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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

BO1の黒単、アリーナ・オープン初日抜けデッキ特集(スタンダード)

岩SHOW

 これを執筆している現在は、MTGアリーナで行われる大会「アリーナ・オープン」の初日が終わったところだ。

 オープン――開かれた、という意味の通り、参加費さえ支払えば他に条件なく参加可能なトーナメントである。2日制であり、初日を勝ち抜いたプレイヤーのみが2日目に進出できる。そして2日目に規定数の勝利を収めることができたなら……おめでとう、賞金獲得だ!

 お金のためにマジックをやっているわけじゃないというプレイヤーも多いとは思うが、グランプリなどの賞金制トーナメントには夢があるってもんだ。自分の努力やアイディアが明確な形で評価されるというものは嬉しいものだよね。

 アリーナ・オープンは最大で2000米ドルの賞金が手に入る。これはデカい。手に入るものが大きければ大きいほど、言うまでもなくプレイヤー層はガチ度が上がり、一戦一戦の重みが増す。その真剣度、競技マジックの緊張感がそもそも大好きというプレイヤーにとっては、賞金はもちろんのこと、アリーナで熱い火花を散らすことのできる機会というのは何よりも嬉しいものだろう。

 この10月に開催されたオープンでは、フォーマットはスタンダード。世界選手権の熱も冷めやらぬ良いタイミングでの開催だ。

 初日を突破するには2つのルートがある。サイドボードありの2本先取制、通称「BO3」か、メイン戦のみ1本勝負の「BO1」かだ。

 普段はランク戦でBO3をプレイしている層も、オープンではBO1の突破条件の方が比較的難易度が低いというのもあって、こちらを選択することが多くなっている。初心者にもこちらの方が挑みやすいかな。そんなわけでオープンの時期にはSNS上に普段ではお目にかかれないほどのBO1のリストが並ぶことになる。季節を感じる風物詩のようなものだな。

 現スタンダードのBO1となると、まず中心にあるのが単色アグロデッキだ。《老樹林のトロール》《エシカの戦車》を擁する緑単、《軍団の天使》でサイドボードをも使える安定型や《レオニンの光写し》などと非クリーチャー呪文もたっぷりな魔技型などのバリエーション豊かな白単か。

 二大巨塔を筆頭にしてこれに対策するコントロールで挑むか、あるいはアグロ同型をどのように勝つかというのが求められる。

 そんな中、第三のアグロで初日を突破した報告が散見された。その色は黒。黒単も白単に負けぬほどバリエーションがあり、このリストを見ているだけでも面白い。今日はオープン初日を抜けたBO1の黒単を紹介しよう。

行弘 賢 - 「黒単ゾンビ」
アリーナ・オープン(2021年10月) 1日目(BO1) 7勝1敗 / スタンダード (2021年10月16日)[MO] [ARENA]
18 《冠雪の沼
4 《不詳の安息地
2 《目玉の暴君の住処

-土地(24)-

4 《滅びし者の勇者
4 《穢れた敵対者
4 《ワイト
3 《ネファリアのグール呼び、ジャダー
4 《病的な日和見主義者
3 《ドラコリッチ、エボンデス

-クリーチャー(22)-
4 《腐敗した再会
2 《血の長の渇き
4 《冥府の掌握
2 《遺跡の碑文
2 《食肉鉤虐殺事件

-呪文(14)-
行弘賢選手のTwitter より引用)

 

 まずは日本が世界に誇るデッキビルダー、行弘賢の「黒単ゾンビ」。適当に作って初回しで7勝1敗とのことで、さすがはケンちゃんだなと。

 もちろん適当=雑なわけではなく、環境を読んでのカードチョイスが光る。ゾンビデッキは何と言っても《滅びし者の勇者》からのスタートが強力。

 1ターン目に勇者を出したら、後はいかにマナを効率よく使ってゾンビを展開し、勇者をスムーズにサイズアップさせて攻撃を仕掛けていくかを考えていく。

 《ネファリアのグール呼び、ジャダー》は即効性がなく本人がひ弱でも、勇者との相性に優れるデッキのキーカードだ。

 毎ターン安定して腐乱持ちのゾンビを得ていくわけだが、これをさらに有効活用できるカードと組み合わせることでデッキの完成度を高めている。

 《病的な日和見主義者》はクリーチャーが死亡するとカードが引けるので、腐乱が誘発し生け贄に捧げられたゾンビのおかげで無から手札を得ることが可能になる。

 黒の利点である除去で対戦相手のクリーチャーを潰していってもカードが引けるので、これを他のカラーリングのアグロとの差別化を図っている。

 また、腐乱ゾンビが死亡すると《ドラコリッチ、エボンデス》を墓地から唱えられるので、消耗戦の際にはどんどんゾンビを突っ込ませていこう。《食肉鉤虐殺事件》を置いておけばライフも奪えて言うことなし!

 腐乱に価値があるということで《腐敗した再会》が4枚採用されていることも忘れちゃいけないセールスポイント。

 上記の各種シナジーを得つつ、《老樹林のトロール》やフラッシュバック呪文などへの対策を行える、地味ながらなかなかにすごい墓地対策だ。

Brandon - 「黒単サクリファイス」
アリーナ・オープン(2021年10月) 1日目(BO1)突破 / スタンダード (2021年10月16日)[MO] [ARENA]
16 《冠雪の沼
4 《不詳の安息地
3 《目玉の暴君の住処
1 《廃墟の地

-土地(24)-

4 《ひきつり目
4 《よろめく怪異
4 《スカイクレイブの影
1 《ネファリアのグール呼び、ジャダー
3 《墓地の侵入者
3 《セッジムーアの魔女

-クリーチャー(19)-
4 《踊り食い
1 《血の長の渇き
4 《命取りの論争
2 《冥府の掌握
1 《落第
3 《食肉鉤虐殺事件
2 《蜘蛛の女王、ロルス

-呪文(17)-
2 《環境科学
1 《封印突破法
1 《壊死放出法
1 《害獣召喚学
2 《マスコット展示会

-サイドボード(7)-
Brandon氏のTwitter より引用)

 

 こちらはより対戦相手のクリーチャーを除去していくことを意識した形。ゾンビを主軸としたリストと全く異なるアプローチであるが、まず目につく大きな違いはサイドボードを用いている点だ。

 BO1はメイン戦のみではあるが、サイドボードに7枚のカードを採用することが可能だ。このスロットに講義・カードを用意しておき、履修能力でアドバンテージを得るというのはBO1ではBO3以上に価値のある戦術だ。

 黒単であれば《ひきつり目》がこれを得る手段となる。

 死亡すると履修できるこれ、相手の攻撃をブロックしたりできれば良いが、能動的に死亡させるために生け贄に捧げるカードを併せて使うとそのポテンシャルを発揮できる。というわけでこのデッキは生け贄重視の「黒単サクリファイス」だ。

 《命取りの論争》は宝物を得てカードを2枚引き、《ひきつり目》の履修も併せて手札に3枚もカードを補充できて以降のビッグアクションに繋げる。

 あるいはクリーチャー除去《踊り食い》も良いね。追放除去なのでこれまたトロールなどの墓地に関する能力を持ったものへの対策にもなっている。

 これらの生け贄カードと相性の良い《よろめく怪異》《スカイクレイブの影》、そしてこのリストにも《ネファリアのグール呼び、ジャダー》の姿が。

 これら生け贄に捧げても損しないクリーチャーを使って、ドローしたり除去したりとゲーム展開をこちらの意図しているものへと引き込んでいく。

 インスタントとソーサリーが多いので《セッジムーアの魔女》の魔技も活きてくる。

 これにより生成された邪魔者もまた生け贄に捧げて痛くないクリーチャーなので、積極的な生け贄を連鎖させていきたいところ。

 大量にトークンを並べてから《食肉鉤虐殺事件》をわざとX=1で唱えて邪魔者を一気に死亡させてライフ回復&対戦相手のライフを失わせるコンボでライフを詰めるとしよう。

 どちらもBO1のデッキだが、白単や緑単などはBO3でも有力なデッキである。これらの黒単がそれらの単色アグロに対して強く立ち回れるのであれば、BO3での活躍も見込めるだろう。実際、2つ目の生け贄デッキは最近密かにシェアを伸ばしているようだ。

 サイドボードは対コントロールへの解答を増やしていきたいところ。《強迫》《真っ白》などの手札破壊や各種プレインズウォーカーなんかを用意しておくと良いだろう。

 BO1を突き詰めても良し、BO3用にカスタマイズしても良し。スタンダードの黒単の可能性、探っていこう! 次のアリーナ・オープン、賞金を手にするのは君だ。

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