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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

白黒魔技(スタンダード)

岩SHOW

 マジックにおけるトラウマというか、経験した者にのみが理解できる恐怖のシチュエーションがある。

 どんなものかといえば……例えば「1ターン目に白いパワー0のクリーチャーが出てくる」、とかね。パワー0なんて怖くないじゃん、というのは未経験のプレイヤーからすると当然の感想になるが、経験者はこう語る。「パワー0が出てきたと思ったら4ターン目には殴り倒されていた」「パワー0で猫って、油断しちゃいますよね……もう見たら即座に除去することを心がけてます」などなど。

 この白いパワー0とは《ステップのオオヤマネコ》のこと。

 1マナで0/1。風が吹けば倒れそうなスペックのこの猫は、土地を戦場に出すことで誘発する「上陸」能力で+2/+2と大きな修整を得て膨れ上がる。同時期には《乾燥台地》などの土地1枚で2回の上陸を満たせるカードがあったため、2ターン目から延々とパワー4が殴りかかってくるということもザラで、当時重めで始動の遅いデッキを使う際にはこのオオヤマネコが死神に見えたと語る者もいたとか。

 なぜこんな話をしたのかというと、現スタンダードにもオオヤマネコに似た、1マナ0/1がいるからだ。《アクームのヘルハウンド》? 確かにオオヤマネコの色違いではあるが、今回は別のカードの話。『ストリクスヘイヴン:魔法学院』より現れた《賢い光術師》のことだ。

 クリーチャーとして戦場に立てるギリギリのスペックでありながら、インスタントかソーサリーを唱える、あるいはそれをコピーすることで誘発する魔技能力持ちで、ターン終了時まで+2/+2修整! たとえば《ショック》を対戦相手に撃ち込めば、2点ダメージと光術師がパワー2になって計4点ダメージ。この時点でもう強く感じる。

 誘発させるものが固定になった分、倍の強化になった果敢能力と見るとわかりやすいか。十分にデッキを組む価値のあるカードパワーであり、これを1ターン目に出してインスタントやソーサリーで強化して重い一撃をドコンッと毎ターンぶち込むデッキは試してみたくなる。

 ちょうど、MTGアリーナでスタンダードが新環境を迎えた直後に開催される「メタゲームチャレンジ」というイベントにて、7勝0敗で駆け抜けたリストを見つけた。今日は魔技で0/1がハードパンチャーに化けるデッキをご紹介しよう。

Carlos Nuñez - 「白黒魔技」
MTGアリーナ メタゲームチャレンジ 7勝0敗 / スタンダード (2021年4月25日)[MO] [ARENA]
5 《平地
5 《
4 《陽光昇りの小道
4 《光影の交錯

-土地(18)-

4 《賢い光術師
4 《無私の救助犬
2 《堕ちたる者の案内者
4 《クラリオンのスピリット
3 《レオニンの光写し
3 《歴戦の神聖刃

-クリーチャー(20)-
3 《果敢な一撃
1 《塵へのしがみつき
4 《侮辱
3 《無情な行動
3 《禁忌の調査
2 《カビーラの叩き伏せ
2 《自身の誇示
1 《消失の詩句
1 《シルバークイルの命令
2 《アガディームの覚醒

-呪文(22)-
1 《夢の巣のルールス

-相棒(1)-

2 《巨人落とし
3 《スカイクレイブの影
1 《夢の巣のルールス
3 《強迫
1 《塵へのしがみつき
2 《取り除き
2 《断割

-サイドボード(14)-
Carlos Nuñez氏のTwitter より引用)

 

 白黒2色、ギルドで言えばオルゾフ、大学で言えばシルバークイル。各々好きなように呼んでほしいが、ここではキーワードとなる魔技と併せて、字面が良いので「白黒魔技」と表記させてもらおう。

 《賢い光術師》ともう1種、《レオニンの光写し》で魔技を行うのだ。

 どちらもクリーチャーの打点に関する能力で、これらを扱うには強化するクリーチャーと、魔技を誘発させるインスタントとソーサリー、両者が一定数必要になってくる。

 だったらどうするか、答えはひとつ。土地の枚数を減らす。

 19枚とかなりギリギリの値に抑え、《カビーラの叩き伏せ》《アガディームの覚醒》を土地としてカウントしても22枚と、可能な限りのスペースを勝つために必要なクリーチャーと非クリーチャーに割いている。

 おのずと重いカードは使えなくなり、軽いカードのみで構成される。だったら……というわけで色もバッチリ噛み合った《夢の巣のルールス》が相棒だ。

 このリストは面白いことに、この相棒のルールスと別にもう1枚のルールスをサイドボードに用意している。相手によっては2枚のルールスをメインデッキに投入することを狙っているのだろう。赤単とか相手に絆魂を持ったクリーチャーが欲しく、かつルールスを相棒能力で手札に加えてから出すのは悠長すぎるってことかな。

 では、採用カードの確認を。クリーチャーは魔技コンビ以外には目新しいカードはない。こう書くと残念に見えるかもしれないが、新しいカードを試すには見慣れたカード=信頼と実績のあるカードの助けが不可欠。スタンダードでお馴染みの面々ってことは、それだけ相手を選ばずに戦える強いカードということだ。躊躇なく使おう!

 特に《クラリオンのスピリット》は魔技を重視したデッキの思想とも噛み合っている。

 光術師かレオニン、これらの魔技誘発のためにインスタントとソーサリーを連打するってことは、クラリオンがスピリットを生み出すことも可能ってことだ。スピリットを増やしながらレオニンで強化して最後のゴリ押しを決めると気持ち良い。

 クリーチャー以上に大事とも言える非クリーチャー呪文。これらは土地を削ってルールスを採用する思想と同じく、なるべくコストの軽いもの、具体的には2マナ以下のものを中心にしつつ、連打も可能ということを意識してチョイスされている。

 どういうことかというと、ドローすることを少し意識している。《無情な行動》《消失の詩句》のような普通の除去で魔技を誘発させるのも悪くないが、使い切ってしまって手札が空になるとちと寂しい。

 この問題を解決するために、効果自体は薄いものの「カードを1枚引く」という一文が添えられた《果敢な一撃》《塵へのしがみつき》を採用。

 引いたインスタント or ソーサリーをまた唱えて、魔技を途切れないダイナミックなものへと昇華する。このドローの最たるものが《禁忌の調査》。

 一見、魔技でクリーチャーを強化するデッキがクリーチャーを生け贄に捧げるって矛盾してないか?と思ってしまうチョイスだが、ご安心を。クラリオンが生み出したスピリットをドローに変換するか、あるいは生け贄に捧げたものをルールスで再利用するので、元手を減らさずにカードが複数枚引ける。

 そして単に引ける枚数が増えるという効果ではなく、呪文自体をコピーするというスタイルなのが注目ポイント。しっかりと魔技、誘発するねぇ! 同じコピーを生み出すサイクルの《自身の誇示》もクラリオンで増えたスピリットと相性が良く、これらで魔技をジャンジャン誘発させて派手に押し切るのが理想のゴールだ。

 他の呪文のチョイスもシブい。《侮辱》は相手の手札を捨てさせ、プランを崩しつつこちらのプランを決定する。その上でクリーチャーを恒久的に強化できるんだからたまらない。《歴戦の神聖刃》に+1/+1カウンターを置いたりすると、それだけで対戦相手にとって厄介なことこの上ない。

 《シルバークイルの命令》1枚はお試しも兼ねてのことだろうが、このデッキだとハマれば勝負を決めるポテンシャルあり。

 特に、一見使いにくそうなソーサリーでのクリーチャー強化がこのデッキではバカにならない。+3/+3についでのように書かれた飛行がナイス。光術師が魔技しながらふわりと宙を舞い、トドメの一撃を叩き込む。レオニンを戦場に戻したり、この手のデッキにこういう多芸なカードが仕込まれていると、自他ともに予期せぬ状況を生み出して面白い。

 今回は新能力・魔技に注目したアグレッシブなデッキを紹介した。《果敢な一撃》など自身のクリーチャーを対象とするカードにもっと振り切れば《学生の代言者、マビンダ》を採用できるようにもなるね。各自思いついた形を試してみよう! シルバークイルに入学、してみるかい?

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