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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:過ぎ去った季節コントロールとフローレス・ブラック(スタンダードと大昔のスタンダード)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:過ぎ去った季節コントロールとフローレス・ブラック(スタンダードと大昔のスタンダード)
by 岩SHOW
フィンケル閣下、隆盛。このプロツアー2015〜2016シーズンにて、プロツアー『戦乱のゼンディカー』でTOP8入賞したジョン・フィンケル/Jon Finkel。世界で一番有名なマジックプレイヤーと言っても過言ではない殿堂顕彰者である彼が、同シーズン2度目のTOP8入賞という偉業を成し遂げた。
プロツアー『イニストラードを覆う影』にて、フィンケル閣下(英語圏ではプレイングミスをしない機械のようであるとして、「フィンケルトロン」というあだ名が用いられることがある)と呼ばれるがゆえんを見せつけるプレイングで着実に勝ち星を重ね、気がつけば予選1位抜け。今回彼が見せつけたのは、その実力だけでなく実に「フィンケルらしい」デッキ。彼のスタイルにバッチリ噛み合った、まさしく王者のデッキ「過ぎ去った季節コントロール」をまずはご覧いただこう。
12 《沼》 5 《森》 4 《風切る泥沼》 2 《ラノワールの荒原》 3 《進化する未開地》 -土地(26)- 2 《巨森の予見者、ニッサ》 2 《ゲトの裏切り者、カリタス》 -クリーチャー(4)- |
2 《強迫》 1 《死の重み》 4 《闇の掌握》 2 《精神背信》 2 《究極の価格》 4 《骨読み》 3 《破滅の道》 1 《無限の抹消》 4 《衰滅》 4 《闇の誓願》 2 《過ぎ去った季節》 1 《ニッサの復興》 -呪文(30)- |
1 《ゲトの裏切り者、カリタス》 3 《死の重み》 2 《強迫》 3 《帰化》 1 《翼切り》 1 《究極の価格》 2 《悪性の疫病》 1 《無限の抹消》 1 《護法の宝珠》 -サイドボード(15)- |
プロツアー生放送でも実況・解説者も視聴者もみんなで大興奮したこの黒緑のヘビーコントロールは、構成自体は至ってシンプル。除去と手札破壊で覇権を握ったら、《闇の誓願》からサーチした《ニッサの復興》でマナを伸ばし、《過ぎ去った季節》を唱える。墓地から0〜6マナのカードを各1枚ずつ拾い集めて大量アドバンテージ獲得。《過ぎ去った季節》はライブラリーの底へと送られるが、これを《闇の誓願》で引きずり出す。この2つの呪文をぐるぐるしているうちに手に入れた圧倒的な物量差で、対戦相手のすべての戦略を否定する。
フィニッシャーは《ゲトの裏切り者、カリタス》《巨森の予見者、ニッサ》《風切る泥沼》と必要最小限にとどめてあり、これらも純粋なフィニッシャーというよりは墓地対策・ライフ回復・カードアドバンテージ獲得・マナ基盤と別の役割を兼用するカードである。これらで殴り勝つよりは......クリーチャーは除去され続け、フィニッシャーは除去っても何度も出てくる、そういう状況を生み出す《過ぎ去った季節》が唱えられた時点で相手の心が折れて投了、というケースの方が多い(実際、プロツアーのフィーチャーマッチでもライフを削り切るマッチは少なかった)。
このデッキは《闇の誓願》がキーカードで、ここから状況に合った《衰滅》などの除去、前述の《ニッサの復興》及び《無限の抹消》のような1枚挿し呪文や、《過ぎ去った季節》というフィニッシャーに繋げる動きが肝である。
状況に適したものをデッキから探してきて戦う。吸血鬼に効果覿面な銀の銃弾になぞらえて、「シルバーバレット」と呼ばれる戦術を搭載したデッキは美しいものだが、大量に《沼》を並べてサーチカードを唱えて......となるとなおのこと。しかも使用者がフィンケル閣下とくれば......
15 《沼》 2 《産卵池》 4 《リシャーダの港》 2 《黄塵地帯》 -土地(23)- 3 《走り回るスカージ》 2 《ファイレクシアの抹殺者》 2 《走り回る怪物》 1 《ストロームガルドの陰謀団》 1 《のたうつウンパス》 -クリーチャー(9)- |
4 《暗黒の儀式》 4 《強迫》 4 《吸血の教示者》 4 《不純な飢え》 4 《ヨーグモスの意志》 1 《仕組まれた疫病》 1 《非業の死》 1 《呆然》 2 《暴露》 1 《撲滅》 1 《虐殺》 1 《迫害》 -呪文(28)- |
2 《ファイレクシアの抹殺者》 1 《ストロームガルドの陰謀団》 2 《急速な衰微》 1 《火薬樽》 1 《スランのレンズ》 2 《仕組まれた疫病》 1 《非業の死》 1 《ファイレクシアの処理装置》 1 《呆然》 1 《撲滅》 1 《虐殺》 1 《暴露》 -サイドボード(15)- |
「フローレス・ブラック」を思い出すのも自然の流れ。彼がこのデッキを使っていた時は、間違いなく「フィンケルの季節」真っ只中。このデッキでアメリカ選手権2000にて優勝した後、世界選手権2000にて堂々の優勝と、プレイヤーとして脂の乗った時期であった(この頃のフィンケルは強かったな、なんて振り返るのも過去の話。現在進行形で強いのだから......)。
「フローレス・ブラック」はサイドボードに積むような《ストロームガルドの陰謀団》《非業の死》《仕組まれた疫病》といったカードをメインに搭載している。これらをマジック史でもトップクラスの強力サーチカード《吸血の教示者》でサーチしてくるわけだ。当時メタゲーム上に存在した「補充」「ストンピィ」といったデッキを薙ぎはらうのに適したこれらのカードでバックアップしつつ、《走り回るスカージ》《ファイレクシアの抹殺者》ら優秀な低マナ域のクリーチャーで殴りきる、というのがデッキの狙い。伝説のデッキビルダー、マイク・フローレスが手がけたためこの名で呼ばれる。
「フローレス・ブラック」にも《過ぎ去った季節》枠は存在する。《ヨーグモスの意志》だ。たった3マナで墓地のカードがそのターン中使い放題になるこのソーサリーは、《暗黒の儀式》と合わせることでその3マナというコストを帳消しにするどころかマナ加速となり、除去されてしまったクリーチャーやすでに使用した除去・手札破壊の再利用を可能にする驚異のアドバンテージエンジンであった。当時は純粋にこのカードの爆発力を楽しんでいたが、今振り返るとブチギレずに相手してくれていた友人らには感謝の言葉しかない。ここまで「極悪」と言い切れるカードもなかなか無いだろう。
カードパワーは随分落ち着いたとは言え、《過ぎ去った季節》から《強迫》《闇の掌握》《破滅の道》《衰滅》《闇の誓願》《ニッサの復興》と回収する様は、それこそ過ぎ去った在りし日々・かつてのスタンダードの光景を思い起こさせる。現代に蘇った「フローレス・ブラック」、フィンケルが好きなら・アドバンテージを稼ぎまくるのが好きなら、使わない手はない。
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