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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ジャンド・ミッドレンジ(スタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ジャンド・ミッドレンジ(スタンダード)

by 岩SHOW

 『アラーラの断片』と『タルキール覇王譚』は、ともにマジックに新たな概念をもたらしたセットである。「断片」と「氏族」が、それぞれ3色のデッキにしかるべき呼び名を与えたのである。これらのセットが登場したことで、過去のクリーチャーから名前を拝借して「インテットカラー」「ドランカラー」などと呼ばずに済むように......今ではそれらは「ティムール」「アブザン」と簡潔に記述することができるようになった。何でもわかりやすくなるのは良いことだ。

 それら3色の組み合わせで、近年メキメキと頭角を現していたのは「ジャンド」だ。赤緑黒と、攻撃的・破壊的な色の組み合わせは、マジック生誕から長らく、他の3色に比べると活躍したデッキが圧倒的に少なかった。転機となったのは『アラーラ再誕』。《血編み髪のエルフ》《瀝青破》という強力な続唱カードの登場で、元来有していた《荒廃稲妻》《芽吹くトリナクス》といったアドバンテージを得られるカードが活き、《野生語りのガラク》《若き群れのドラゴン》といったパワーカードと併せて作られた中速コントロールデッキ「ジャンド」はスタンダード環境でとにかく暴れまわったものだ。

 この赤緑黒の3色デッキが、久々にスタンダードに還って来たのだから、緑黒の中速デッキ大好きおじさんの僕としては見逃せるはずもなく...今日紹介するのはStarCityGames.com Standard Openで二日目進出・最終順位22位となったDarryl Donaldsonの「ジャンド・ミッドレンジ」だ!

Darryl Donaldson - 「ジャンド・ミッドレンジ」
StarCityGames.com Standard Open ボルティモア 22位 / スタンダード (2016年4月9〜10日)[MO] [ARENA]
4 《
3 《
4 《
3 《燃えがらの林間地
2 《獲物道
2 《燻る湿地
2 《凶兆の廃墟
4 《風切る泥沼
2 《溺墓の寺院

-土地(26)-

4 《森の代言者
2 《不屈の追跡者
1 《巨森の予見者、ニッサ
2 《ゲトの裏切り者、カリタス
2 《野生生まれのミーナとデーン
2 《ギトラグの怪物
1 《ゴブリンの闇住まい

-クリーチャー(14)-
3 《焙り焼き
2 《究極の価格
3 《苦い真理
3 《光輝の炎
2 《破滅の道
3 《アーリン・コード
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス
3 《炎呼び、チャンドラ

-呪文(20)-
2 《ゴブリンの闇住まい
3 《精神背信
2 《無限の抹消
2 《知恵の拝借
2 《餌食
1 《ムラーサの胎動
1 《悪性の疫病
1 《衰滅
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス

-サイドボード(15)-
StarCityGames.com より引用)

 土地・クリーチャー・プレインズウォーカーにサイドボード......積極的に新セット『イニストラードを覆う影』のカードを採用して作られている。まずは新カードの中から、このデッキのカードチョイスに最も影響を与えているであろう《ギトラグの怪物》と、それとシナジーを形成するカードを見てみよう。

 《ギトラグの怪物》は5マナ6/6接死と、フィニッシャーとして申し分のないスペックを持っている。多色の伝説のクリーチャーであるとはいえ、この破格のボディを維持するには代償が必要で......アップキープが来るたびに土地1枚という餌を要求してくる。土地を生け贄に捧げて維持するのは苦しいが、その代わりにこの怪物ガエルはあなたの土地がいずれかの領域から墓地に置かれるたびに、1枚ドローを献上してくれる。結構律義なやつなのか、あるいはこのカエルが荒らしつくした地からコントローラーが遺留品を拾い上げているのか......いずれにせよ、土地1枚をドローに変換してくれると考えれば、それほどデメリットというわけでもなく、メリットとして活きてくることの方が多い。そうやってドローしたカードが土地だった場合でも、各ターンに戦場に出すことができる土地の枚数を1枚増やしてくれる能力も持っているので、手札が土地でパンパンで困るという状況にもならないだろう。

 この土地を喰らうカエルと相性が良いのが、同セットでデビューした《溺墓の寺院》。無色マナしか生み出せないが、3マナ払えば墓地から戦場に戻ってくる。これをカエルの維持コストに使い、1枚ドロー。状況にあったカードを引ければそれを唱え、そうでなければ対戦相手のターンエンドにでも3マナ払って《溺墓の寺院》を戻す、という動きを繰り返せば、ほぼ損失なく毎ターン追加ドローを得ているようなものだ。

 さらに、この《ギトラグの怪物》の能力を活かすのが《野生生まれのミーナとデーン》。このエルフたちも追加で置ける土地の枚数を伸ばすし、その起動型能力で6/6接死に加えてトランプルまで与えて、《ギトラグの怪物》の攻撃がより対戦相手に通りやすくしてくれる。

 これらのカードが土地を墓地や手札から戦場に出しまくるおかげで、これまた新カード《不屈の追跡者》が大ハッスル。大量の手掛かり・トークンを提供し、ドローを伸ばして自身もパワーアップ。このカードも《野生生まれのミーナとデーン》が闘魂注入(トランプル付与)してやることで立派なフィニッシャーとなる。《ギトラグの怪物》を中心に形成されたシナジーが、リストを見ているだけでニマニマできるレベルの美しさだ。

 他のカードは中軽量のクリーチャーに除去にドローに......と、中速ビート・コントロールらしい面々が並ぶ。《アーリン・コード》がこのデッキでどれだけ機能したのか、それが最も気になるところだ。

 狼・トークンを呼び出しクルっと変身、3点のダメージを与えてまた人間に戻って、と繰り返す動きは、ハマれば地獄を生み出すことだろう。人間の面の[+1]能力で、《ギトラグの怪物》が8/8速攻警戒接死で突撃しつつ、その横でミーナとデーンがヒャッハー待機......一度はこんなブン回りムーブを決めてみたいッ! プロツアーでこれら新カードがフィーチャーマッチで暴れまわるのか、要注目だ!

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