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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ワールドゴージャー(レガシー)

岩SHOW

 個人的にコンボはマジックの華だと考えている。コンボデッキがあまりにも強すぎて瞬殺を連発されてしまうとそれはそれは問題だが、派手なコンボが存在した方が面白いことは間違いない。ある程度コンボデッキが存在した方が環境のバランスも保たれるというものだ。

 コンボと一口にっても奥が深い。前回はレガシーのコンボの代名詞である「オムニテル」を紹介したが、レガシーに潜むコンボはこれだけではなく、それこそ世界中のコンボデッキ愛好家の数だけデッキがあると言っても決して過言ではない。

 時折、なんだこれはと言いたくなる異形のコンボが好成績を残して注目を集めることがある。今日も最近レガシーの深淵より浮上してきた、かなりヤバい見た目のコンボを紹介しよう。早速リストから。

fire10798 - 「ワールドゴージャー」
Magic Online Legacy Preliminary #12159807 4勝1敗 / レガシー (2020年5月26日)[MO] [ARENA]
3 《冠雪の島
1 《冠雪の森
1 《冠雪の沼
1 《神秘の聖域
1 《Tropical Island
2 《Underground Sea
1 《Bayou
4 《霧深い雨林
4 《汚染された三角州
1 《溢れかえる岸辺

-土地(19)-

4 《氷牙のコアトル
1 《願いのフェイ
1 《自然の怒りのタイタン、ウーロ
1 《世界喰らいのドラゴン

-クリーチャー(7)-
4 《アーカムの天測儀
4 《渦まく知識
4 《思案
4 《納墓
3 《思考囲い
4 《動く死体
2 《突然の衰微
2 《湖での水難
4 《意志の力
3 《覆いを割く者、ナーセット

-呪文(34)-
1 《トレストの使者、レオヴォルド
1 《外科的摘出
3 《夏の帳
1 《花の絨毯
1 《塵へのしがみつき
3 《暗殺者の戦利品
1 《真冬
1 《霰炎の責め苦
3 《王冠泥棒、オーコ

-サイドボード(15)-

 

 一見、コンボに見えないかもしれない。しかしリストをしっかりと見つめれば、このデッキはコンボ以外に勝利する術を持たないことが分かる。青黒緑の中速デッキのリストのようで、1枚だけ明らかに異なるベクトルの真紅のカードがそれを教えてくれる。《世界喰らいのドラゴン》だ。

 6マナ7/7飛行・トランプルと異常とも言えるスペックの持ち主にして、カード名の通り、これ以外の自分のパーマネントをすべて追放してしまうという強烈なデメリットを備えている。このパーマネントはドラゴンが戦場を離れると戻ってくるのだが、追放する能力が誘発したタイミングで除去されると何も帰ってこず、続いてすべてが追放されるという悲惨な目に遭う。当時は何度か涙を流したものである。

 とまあ、この扱いにくいにもほどがある《世界喰らいのドラゴン》をキーとしたコンボが「ワールドゴージャー」だ。一体何をどうコンボするのか? キーカードは《動く死体》だ。

 このオーラ、かなりややこしいテキストが書かれているが、要するに墓地のクリーチャーに貼り付けることで戦場に出すことができるという、いわゆるリアニメイト呪文のひとつであり最古のものである。

 これで《世界喰らいのドラゴン》を墓地から戦場に戻すと、一体どうなるか。世界喰らいの能力が誘発し、すべてのパーマネントが追放される。もちろん《動く死体》もだ。《動く死体》が戦場を離れたことで、世界喰らいは再び墓地に還る。パーマネントが戻る能力が誘発し、《動く死体》が再び世界喰らいにつけられる。戻って追放して死んで戻って、これでループが形成される。

 無限に世界が喰われる中で、何ができるか。土地が追放されて戻ってくる際、それはアンタップ状態になる。つまり追放能力が解決される前に土地をタップしてマナを得て、追放されて戻ってアンタップして……で無限にマナが得られるのだ。このドラゴンをリアニメイトする動きでマナを得て勝つと、そういうわけである。

 世界喰らいによる無限マナと同時に、このデッキは無限に手札も補充することで勝利を目指す。《アーカムの天測儀》と《氷牙のコアトル》が出入りすることにより、ガンガンとカードを引くことが可能だ。

 《渦まく知識》を《神秘の聖域》で戻しては引いて唱えるという動きもできる。

 そうやって大量のマナとドローの先に待つフィニッシュは……と、その前にまずはループを止めなければならない。《動く死体》と世界喰らいのコンボは任意に止めることはできない。お互いの墓地に世界喰らい以外のクリーチャーがいれば十分なマナと手札を得た後に、その世界喰らい以外のクリーチャーに《動く死体》をつけることでループを止めることができるが、逆に言えばそうでない限り、無限ループとなってしまう(ゲームは引き分けとなる)。インスタント・タイミングで無限マナを注いでフィニッシュする術があればループ中に勝利できるが、このデッキには採用されていないので止めなければならない。《納墓》で別のクリーチャーを埋めるか、相手のクリーチャーにインスタントの除去を撃って対象を作ろう。

 ループが止まったら《願いのフェイ》を出来事《成就》で唱えて、サイドボードから《霰炎の責め苦》を持ってくる。

 相手の手札や土地でないパーマネントの枚数を大きく超えたマナを注ぎ込んだ責め苦で、相手のライフを0にして勝利する。世界を喰らうドラゴンから多元宇宙の黒幕的ドラゴン、ボーラスがその魔力を解き放ってフィニッシュとはなんとも美しいではないか。まあ要するに{X}がコストにあって勝てるカードであれば何でも良いので、各自好きなように決めてやってほしい。フェイを《動く死体》で戻せるので、その先に勝利手段を設定しておくのはスマートな構築だ。

 コンボデッキが華であることが伝わっただろうか。コンボは良いものである。時にコンボに夢を見ては、無慈悲に殴りかかるアグロや妨害満載のコントロールに現実を突きつけられる。ただ決まった時には、それらのリアリストに夢の力というものを教えてやれる。この決まった時の圧倒的な満足感こそ、コンボの醍醐味だ。

 このデッキのように《世界喰らいのドラゴン》という見た目も優れたカードを用いるというのも重要だ。派手な花火を打ち上げて、世界中の注目を君のデッキに集めようじゃないか。

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