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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

青単氷雪テンポ(スタンダード)

岩SHOW

 派手なものも良いが、地味ながらシブみを感じるものも良い。趣味を突き詰めていくとそういう領域に踏み込むことがある。

 例えば、水槽。趣味で魚などの飼育を始めたときには色とりどりの熱帯魚を泳がせた色鮮やかな水槽に魅せられ、そういうのを目指したものだが、最近は川の底を再現したような黒とか茶色ばかりの水景に、これまた黒とか茶色のシブいやつらを住ませた水槽に心惹かれる。

 服装なんかでも若いときはすごく派手な極彩色のファッションに身を包んでいた人が、時の流れとともに落ち着いた大人のシブさを感じさせるスタイルを愛するようになっていったなんてのはよくある話。

 マジックもそうで、あなたもシブいカードに魅力を感じるときがきっとやってくるはず。僕の場合は割と初期からシブい寄りの思考だったのでそういうカードばかり集めていたものである。

 特に、あまり注目されていないシブいカードでゲームを優位に進めて、そのカードのおかげで勝利できたときなど悦に浸れる。劇的な逆転じゃなくて良い、コツコツとした、地味だけでも確実に効果があるってのが慎ましくて良いのだ。

 在りし日の《占術の岩床》などそうだった。

 この氷雪土地はライブラリーの一番上のカードを見ることができ、そのカードが氷雪カードだった場合手札に加えられるという能力を持っている。このカードが収録された『コールドスナップ』は基本土地以外の氷雪タイプを持ったパーマネントや氷雪マナという概念が誕生したセットである。しかしながら当時、構築レベルの強さを持った氷雪カードというのは決して多くなかった。超強力なカードを見つけて逆転する類のカードではないが、氷雪基本土地を手札に加えられるだけでもアドバンテージには違いなく、時折《ファイレクシアの鉄足》が引き込めたらラッキー、くらいの感覚で用いるだけでも十分な働き。このシブさが好きで、氷雪コントロールをこの時代のスタンダードや後のモダンで組んだという人も少なくないはず。

 そして時が過ぎ、『カルドハイム』は『コールドスナップ』以来のスタンダードに氷雪をもたらすセットになった。そしてそこには激シブカード《占術の岩床》と同じ能力を持った《霜の占い師》の姿が!

 1マナ1/2のボディに、氷雪マナ1つとタップで起動できる岩床能力。このカードがシブくないはずがない。

 この新カードとともにやってきたのは氷雪呪文。氷雪タイプを持つパーマネント呪文は既存だが、それに加えてインスタントとソーサリーにもこのタイプを持つものが登場。かつては土地が手に入れば十分だった能力が、もっと幅のあるアドバンテージ獲得に繋がる時が来たのだ。

 というわけで『カルドハイム』によって誕生した、岩床デッキの流れをくむ《霜の占い師》デッキを紹介しよう!

Garrison Fogt - 「青単氷雪」
$5K Kaldheim Championship Qualifier 14位 / スタンダード (2021年2月8日)[MO] [ARENA]
22 《冠雪の島
4 《不詳の安息地

-土地(26)-

4 《霜の占い師
4 《隆盛するスピリット
4 《厚かましい借り手

-クリーチャー(12)-
2 《本質の散乱
2 《乱動への突入
4 《襲来の予測
4 《多元宇宙の警告
2 《彫像の伝承
4 《サメ台風
4 《アールンドの天啓

-呪文(22)-
2 《雪崩呼び
3 《泡の罠
2 《垣間見た自由
2 《否認
1 《軽蔑的な一撃
3 《神秘の論争
2 《彫像の伝承

-サイドボード(15)-
MTGMelee より引用)

 

 参加者300名を超えるオンライントーナメントにて7勝2敗、14位の結果を残した「青単氷雪」デッキだ。好成績を残したので、このリストは見逃せない。学ぶことが多くあるはず!

 まずメインデッキ内の氷雪カードは全部で36枚。半数を占めるのであれば占い師の能力で手札が増える可能性は結構高く、十分に期待が持てるものに。それでも不確定ではあるが、1マナクリーチャーの能力として考えれば満足のいくものだ。

 そうやって得られる氷雪カードの中でも、占い師以上にデッキの顔であるのが、同じ1マナクリーチャーの《隆盛するスピリット》。

 1マナ1/1が氷雪マナを注ぐことで2/3、4/4飛行、そして6/6以上のサイズとドロー能力と、ぐいぐい成長していく。この最終形態に持ち込んで圧倒するのがメインの勝ち筋であり、クリーチャーはなんとこのスピリットと占い師を4枚ずつに加えて《》だ。

 4/3という、土地がクリーチャー化するカードの中でもかなり大きいサイズになる。氷雪マナを3つ支払ってこれで最後の一押しを。スピリットと安息地、勝つためのカード両方が占い師で手に入る。これぞ氷雪システム。

 占い師でカードを手に入れるだけでゲームに勝てるかというと、そうでないのが現実だ。なので、このデッキも対戦相手への妨害手段を盛り込んである。以前紹介したテンポ・デッキに分類されるもので、《襲来の予測》《本質の散乱》で打ち消したり、《乱動への突入》《サメ台風》(これは勝ち手段でもあるね)で相手のクリーチャーを討ち取ったり、インスタントのタイミングで軽快に動きながらゲームを進めていく。

 相手のターンにマナを使わなかった際には《多元宇宙の警告》で手札を補充して後に備える。

 氷雪デッキなので、このインスタントのドロー呪文の選択肢に《彫像の伝承》を採用できるのも大きい。

 土地がすべて氷雪なので、5マナで占術5して3枚ドローだ。不要なカードを引くことをかなり避けられ、質・量ともに充実したアドバンテージをもたらしてくれる。これも占い師で手に入るのがなんとも嬉しいね。

 殴れるカードの枚数自体は多くはないが、殴れる回数を増やすことで大量にクリーチャーを展開したのと同じ効果を狙うために採用されている最終兵器が《アールンドの天啓》だ。

 追加ターンを得ることで相手の反撃を許さずに一気に詰みに持って行く。鳥・トークン2体がついてくるのも、たった2点されど2点の無視できないオマケだ。予顕しておけば6マナで唱えられるので、隙を見つけて伏せておき、相手に打ち消しだと思わせて行動の自由を奪いながらここぞという時にターンを得たい。その追加ターン中に2枚目、3枚目と後続に繋げられればエンディングだ。相手の計算を大きく狂わせる必殺の一手、絶妙なタイミングで決めたいものだ。

 パワフル、豪快なデッキが目立つ現スタンダードにおいて、この氷雪デッキのような一見線の細いデッキが勝っているというのはとても良いことだ。それだけ環境の自由度、幅があるということで、いろいろなデッキを試したくなってくる。構築意欲を刺激する『カルドハイム』期、まだまだ始まったばっかりだぜ。

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