面にしっかりと展開する必要があるんじゃないかなと。むしろこれの枚数を増やして、盤面でも勝利することを目指す調整を施しても良いかもしれない。ただし、そうなると墓地をリセットする《一日のやり直し》と噛み合わなくなって......うーむ、なんとも難しい。このデッキで上位に食い込んだミュラー君の腕前に、ただただ感嘆するばかりで......なぜこのデッキを使おうと思ったのか、いつか本人に聞いてみたいね。

※編集より:《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》《一日のやり直し》に関する挙動の記述で誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

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