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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

相棒で撹乱作戦?(スタンダード)

岩SHOW

 相棒に設定したカードは各ゲームが始まる時点で公開される。したがって、それを確認してからマリガン判断を行うわけだが、この相棒なら今の流行りは○○デッキだな、と目星をつけてキープ基準を設定できる。これは従来のマジックにはなかった要素であり、リスト公開制のトーナメントであれば意味はないのだが、そうでない対戦においては相棒からの読みも重要なファクターとなってくる。

 大体はその読みが大きく外れることはない。相棒の役割はシンプルであり、その能力から大まかなデッキ構成を読むことができる。デッキ構築に制限もあるので、ケアしなくていいカードも瞬時にわかり、特定のカードに刺さるものをキープするか否かの判断は難しくない。

 ただ、マジックプレイヤーの中にはこの公開情報を逆手に取った、騙しの精神にあふれた者も少なからず存在する。相棒でデッキの内容が読まれる? じゃあ読めないデッキを組めば相手の裏をかけるってことじゃねーか! と、ある種の反骨精神というか、チャレンジ魂が炸裂するようだ。

 先日開催されたミシック予選においても、これを実行したデッキが大きく話題になった。

malseman - 「赤単ヨーリオン」
ミシック予選 2020年5月16日 4勝2敗 / スタンダード[MO] [ARENA]
25 《
4 《エンバレス城
-土地(29)-

4 《熱烈な勇者
4 《不気味な修練者
4 《焦がし吐き
4 《ブリキ通りの身かわし
4 《義賊
4 《鍛冶で鍛えられしアナックス
4 《砕骨の巨人
3 《灰のフェニックス
4 《朱地洞の族長、トーブラン
-クリーチャー(35)-
4 《ショック
4 《殺戮の火
3 《舞台照らし
3 《エンバレスの宝剣
2 《炎の侍祭、チャンドラ
-呪文(16)-
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン
-相棒(1)-
malseman氏のTwitter より引用)
 

 まさかの「赤単ヨーリオン」!

 《空を放浪するもの、ヨーリオン》を見て、まさか色も能力も噛み合っていない赤単が出てくると想像するプレイヤーはいないだろう。1本目は裏をかいて奇襲的に戦い、2本目はデッキ内のカードを大きくサイドボードに移して66枚の赤単デッキとして戦うそうだ。

 相棒というシステムを別のベクトルで活かしたこのリストは、過酷なミシック予選において4勝2敗で敗退となっているが、その奇抜なアイディアには多くのプレイヤーが注目した。「《聖なる鋳造所》と《蒸気孔》も入れて一応ヨーリオンを飛行クリーチャーとしてプレイできるようにするともっといいのでは」「サイド後は《獲物貫き、オボシュ》を相棒にバトンタッチしよう」などなど議論も起こった。

 奇襲に賭けて安定性は失っているし、あまりにも目立ったためにネタバレしているのもあって赤単の新しい形として定着するということはないだろう。しかしながら、その精神は今後のデッキ構築において大いに参考にする部分はある。こういうデッキが登場するというのもあり、個人的にはデッキリストが公開されない形式のトーナメントの方がワクワク感があって好きだな。

 

 ヨーリオンで赤単というのは極端すぎる例ではあるが、もっと現実でありながら相手の読みを外させる相棒デッキは組めるものだ。相棒もフェイク要素として飾っておくだけでなく、しっかりとプレイ可能な形で。

 というわけで、こちらのリストもご覧いただきたい。

Coutinho_Brewer - 「白単オボシュ」
スタンダード (2020年5月15日)[MO] [ARENA]
9 《平地
1 《
4 《神無き祭殿
4 《聖なる鋳造所
2 《総動員地区
4 《寓話の小道
-土地(24)-

4 《命の恵みのアルセイド
4 《駐屯地の猫
4 《追われる証人
4 《尊い騎士
4 《ラバブリンクの冒険者
2 《夢の巣のルールス
4 《敬慕されるロクソドン
-クリーチャー(26)-
4 《一心同体
4 《紋章旗
2 《黒き剣のギデオン
-呪文(10)-
1 《獲物貫き、オボシュ
-相棒(1)-

4 《巨人落とし
2 《夢の巣のルールス
1 《永遠神オケチラ
3 《希望の光
3 《丸呑み
1 《黒き剣のギデオン
-サイドボード(14)-
Coutinho_Brewer氏のTwitter より引用)
 

 白単オボシュ!《獲物貫き、オボシュ》による奇数デッキを白単色で組んだという逸品だ。

 こんなもん、読めるわけがない(笑)。かつて暴れ回った《敬慕されるロクソドン》でクリーチャーを強化して一気に殴り勝つ、俗にウィニーと呼ばれるタイプのアグロデッキだ。

 確かに手数で勝負するデッキで、2マナよりも1マナを重視した構築になるので奇数でデッキを組むのは難しいことではない。そして白単色にしてオボシュを唱えることを可能にするのは《神無き祭殿》と《聖なる鋳造所》。

 ダブルシンボルではあるが混成カードなので、これらの土地のうち2枚(か1枚だけある《》)を引けば唱えられるという寸法だ。アンタップ状態で戦場に出せるので、ウィニーの動きも阻害しない点がGood。そもそもが白単ウィニーとしてメインデッキのみで完結しているので、オボシュは出せたらラッキーくらいの最終兵器的位置づけだ。

 トークンを生成するクリーチャーに《夢の巣のルールス》と、戦場を継続的に構築することに長けたカードが多く採用されている。これらで戦場に頭数を並べて《紋章旗》かロクソドンで強化してフィニッシュ。

 ロクソドンは召集でタップしてから次のターンに攻撃するまでのタイムラグが生じ、この隙にクリーチャーを除去されてしまいがち。その弱点を埋めるのが《一心同体》。

 人間とそれ以外のクリーチャーがバランスよく採用されているデッキなので、このインスタントで2体に破壊不能を与えてその場をしのぐことが可能だ。これで耐えてからのオボシュでズドンッ!というのが対コントロールのベストムーブだろう。

 ヨーリオンで赤単という無茶なものもあれば、オボシュで白単という意外に現実的なものもある、相棒で読みを外させるデッキ。もちろん、裏をかくことに注力しすぎてデッキがそもそも強くないということになっては本末転倒ではあるので、この手のデッキを組む際にはそこのところをしっかりとケアして挑むようにしよう。読めるからこそ読めないもの、それを制した時のアドバンテージは勝利をグッと引き寄せる……かもしれない。

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