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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

『アン』の箱詰め その2

Mark Rosewater
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2020年2月17日

 

 先週、私は2月28日発売の銀枠の箱セット『Unsanctioned』のデザインについての話を始めた。今日はその第2部になる。この製品に含まれている16枚の新規デザインそれぞれについて見ていっている。

B.O.B.(Bevy of Beebles)(ビーブルの群れ)

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 新カードをどのようなものにするかを企画するために初めて集まったとき、私は、新しい銀枠プレインズウォーカー・カードが必要だと言った。『Unstable』には《Urza, Academy Headmaster》がいたが、私は世界で2枚目の銀枠プレインズウォーカーが必要だと考えたのだ。プレインズウォーカーの顔ぶれ(少なくとも、新規プレインズウォーカーの作成)は開発部ではなくフランチャイズ・チームが管轄するので、私は銀枠プレインズウォーカー・カードのアイデアをいくつかまとめて彼らのもとへ向かった。銀枠セットの主なルールとして、黒枠でやりたいことは黒枠に取っておくことにしている。プレインズウォーカー・カードについても同じことが言えるのだ。そのプレインズウォーカー・カードを黒枠セットで作りたいとフランチャイズ・チームが考えたなら、私はそれを銀枠セットで作らない。その会議はこのようなものになった。

:【検閲済みアイデア】はどうだろう?

相手:ありえるんじゃないですか。

:それなら、【検閲済みアイデア】はどうだ。

相手:最初のやつのほうがいいですが、これもありえるんじゃないですかね。

:【検閲済みアイデア】についてはどう思う?

相手:それについて話し合っています。結論はまだ出ていませんが、おそらく理論上はこれもありうるでしょう。

:【検閲済みアイデア】はどうかね?

相手:それについては他のメンバーと相談させてください。

:【検閲済みアイデア】はどう思う?

相手:ああ、それは今やっていますよ。

:【検閲済みアイデア】は?

相手:それも他のメンバーと相談する必要があります。

:ビーブルの集合体というのは?

相手:それはおまかせします。

 

 採用するプレインズウォーカーがビーブルの集合体だと決まったことで、これまでのビーブルはすべて青だったことから、このカードが青になることも決まった。目の前に残された問題は、クリーチャーの群れがプレインズウォーカーであるというアイデアを実際のところどう扱えばいいかだった。

 私の直感は、興味深いことに、リチャード・ガーフィールド/Richard Garfieldの、ただし、マジック以外の作品から来たものだった。何年も前、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストはリチャードが関わるグリーマックス/Gleemaxというプロジェクト(ウェブサイト上のゲーム・ポータル)を立ち上げた。グリーマックスでのゲームの1つが、ゴブリンのゲーム/the Goblin Gameというゲームだった。リチャードには素敵なアイデアがあり、それはそのゲームにも採用されなかったと思うが、ずっと私に突き刺さっていた。そのアイデアとは、ヒットポイントがゴブリンで示されるゲームというものだった。つまり、自分のゴブリンが多ければ多いほど健康であり、ダメージを受けたらゴブリンが減っていくのだ。私は《B.O.B.》のデザインを始めたときにそれを思い出したのだった。ビーブルが忠誠度だったらどうだろうか。

 それは一体どういうことなのか。忠誠度を得るたびに、青の1/1のビーブル・クリーチャー・トークンを生成し、忠誠度を失うたびに、ビーブル1体を生け贄に捧げるのだ。ルール・マネージャーのイーライ・シフリン/Eli Shiffrinにこれが黒枠で行ないうる範囲ではないことを確認したところ、「絶対ない!」との答えをもらった。

 これを成立させるため、忠誠度を監視するためにビーブルを増やしたり減らしたりする全体能力が必要だとわかった。また、初期ビーブル忠誠度を得るため、入場効果も必要となる。つまり、2つ分の能力の枠があることになる。1つはプラスの能力で、1つはマイナスの能力だろう。私はそれを[-1]と[+1]にすることに決めた。まず最初は[-1]から考えた。これを使うためにビーブルを生け贄に捧げなければならないので、何か実用的なものにする必要があるのは明らかだった。《B.O.B.》は青単色のプレインズウォーカーなので、「カードを1枚引く」は完璧にふさわしいと考えた。

 [+1]能力は、ビーブルのフレイバーを扱うものでなければならない。ビーブルの唯一のメカニズム的共通点は、ブロックされにくいということである。それでは、[+1]能力でビーブルをブロックされないようにするというのはどうだろうか。これは[+1]には多少強く、[-1]能力とは何の関連性もなかった。何か関連性を作り出すような制限はないだろうか。ブロックされないビーブルの数を自分の手札の枚数に基づいて制限する、という方法がある。そうすれば、生け贄に捧げることでブロックされなくするビーブルの数を増やすことになるので、生け贄の悪印象を抑える助けにもなる。

 これが決まったら、あと残りは《B.O.B.》のカード名決めである。これまでのビーブルすべての名前に倣い、これもBから始まらなければならない。そうなると、「『Bから始まる群れという単語』 of Beebles」であるべきなのは明らかだった。いくつかの選択肢があったが、「Bevy of Beebles」が一番響きが良かった。ここで私は、カード名の省略形を作ればB.O.B.になり、これはこのカードの呼名としてクールなものだと気がついたのだった。

Boomstacker(流行り重ね)

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 『Unsanctioned』には新カードは16枚しか必要なかったので、正式なデザイン・チームは組織しなかった。ギャビー・ワイドリン/Gaby Weidlingとマックス・マッコール/Max McCallとともに、私は16枚の新カードのあるべき姿だと考えるものの大枠を作った。その後、その大枠を開発部の全員が見られるところに掲示し、デザインを提出するように頼んだのだ。銀枠デザインには微妙なニュアンスが大量に必要なので、通常のマジックのカードよりも難しい。もっともよくある誤りには次のようなものがある。

黒枠である

 多くの人々が、そのカードは通常の黒枠のセットで可能だと言わざるを得ない銀枠デザインを作る。その境界線を理解するのは難しい。ルール上何が可能で何が不可能かということ、黒枠では禁止すると決めていること(サイコロを振るなど)、クリエイティブ的に銀枠に割り振られているもの(ビーブルなどは今は銀枠だけの存在だ)の理解に基づくものなのだ。

面白おかしいがうまくプレイできない

 もう1つよくある失敗が、一見うまくいきそうだが実際にはうまくいかないデザインである。銀枠カードは、単に初めて目にしたときにクスリと来るだけでは充分ではなく、それを使ったときに楽しいものでなければならない。

成立しない

 銀枠カードがルール的に狂っているので、この問題はおかしなものに聞こえるだろう。ここで言っているのは、その挙動に内部の論理や直感性がないことである。最高に奇妙な銀枠カードは、何をするかが明らかで、単に黒枠ルールが技術的に扱えないというだけのものである。例えば直接火力のトランプルや、永遠に残る効果を生成するエンチャントといったものは何も混乱を招くものではなく、単に(いくらか)秩序立った黒枠ルールの範疇で作ることができないというだけである。カードが何かをするように言っているが、すぐに何が起こるかが曖昧になってしまうデザインを受け取ることはよくある。その基準としては、そのカードを多くの人に見せ、そしてそのカードが何をすると思うか言ってもらうという方法が良い。全員がほぼ同じことを言うのでなければ、なにか問題があるのだ。

 これはつまり、ほとんどの銀枠デザインはフルタイムのカード・デザイナーの手によることが多いというこである。『Unsanctioned』に関して言えば、大多数のデザイン作業はクリス・ムーニー/Chris Mooney、アリ・ニー/Ari Nieh、そして私の手によるものである。(前者2人は、グレート・デザイナー・サーチ3の決勝進出者3人中の2人である。)特に、この《Boomstacker》は、クリス・ムーニーがデザインした。これは我々が言うところの「脳みそから印刷へ行った」カード、つまり、クリスが最初に作ったものがほぼそのまま最終的に印刷されたものである。我々はターンごとにサイコロを1~2個増やすようにすべきかどうか弄り回したが、最終的には、クリスがデザインしたもので行ったのだ。

Flavor judge(フレイバー・ジャッジ)

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 我々が作る製品には、キーアートと呼ばれるものが存在している。そのセットの本質を表した1枚のアートで、大抵のブースター製品ではブースター・ボックスに描かれているものだ。

 『Unsanctioned』に関して言えば、この製品の箱に描かれている。通常、キーアートは箱を作るために必要なので製品に関して一番最初に発注するアートであり、それはカードを設計するよりも前に始まることになっている。(設計するには個別カードのアートが必要なのだ。)つまり、『Unsanctioned』に関して我々が最初に目にしたアートは、マイク・バーンズ/Mike Burnsの手によるこれだったのだ。

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 上席アート・ディレクターのケヴィン・スミス/Keven Smithは、キーアート用のカード・コンセプトを記した。この製品は3つの銀枠セット(『Unglued』『Unhinged』『Unstable』)を再現しようとするもので、セット名は仮称『Unboxed』であった(さまざまな理由から、別の名前を採用することになった)ので、ケヴィンは銀枠製品の常連であるクリーチャーによるボクシングの試合というアイデアを採用したのだった。ここから、ニワトリをレフェリーにしてリスと戦うゴブリンが生まれたのだ。このアートができて、全員に見せられると、我々はすぐにそのニワトリに心を奪われた。私は、「このニワトリのレフェリーのためのカードを作らなければ。」と言ったのだ。

 銀枠カードで私が好きなことの1つが、カードの部分についてのアイデアを書き出し、あとで成立する組み合わせを見つけられるか探すことである。「フレイバー・ドラフト」と呼ばれるマジックのフォーマットでは、プレイヤーはセットをドラフトし、そしてフレイバー的に筋が通らないことが起こったと思ったらジャッジ(フレイバー・ジャッジと呼ばれる)を呼んでそれが起こりうるかどうか裁定してもらうのだ。フレイバー・ジャッジが、フレイバー的に筋が通っていると裁定しなければ、その処理や効果は中断されるのだ。これは銀枠カードで扱うべきクールな空間だと考えた。

 そこで、私がデザインの大枠を最初に造ったとき、このカードはフレイバー・ジャッジと呼ばれる(キーアートと同じニワトリで、同じアーティストの手による)ニワトリのレフェリーであり、フレイバー・ドラフトの楽しさを再現したものであるべきだと言ったのだ。確か初期にいくつかの試作デザインをしたが、諸君が手にしてプレイできるバージョンを作ったのはクリスだった。

 最後にもう一言。『Unglued』では、ニワトリはそのセットの部族要素だった。何年も経って、クリーチャー大更新/the Grand Creature Updateと呼ばれる、大量のクリーチャー・タイプの更新を行なった。そこで行なったことの1つが、さまざまな鳥(鷲、隼など)を鳥というクリーチャー・タイプに変えたことだった。クリーチャー大更新は黒枠カードにしか適用されなかったので、銀枠のニワトリはニワトリのままだった。再録について話し合ったとき、《Chicken a la King》を再録することに決めたので、これが鳥に影響しないのは奇妙だと私は主張した。鳥には偉大な部族ロードがいたことがなく、《Chicken a la King》は実際非常に強かったのだ。すべて再録を作るために更新しているので、遠い昔に終わらせているべきだったことをして、他の鳥のタイプと同じようにニワトリも鳥にしよう。つまり、《Flavor Judge》のクリーチャー・タイプは鳥であり、ニワトリではないということになる。

Infernius Spawnington III, Esq.(三代目地獄守落とし子左衛門様)

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 『Unsanctioned』の目標の1つは、プレイヤーが『Unstable』で欲しいと思っていたが我々が作ることができなかったカードの一部を作ることだった。それらのカードの1枚が、3枚目の《Infernal Spawn of Evil》カードだった。その歴史について説明しよう。何年も前、1996年ごろ、ロン・スペンサー/Ron Spencerがユーモラスなスケッチを提出してきた。アートの工程として、アーティストは最初にスケッチを提出し、アート・ディレクターの承認を受けてから最終的な絵にかかるのだ。ロン・スペンサーは恐ろしい黒のクリーチャーを描くことになっていた(彼の得意分野の1つだ)が、実際のスケッチでなく、可愛らしい小さなハツカネズミがココアを飲んでいる絵を提出してきたのだ。誰もが大爆笑した。そして、ロンはその後で真面目なスケッチを提出してきた。この偽のスケッチは全員がとても面白いと考えたので、当時のマジック・アート・ディレクター(当時は1人だけだった)が掲示したのだった。

 時は流れて『Unglued』のデザインのとき。私はユーモラスなカードを作ろうと探していて、ロンのスケッチを思い出したのだ。そして、あのアートをカードにしたいと主張した。ロンの元の冗談を踏まえて、私は、これはこの上なく恐ろしいクリーチャーで、可愛らしい外見はそのクリーチャーの実際の怖さと対照的である、というアイデアを採用した。そして、それに《Infernal Spawn of Evil》(邪悪なる地獄の落とし児)と名付けたのだ。これの恐ろしさを再現して銀枠カードにするため、私はこれに、手札から公開して「私が来たぞ」と宣言することができるようにするメカニズムを持たせた。この恐ろしいクリーチャーが近づいてきているというだけで、対戦相手は恐怖のあまり1点のライフを失ってしまうのだ。実際に戦場に出たときに恐ろしいものである必要があったので、私はこれを重いクリーチャーにした。飛行と先制攻撃を持つ7/7にしたのだ。当時、先制攻撃は黒が2種色だった(今は3種色だ)。

 最後にもう1ネタ。当時、我々はデーモンというクリーチャー・タイプを使うのを止め、代わりにビーストやホラーを使っていた。そこで、それをネタにするため、デーモンというクリーチャー・タイプにビーストと書き込みを入れたのだ。実際のカードがこれである。

 そして、再び時は流れて『Unhinged』のデザインのとき。《Infernal Spawn of Evil》は『Unglued』で大好評だったので、新しいものを作ることにした。はっきりした冗談は、それを《Infernal Spawn of Infernal Spawn of Evil》にしたことである。これは、元の《Infernal Spawn of Evil》の子供だったので、もっと重く(点数で見たマナ・コストは9でなく10)、大きく(7/7でなく8/8)した。そして飛行と先制攻撃という同じキーワードを与え、さらに新しくトランプルも持たせた。元のビーストというクリーチャー・タイプも残して子供を追加したが、冗談を踏まえて、ビーストに線を引いて消してデーモンと書き加えた。(『Unhinged』当時までには、デーモンというクリーチャー・タイプをマジックに復活させていたのだ。)

 このデザインの難しいところは、元のカードの主なメカニズムをどう拡張するかということである。手札からダメージを与えられるクリーチャーをどう超えられるだろうか。ライブラリーからダメージを与えられるクリーチャーというのはどうだろうか。この能力は変わらず{1}{B}と宣言(今回は「私も来たぞ」)を必要とするが、ライブラリーから探すのは手札に持つだけよりも難しいので、ダメージを1点から2点に上げた。もちろん、ロン・スペンサーにアートを描いてもらい、今回も彼は大ホームランを飛ばした。そのカードがこれだ。

 『Unstable』のデザイン中に、もちろん3枚目の「Infernal」なクリーチャーを作ることができるということに気づいていたが、そこにはいくつもの問題があった。

  1. パターンに則って、3枚目のInfernalは{10}{B}で9/9でなければならない。(点数で見たマナ・コストが1点増え、黒マナ・シンボルが1個減る。)これはちょっと扱いにくいように思われた。
  2. もう1つパターンに則ると、最初のInfernalは手札から作用した。2枚目のInfernalはライブラリーから作用した。それ以外にどこから作用することができるだろうか。
  3. 『Unglued』と『Unhinged』では各カードそれぞれで描いていた、つまり全体をグラフィックデザイナーが描いた一枚絵であるかのようにカード枠を手作りしていた。『Unstable』(や『Unsanctioned』)ではその手法は取っていないので、「Infernal Spawn of Infernal Spawn of Infernal Spawn of Evil」は収まりきらない。

 最終的に、我々はこれらの問題の解決策が見つからず、このカードを『Unstable』で作らないことにした。

 そして、再び時は流れて『Unstable』の'発売後。多くのプレイヤーが『Unstable』を心から楽しんだが、3枚目のInfernalがセットに入っていることを期待していて、入っていなかった。それについて私へ非難が届いたので、『Unsanctioned』を手掛けているとき、それを見つけ出すことを約束したのだ。実際、我々はそのカードをどうやって成立させるかがわかるよりも前にアートを発注した。(もちろんロンに。)やらなければならないというプレッシャーが動機として働くと考えたのだ。

 まず、明らかな話から入ろう。{10}{B}で9/9クリーチャーでなければならない。クリーチャー・タイプを3つ持たなければならない。デーモンとビーストであってその両方がお互いに訂正しあっていて、子供ではなく孫である、というアイデアを採用した。また、飛行、先制攻撃、トランプルを持たせ、もう1つ新しく速攻を持たせた。これを戦場に出せたなら、即座に大量のダメージを与えることになるのだ。

 次に、私は主たるメカニズムを別の観点から扱うことにした。手札やライブラリーから作用することを置いておくと、そのカードは何をしたのか。1枚目のInfernalは1点のダメージを与えて「私が来たぞ」と言い、2枚目のInfernalは2点のダメージを与えて「私も来たぞ」と言った。つまり、3枚目のInfernalは3点のダメージを与えて、何か、「私もやっぱり来たぞ」的なことを言うことになる。

 3枚目のInfernalを他の領域から作用するようにしないなら、それを戦場に出す方法が必要である。3枚とも同じデッキに入れたくなるように、他の2枚のInfernalなクリーチャーと組み合わせられるそんな方法はあるだろうか。最初の2枚はどちらも公開するものだった。そこに注目することはできないだろうか。最初のバージョンでは黒のカードを公開することが必要となっていたが、(単に手札のカードを気に入ったからと対戦相手に見せるのではなくゲーム内のカードや効果によって)公開されたならどのカードでもよくしたほうが楽しいと判断した。コスト低減メカニズムと合わせて、我々はその3点のダメージを入場効果にし、戦場に出たところなので「私はここだ」と言わせることにした。

 最後の問題であるカード名は、アートによって解決された。これがシリーズの3枚目であることを、同じギャグを重ねる以外の方法で示すにはどうしたらいいか。親や祖父母の名前を引き継ぐ人々が使うもう1つの命名の慣例をアートが示していたのだ。それをもう少し仰々しく聞こえるものにすることも面白かった。

 このカードのデザインは大問題だったが、その最終的な出来栄えに心から満足しているので、取り組んだことを嬉しく思っている。

Pippa, Duchess of Dice(サイコロの公女、ピッパ)

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 《Pippa, Duchess of Dice》は敵対色の伝説サイクルの1枚である。決まっていった順番により、彼女は青の起動型能力を持つ緑のクリーチャーになることが決まった。また、私が『Unsanctioned』の新カードに求めたリストの中に、『Unglued』と『Unstable』でやった、サイコロを振るということが記されていた。どこで使うかわからずに私が持っていたアイデアのかけらの1つが、無作為化されたトークン・クリーチャーというものだった。『Unglued』で、私は《Elvish Impersonators》というカードを作った。

 それを唱えたとき、6面体サイコロを振ってパワーを決め、もう一度振ってタフネスを決める、ということは結果は36通りありうることになる。私はこのカードが非常に気に入り、同じような何かをトークンに採用する方法がないか興味を持った。全く異なるパワーとタフネスに言及するだけでも少々やりすぎに思えたので、正方(1/1、2/2など)に限るというアイデアに落ち着いた。サイコロを振ってトークンの大きさを1/1から6/6の範囲で決めるのだ。これは楽しそうに思えて、また大型のクリーチャー・トークンを生成する緑のクリーチャーらしいことに思えた。(白は小型クリーチャー・トークンを出すほうが得意である。)

 このカードは6面体サイコロを振って決定するトークンを生成することになる。おもしろそうだろう。しかし、青の起動型能力は何をできるのか。青はサイコロを振り直すことができ、トークンのサイズを決めるためにサイコロを振るのだ。ここに何かあるかもしれない。問題は、青の振り直しをターンに1回だけにしたいということであった。また、トークン生成もターンに1回に限りたかった。この2つの能力それぞれにタップが必要だとしたら、どのように相互作用させればいいだろうか。解決策は、銀枠らしい、突飛なアイデアだった。

 トークンを何でもいいとするのではなく、サイコロでなければならないとしたらどうだろうか。サイコロ・トークンにしたらどうだろうか。つまり、ゲーム上の意味から実際のサイコロであるパーマネントを使う、ということになる。実際、プレイヤーはクリーチャー・トークンを表すのにサイコロをよく使っているが、ゲーム上の理由で、これらは実際にサイコロなのだ。それに意味を持たせるのはどうだろうか。それはなぜ重要なのか。実際のサイコロであれば、青の振り直し能力はそれに作用できるからである。(そう、後知恵で言えば、カード上でそれをもっと明白にするべきだった。)この青の能力で、あらゆるサイコロ振りに使うことができ、また、サイコロ・クリーチャー・トークンに使ってそれを振り直す機会を与えることができるのだ。この全体の仕上がりは、楽しい統率者だと思えるものだった。

唯一の感動……じゃないよ

 またも時間が来てしまった。私が語るのを楽しんだのと同じように、諸君もこれらの話を楽しんでくれていれば幸いである。この記事、『Unsanctioned』、今日語ってきたカードのそれぞれについて何か意見があれば、メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrInstagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、その3でお会いしよう。

 その日まで、あなたが『Unsanctioned』であなた自身の楽しい物語を作りますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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