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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:青赤緑スレッショルド(レガシー)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:青赤緑スレッショルド(レガシー)
by 岩SHOW
1943。何の数字かわかるかな? グランプリ・京都2015の参加者数だ。国内では2000を超える参加者数が当たり前となってきた昨今。1943人はさして驚くほどの数字でもない......が、このグランプリのフォーマットがレガシーだとしたら、手のひらを返して「多いなぁ」とつぶやかざるを得ない。国内のレガシートーナメントでも300人近く集まるのは当たり前になってきてはいたが、さすがはグランプリだ。
もちろん、海外からも京都観光を兼ねて多数のプレイヤーが参戦していたので、日本にこれだけのレガシープレイヤーがいるというわけではない。それでも、2000名近いプレイヤーが一堂に会してレガシーをプレイしたという事実は、日本に住まう、いちレガシープレイヤーとしては嬉しい限りだ。(最近はほとんどプレイできていないが......)
アメリカではこの倍にも及ぶ参加者が集まるレガシーのグランプリだが、その最初の大会は? グランプリ・フィラデルフィア2005がそれで、史上初のレガシーグランプリに集ったプレイヤーは......わずかに495名。今の感覚からすれば、とてもグランプリとは思えない規模ではあるが......11年経てば、大きくなるものだなぁほんと。「Graveyard Week」最終日の今日は、このレガシー的始まりのグランプリのTOP8からデッキを紹介しよう!「青赤緑スレッショルド」だ!
2 《島》 4 《Tropical Island》 4 《Volcanic Island》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 -土地(18)- 4 《敏捷なマングース》 4 《熊人間》 2 《巣立つドラゴン》 -クリーチャー(10)- |
4 《渦まく知識》 4 《血清の幻視》 4 《留意》 4 《稲妻》 4 《対抗呪文》 4 《目くらまし》 4 《火 // 氷》 4 《Force of Will》 -呪文(32)- |
2 《トーモッドの墓所》 2 《赤霊破》 1 《紅蓮破》 4 《紅蓮地獄》 3 《帰化》 3 《冬の宝珠》 -サイドボード(15)- |
墓地を活用する方法は、何もクリーチャーを釣り上げたりするのみじゃない。軽い呪文を大量に唱えて墓地を7枚以上にし、スレッショルド能力の条件を満たす、という活用の仕方もある。この「青赤緑スレッショルド」のデッキリストの、美しいこと。4枚×7で構成された呪文群には惚れ惚れするばかり。
これらのクリーチャーでない呪文を、唱えられるマナ・コスト別に分けてみると......1マナが16枚、2マナが8枚、そして0マナが8枚! 土地の枚数はわずか18枚のデッキだが、初手に土地が1枚でもあればこれらの呪文を運用するのは容易い。特に1マナのドロー呪文12枚があれば、2枚目の土地を探してくることなどお安いご用だ。
《敏捷なマングース》《熊人間》を戦場に出したら、後はこれらの呪文を唱えて手札を整え、相手のクリーチャーは《稲妻》《火》で焼き、相手のアクションは《目くらまし》《Force of Will》のピッチカウンター(※1)で弾く。そうこうしている間に墓地が7枚以上貯まると、かわいいマングースや大人しいドルイドは、猛獣へと変貌する。パワーが上昇したクリーチャーで殴って、ゲームが序盤のうちに勝負を決めてしまおうというデッキだ。こういった手数で攻めることを、マジックでは「テンポが良い」などの言葉で表現する。
(※1:《目くらまし》は{1}{U}の呪文ではあるが、テキストに書かれているように《島》を1枚手札に戻すことでマナ・コストを支払わずに唱えることができる。こうした、マナでない代替コストで唱えられる呪文を俗に「ピッチスペル」と呼ぶ。このデッキでも使われている《Force of Will》と《目くらまし》のピッチカウンターは、クリーチャーを展開して土地がタップ状態になってしまっても相手の呪文を打ち消せる、超強力な呪文である。)
このデッキを使用し栄えあるレガシーグランプリ最初のTOP8に勝ち残ったPat McGregorは、「このデッキにおける《火 // 氷》は重すぎるカードだったかもしれない」と言ったほど、とにかくデッキを軽く作ることに注力したようだ。その反面、このデッキでは避けたい土地を複数枚引いてしまった場合や、相手の粘りにより中盤戦に突入してしまった場合に備えて、4マナの《巣立つドラゴン》を2枚だけ採用している。これが最高にシブくて、僕はこのデッキリストがはっきり言って大好きである。スレッショルドすれば、4マナで《シヴ山のドラゴン》を呼び出せるというのは破格だ。クリーチャー性能が飛躍的に向上した現在の4マナドラゴン《雷破の執政》も裸足で逃げ出すスペックだ。......もちろん、墓地が7枚未満の時はリミテッドでも弱いレベルの性能ではあるんだが。
このデッキの目指すコンセプトはそのままに、《不毛の大地》《もみ消し》で相手のマナを縛り、後のセットで手に入った《タルモゴイフ》を使用してより骨太なクリーチャー陣で戦えるようになったデッキが「カナディアン・スレッショルド」。さらに強力な1マナクリーチャー《秘密を掘り下げる者》を手に入れてさらに一段階進化したデッキが「ティムール・デルバー」と呼ばれ、長きに渡り青赤緑のデッキは愛され続けてきた。
このデッキの最大の弱点は、一度失ったカード・アドバンテージを回復することが非常に難しいところ。《Force of Will》などでむしろこれを放棄してでも、テンポ面でのアドバンテージを取りに行くデッキだ。そのテンポ戦略で押し切れなかった場合、カードパワーは往々にして相手の方が高く、さっきまで一方的に攻め立てていたのに途端にガス欠→これらに踏み潰されてしまう、という展開での負けが多い。
しばらくは人気のデッキタイプであったが、現在のレガシー環境には対応できず、色を緑から黒に変更し、溜めた墓地は《グルマグのアンコウ》の餌にするという、スレッショルドとはまた違った新しい形のデッキが主流となっている。11年も経てば、トーナメント規模もデッキも様変わりするものだね。現代から見ると骨董品のようなデッキリストではあるが、それゆえに美しく見えるもの。いつの日か、このリストを化石を見るように眺める少年たちの前に、対戦相手として座ってみたいものだ。"リアルレガシーおじいちゃん"とかあだ名をつけてもらえれば、光栄である。
さて、今週は「Graveyard Week」とテーマを設定して、墓地ありきのデッキを5つ、紹介してきたが......どのデッキも、マジックにおける領域というものをフル活用している感があって実に良い。こういった墓地活用デッキを使用する際、気を付けてほしいことが1つ。スタンダードとモダンでは、墓地に置かれたカードを使いやすい・分かりやすいように並べ替えるのはOK、しかしレガシーやヴィンテージでは、カードは墓地に置かれた順に並んでいなければならない。これらのフォーマットにおいては、墓地にあるカードの並びを参照するカードが使用可能であるためだ。
自分が遊ぶフォーマットのルールをきっちり把握して、良き墓地ライフを! 墓地対策にピリピリしない精神も大事にね!
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