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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:Living End(モダン)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:Living End(モダン)

by 岩SHOW

 現プロツアー王者、ジャアチェン・タオ/Jiachen Taoは「青赤エルドラージ」でモダンの新たな時代を築いた。それまでとは似て非なる環境の担い手となったこのデッキ、他のエルドラージ・デッキを喰えるということはわかったが、じゃあ弱点は?誰もが気になるところだが、この質問にタオ自身がニコニコ生放送のインタビューで答えている。もっとも当たりたくないデッキは「Living End」である、と。

 エルドラージデッキは、手札のクリーチャーを全力で展開し圧殺するデッキだ。この盤面をリセットしつつ、一方的にクリーチャーを多数展開するコンボを持った「Living End」の名が挙がったのはなるほど納得。しかしサイドボードなどを改めて確認した後で「苦手と言っても結構戦えるんじゃないか?」という結論に僕ら日本の実況・解説チームは至った(スタッフディナーにて。実況をやり通した後のIPAビールは格別に美味い!)。このふんわりとした疑問に、デトロイト・ボローニャ・メルボルンの3か所同時開催のグランプリが解答を示してくれやしないか、そう願っていた。その願いは通じたようで...それも、日本を代表するプロプレイヤーである山本賢太郎・市川ユウキの2名がグランプリ・メルボルンのTOP8に残るという、最高の形で。両名が使用した75枚同一の「Living End」を、改めて見てみよう!

市川ユウキ - 「Living End」
グランプリ・メルボルン2016 3位 / モダン (2016年3月5〜6日)[MO] [ARENA]
2 《
1 《
1 《ドライアドの東屋
1 《草むした墓
1 《血の墓所
1 《踏み鳴らされる地
4 《新緑の地下墓地
4 《黒割れの崖
4 《銅線の地溝
1 《ケッシグの狼の地

-土地(20)-

4 《大爆発の魔道士
2 《猿人の指導霊
4 《意思切る者
4 《死の一撃のミノタウルス
4 《巨怪なオサムシ
4 《通りの悪霊
2 《叫び大口
2 《ジャングルの織り手

-クリーチャー(26)-
3 《死せる生
4 《悪魔の戦慄
4 《暴力的な突発
3 《内にいる獣

-呪文(14)-
4 《フェアリーの忌み者
2 《斑の猪
2 《オリヴィア・ヴォルダーレン
4 《鋳塊かじり
2 《叫び大口
1 《跳ね返りの罠

-サイドボード(15)-

 「Living End」は元々エクステンデッドで組まれていたもので、モダン制定当時から存在するコンボデッキだ。このデッキの目指すところは、『アラーラ再誕』に多く収録されている「サイクリング」能力を持ったクリーチャーをガンガン墓地に落とし込んだうえで《死せる生》を撃ってそれらを戦場に大量展開して殴り勝つというもの。

 マナ・コストを持たない《死せる生》は「待機」させて唱えることもあるが、ほとんどの場合《悪魔の戦慄》《暴力的な突発》など「続唱」呪文の能力で唱えることになる。続唱はそれを持つ呪文を唱えた時に誘発し、土地でない、その呪文よりも点数で見たマナ・コストが小さい呪文が出てくるまでライブラリーをめくり続け、その場でその呪文コストを支払わずに唱えるというもの。これでマナ・コストが設定されていなかろうが、問題なく唱えることができる。このコンボを確実に機能させるために、このデッキには3マナ未満の呪文はメイン・サイド合わせて《死せる生》しか入っていない、というのが最大の特徴。

 もともとクリーチャーを展開して正攻法を仕掛けてくる、いわゆるフェアデッキには滅法強いデッキではあった。《死せる生》は古の強力カード《生ける屍》のリメイクであり、本家同様に墓地のクリーチャーを戦場に戻すのみならず、戦場にいるクリーチャーは全て墓地に置かれてしまうのだ。この全体除去では、環境屈指の除去体制を誇る《現実を砕くもの》もお手上げだ。

 例え墓地対策されようとも、呪文の解決までたどり着けばエルドラージであろうが何だろうが一掃。時間を稼げたのなら、またサイクリングして状況を打破するカードを探しに行けばよい。《大爆発の魔道士》と《内にいる獣》で土地を潰す戦略を取れば時間も稼げる。うん、グランプリTOP8に2名という結果を見ても、やっぱり対エルドラージに強そうだ。2ターン目に《難題の予見者》から唯一の続唱呪文を追放されたり、1ターン目複数の《エルドラージのミミック》から2ターン目《現実を砕くもの》でガオォォォンとかされなければ、対等以上に渡り合えるだろう(まあまあされちゃうけどね......)。

 このグランプリでは香港のトッププロプレイヤー・モダンマスターとも呼ばれるリー・シー・ティエン/Lee Shi Tianも、この「Living End」を使用して決勝ラウンド進出を果たしており、合計でTOP8に3名のプレイヤーを輩出したデッキとなった。同日に開催されたグランプリ・ボローニャでもTOP8に1名が勝ち残り、この週末ではエルドラージ系に次ぐ勝ち組となった。

 この日本のトッププロ2名が使用したものと、他の2名が使用したリストの最も大きな違い、それはサイドボードに《オリヴィア・ヴォルダーレン》が2枚採用されているという点。

 「ジャンド」(※1)のフィニッシャーとして採用されることは度々あったこの伝説の吸血鬼。このデッキでは、サイド後のゲームで《大祖始の遺産》などの墓地対策を設置されても、それをあざ笑うかのように盤面を支配する別の勝ち筋として大いに活躍することだろう。相手の土地を《内にいる獣》で割って、ビースト・トークンを支配下に招き入れるとか、文字通りやりたい放題の大暴れで夢が広がる。こういう、既存のデッキにワンポイント加えて一段階上に引き上げ、しっかりと結果を残すっていうのが、プロの技なんだろうな。

(※1:赤黒緑の3色、またその色からなるデッキの総称。アラーラ・ゼンディカー期のスタンダードで一時代を築いた。モダンにおいてもパワーカードの詰め合わせデッキとして初期から活躍、特に《死儀礼のシャーマン》《血編み髪のエルフ》が使えた頃は、殴って良しコントロールして良しのモダン環境を代表するデッキだった。この2枚が禁止カードとなった後も、《タルモゴイフ》《ヴェールのリリアナ》《荒原の狩りの達人》《突然の衰微》《稲妻》といったわかりやすく強力なカードによって構成されたこのデッキは健在。)

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