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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

オルゾフ・コントロール(スタンダード)

岩SHOW

 新セットリリース時のMTGアリーナの恒例行事、「メタゲーム・チャレンジ」!

 メタゲームというのは、話せば長くなってしまうが……競技マジック黎明期において提唱された、「実際のゲームをプレイする前の段階のゲーム」という考え方。前提として、マジックはデッキ間の相性というものが存在するゲームである。デッキAを選べばデッキBに対しては有利に戦えるが、デッキC相手には苦戦することになる。つまりはデッキを選択する時点からゲームは始まっている、流行っているデッキや参加するトーナメントにおいて大きな勢力を築きそうなデッキを読んで、それに有利なデッキを持っていってトーナメント開始時点で優位に立ちましょう!という思考であり、今日の競技シーンでは当たり前のこととして浸透している。

 「メタゲーム・チャレンジ」は読んで字のごとく、新環境がリリースされた直後のメタゲームを読み切ろうという挑戦にプレイヤーを誘う。1敗すればチャレンジは即終了という厳しさだが、負けずに7連勝を達成すると……なんと新セットを30パック贈呈! これはやるっきゃないって!と、スタンダード好きはいつも果敢に挑んでいくのである……。

 『イニストラード:真紅の契り』リリース直後のスタンダードのメタゲームを制するには……まず、最強候補というか、このイベント参加者の中で最も多く使われるデッキを定める。

 「白単アグロ」がその席に座ると見て間違いないと思って参加してみたが、事実そうだった。詳しいリストはコチラで確認してね。

 「白単」はクリーチャーを並べて殴って勝つという1つの攻め方しか持っていないので、そこを突けば倒れるデッキではある。あるのだが、その弱点をカバーできる要素として、対戦相手の呪文コストを増大させる手段をいくつか持っている。いかに《影の評決》《食肉鉤虐殺事件》が「白単」に効果覿面であろうと、唱えられなきゃ意味がない。1ターンでも遅れさせることができたなら、その稼いだ時間でライフを削り切るだけの打点を誇るのが白単だ。《スレイベンの守護者、サリア》を筆頭に、《精鋭呪文縛り》《傑士の神、レーデイン》とスタンダードの大半のデッキが被害を受ける強力なコスト増加カードを備えているので、相手を選ばずに戦えるのが白単の売り。

 これらが仕事をすれば理論上、どんなデッキを相手取っても一方的なゲーム展開に持っていけるため、「メタゲーム・チャレンジ」の相棒には白単を選んだというプレイヤーが圧倒的に多かったのだ。

 ではこの「白単」が最強のデッキなのかというと、即答でYESとは言えないのがマジックの面白いところ。「白単」が最大勢力なのであれば、それに勝てるデッキを持ち込んだら良いのだからメタゲームはわかりやすい。難しい相手ではあるが、常にコスト増加クリーチャーを複数繰り出してくるわけではない。先にも述べたように、戦い方はごくシンプルで与しやすい相手ではあるのだ。

 そこのところをしっかり対策し、メタゲームに見事打ち勝った7勝0敗リストを紹介しよう!

Enlightened__Tutor - 「オルゾフ・コントロール」
メタゲーム・チャレンジ 7勝0敗 / スタンダード (2021年11月20日)[MO] [ARENA]
5 《冠雪の平地
6 《冠雪の沼
4 《雪原の陥没孔
4 《陽光昇りの小道
1 《廃墟の地
4 《不詳の安息地
-土地(24)-

4 《ひきつり目
4 《よろめく怪異
4 《象徴学の教授
2 《不吉なとげ刺し
4 《魅せられた花婿、エドガー
-クリーチャー(18)-
4 《命取りの論争
3 《消失の詩句
1 《冥府の掌握
3 《雪上の血痕
3 《食肉鉤虐殺事件
4 《蜘蛛の女王、ロルス
-呪文(18)-
3 《強迫
3 《真っ白
1 《英雄の破滅
1 《魂の粉砕
2 《激しい恐怖
1 《過去対面法
1 《環境科学
1 《壊死放出法
2 《マスコット展示会
-サイドボード(15)-

 

 「オルゾフ(白黒)コントロール」の登場だ。青がないのでコントロールの大きな要素である打ち消しは行えないが、もう1つの重要な要素には長けているカラーリングである。

 そう、それは除去。主にクリーチャーに対して、破壊・追放・パワー/タフネスのマイナス修整……ありとあらゆる方法で盤面からクリーチャーを取り去ることに特化したコントロールの形態で、俗にその戦略は「ボードコントロール」と呼ばれる。

 《消失の詩句》《冥府の掌握》とピンポイントで潰し、

 横並びは《雪上の血痕》と《食肉鉤虐殺事件》で総ざらいにして盤面の支配権を掌握……

 ……とまあ、ここまで読んであることに気付いただろうか。そう、これらは上述のサリアやレーデインによりコストを重くされてしまう呪文である。これら強力ではあるがコストが重めの除去だけでコントロールしようというのは、今のスタンダードでは無謀な行為。

 そこでこのオルゾフ・カラーのコントロールは別のアプローチも備えている。非クリーチャー呪文のコストが重くなってしまうなら、だったらクリーチャーでコントロールすりゃ良いじゃないかという考えだ。

 まずは1マナ圏から、《ひきつり目》と《よろめく怪異》。

 どちらも死亡することでコントロール要素に繋げる便利な1/1だ。

 《ひきつり目》は講義・カードを持ってくることで、《環境科学》でマナを供給したり《マスコット展示会》という戦場をグッと固める1枚にアクセスしたり。

 《よろめく怪異》は-1/-1修整で小粒を除去したり、あるいは宝物生成でコストが増してしまった除去を唱えるのを助ける。どちらも積極的にブロックに参加してライフを保ちながら長期的なプランへと繋げよう。《命取りの論争》で生け贄に捧げてマナ加速&ドローを行うのもグッド。

 《象徴学の教授》も履修1回の時点でカード1枚の元は取れているので、ブロックさせたり生け贄に捧げたり積極的に。タフネス2をキャッチして相討ちが取れればかなりオイシイ。

 《不吉なとげ刺し》もまたこれらのクリーチャーを生け贄に捧げることでドローをもたらし、コントロールにとって瀕死を意味する手札切れの状況を防いでくれる。ライフを失うので常にドローを狙えるわけではないが、濫用は状況によって選ばずに済むので臨機応変に。接死持ちなのでブロック役としても非常に頼もしい。

 そして、このデッキが白黒である最大の理由である《魅せられた花婿、エドガー》の登場だ。

回転

 伝説のクリーチャーなのに4枚入っているということは、このカードが白単に勝ちたいコントロールにとってそれだけの価値があるという証拠に他ならない。

 4マナで4/4と優れたサイズで、攻めても守っても良し。適当なクリーチャーをブロックして死亡したら、今度は棺になって戦場に残り、毎ターン吸血鬼・トークンを生成する。

 このトークンが、1/1と最低限のサイズであっても絆魂持ちなのがコントロールにとっては大きい。コストが増大した呪文を唱えるまでの間、このトークンでブロックしつつライフを微量でも回復させて、とにかく耐える。

 最終的には3ターン後にエドガーが再臨し、トークンを強化して戦場をより分厚くしてくれる。こうやって戦線を維持しながら戦っていくのがこのデッキの狙いだ。

 エドガーは全体除去に巻き込んでも、生け贄に捧げても損もしないし心も痛まない。不死の吸血鬼のポテンシャルを最大限に発揮して、白単をはじめとするクリーチャーデッキを蹴散らすのだ。

 もう1つ、白単に次ぐ勢力である「イゼット天啓」やコントロール同型に対しては、サイドボードの《強迫》《真っ白》と除去とを入れ替える形になる。

 この際、メインデッキのクリーチャーは対アグロにおける耐えるカードから相手のデッキを攻めていくカードをへと働きを変えることになる。標的と定めたデッキ以外に対して無駄になるカードが少なく済むというのはコントロールを使う上で重視したいポイントだ。

 クリーチャーによる盤面維持と全体除去によるリセット。まるで矛盾した戦法の組み合わせであるが、エドガーがそれらをきっちり無駄なく融合させている。白単などのアグロに手を焼いているなら「オルゾフ・コントロール」を使ってみよう!

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