《風への放流》はパーマネントのタイプを問わず追放できるインスタント除去……であるが、それは唱え直すことが可能だ。しかも唱え直すのにはマナの支払いが不要。これでクリーチャーなどを対処したところで、本当に一瞬の時間稼ぎにしかならない……ので、実はこの呪文は自分のパーマネントに対して用いた方が良い結果に繋がる。クリーチャーなどが戦場に出たり、唱えたりした際に誘発する能力。それを使いまわしてアドバンテージを得ようというのがより強い運用なのだが、これも上回るさらに一段階進んだ使い方がこのデッキに秘められたコンボだ。

　《嘘の神、ヴァルキー》は《星界の騙し屋、ティボルト》というもう一つのモードを持っており、唱える際にどちらかを選ぶ。これを2ターン目にヴァルキーとして唱える。続けて3ターン目に《風への放流》で追放する。すると……追放されたヴァルキーをもう一度唱える際に「ティボルトのモードを選んでも構いませんよ」というオプションが行使できるようになる。ヴァルキーとして追放されても、マナを支払わずにティボルトとして唱えてOK、やっちゃいな！と。ティボルトは7マナのプレインズウォーカーだけあって、制圧力にもアドバンテージ獲得にも長けた超強力プレインズウォーカーだ。3ターン目に叩きつければ真面目にクリーチャーを展開するデッキなどボコボコにできてしまうだろう。

　《風への放流》コンボはティボルトが登場してから用いられてきたマニア好みの逸品だが、2022年にはこれのさらなるオプションが。試作能力を持ったアーティファクトである。

　《秘儀の代理者》《ファイレクシアの肉体喰らい》はどちらも7マナと超ヘビー級のアーティファクト・クリーチャーだが、試作であれば計3マナと一気にお手ごろになる。その分サイズがダウンすることで、代理者は能力がパワーを参照するので再利用できる呪文が限られ、肉体喰らいは絆魂持ちなので回復量が落ちるし護法で支払わせるライフも減少する。それを加味しても3マナに見合う戦力なので、デッキには無理なく採用できる。

　これらの試作で十分に戦える連中を放流すると、試作ではなく完成体としてマナを支払わずに唱えられる。4マナ以下の呪文を使いまわし、パワー7で襲い掛かる！どっちもゲームを決定づける激ヤバなフィニッシャーになってくれるというわけだ。

　《秘儀の代理者》は《風への放流》の対象として優れているだけではない。これもテクニカルなコンボのパーツになる。相方は《真実の視認》だ。このカードは手札から唱えた場合はライブラリーの上から3枚見て1枚を手札に加える、THE普通な性能の呪文である。インスタントでないことを考えるとちょっと弱めかなぐらいだな。しかし手札以外から唱えることに成功した場合は、その3枚を全部まとめてプレゼント！大盤振る舞いなアドバンテージ獲得源になってくれるのだ。

　これをどうやって手札以外から唱えるか？その答えが墓地にある時に《秘儀の代理者》の能力で対象にし、墓地から唱えるということ。代理者は試作で唱えてもパワー2、そのため《真実の視認》を拾い上げることが可能。3マナで2/1と手札3枚増量というのはむちゃ強だな……放流から飛び出て《絶滅の契機》とか4マナの効果が大きいソーサリーなんかを拾っても良いし、この代理者を臨機応変に活用してゲームの優位を掌握し続けよう。

　ちなみに視認はドロー（引く）ではなく手札に加えるという処理になるので《覆いを割く者、ナーセット》などの1ターンに引ける枚数に制限を設けるようなカードの影響も受けずに手札を増やせることを忘れずに！