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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

『ラヴニカ』デザイン提出文書

Mark Rosewater
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2022年8月8日

 

(編訳注:この記事はPCでの表示に最適化されています。)

 マジックのデザインの重要な部分として、セットが複数のリードの手を通るということがある。展望デザインが終わってセットをセットデザインに渡すとき、先のデザイン・チームのすべての作業を新デザイン・チームに説明する、展望デザイン提出文書と呼ばれる文書を作る。私の記事で、これまでいくつかを紹介してきた。

(編訳注:初代『ゼンディカー』の提出文書(その1その2)も公開しております。)

 『団結のドミナリア』のプレビューが来週から始まるので、初心に帰って初代『ラヴニカ』のデザイン提出文書を公開するのは楽しいだろうと考えた。なお、当時開発部は展望デザイン、セットデザイン、プレイデザインの3チームではなく、デザインとデベロップの2チームで構成されていた。これまでの私の展望デザイン提出文書同様、これは提出されたままの公式文書にコラムでコメントをつけたものとなっている。

『Control』デザイン理念

 『ラヴニカ』は私が主席デザイナーとして初めて監督したブロックなので、この文書には新しい用語の説明が多く含まれている。私はブロックのデザインのやりかたを改良することを強く意識していたのだ。初代『ラヴニカ』ブロックのコードネームは、『Control』『Alt』『Delete』だった。

 これまでの5年間(『インベイジョン』から)、デザインの中心はテーマ(多色、墓地、部族、アーティファクト、日本風)だった。『Control』では、デザインの進化の新しい一歩を試みている。このセットにもテーマはあるが(もちろん多色だ)、ここには「中核コンセプト/core concept」と呼んでいるものが存在している。中核コンセプトとは、テーマと相互作用し、さまざまな機能(メカニズムとクリエイティブが最大の2つである)の焦点を決定づけるプリズムのような働きをするものである。メカニズム、アート、名前、フレイバー・テキスト、その他すべてが、中核コンセプトをもっともよく実行する方向にテーマを達成していく役割を担うのだ。

 『Control』の中核コンセプトはギルド・モデル、より広く言うなら2色の相互作用である。10組の相互作用それぞれが、カラー・パイの理念に基づく相異なる特徴を持つ。『Contol』の第1の役目は、それらの特徴を明示し説明することである。そのため、『Control』のデザイン・チームはこの目標を達成するデザインを作ることを試みた。これはいくつもの方法で行なわれた。

 

 今はこれは大きな話には見えないかもしれないが、2色の組み合わせを複数のセットに分けるというのは当時非常に急進的だったのだ。また、各ブロックがどのように機能するかをブロックのデザインの一番最初に示すことも新しいことだった。当時、小型セットが何をするかは、そのデザインを始めるときに決めていた。(通常は大型セットのデザインを始めてから何か月も後になる。)その唯一最大の例外が、(敵対色のセットの)『アポカリプス』で、これは『インベイジョン』のデザインの途中に決まっていた。

1)セットごとのギルドの内訳

 初期プレイテストで、あまりにも多くのギルドを登場させると各ギルドのメカニズム的フレイバーを表現することがほぼ不可能になるとわかった。この問題を解決するため、チームは10個のギルドをブロックの3つのセットに振り分けることを思いついた。各ギルドは、それぞれ1つのセットにしか登場しない。数値計算の結果、チームは、ギルドを4、3、3に分けるのが最善だと考えた。

 (友好色と敵対色のギルドの数、特定のギルドの人気など)さまざまな要素を計算に入れ、デザイン・チームは以下の内訳を選択した。

  • 『Control』 ― 青黒、緑白、黒緑、赤白
  • 『Alt』 ― 赤緑、白黒、青赤
  • 『Delete』 ― 白青、赤黒、緑青
2)各セットのメカニズムの内訳

 各ギルドが1度しか登場しないことを踏まえ、チームは各ギルドをどうメカニズム的に表現するかに焦点を移した。緩い実装の堅固な並列構造(各ギルドには必ずXがなければならないが、Xをどう成立させるかは各ギルドが自由に選べる)がギルドの特徴とその対比を強化する上で最善だと判断した。

 ここで、現在の並列構造の重要性について強調しておきたい。『Control』の世界の生死は、我々がギルドを重点にし、興味深いものにすることにかかっている。そのためにはどうすればいいか。マジックのさまざまな側面で、各ギルドが独自性を持つ、つまり独自のフレイバーを持つようにするのだ。しかし、フレイバーはそれ単体では定義できない。例として、カラー・パイの単色それぞれを見ていこう。ユーザーに、赤のフレイバーを理解してもらいたいとする。まず、赤の本質を体現する赤のカードを作ることから始める。しかし色を定義するためには、究極的には境界を示す必要がある。それはどの1色だけでも不可能なことだ。赤のカードが赤でないことの極限にあるということをユーザーはどうやって知るのか。

 その答えは、他の色のフレイバーを対照として用いることである。他の色が持っていて赤に存在しない要素を示すことで、赤が何でないのかを示すのである。特定の性質が他の色で継続的に登場しているので、その性質は赤でない。これをするもっとも堅固な方法は、似た要素を持っているが2色で違う形で表されている2枚のカードを作ることである。《白騎士》と《黒騎士》はそれぞれいかにも白や黒であるように思えるが、これはそれぞれの反対版が何でないかを表しているからである。

 同じ原理が、ギルドについても言える。そのギルドだけを示すことで示せるものには限界がある。他のギルドが、似た考えにどう異なる近づき方をするかを示す必要があるのだ。ここで並列構造が重要になる。各ギルドに、例えば、伝説のクリーチャーとその支持者がいれば、各グループでその繋がりがどう作用しているのかを如実に表してくれる。あるギルドでは、信奉者。またあるギルドでは、兵士。また別のギルドでは、手先。これが、デザイン・チームが並列構造を厳格なものにすることにした理由である。各ギルドに登場させるさまざまなものが必要なのだ。重要なのは、各ギルドが、メカニズムのあ使い方に大きな隔たりを示すことができる充分なメカニズム的自由度を持つことである。

 新しいことを提案しているので、その理由を説明するためにかなりの時間をかけている。基本的に、私が望んだのは、10個のギルドそれぞれを定義してお互いに対比する上で多くの働きをするブロック全体を使った10枚サイクルを大量に造ることだった。これはそれまでのブロックに比べて非常に構造的なものだったので、それを説明することに非常に几帳面になっていたのだ。

 これを(あるギルドには○○が3つ、他のギルドには1つ、のように)数字的に処理したいという誘惑がある。それには、カード1枚を見たときに見つけるのが非常に難しいという問題がある。単純な分散は、長い間差を隠してしまうのだ。従って、数字的な処理が成立するのは、大きく誇張した場合(6:1は3:1よりも効果的である)に限られ、そのためには大量のスロットが使われることになる。並列構造は同じ役に立つが、カードの枚数はずっと少なく、(もちろんクリエイティブがその道具を正しく使うという前提で)認識はずっと簡単になる。

 また、差を表す上で数字的手法はあまり役に立たないが、類似性を示す上ではずっと有用であるということを意識することは重要である。プレイヤーは、すべてが何かを同数持っているということを見つけるほうが、何かの違いを見つけるよりも早いものなのだ。人々はパターンを見て、そして何か似た構造があることをすぐに気づくのである。

 厳密な並列構造を採用することに決めて、我々はそれをどう実装するかを探し始めた。

レベルの定義

 デザイン・チームがしたことの1つが、カードがどうギルド・システムに適用されるかを考えることだった。我々はすぐに、ギルドでのカードの相互作用は大きく違ってくることに気がついた。そのため、我々はカードがギルド・モデルにどれだけ馴染むかを示すレベルのシステムを考え出した。

レベル1

 ギルドの両方の色が使われていなければプレイできないカード。このレベルは基本的に多色カードである。

レベル2

 最適な使い方のためにはギルドの両方の色が必要なカード。この例は、1色でもプレイはできるが両方の色があればずっと強力になる、ギルド魔道士である。

レベル3

 プレイするのにはギルドの色1色だけが必要だがフレイバー的にギルドに関わりがあるカード。これらのカードでのギルドの色両方をプレイすることによる利益は、複数のシナジーがあるという事実によるものだけである。この好例は、キーワード・メカニズムである。例えば、畜唱/crittercastデッキを組むなら、緑白が最適である。

レベル4

 ギルドには関係しないがギルドの大目的と緩いシナジーがあるカード。例としては、《死者再生》がある。このカードは黒緑のギルドとは何の関係もないが、ギルドの再利用のフレイバーとはシナジーがある。

レベル5

 どのギルドとも何のシナジーもないカード。

 「クリエイティブ的な線引き」とは、正式にギルドの透かしを得るということである。

 議論の結果、我々はギルドを上位3レベルでメカニズム的に定義することにした。(誰がギルドに入り誰がギルドの協力者になるのかなどのクリエイティブ的な線引きは、まだ決定されていない。)

レベル1(多色のカード)

 各セットにいくつのギルドが入るのかが決まったので、各ギルドに何枚の多色カードを入れることができるかは計算できた。最初に、我々はすべてのギルドを同じ大きさにする必要があると決めた。色の一般的バランス(通常、単色で計算するが、2色組でもよく似た働きになる)はデザインの標準であり、ギルド・システムはそれを守る方向に向かわせるだけである。

 ギルド間の小さな比と小型エキスパンションのセット全体の大きさから、サイズの上限が決まった。『インベイジョン』よりも3レアリティ全てで多く登場させたかったので、チームは多色を推したいと考えた。また、多色の経験上、リミテッドでデッキ構築があまりにも難しい/条件の厳しいものにならないようにするため、多色はレアに偏らせる必要があった。最終的に、以下の組み合わせにした。

コモン:各ギルド4枚。16枚(大型セット)、12枚(小型セット)
アンコモン:各ギルド7枚。28枚(大型セット)、21枚(小型セット)
レア:各ギルド8枚。32枚(大型セット)、24枚(小型セット)

 すべてのギルドを均等に扱うことは重要だったので、厳密なサイズを明示している。つまり、第1セットで、小型セットが従わなければならない多くのことを定めていた。これは当時は例のないことだったのだ。

 微調整の余地はいくらかあるが、ギルド1つに調整を加えたらすべてのギルドに調整を加えることになるると意識すること。

 次に、『Control』デザイン・チームは多色カードからなる複数のサイクルを作った。(『Control』のサイクルの理念については次の節でもう少し話す。)そのサイクルは以下の通り。(このリストにはレベル1だけが列記されている。その例外はレベル3のキーワードで、これはサイクルでないカードにどれだけの余剰のスペースがあるかを伝えるためである。

 

コモン(多色カード4枚)

 各ギルドには最終的に3枚のコモンの金色カードと1枚のコモンの混成カードが入った。少なくとも金色カードのうち1枚はギルドのキーワードを持っていたが、クリーチャーだとは限らない。

小物(支持者)

 各ギルドには、コモンとレアのクリーチャーが持つメカニズム1つがある。大物は伝説のクリーチャーで、一般的なフレイバーとして小物はその支持者である。ギルドごとに、その関係性は違うフレイバーづけがなされることになる。

キーワード(2)

 各ギルドにはそのギルドのキーワードを持つコモンの多色カードが2枚ある。

アンコモン(多色カード7枚)

 各ギルドには最終的に、金色のアンコモン4枚と混成カード(ギルド魔道士)1枚になった。標章/sealは最終的に(コモンの)印鑑になり、エンチャント(土地)のサイクルはボツになった。各ギルドに必要なものを、ギルドのメカニズムを持つアンコモンの金色カード1枚に減らし、メカニズムは主に単色カードで使うことにした。(ギルドの一部として定義づける助けとなるが、金色カードはすでにそうしている。)

エンチャント(土地)の標章

 各ギルドにはエンチャントした土地にギルドの色のクリーチャーに影響を与えるタップ能力を得させるエンチャント(土地)がある。これらのカードは、各ギルドの標章を示すために存在している。

キーワード(1)

 各ギルドにはそのギルドのキーワードを持つアンコモンの多色カード1枚がある。

 

レア(多色カード8枚)

ギルドの指導者

 ギルドにフレイバーを与える方法の1つが、ギルドのキーパーソンを強調することである。(これは、神河の伝説テーマを強調するという副次的効果もある。)このカード、伝説のクリーチャーは、そのギルドの指導者である。それが何なのかはギルドごとに異なる。クリエイティブはそれらのクリーチャーが何者なのかを決めている。

ギルド内の他のメンバー

 各ギルドに、2枚目の伝説のクリーチャーがいる。この伝説のクリーチャーの役割は、各ギルドの構造に依存する。ギルドによっては、命令系統の第2位かもしれない。別のギルドでは、軍事担当者かもしれない。また別のギルドでは、指導者のボディガードかもしれない。クリエイティブはそれらのクリーチャーが何者なのかを決めている。

大物

 これは、小物の対になる伝説のクリーチャーである。同じメカニズムの大規模版を持っている。フレイバー的には、小物がついていく人物である。どのような形でそうなのかは、もちろん、ギルドごとに異なる。

 レアは最終的に、各ギルド、金色カード6枚と混成カード1枚になった。(神話レアはまだ存在しない。)アンコモン同様、金色カードにはギルドのキーワードを必須としなかった。伝説のクリーチャー2体とショックランドはそのまま残った。装備品サイクルはアーティファクト・サイクルになり、ボロスのものだけが装備品のままになった。

キーワード(1)

 各ギルドにはそのギルドのキーワードを持つレアの多色カード1枚がある。これは、キーワードを持つ唯一のレアであることに注意して欲しい。

装備品

 各ギルドには、装備コストがCDか、かなり重い不特定マナである装備品がある。この装備品は、そのギルドでメカニズム的に意味があることをするとフレイバーづけられている。

2色土地

 これらは基本的にはタップイン土地で、プレイヤーが2点のライフを支払うことでアンタップ状態で戦場に出せるというものである。加えて、これらの土地は新しい基本土地キーワードの利点を活かして、両方の基本土地タイプを持たせている。このサイクルは、サイクル内で同一になる可能性が最も高い。

 

レベル2(多色の影響を受ける単色カード)

 多色のカードが定まると、チームは次のレベルに踏み込んだ。最適化するために2色目が必要な単色カードである。かなりの議論の末、我々はいくつかのサイクルを思いついた。

 それらのサイクルの話に入る前に、これらをどう扱うかのちょっとした理念を論じたい。ほとんどのセットと違い、このブロックのサイクルは10枚のカードからなる。例えば新しい2色土地を作りたければ、10枚すべてを作ることになる。つまり、1つ目のこのセットで、ブロック内の残りを決定づける多くのことをすることになるのだ。予測されることは悪いことではないが、チームは拡張セットの興奮を削ってしまうことになることを非常に危惧していた。プレイヤーに、第1セットを見ただけで第2第3セットの内容を全部知っていると感じてほしくはないのだ。

 このことから、チームは2つの重要な決定をした。

1つ目

 『Control』のサイクルはかなり緩いものにする。伝統的に、サイクルを作るにあたっては可能な限り構造を堅固にしてきた。『インベイジョン』のギルド魔道士を例に取ろう。それぞれはCで1/1で、「D, T」と「E, T」の起動型能力を持つ。(DとEはCの友好色。)『Control』のギルド魔道士については、マナ・コストやパワー/タフネスを固定しないことに決めた。ただし起動コストについては、(クリエイティブの助けを受けて)それがギルド魔道士らしさを定めていると考えている。こうすることで、プレイヤーはギルド魔道士の存在を予想しても、それがどのようなものかまではほとんど予想できなくなるのだ。

 将来の小型セットのチームに自由度を与えようと考えたが、最終的なサイクルは少し堅固なものになった。コモンの土地がセット内である働きをしていたなら、それは将来のセットでも同様に働く。

2つ目

 サイクルはブロック内で第1セットが定めたよりもゆるくできる。言い換えると、各セットで緩いサイクルに違う取り組み方ができる。コモンの土地を例に取ってみよう。『Control』では、コモンの土地は「フィルターランド」(プレイヤーがギルドの色2色にフィルターできる土地)である。『Alt』では他の種類のコモンの土地を使うことができる。重要なのは、それら3つに共通のつながりがあることと、そのセットの各ギルドごとに1枚のコモンの土地があることである。制限は、『Alt』が『Delete』が続けるかどうかを定めるということだけである。(『Alt』がフィルターランドを採用したら、『Delete』がどうするか強制される。)どのサイクルを登場時より緩くする(『Alt』や『Delete』がそれぞれの版を作る)かどうかは、『Alt』や『Delete』のデザイン・チームが決定する計画である。

 それでは、『Control』のレベル2サイクルに入ろう。

 

コモン

 ギルド魔道士は最終的にアンコモンの混成になった。色違い起動コストは残ったが、制限は少し緩くなった。他の色を使う必要はあるが、厳密に起動型能力である必要はなくなった。フィルターランドは他のサイクルで置き換えられた(タップ状態で戦場に出て、土地1つを戻し、タップしてMNを出す。)

ギルド魔道士(2)

 『Control』のギルド魔道士は、2つの起動型能力を持つクリーチャーである。(現時点ではどちらも「C, T」)1体目は、同一色で、比較的弱い。2体目は、色違いで、比較的強い。これらの元になった考えは、基本色をプレイしていればプレイすることができるが、両方の色を使っているなら間違いなくプレイすることになる、というものである。また、各ギルドに2体のギルド魔道士がいて、それぞれがギルドの色2色のそれぞれに対応している。

色違いの起動コストを持つクリーチャー(2)

 各ギルドに2体(各ギルドの色1色ごとに1体)、色違いの起動コストを持つクリーチャーがいる。ギルド魔道士同様、基本色だけが使われているときにもプレイはできるが、両方の色をプレイしていると最適化されるようにデザインした。ギルド魔道士との違いは、色違いの能力はコストにタップを含まないことである。ギルド魔道士同様、各ギルドに2体ずついて、それぞれ別の色を中心としている。

フィルターランド

 タップして無色が出て、ギルドの色2色を2マナにフィルターできる土地。これをレベル2、レアの土地をレベル1にしたのは、フィルターランドはしばしば2色のうち1色だけをプレイしているとき(特に色をタッチしてるとき)に使われ、2色土地が意味を持つのは両方の色をプレイしているときだけだからである。

 

アンコモン

 ギルド関連のクリーチャーのサイクルは採用されなかった。強化可能サイクルは1方向だけを向くことになった。

ギルド関連のクリーチャー(2)

 他方の色が戦場にあるとボーナスを得るクリーチャー。これらは、両方の色を揃えていないときにコモンよりもプレイしにくいようにデザインされている。

強化可能呪文(2)

 該当するギルドの色を使って唱えたときに2つ目の能力を持つ呪文。これらのカードは、2色目なしで頻繁にプレイされるようにデザインされている。ギルドの色を揃えていると、いいカードから素晴らしいカードになる。これは、2色目をプレイするように強く誘導するたぐいのサイクルである。

 

レア

 レベル2のレアのカードは現状存在しない。ギルドのカードを追加したければ、その余地があるのはレアだけである。

レベル3(キーワード・メカニズム)

 ギルド・モデルを強化するため、チームはこのブロックのキーワードがそれぞれギルド1つに対応するようにすることは必須だと考えた。そのため、キーワードの構造は4-3-3になる。キーワード10個は平均より少し多い。(数え方によるが、『オンスロート』と『ミラディン』はそれぞれ8個ぐらいである。)しかし、ギルド構造から各キーワードの存在量は通常よりも少なくなる。チームは、これは許容可能な範囲内だと考えている。

 次に、ギルド内でキーワードをどう実行するかを考えた。キーワードを多色に限るのには非常に問題があると思われる。それは、プレイヤーがギルド1つを選ぶと、ブロックの10個のキーワードのうち1つしか使えなくなることを意味する。次の論理的選択は、ギルド内の各単色でそのキーワードを使えるようにすることである。こうすることで、ギルド1つをプレイしているプレイヤーは10個中7つのキーワードを使うことができるようになり、うち1つはそのメカニズムを持つカードすべてを使えるので最も強くなる。

 堅固な並列構造を守るため、チームはキーワードを各ギルドに同数配置することにした。加えて、プレイテストは妥当なバランスを把握する助けになった。最終的に、各ギルドにはキーワードを持つカードが、単色C、単色D、多色にそれぞれ4枚ずつ、合計12枚ずつになった。チームは12枚を、メカニズムとして成立するに充分な枚数で、かつ、2色だけで入れられる程度の少ない枚数だと考えている。金色カードがレアに寄っているので、多色のキーワードもレアに寄ることになる。ギルドごとのキーワードの内訳は以下の通り。

 最終的に、ギルドのキーワードの制限を緩めることになった。各ギルドのキーワードを持つカードはほぼ同数だが、厳密に同一ではない。ギルドのキーワードごとにデザインの幅が異なっているので、多色カードを扱っているのだから厳密に同一である必要はないと判断したのだ。

コモン-6枚(単色各2枚、多色2枚)
アンコモン-5枚(単色各2枚、多色1枚)
レア-1枚(多色1枚)

 

レベル4~5(その他)

 このセットのほとんどのサイクルはギルド関連だが、『Control』内にもギルド・モデルと直接は関係しないサイクル(伝統的な5色の)がいくつか存在する。

コモン

入場効果つきクリーチャー用エンチャント

 入場効果を持つクリーチャー用エンチャント。カード上で、クリーチャーにつくエンチャント部分よりも入場効果のほうが重要なようにデザインされている。クリーチャー用エンチャントはいわば素敵なおまけだ。

レア

 両方のサイクルが、興味深いことにリチャード・ガーフィールド/Richard Garfieldのがデザインしたものだが、セットに採用された。ただしデベロップ中に数枚は調整されている。

敵はご持参

 入場時に、対戦相手に何体かののトークンを与えるクリーチャー。これらのカードをフレイバーに富んだものにするため、クリエイティブはクリーチャー・タイプやトークンのタイプを注意して選ぶ必要がある。(デザイン・チームは最初の状態が助けになるように試みた。)また、デザイン・チームは、1枚目のカードでトークン1体、以下5枚目でトークン5体を生成するようにしたことにも気をつけてもらいたい。

3)ギルドの定義

 『Control』のデザインにおいて最も重要な側面は、メカニズムを各ギルドの雰囲気を表すために使うことである。これはいくつもの方法で行なわれた。

 1つ目に、上述の通り、並列構造が作られていて、各ギルドが同じような機能をどう実行するかを示すことができるようになっている。この構造については前の章で語っている。

 2つ目に、各ギルドはフレイバー的特徴に合ったメカニズム的特徴が与えられている。つまり、各ギルドに、そのギルド全体の理念に基づいた勝ち方と、そのギルドの色2色で使えるメカニズムが決められている。『Control』のギルドそれぞれについての概要と、メカニズム的特徴の説明は以下の通り。

 まだ名前が決定していなかったので、この文書にはギルド名がないことに注意。ディミーアは最終的にかなりこの説明に近いものになった。単色の変成のコストはそれぞれ{1}{U}{U}と{1}{B}{B}になった。

青黒

 青黒は、卑劣な影のギルドである。力に飢えていて、秘密主義である。世界を支配しようと考えているが、表立ってではなく裏からである。間違いなく報復するがわかりやすい方法ではないので、すべてのギルドの中で、一番怒らせたくないギルドである。青黒は最も知的なギルドである。最大の武器はその精神である。彼らは賢く、機略に長けている。従って、彼らの好む攻撃対象は対戦相手の精神となる。

 メカニズム的には、これは2つの方法で行なわれる。1つ目に、青黒はライブラリーの帝王である。すなわち、自分のライブラリーを操作したり相手のライブラリーに攻撃したりすることが最も得意なギルドである。まず、前者の話から入ろう。自分のライブラリーを操作する最高の手段は教示、つまり自分が必要なカードをデッキから直接持ってくることである。青黒のキーワード・メカニズムは教示の亜種で、「変成」である。変性を持つカードは、手札にある間に、自分のライブラリーにあり点数で見たマナ・コストが同じカード1枚と交換できる。(単色カードは現在{2}{U}や{2}{B}を支払って変成し、多色カードは青黒のコストを持つ。)

 教示以外にも、青黒はデッキの一番上の順番を操作したり、カードを引く選択肢を最適化したり(通例は複数のカードから選んで引く)、自分のデッキから不必要なカードを取り除くことでライブラリーを操作し、引くカードの質を高める。自分のデッキを操作して有利にする能力については、青は黒よりも優秀である。しかし、青黒はカードの能力を両方の方向(自分を助けるか相手を攻撃するか)に向かわせるように最大化するため、黒には相手を攻撃して時折自分を助けるためにも使えるようにデザインされたカードが何枚も存在する。

 青黒が自分のデッキにできることは、対戦相手のデッキにもできるのだ。加えて、青黒にできる普通は自身にしないようなことが1つある。切削という形で、対戦相手を精神的に消耗させられるのだ。青と黒はどちらも対戦相手のデッキを消耗させられるが、青は切削することが多い一方、黒は《ロボトミー》型効果で内側から食いつぶすのだ。

 青黒の2つ目の大きな戦略的長所は肯定的(カードを引く)、否定的(手札破壊)の両方のカード・アドバンテージである。青黒の卑劣で繊細な攻撃は、時間を書けてカード・アドバンテージを確保する方法で表されている。青黒のやりたいようにをさせれば、それに勝つ機会は時間とともに失われていく。少しずつ少しずつ、青黒は有利を得ていくのだ。以下に、青黒が他のメカニズムをどう使うかを記す。クリーチャー除去や打ち消しで、カード・アドバンテージを築き上げる間、青黒は相手を受け流すことができる。

 最終的に、青黒の勝利の道はギルドそのものと同じく卑劣なものである。青黒は、自分のドローを質量ともに最大化するために精神的リソースを使う。そしてその破壊的な力で相手の精神(デッキやライブラリー)を狙うのだ。青黒は、唯一デッキ切れで勝つことができるギルドである。(青黒がリミテッドで実際的な確率でこの方法で勝つことがあるのは、デザイン・チームの意図である。)少なくとも、青黒は時間をかけてカード・アドバンテージを積み上げるためにリソースを使うので、青黒が何とかして出した脅威で対戦相手に対処することができる。

 

緑白

 緑白は、最も集団に馴染むギルドである。最も利己的から遠い2色である緑白は、自身のことを一体だと思っている。その行動はすべてが集団を進化させる方向を目指している。その鍵となる要素は、集団を大きくして強化するためにできるあらゆる歩みをすることである。

 メカニズム的には、これは2つの方法で行なわれる。1つ目に、緑は大量のクリーチャーで自身を居住させることに最も長けている。緑白は、クリーチャー・カードの割合がもっとも高い。緑白は、トークン・クリーチャー生成にもっとも長けたギルドである。そして緑白は、ライブラリーから手札や戦場にクリーチャーを持ってくることが得意である。他のどのギルドも、クリーチャーを産出することにかけては緑白に太刀打ちできない。ただし、緑白の強さはクリーチャーの質ではなく量にあることは覚えておくこと。

 緑白のキーワード・メカニズムは、緑白の、クリーチャーがクリーチャーを生む能力の好例である。そのキーワードは、畜唱である。畜唱を持つ呪文のコストは、クリーチャーをタップしてその色のマナを出すことで部分的に(あるいは全部)支払うことができる。

 2つ目に、緑白はクリーチャーと、究極的には自分自身を守ることに非常に長けている。白青に次ぐ2番手の防御力を持ち、緑白は対戦相手を阻止するさまざまな道具を持っている。緑白は防御的クリーチャー以外の何でも破壊できる。再生や警戒といった能力を持つ防御的クリーチャーが大量にいる。加えて、緑白は防御的攻撃的の両面で自軍のクリーチャーを強化することに最も長けている。

 セレズニアも、この文書の記述と近いものになった。

 緑白の勝利への道は2通りある。1つ目が、単純に大量のクリーチャーで攻撃すること。これができなければ、緑白はプランB、つまり耐えて育てる作戦を取ることになる。どこかの時点で、緑白の軍勢は単純に相手を圧倒できるだけの大きさまで育つのだ。

 

黒緑

 黒緑は、世界にその歪んだ感性を感染させることを狙う不気味なギルドである。疫病や菌類のように、黒緑は支配を確立するために成長を続ける。黒緑は生死を自身の探求の道具と見ている。

 メカニズム的には、これは3つの方法で行なわれる。1つ目に、黒緑は常時、特にクリーチャーなどの脅威を生み出し続けている。これは黒緑の成長の部分である。この成長はいくつもの方法で行なわれる。黒緑は緑でトークン・クリーチャーを使え、黒と緑の両方で+1/+1カウンターを置くことができる。

 次は死である。黒緑、特に黒は、自軍のクリーチャーをリソースとして使うことに長けている。一方で育て、一方で生け贄に捧げるのだ。黒緑はこれを生命のサイクルだと考えている。

 このバージョンの発掘は、その再利用のコストの一部として切削を含んではいなかった。このバージョンのこのメカニズムは、ライブラリーから引くかわりに墓地から引いてくることができるようにする柔軟性を持たせるため、単にコストが高くなっていた。

 しかし、最も魅力的な部分は、再利用である。黒緑は墓地の王であり、カードを墓地から戻してくることに最も長けている。黒緑が作るものを殺すことはできても、黒緑は単にそれを戻し続けてくるのだ。黒緑のメカニズム、「回収/reclaim」は再利用のメカニズムである。回収を持つカードは、ドローの代わりに墓地から手札に入れることができるのだ。そうして、回収を持つカードを何度も何度も使うことができる。

 黒緑の戦闘計画は単純である。脅威を出し続けるだけだ。脅威が不足したなら、墓地からもっと持ってくるのだ。黒緑の脅威は、ただ戻って来続ける。やがて、対戦相手の防御をすり減らすことになる。

 

赤白

 赤白は戦闘のギルドである。赤白は、常に戦いを求めている。赤白は対立を拳で解決するのが好きだ。しかし赤白には道義心があり、自身の力を使う正しい方法を見つけようとしている。赤白はよい理由を見つけ、そして必要なあらゆる手段でそれを達成しようとすることが多い。彼らは心ある自警団員なのだ。

 メカニズム的には、これは2つの方法で行なわれる。赤白の最大の脅威は、そのクリーチャーである。つまり、勝つためには攻撃することが必要となる。しかも素早く。白ウィニーとスライが交わることを想像してほしい。赤白はのんびりすることはない。第1ターンから手加減無用なのだ。これは、赤白の赤の部分の得意分野である。直接ダメージはクリーチャーが突撃する道を開く助けとなる。そして対戦相手のライフを削る邪魔にはならない。

 ここて提出されたこのバージョンの光輝は色と同じくクリーチャー・タイプを参照していた。光輝の把握が難しいと思う諸君、これはもっと難しかったのだ。

 緑白同様、赤白は組織の価値を理解している。赤白は自身のことを、任務を遂行する軍だと考えている。そのため、赤白には大軍を助ける呪文が大量に存在する。中には自軍を攻撃的に強化するものもあれば、自軍を防御的に守るものもある。赤白のキーワード、光輝はまさにこの役割にふさわしい。光輝呪文は、必ずクリーチャーを対象にする。その後、選択したモード(色かクリーチャー・タイプ)に応じて、その呪文はそのクリーチャーと、その選んだ特性を共有するそれ以外のクリーチャーを対象とする。

 赤白は『Control』で圧倒的に速く、最も攻撃的なギルドである。他のギルドはどれも、時間をかけて強くなっていくという要素を持つ。赤白はそうではない。素早く勝つか、そうでなければ大抵の場合負けるのだ。

 

 3つ目の技術は、各ギルドが2つのギルドと重なるようにすること(『Control』では白、黒、緑)で、2つのギルドそれぞれでうまくプレイできても異なるようにすることができる。各色の特徴的性質は以下の通り。

 ここでは、ギルドがメカニズム的に重なり合うことを示しているが、これはデザインよりもデベロップがずっと多くの時間を費やしたことである。今日では、これはもっとずっと初期に考えることになっている。

 この文書で書き落としていたこと、ただしカードファイルでは行われていたこととして、色のバランスを取るために青単色や赤単色のカードを増やす必要があるということがある。これによって『ラヴニカ』ブロックで青赤のアーキタイプがドラフト可能になったのだ。

 緑白と赤白の重なりは、ギルドは大きな集団的感覚で考えるということである。両ギルドとも、大量のクリーチャーを出す。それぞれのギルドでの白の役割は、それらを強化し守ることである。そのため、デザイン・チームは白に自軍のクリーチャーを強化する大量の呪文や能力をもたせるようにした。

 青黒と黒緑の重なりは、自軍のパーマネントをリソースとして用いる意思である。青黒と黒緑は、カード・アドバンテージを作り出すギルドである。(青黒はカードを引くことで、黒緑は墓地からカードを戻すことで。そして、そのカード・アドバンテージを他の効果に引き換えるのだ。デザイン・チームはこれを理解し、黒に生け贄をコストとして使う効果を(特にクリーチャーで)多くした。

 緑白と黒緑の重なりは、成長への信頼である。緑白は圧倒し、黒緑はすり減らすが、どちらも大量のクリーチャーを作ることを信頼している。そのため、デザイン・チームは緑に通常より多くのクリーチャー・トークン生成能力を与えた。

 私は、初代『ラヴニカ』ブロックの出来に大いに満足している。我々のデザインのありかたにこれ以上に影響を与えたセットはそうない。私の見解では、これは開発部にブロックやセットの作り方を再検討させたといえる。私のデザイン・チーム、ブライアン・シュナイダー/Brian Schneiderのデベロップ・チーム、ブレイディ・ドマーマス/Brady Dommermuthのクリエイティブ・チーム、その他初代『ラヴニカ』ブロックを作ることに寄与した人々に心から感謝する。

 見ての通り、『Control』のデザインには多くの要素が含まれている。願わくば、この文書がデザイン・チームガ意図したことの大きな理解の助けにならんことを。質問があれば、ぜひ私に連絡してくれたまえ。

 デベロップ・チームが『Control』で何をするかを見るのが楽しみである。

 ご清聴に感謝する。

 マーク・ローズウォーター

 追伸。各ギルドの必要枚数をまとめたものは以下の通り。

ギルドの内訳(38)

コモン(13)
単色(8)

ギルド魔道士(2,各色1) タップを含む起動型能力2つ、弱い同色能力、強い色違い能力
色違いの起動コストを持つクリーチャー(2、各色1) タップを含まない起動型能力1つ
キーワード・メカニズム(4、各色2) ギルドごとにクリーチャーか呪文かは異なる

多色(4)

小物(1) このメカニズムの大型のレア版が存在する
キーワード・メカニズム(2)
自由呪文枠(1)

土地(1)

フィルターランド(1) タップして無色、ギルドの色2色のフィルター

アンコモン(15)

単色(8)

ギルド関連のクリーチャー(2、各色1) もう一方の色をプレイしていたら強化されるクリーチャー
強化可能呪文(2、各色1) もう一方の色を使ってプレイしていたらキッカーされる呪文
キーワード・メカニズム(4、各色2)

多色(7)

標章(1) 生け贄に捧げて効果を得られるエンチャント
キーワード・メカニズム(1)
何かクールなカード(5)

レア(10)

多色(8)

ギルドの指導者(1) 伝説のクリーチャー
ギルド内の他の伝説のクリーチャー(1)
大物(1) 小物の大型、伝説版
キーワード・メカニズム(1)

アーティファクト(1)

装備品(1) 装備コストは無色またはCD

土地(1)

2色土地(1) 2点のライフでアンタップインになるタップイン土地


 マジックのデザインの歴史の一端に触れることを楽しんでもらえたなら幸いである。振り返って諸君に話せたことは私にとって非常に楽しかった。いつもの通り、この記事や初代『ラヴニカ』に関する意見を、メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrInstagramTikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、『団結のドミナリア』のプレビューを始める日にお会いしよう。

 その日まで、あなたが愛するものの歴史が学べますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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