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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

白単エルドラージ:再録カードのもたらすもの(モダン)

岩SHOW

 基本セットとは、かつては再録の場だった。

 『基本セット第10版』までは新規カードというものはなく、新しい基本セットが出るたびに一体何が再録されるのか、手持ちのスタンダード落ちしているカードに再びスポットが当たるかとワクワクしたものである。

 今日では新規カードを含むようになって、その存在の意味が大きく変わった基本セット。しかしながら再録の場というポジションは今でも保っている。どちらかといえば特殊なカードの再録だ。かつて『基本セット2014』がリリースされた際には衝撃が走った。《漁る軟泥》の再録である。

 このカードは『統率者』のカードであったので、統率者戦およびエターナルフォーマットでのみ使用可能だった。レガシーで超有能墓地対策としてなくてはならない存在となっていた軟泥。このカードがモダンでも使えたらなぁと当時のプレイヤーは考えていたが、基本セットに入ることでその夢がかなった。今でもモダンやパイオニアで活躍するレベルのカードで、この再録のもたらした意味はとても大きい。

 『基本セット2021』でも同様に意味合いの大きな再録カードがやってきた。《封じ込める僧侶》だ。

 唱えられる以外の方法で戦場に出ようとするトークンでないクリーチャーをその名の通り封じ込めてしまう、コスト踏み倒し系デッキに対するアンチカードだ。巨大なクリーチャーを《再活性》で墓地から戦場に戻したり《騙し討ち》で手札から戦場に出すといった不真面目なデッキに対して、瞬速で飛び出してこらしめるその安心感といったら、なかなか代えが効かない。

 この2マナのクリーチャーもまた特殊なセットにしか収録されていなかったのでモダンなどで使用することはできなかったが、この夏、ついにその活動範囲を広めることに。一体、どれほどの仕事っぷりを見せつけることになるのだろうか。例えば……

Felix Sloo - 「白単エルドラージ」
モダン (~『基本セット2021』)[MO] [ARENA]
8 《平地
4 《シェフェトの砂丘
2 《コイロスの洞窟
4 《エルドラージの寺院
4 《幽霊街

-土地(22)-

4 《ルーンの与え手
2 《無私の救助犬
4 《封じ込める僧侶
4 《石鍛冶の神秘家
3 《スレイベンの守護者、サリア
4 《変位エルドラージ
3 《ちらつき鬼火
4 《難題の予見者

-クリーチャー(28)-
4 《霊気の薬瓶
4 《流刑への道
1 《饗宴と飢餓の剣
1 《殴打頭蓋

-呪文(10)-
2 《無私の救助犬
4 《石のような静寂
3 《安らかなる眠り
2 《解呪
2 《四肢切断
2 《機を見た援軍

-サイドボード(15)-
Felix Sloo氏のTwitter より引用)

 

 これはモダンの「白単エルドラージ」。『基本セット2021』リリース後のバージョンだ。

 《スレイベンの守護者、サリア》など白特有の対戦相手を妨害するクリーチャーを《ルーンの与え手》でプロテクションを付与して護る。

 《エルドラージの寺院》や{C}が出る土地も利用して《難題の予見者》などのエルドラージも用いてより重みのある攻めとハードな妨害を追求した中速のデッキである。

 キーとなるのは《変位エルドラージ》で、これの一時的にクリーチャーを追放しタップ状態で戻す能力で対戦相手のクリーチャーたちに仕事をさせず、こちらの攻撃をねじ込んで勝つ。

 《ちらつき鬼火》も同様に相手のパーマネントを一時的に追放することで妨害したり、《霊気の薬瓶》から繰り出して自分のパーマネントを相手の除去から護るなどのトリッキーな動きを見せる。

 ここに《封じ込める僧侶》が加わるとどうなるか。《変位エルドラージ》の能力で相手のクリーチャーを対象に取り、追放するとタップ状態で戻…らない。僧侶の能力で唱えられていないクリーチャーが戦場に出ることを禁じられ、そのまま追放されっぱなしとなる。3マナを支払うだけでクリーチャーを片っ端から除去する、処刑マシーンの誕生だ。これらを前述の与え手などで護るのだから、システムが完成したらクリーチャーデッキにとっては詰んだも同然である。お、恐ろしい。

 もちろん《ちらつき鬼火》もクリーチャーに対して確定除去能力を持った3マナパワー3の飛行となる。マナ効率が良すぎるだろうと。早ければ3ターン目には僧侶との組み合わせで盤面をかき乱してくる。強い、強いぞッッ……

 と、油断してはいけない。前述のような自分のクリーチャーに対して、鬼火や《変位エルドラージ》の能力を使って除去を回避したり、《石鍛冶の神秘家》を使いまわすなどの動きもまたできなくなってしまう点には注意が必要だ。また、これらのクリーチャーを円滑に運用するための《霊気の薬瓶》ともアンチシナジーを起こす。うっかり僧侶がいる時に起動して、手札を1枚失ってしまっただけで終わってしまわないように。相手の薬瓶が機能しなくなるという利点も大きいので、ここは多少の噛み合わなさは我慢だ。

 このリストには同じく最新基本セットから、新カード《無私の救助犬》も積極的に採用されている。

 《ルーンの与え手》に加えて追加のアンチ除去カードとして白羽の矢が立ったのだ。召喚酔いに関係なくすぐに能力を使える点が優秀で、薬瓶からサッと出して身代わりになるその献身的な姿には涙を禁じ得ない。このカードもクリーチャーを多数用いて、盤面にシステムを形成するデッキにて採用されているのを見ることが多くなりそうだ。

 基本セット、侮りがたし。実績のあるスーパーカード《封じ込める僧侶》の再録に、《無私の救助犬》のような期待が持てる新カードの登場。2021年に向かうこのセット、本日発売! この夏は例年に負けないくらい楽しいことになりそうだ。

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