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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ラクドス・ミッドレンジ:パワーカードはフォーマットを越える(パイオニア)

岩SHOW

 「パワーカード」の定義とは何か?

 それは単体でゲームに及ぼす影響が大きいカードに対して使われる、一種の称号。構築戦では60枚以上のデッキを構築し、それらを総動員して勝ちに行く。そんなカードの中でも「これ1枚で十分に勝ててしまう」という頭抜けたカードこそ、パワーカードと呼ばれるべき面々だ。

 では具体的にどういうカードが頭ひとつ飛び抜けているものなのだろう。今回はクリーチャーに絞って考えてみよう。

 まずはクリーチャーにとって最も大事な要素、パワー/タフネス。1/1と3/3では単純計算で3倍の差がある。1ターンでも早く勝ちたいのでパワーが高いものは尊ばれ、ダメージやマイナス修整を与える除去で対処されにくい高タフネスも信頼できるもの。

 サイズは非常に大事だが、それを得るためのコストとのバランスも重要だ。マナ総量が小さい、ないしは現実的なものであり、ライフや生け贄といった追加コストなども極力ない方が嬉しい。コストパフォーマンスに優れたもの、これ超重要。

 トランプルや二段攻撃といったダメージに関するもの、飛行や威迫などのブロック回避、呪禁に破壊不能など除去耐性……各種キーワード能力を持っていることも重要だ。これらの能力は基本的なものにして、状況に左右されずに働きやすいのでブレがない。

 そして最後に常在型、誘発型、起動型の各種能力。状況や相手デッキに左右されやすいものではあるが、即効性がありドローや除去などのカード1枚で合計2枚分以上の仕事が見込める=アドバンテージ獲得に繋がる能力はゲームの展開を左右する。

 特に現代マジックでは、この即効性が重要視される傾向にある。クリーチャー除去の質が全体的に向上しており、《冥府の掌握》《運命的不在》などインスタントのお手軽除去がたっぷりあるこの時代。戦場に出してから成果を得られるまでにタイムラグが生じるクリーチャーはパワーカードとしての信頼度がやや落ちてしまう。カードアドバンテージに繋がる即効性ある能力、すぐさま攻撃できる速攻。そういったスピード感も併せ持っていればまさに天下無敵。

 『団結のドミナリア』においてパワーカードであると世界中のプレイヤーが実感している1枚は《黙示録、シェオルドレッド》だろう。

 4マナ4/5とサイズとマナ総量のバランスは良し。タフネスが高いのが特にエラいね。

 そして能力……これはカードアドバンテージに繋がるものではない。相手がドローすれば2点のライフを失うというライフを詰める能力。これは戦場に出してターン終了すれば次の相手のターンに即座にライフを失わせることが可能。インスタントを差し込まれるタイミングは複数回あるが、比較的即効性のあるもの。

 さて、この2点喪失……これはある意味速攻持ちで攻撃したようなものではあるね。2回以上誘発させられれば4点もライフを削り取る。攻撃せずにライフを減らせるのは、テキストには印刷されていないが警戒能力を持っているようなものだ。

 そしてこちらのドローには2点回復がついてくる。《勢団の銀行破り》をあらゆるデッキが採用している中、ドローにデメリットとメリットを同時に付与するのはかなりイカしている。カードアドバンテージには無関係だが、ライフというリソースを巡るアドバンテージ合戦においては屈指のパワーカードと呼んで差し支えないね。

 サイズで上回るクリーチャーも接死で相討ちに持ち込んでしまうし……というわけでスタンダードを代表する1枚として君臨するシェオルドレッドが……

Kim, Jeongheon - 「ラクドス・ミッドレンジ」
チャンピオンズカップ JAPAN & KOREA エリア予選 @ RollingDice (韓国・ソウル) 準優勝 / パイオニア (2022年9月24日)[MO] [ARENA]
2 《
1 《
4 《血の墓所
4 《憑依された峰
1 《硫黄泉
4 《荒廃踏みの小道
2 《バグベアの居住地
2 《目玉の暴君の住処
1 《ロークスワイン城
1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼
1 《反逆のるつぼ、霜剣山
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ
-土地(24)-

4 《税血の収穫者
1 《死の飢えのタイタン、クロクサ
4 《砕骨の巨人
3 《墓地の侵入者
3 《黙示録、シェオルドレッド
-クリーチャー(15)-
4 《致命的な一押し
4 《思考囲い
2 《戦慄掘り
1 《削剥
4 《鏡割りの寓話
1 《ハグラの噛み殺し
2 《勢団の銀行破り
3 《ヴェールのリリアナ
-呪文(21)-
2 《強迫
2 《引き裂く流弾
2 《壮大な破滅
2 《コラガンの命令
1 《真っ白
1 《碑出告が全てを貪る
1 《魔女の復讐
2 《絶滅の契機
2 《未認可霊柩車
-サイドボード(15)-
mtgtop8 より引用)

 

 スタンダードを飛び越えて、パイオニアにも侵略開始!

 スタンダードではパワーカードで鳴らしていても、カードプールの広い他のフォーマットに移ると埋もれてしまう、なんてことも。しかしシェオルドレッドはこの例に当てはまらない高い実力の持ち主のようだ。

 この法務官を3枚も盛り込んだのは「ラクドス(黒赤)ミッドレンジ」。戦場に複数体並べることができない伝説というデメリットを持ちながらもこれだけ分厚く採用していることに、このカードへの信頼がうかがえる。それだけミッドレンジ(中速デッキ)戦略にはまさにうってつけという存在だ。

 デッキとしては同コンセプトのものがスタンダードでも見受けられる。それを形成するパーツのそれぞれがより強く効率の良いものに置き換わっているものと認識してもらえればイメージしやすい。

 《思考囲い》《致命的な一押し》《戦慄掘り》など軽量で対戦相手の行動を妨害できる呪文で自由なゲーム展開を防ぎつつ、こちらのパワーあふれるパーマネントを押し付けて盤面を掌握する。

 《砕骨の巨人》《死の飢えのタイタン、クロクサ》などカードアドバンテージを獲得する連中は揃っている。

 ここにライフアドバンテージのスペシャリスト《黙示録、シェオルドレッド》を加えることで、序盤にライフを全力で潰しにかかってくるアグロデッキへの耐性を高めつつ、ミッドレンジ同士のにらみ合いになれば自動的に相手を敗北へと向かわせる……これぞラクドスミッドの門番だ。

 このデッキはスタンダードの主役的存在であるシェオルドレッドがパイオニアでも……というインパクトを与えるものであるが、他にもリストを見渡せば《鏡割りの寓話》《ヴェールのリリアナ》《勢団の銀行破り》《墓地の侵入者》などなど他のスタンダードのカードもたっぷりと詰め込まれている。

回転

回転

 土地も《憑依された峰》《硫黄泉》そして前スタンダードの《バグベアの居住地》《目玉の暴君の住処》など近年のセットが与えたカード、スタンダード・プレイヤーたちが所持していそうなカードが大半となっている。

 つまりは、いまスタンダードのデッキを持っているプレイヤーはパイオニアにも挑戦しやすい状態であるということ。《黙示録、シェオルドレッド》をスタンダードのために揃えたのであれば、それだけに留まらず他のフォーマットでも活躍させてやってほしいね。

 パワーカードは君のプレイ範囲を拡げてくれるという番外効果も持っている! 強いカードはどんどんと強いフィールドに引き上げていって、可能性を突き詰めよう!

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