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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:HexDepths(レガシー)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:HexDepths(レガシー)
by 岩SHOW
「愚直」という言葉が好きだ。
[名・形動]正直なばかりで臨機応変の行動をとれないこと。また、そのさま。ばか正直。(『goo国語辞書/デジタル大辞泉』より引用)
真っすぐに、ひたすら真っすぐに。不器用で、愚直にビートやコンボを仕掛けるデッキが好きだ。相手がどれだけ除去を撃って来ようがクリーチャーを展開し、打ち消し呪文を握っていようがいまいがキーカードを叩き付ける。ボディーブローを打ち続けてればいつかKOできるだろう的な。これらの戦略がもたらす、ガードをこじ開けた時の爽快感といったら。マジックでしか味わえない甘美な瞬間というのは確実に存在する。
本日紹介するデッキも、馬鹿正直に真っすぐに、1つの目標を成し遂げその瞬間を味わうデッキだ。先月末に開催された「Bazaar of Moxen Madrid Legacy」にてMario Chicaが使用しTOP4に輝いた「HexDepths」だ!
2 《Bayou》 2 《Tropical Island》 1 《Underground Sea》 3 《新緑の地下墓地》 3 《汚染された三角州》 2 《真鍮の都》 4 《暗黒の深部》 4 《演劇の舞台》 4 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 1 《セジーリのステップ》 -土地(26)- 4 《吸血鬼の呪詛術士》 -クリーチャー(4)- |
3 《水蓮の花びら》 3 《モックス・ダイアモンド》 4 《渦まく知識》 4 《輪作》 4 《思考囲い》 2 《強迫》 2 《コジレックの審問》 3 《森の占術》 2 《森の知恵》 3 《この世界にあらず》 -呪文(30)- |
3 《真髄の針》 3 《外科的摘出》 2 《狼狽の嵐》 2 《呪文貫き》 3 《突然の衰微》 1 《クローサの掌握》 1 《Karakas》 -サイドボード(15)- |
Bazaar of Moxenとは、ヨーロッパの各国でマジックのトーナメントを主催する団体および大会のことで、《Bazaar of Baghdad》と《Mox Pearl》をはじめとする各種モックスからつけられたその名でお分かりの方もいることだろう、元々はヴィンテージとレガシーのお祭りだったが、最近ではスタンダード・モダン・シールド・統率者戦関連のイベントも開催され、グランプリの主催も行っている、ヨーロッパのマジックシーンを語る上で目が離せないトーナメント・団体だ。
スペインはマドリードで開かれた同大会のレガシー部門には136名のプレイヤーが集い、熱戦を繰り広げた。このトーナメントのTOP8デッキリストを見ていると......愚直なのがあるじゃないかと。「HexDepths」というデッキ名は、このデッキが愚直に狙うコンボを形成するパーツ、《吸血鬼の呪詛術士》《暗黒の深部》の英名からとったもの。
《暗黒の深部》は本来、合計30マナ支払って氷カウンターを10個取り除いて、ようやく20/20飛行・破壊不能の「マリット・レイジ」トークンを戦場に出すのだが、《吸血鬼の呪詛術士》の能力を使えば、一瞬にしてこの氷カウンターを取り除くことができ、氷河の奥底に眠る荒ぶる邪悪の女神を地表に降臨させることが可能となる(余談もいいところだが、彼女を崇めているアブナイ集団が《Brine Shaman》である。)。この20/20トークンをもって一撃で勝利する、これがこのデッキの狙いだ。
《吸血鬼の呪詛術士》が収録された『ゼンディカー』発売以降より存在するデッキであり、『ギルド門侵犯』では《演劇の舞台》という新コンボパーツを獲得し強化された。《演劇の舞台》の能力で《暗黒の深部》のコピーになると、氷カウンターが0個の状態で即生け贄に捧げられるというわけ。
最近では呪文を使用しないため妨害されにくいこちらを主軸にした、30枚以上の土地で戦うデッキ「Lands」が広く使われるようになっていたが......このデッキでは、「Lands」デッキの「相手のマナを縛り、隙を突いてコンボを決める」という姿勢とは相反する「とにかくコンボを連打する」という愚直も愚直、大愚直なコンセプトでデッキが組まれている。
上記の「マリット・レイジ」降臨コンボを決めることだけに特化したこのデッキ、コンボパーツ以外の構成要素は、アーティファクトのマナ加速・黒の手札破壊・緑の土地サーチ・そして3色目の青はまさかの《渦まく知識》のみ!と、なかなか斬新な構造になっている。
土地サーチは《森の占術》と《輪作》で、このデッキの場合特に《輪作》が良い仕事をする。コンボパーツを持ってくるのはもちろんのこと、コンボ成立後は《セジーリのステップ》をインスタントタイミングで出すことができ、これが与えるプロテクションにより「マリット・レイジ」を対戦相手の《剣を鍬に》などから守護することが可能ッ。
また青のカードが《渦まく知識》しかないため、もちろんのこと《Force of Will》が使えないわけだが、《セジーリのステップ》とともにその代役を担うのが《この世界にあらず》。パワーが7以上のクリーチャーに飛んでくる呪文や能力を、マナの支払い無しで打ち消すことができる無色呪文だ。能力すら打ち消せるので、白いデッキには標準装備であり我らが狂乱の女神の天敵である、《Karakas》の伝説のクリーチャーをオーナーの手札に戻す能力からも守護できてしまうのは素晴らしい。
《渦まく知識》は浮いて見えるが、今のレガシーではこのカードを使わないのはもはやハンデだとまで言われるほどの強力なドロー呪文であり、かつ《セジーリのステップ》という絶対に手札に来てはいけないカードをライブラリーに戻すことができるという点を買っての採用だろう。個人的にはここまでくると《ボジューカの沼》なんかもサイドに取りたくなるが、そこはメタゲーム次第か。
最近のレガシーでは定番となっている「デッキに2つ以上の勝ち筋を仕込む」というセオリーに真正面から反発し、とにかく真っすぐに「マリット・レイジ」による圧殺を狙うこのデッキに、レガシーというフォーマットの奥深さ・醍醐味を改めて認識させられたのだった。
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