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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

『Unstable』のスクラップ その3

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『Unstable』のスクラップ その3

Mark Rosewater / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

2017年12月11日

 

 先々週先週、『Unstable』のカード個別の話をしてきた。語るべき話はまだあるので、つまり、その3だ!


〈クラークのもう一本の親指〉》[UST]
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{2}

伝説のアーティファクト

あなたがサイコロを1個振るなら、代わりにそのサイコロを2個振り、その出目の1個を無視する。

// クラークは賭け事で親指を失い、すぐに「倍か0かだ!」と言って戻ってきたゴブリンだ。

 

 『ミラディン』で、私はコイン投げが有利になる《クラークの親指》[MRD]というカードを作った。

 デベロップはこれが複数あるときのことを危惧して、伝説のパーマネントにできないかと聞いてきた。私は、問題ないと答えた。そしてこれは〈ゴブリンの親指〉ではなく《クラークの親指》[MRD]になったのだ。その結果、内部ではクラークのもう一方の親指がどうなったのかに関して多くのジョークが生まれることになった。実際、当時我々はこれを2枚まで戦場に出せるようにするということも検討したのだが、そうするとコイン投げがあまりにも安定しすぎ、またコイン投げでゲームが決まるようにもしたくなかったので、これを通常の伝説のアーティファクトにしたのだった。

 そして『Unstable』のデザインの話になる。我々はサイコロをテーマとすることに決めていて、私はサイコロを操作する助けになるカードを加えたいと思っていた。ある会議の席で、私はサイコロに関する《クラークの親指》[MRD]のような何かが欲しいと発言した。その2秒後、私は叫んでいた。「クラークのもう一本の親指だ! クラークのもう一本の親指だよ!」

 このカードのもう1つの問題は、私はリミテッドでも意味があるようにするために低いレアリティにしたい一方で、これをクラークのもう一本の親指にするなら伝説のパーマネントにしなければならないということだった。私はしばらく考え、そしてアンコモンの伝説のカードの奇妙さよりもレアリティの意味のほうが大きいと結論を下した。(我々がこういうことをするのは稀だが、そのセットにおいて伝説のカードであることのほうが意味があるのが普通である。)


〈凄腕の忍者〉》[UST]
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{2}{B}

クリーチャー ― トロール・忍者

1/1

速攻

あなたの手札から凄腕の忍者を公開する:ターン終了時まで、凄腕の忍者は戦場にあり、あなたの手札にある。

{1}{B}:ターン終了時まで、凄腕の忍者は+1/+1の修整を受ける。

 

 これらの話の多くで、何度も出てくるテーマが存在する。過去の銀枠セットで成功した内容があるので、私はそれと似た、しかしひねりを加えた新しいものを『Unstable』で作った、というものだ。《〈凄腕の忍者〉》[UST]の場合、これの元になったカードはこれである。

 《〈もう一つの霊気の渦〉》[UNH]は、『Unhinged』での私の個人的なお気に入りのカードだ。これはデッキの軸にできるクールなことをするカードで、ジョニー的なクールなことをするカードだが、黒枠ルールでは扱えない程度に奇妙なカードなのだ。このカードは非常に好評で、私がもっとも多く質問を受けたカードだったので、新しいものを作ることに決めたのだった。

 《〈もう一つの霊気の渦〉》[UNH]はライブラリーと戦場の2つの領域に同時にカードを存在させるというものだった。違う組み合わせの領域でこれを再びする方法はあるだろうか。私は、ほとんどの処理が行なわれる場所である戦場を一方の領域にしたいと考えた。そして、最終的にもう一方の候補は手札と墓地に絞られた。私はそれらの両方をデザインした。墓地を使うほうは、最終的に《〈俺の屍を越えて〉》[UST]になったので、《〈凄腕の忍者〉》[UST]が「2つの領域に同時に存在する」カードということになる。

 手札と戦場の両方に同時に存在できるカードとは一体何か。おそらく、非常にこそこそしたものだろう。忍者はどうだろうか。我々は「戦場にもある」効果を何か簡単にできることにすることにして、公開することで起動できるようにした。これのクールなところは、これを初めて使った以降は奇襲効果がなくなるので、公開することはコストとなりうるというところである。

 我々はこれを1/1と小さくして、大きくするためにはいくらかのマナを支払わなければならないように、強化能力を持たせた。公開したターンに攻撃することができるように、速攻も持たせた。プレイテストの結果、このカードは黒枠ゲームでは通常見られないようなクールな瞬間を多く生み出すということがわかったのだ。


〈怪物化した接合者〉》[UST]
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{7}

アーティファクト・クリーチャー ― 構築物

3/3

対戦相手が呪文を唱えるたび、あなたは5秒の間にキーワードを1つ選ぶ。このキーワードはこの日に「怪物化した接合者」という名前のカードのために選んでおらず、クリーチャー・カードに印刷されているものでなければならない。そうしたなら、怪物化した接合者はその能力を得る。そうでなければ、怪物化した接合者は全てのキーワード能力を失う。

 

 このクリーチャーは、クリーチャー・キーワードを追加していくことで自分独自のアーティファクト・クリーチャーを作ることができるというアイデアから生まれた。私が最初に答えなければならなかった質問は、キーワードをどこから選ぶのか、だった。これは銀枠セットなのだから、あらゆるキーワードでいいのではないか。最初のプレイテストで、私の対戦相手はこのカードをプレイし、そして「有毒10」と宣言した。ああ、もう少し制限が必要だった。

 それでは、クリーチャー・カードに実際に印刷されたことのあるキーワード、というのはどうだろうか。有毒1(《悪性スリヴァー》[FUT])や怪物化10(《アクロスの巨像》[THS])を選ぶことはできるが、有毒10は選べないのだ。『Unglued』(《Squirrel Farm》[UGL])や『Unhinged』(《〈はじめての秘本〉》[UNH])と同じようにいくらかのマジックの知識を必要とするが、効率を追い求めるのでなければ必要ない。飛行や先制攻撃でも充分なのだ。

 一番最初のバージョンでは、《〈怪物化した接合者〉》[UST]のキーワード追加は自分のターンのはじめに行なわれていた。毎ターン、異なるキーワードを加えていたのだ。プレイテストにおいて、人々が自分の選択を最適なものにしようとするため、ひたすらに時間がかかった。私はこの問題を解決するため、それまでに試していたストップウォッチ・メカニズム(先週の《〈緊急修正〉》[UST]の項参照)を利用し、5秒の時間制限を加えた。すぐに指定しなければ、全ての能力を失うのである。

 毎ターンというのはあまりに多くのメカニズムを与えすぎたので、誘発イベントを変更することにした。自分で誘発させるのではなく、相手が何かをすることで誘発するようにしたらどうだろうか。予想外のときに何度も発生するようになり、ちょっとしたドラマが生まれるだろう。

 最後に残った問題は、このカードを使ったことのある人は毎回使う順番を決めてしまうということだった。どうすれば違う選択をさせることができるだろうか。解決策はいくらか非常識なものだったが、それは銀枠を手がける利点の1つなのだ。最初のカードでは、そのゲームで指定したものを選ぶことができないとなっていた。これを、この日に指定したことがあるものに変更したのだ。こうすることで、プレイヤーは大会で使うたびに違う戦略を試さなければならなくなり、クリエイティブにならなければならなくなった。

 《〈怪物化した接合者〉》[UST]をプレイするなら、指定したものを記録できるようにメモを準備することをおすすめしよう。


〈ルールの法律家〉》[UST]
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{3}{W}{W}

アーティファクト・クリーチャー ― サイボーグ・アドバイザー

1/1

あなたやあなたがコントロールする他のパーマネントに、状況起因処理は適用されない。(ライフが0点以下になったことや空のライブラリーからカードを引くことによってあなたは負けにならない。あなたのクリーチャーはダメージや接しによって破壊されず、タフネスが0以下であることによって墓地に置かれない。あなたのプレインズウォーカーは忠誠度が0になったときに墓地に置かれない。あなたが同名の伝説のパーマネントを2つコントロールしているときに1つが墓地に置かれることはない。ゲームルールによってあなたのパーマネントからカウンターが取り除かれることはない。あなたがコントロールしていて不正についていたり結合していたりするパーマネントは戦場に残る。完全なルールや規定についてはrule 704 参照。)

 

 このセットで最も議論を呼んだカードは何だったか。これである。デザインとデベロップを通して、多くの人々が、このカードを取り除こうとしたのだ。このカードは、カード名が最初に決まった。我々はルールの法律家というクリーチャーを気に入ったが、「一体何をするのか」という大問題があった。

 もちろん、ルールを弄る必要があるが、どのルールを弄るべきか。我々はルールに尋ねるべく、(当時の)ルール・マネージャーのマット・タバック/Matt Tabakに聞くことにした。ルールの法律家で、マジックから何か1つルールを取り除くようにしたいと伝えた。どのルールを取り除くと一番混沌とするだろうか。

 マットは、「ルール 704節」と答えた。そう答えた彼の顔には、邪悪な笑みが浮かんでいた。デザイン・チームは総合ルールを覚えてはいなかったので、我々は「704節には何が?」と尋ねた。マットは答えて、「状況起因処理だ」と。我々はルールを見て、その影響をすべて理解しようと試みた。基本的には、もうひと狂いした《白金の天使》[CN2]だった。《〈ルールの法律家〉》[UST]が戦場にいると、あなたが負けることはなく、あなたのクリーチャーが死ぬことはなく、その他もろもろの通常は奇妙なことができないようにする処理が行なわれなくなるのだ。重要なのは、《〈ルールの法律家〉》[UST]がそれ自身に影響しないようにして、除去できるようにすることだった。

 我々はこのカードに、ルール704節がなくなることが意味するものの一覧を、すべてではなくいくらか列記することにした。(すべては収まらない。しかし、すべての影響についてFAQで記している。)我々はこれに短く煮詰まった文章を持たせることが気に入った。それも冗談の一部なのだ。我々はカードを作り、それで終わったと思っていた。

 人々がファイルを時々覗き、そして「本気?」というようなメモを残すのだ。これは奇妙なことをする奇妙なカードだが、フレイバーが素晴らしく、『Unstable』で少量だけやりたいと思っていたようなことだと私は考えていた。

 その後、デベロップで、マジックの上席ブランド・ディレクターでこのプロジェクトを進めたマークの1人である(詳しくは私の『Unstable』のデザインの最初の記事参照)マーク・パーヴィス/Mark Purvisがチームに加わった。このカードを目にした瞬間から、彼はこのカードのことを嫌っていた。デベロップの間を通して彼はこのカードをボツにしようとしたが、そのたびにこれを守る助けとなる人が現れてくれた。何度かファイルを出たり入ったりしたが、最終的には残ることになった。後に我々はジャッジに向けて、プロモ版を作ったのだ。


〈甲羅象〉》[UST]
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{1}{G}{G}

クリーチャー ― 亀 や 象

?/?

{0}:以下から1つを選ぶ。あなたはこの能力を、甲羅象がどの領域にある間でも起動できる。

  • 甲羅象の基本のパワーとタフネスは1/4である。
  • 甲羅象の基本のパワーとタフネスは3/3である。
 

 このカードは、最初、黒枠セットで〈ゾウミガメ/Elephurtle〉というカードとして作られたものだ。どのセットだったかも覚えていない、少し前のことだ。青のコモンの3/3で、ターン終了時まで-2/+1できるというものだった。

 〈ゾウミガメ〉はそのセットからはボツになったが、私はこのコンセプトにずっと思い入れを持っていた。『Unstable』が現実のものとなって、私は〈ゾウミガメ〉に命を吹き込むときだと決めたのだ。銀枠セットなので、ゾウとウミガメの間で変化する能力をもう少し弄った。私は最終的に〈ゾウミガメ〉を印刷できたことに満足している。


〈大会常連、スパイク〉》[UST]
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{2}{B/P}{B/P}

伝説のクリーチャー ― 人間・ゲーマー

1/1

({B/P}は{B}か2点のライフで支払うことができる。)

{B/P}{B/P}{B/P}{B/P}:ゲームの外部から、あなたが所有していて構築フォーマットで禁止又は制限されているカード1枚を選び、それを公開し、それをあなたの手札に入れる。

// 「ちょっと待って ― それにスタックで」

 

 『Unstable』をデザインし始めた時に決まっていたことはそう多くないが、決まっていたことの1つがスパイクのカードを作るということだった。

 ティミーのカードを『Unglued』で、ジョニーのカードを『Unhinged』で作っていたので、もはやこれは定まった運命(間違いなく起こるもの)だった。このカードはダン・エモンズ/Dan Emmonsがデザインの初期にデザインした(最初の2年かそれぐらい)。我々はファイレクシア・マナと禁止/制限カードに対する《燃え立つ願い》[CN2]を組み合わせるということを気に入った。デベロップが数字を調整したが、このカードは最初のデザインから変更されなかった。

 スパイクに関する私のお気に入りの話は、デベロップのプレイテスト中に起こった出来事である。私はこれをカード・プールに入れたので、デッキに入れた。そしてこれを引き、プレイしてから、禁止か制限されているカードが必要だということに気がついたのだ。そこで、私は開発部のカードが全て入っている収納庫に駆け込んだが、強力なカードのほとんどは出払っていた。そこで私は、収納庫にあるであろうと思われるものを考えることにした。

 そして私は、『レジェンド』が初めて世に出たとき、すべての伝説のクリーチャーは制限カードであるというルールがあったことを思い出した。私は『レジェンド』の箱に向かった。そこには何年にも渡ってデッキに使われることなく残っていた弱いコモンやアンコモンが詰まっていた。そして私はこのカードを見つけた。

 私はそれを掴み、プレイし、そしてそれでそのゲームに勝ったのだ。マーク・パーヴィスはそれにひどく困惑して、将来のプレイテストに使えと私のところに『From the Vault: Exiled』を持ってきたのだった。


〈飛び切りの殺人光線〉》[UST]
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{2}{R}

インスタント

トランプル(この呪文は過剰のダメージをこれの対象のコントローラーに与えられる。)

クリーチャー1体を対象とする。飛び切りの殺人光線はそれに4点のダメージを与える。

// 「穿て!」

 

 『オデッセイ』のデザイン中に、私はクールなアイデアを思いついた。私は、トランプルを持つ直接ダメージ呪文を作ったのだ。アイデアはとても単純なものだった。5点のダメージをクリーチャー1体に与え、余ったダメージはすべてそれのコントローラーにトランプルするのだ。このカードは最終的に、こうなった。

 これは私が最初に想像したものとは違っていた。トランプルのルールの書き方では、それを直接ダメージ呪文に持たせることはできなかったのだ。私は黒枠で作用するバージョンを作ろうと何度も試みたが、私が望むエレガントさを持つものはできなかった。

 『Unhinged』が発売されたとき、私は、トランプルを持つ直接ダメージ呪文を作る機会を逃したことに気がついた。単に忘れていたので、私は3つ目の銀枠セットを作るときには必ず入れるという誓いを立てた。そして、私はその誓いを果たしたのだ。


〈ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズの剣〉》[UST]
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{3}

アーティファクト ― 装備品

装備しているクリーチャーは+2/+2の修整を受けるとともにプロテクション(ならず者)とプロテクション(クレリック)を持つ。

装備しているクリーチャーがプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、飛行を持つ金色の4/4のドラゴン・クリーチャー・トークンを1体生成し、d20(20面体サイコロ)を1個振る。あなたが20を振ったなら、この手順を繰り返す。

装備{2}

 

 このカードは、カード名が最初に決まった。『ミラディン』と『ミラディンの傷跡』ブロックにあった○○と○○の剣サイクルについてのジョークの話がずっとあったので、我々は面白おかしいと思う名前を書き留めていった。その中に、ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズの剣という名前があったのだ。我々は、ウィザーズのマジック以外の大物ゲームを指すならどうすれば面白くなるかについて話し合ったことがあり、「ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ」のブランド・チームに話を通して許可をもらうことを計画した上でカードをデザインした。

 最初のバージョンは今のものと似ていたが(構造はもとのサイクルに基いたものである)、いくつかの違いがあった。まず、6面体サイコロを3個振っていた(これはD&Dのキャラクター作成の特徴的な部分であり、これならこのセットのテーマである6面体サイコロを使うことができる)。そしてビホルダー・トークンを作っていた。「ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ」に詳しくない諸君のために説明するなら、ビホルダーとは、D&Dオリジナルの多くの目を持つ空飛ぶ怪物だ。

 
アート:Raymond Swanland

 マジックにはビホルダーはおらず、D&D独特のものを登場させるというアイデアが気に入ったのだ。しかし、D&DチームはD&Dのの(タイトルにも登場している)もっとも象徴的なクリーチャーであるドラゴンに変えることはできないかと尋ねてきた。我々は金色の、文字通り色としての金色の、ドラゴンに変えることにした。これによって少なくとも普通でないことにはできた。また彼らは、同じくD&Dの象徴である、20面体サイコロを使うことも求めてきた。

 もう1つ、アートができたあとで加わった変更がある。もとのバージョンでは、プロテクション(ウィザードとクレリック)を持っていた。サイクルに合わせるために、2つのものに対するプロテクションを持たせる必要があり、両方のゲームに存在するクリーチャーの職業を用いるのが理想的だと考えられたのだ。我々がD&Dチームにこのアートを確認してもらったところ、彼らは出来に満足した上で、描かれている武器はウィザードとクレリックというよりもローグとクレリックにふさわしいとコメントしてきた。それを踏まえてカードを変更したのだ。

 この話の最後を締めくくるのは、他の人達がHASCONで使うカードを手がけていたときのことである。それぞれのカードがハズブロのそれぞれ異なるIPを示すようにしようとしていた彼らは、《〈ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズの剣〉》[UST]が完璧にふさわしいと気がついて、それを採用できないか尋ねてきたのだ。我々は許可した。ここで、HASCON版は機能上異なるということを説明しておこう。HASCON版はD&Dのすかしが入っており、これは『Unstable』版と違って《〈すかし屋〉》[UST]で唱えることができるのだ。


〈アカデミーの頭、ウルザ〉》[UST]
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{W}{U}{B}{R}{G}

伝説のプレインズウォーカー ― ウルザ

[+1]:AskUrza.comに行き、[+1]をクリックする。

[-1]:AskUrza.comに行き、[-1]をクリックする。

[-6]:AskUrza.comに行き、[-6]をクリックする。

 

 『インベイジョン』ブロックのストーリーで、ジェラードとウルザの対決があり、ジェラードはウルザの首を斬った。しかしウルザは即死はしなかった。胴体のない頭だけで、彼はしばらく生きていたのだ。彼はやがて力尽きたが、『Unhinged』で、私は彼が死なずに胴体のない頭だけで生き延びたとしたらというコメディの可能性を掘り下げることにしたのだ。

 ウルザには多くのリソースがあるとした。ただ動きを遅くする身体がないというだけのものではないのだ。キャラクターが自分のアートから抜け出すというジョークは《〈無断欠勤〉》[UNH]でもやっていて、我々はこのキャラクターを他のカードに登場させたいと考えた。自分のアートから抜け出すなんてことをした理由は何か。どこか本当に楽しいところに行っているというのはどうだろうか。

 その頃、私はウルザが大量のアーティファクトを手掛けたというジョークも好んでいた。では、ウルザが素敵な《〈ウルザの浴槽〉》[UNH]を持っているというのはどうだろうか。素敵な浴槽に浸かるためならアートから抜け出すぐらいするだろう。もちろん、ウルザはそこで生きているのだ。私は、胴体のない頭だけのウルザには幸せでいてほしいのだ。

 そして『Unstable』のデザインの話になる。銀枠プレインズウォーカーが欲しいのは当然だった。新しい銀枠セットのクールなところの1つが、最後の銀枠セットが作られた後に作られた新しい空間で遊ぶことだ。新しいクールなことの1つが、プレインズウォーカー・カードである。重要なのは、どのプレインズウォーカーを選ぶかだ。

 複数の選択肢があったが、私はいくつかの理由から胴体のない頭だけのウルザに惹かれていた。まず、プレイヤーはずっとウルザのプレインズウォーカー・カードを求めているということ。そして、ウルザは5色全部であり、プレイヤーはずっと5色のプレインズウォーカー・カードも求めているということ。さらに、胴体のない頭だけのウルザについてよく質問を受けており、これを『Unstable』に入れなければ後悔するだろうということ。こうして、ウルザは私の最初の銀枠プレインズウォーカーとして選ばれることになったのだ。

 問題は、彼は何をするのがふさわしいかだ。ここで、我々は他のカードのためのアイデアを持ってくることにした。スマートフォンの普及により、インターネットへのアクセスは非常に簡単になった。私は、正確に何をするのかはわからないカード、というアイデアが気に入っていた。ログインして見なければわからないのだ。そのカードにはいくらかの謎が含まれることになる。そして、私はそれをウルザとして上手く働くと判断したのだ。ウルザは究極の謎の人間なので、フレイバー的にふさわしく思えた。こうして《〈アカデミーの頭、ウルザ〉》[UST]が誕生したのだ。


〈ミスターX〉》[UST]
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{U}{B}

伝説のクリーチャー ― 人間・スパイ

2/2

ミスターXがオーナーの対戦相手の手札にあるかぎり、オーナーはミスターXを唱えたりミスターXの能力を起動したりできる。その対戦相手はミスターXを唱えられず、自分の手札を公開してプレイする。

{U}{B}, {T}:対戦相手1人を対象とする。ミスターXをそのプレイヤーの手札に加える。

{3}{U}{B}:あなたはミスターXと同じ手札にあるカード1枚を、そのマナ・コストを支払うことなくプレイできる。

 

 このカードの元になったアイデアは、超人的スパイを作りたいというものだった。それを再現するために、どんな奇妙なことができるだろうか。我々が思いついたアイデアは、このカードを対戦相手の手札に潜入させるというものだった。さて、それは一体どういうことだろうか。

 もちろん、このカードを相手の手札に入れるのだ。まず、これはあなたに報告してきて、相手の手札にあるものを教えてくれるはずだ。すなわち、手札は公開されることになる。もう1つクールなことを考えるなら、これが相手の手札から呪文を唱えるということだろう。ということで、それを加えた。

 最初のプレイテストで、私はこれを対戦相手の手札に入れた。そうしたら、相手がこれを唱えてきた。おっと。我々は、対戦相手はこれを唱えたり起動したりできないと書き加えた。2つ目の能力も、もともとはコストの支払いが必要だった(起動コストは今よりも軽かった)。しかし、実際にカードを唱えることが難しかったので、我々は起動コストを上げて、マナ・コストを支払うことなくプレイできるようにしたのだ。

 Xというカード名は、ケリー/Kellyがマジックには(銀枠セットで)0文字(《_____》)と2文字(《Ow》)のカードがあるのに1文字のカードがないということに気がついたことからつけられた。Xという選択は最適のものに思われた。

 あと1つ語るべきことは、私はこのカードへの愛情を込めたフレイバーテキストを書いたが載せる場所が足りなかった。そこで史上初めて、ここでXのフレイバーテキストを紹介しよう。

 ミスターXはマークを見つけた。

 

『Unstable』とこれから

 本日はここまで。『Unstable』の数多いカードがどのように作られたのかの話を楽しんでもらえたなら幸いである。いつもの通り、諸君からの反響を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 これが2017年最後の更新となる。そして3週後、『イクサランの相克』のプレビューの開始とともに戻ってこよう。

 その日まで、どうか、どうか『Unstable』を試してみてもらいたい。本当に楽しいセットなのだ。

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