岩SHOWの「デイリー・デッキ」：白単人間（スタンダード）

by 岩SHOW

　新シーズン到来！スタンダードが２ブロック制に移行してからの、初のローテーションを迎えた。現在使用可能なセットは『タルキール龍紀伝』『マジック・オリジン』『戦乱のゼンディカー』『ゲートウォッチの誓い』そして『イニストラードを覆う影』の５つ。『イニストラードを覆う影』参入後の最初のビッグトーナメント、StarCityGames.com Standard Openにて活躍したデッキを、早速見てみよう。

　ご覧の通り、白単色のビートダウンデッキ「白単人間」だ。前環境ではビートダウンデッキも２色・３色で強いカードを詰め込むのが当たり前、４色も問題なく運用されるという割と何でもありな環境であったため、そもそも単色のデッキを使うメリットというものがほとんどなかった。しかし『タルキール覇王譚』『運命再編』が抜けたことで一変、マナベースや多色のカードは弱体化し、色事故を起こさない単色でデッキを組めることは大きなメリットとなったようである。624人参加のトーナメントで、このデッキが決勝まで駒を進めた事実がそれを物語っているだろう。

　ここに来て人間という部族がフィーチャーされたのは、《サリアの副官》という新人の登場があったからだ。初代『イニストラード』では《教区の勇者》を初めとする人間とシナジーを形成するカードが多数収録され、それ以外の闇の勢力に結束して対峙する人間の姿を描いていた。今回のイニストラードでも、力を取り戻した闇の勢力・そして人を守護する側から狩る者へと変貌したアヴァシンら天使たちに立ち向かう人間達がカード化されており、それらの人間を強化するのが《スレイベンの守護者、サリア》の副官であるというわけだ。圧倒的に不利な立場だが、人間達も生きることを諦めたわけではない！ この副官は他の人間を＋１/＋１カウンターで励まし、自身も後続の人間に励まされてサイズアップする、実に指揮官チックなデザインである。

　この指揮官役に付き従うは《ドラゴンを狩る者》《探検隊の特使》《アクロスの英雄、キテオン》といった、すでに前スタンダード環境より導き手を待っていた者と、《スレイベンの検査官》《町のゴシップ屋》といったイニストラードの住人。《サリアの副官》の追加枠として《領事補佐官》も採用されており、１マナの人間を展開し２マナの人間で強化する、という役目がハッキリしているクリーチャー陣だ。

　これらをサポートする白の呪文は《石の宣告》《停滞の罠》の除去枠と、《永遠の見守り》《グリフの加護》のクリーチャー強化呪文と、これまた単純明快なもの。相手のクリーチャーをどかして、自身のクリーチャーを強化して殴るというプランがこれ以上になくわかりやすいデッキである。《グリフの加護》で飛行を得た《サリアの副官》で突然の空中戦に持ち込んで勝利、なんてことも多々あるだろう。

　ここまで人間の結束をフィーチャーしたデッキだが、そのコンセプトと真逆のカードが採用されているのも面白い点だ。メインとサイドで合計３枚採用されている《ウェストヴェイルの修道院》がそれだ。人を喰らう大悪魔《不敬の皇子、オーメンダール》という人類の天敵を呼び出す動きは、同じタイプのビートデッキで地上クリーチャーの睨み合いなった際にはこの上なく効果的。《永遠の見守り》で警戒なんて得た日には世界が終わる。

　自身の手で勝利を勝ち取るのか、自ら身をなげうって禁断の悪魔を呼び出すのか、人類の未来は君(プレイヤー)の選択にかかっている。