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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

その医者の名はヨーグモス(モダン)

岩SHOW

 僕がマジックを始めたのは『テンペスト』『ストロングホールド』『エクソダス』のラース・サイクルと呼ばれる3セットと『ウルザズ・サーガ』がぶつかり合うタイミング。ラースとは人工的に作られた次元で、そこにはファイレクシアの要塞があり、ドミナリアへの侵略準備を着々と進めていた。このファイレクシアとは何なのか、ということを明らかにしてくれたのは『ウルザズ・サーガ』だ。

 ファイレクシアは次元名であり、同時にそこを拠点とした集団・文明のことだ。肉体と機械の融合した生命体が群れを成す。すべてが人工物からなる荒廃しきった次元だ。ファイレクシアの軍勢を生み出したのはヨーグモスという元人間の男。古代文明であるスラン帝国の医者である。

 彼は当時スランに蔓延したファイシス病を治療することを任ぜられた。ファイシス病は魔法では治せない病であり、肉体を改造してより優れた生命を目指す優生学者であったヨーグモスに白羽の矢が立ったのだった。ヨーグモスはファイシス病の研究の裏で富と権力を得るべく暗躍し、そしてプレインズウォーカーの助力も得て放棄された次元をも手に入れる。彼はそこをファイレクシアと名付け、ファイシス病患者を連れてきて理想の生命へと改造を施し、ファイレクシア人としたのだった。

 ヨーグモスはこのファイレクシア人の軍勢を用いてスラン帝国と戦争を起こすが、ファイレクシアとドミナリアを繋ぐ門が破壊されて終戦。そこで冒頭でも触れたラースを生み出すなど、多元宇宙への侵略のための準備に取り掛かった。

 『ウルザズ・サーガ』では弟をファイレクシアによって改造され、その怒りによりプレインズウォーカーに目覚めたウルザの姿が描かれる。彼はファイレクシアに単身乗り込むも返り討ちにあい、セラの元で治療を受け、ドミナリアに帰還後は魔術の天才たちを集めたアカデミーを建て時間などに関する研究を行った。すべてはファイレクシアを滅ぼすために……

 『ウルザズ・レガシー』『ウルザズ・ディスティニー』とセットが続くにつれ、ウルザが狂気に落ちていく様とファイレクシアの軍勢のグロテスクさが強調され、当時中学生だった僕はその背景世界に心惹かれることとなった。

 当時、1つ夢見ていることがあった。荒廃の王、機械の始祖、ヨーグモスがカード化されたらそれを使った黒単デッキを使うという夢だ。しかしこの夢は叶わずに終わった。ヨーグモスはカード化されることなく、最終戦争にて消滅した。当時は残念だったが、「ウルザとかその他のプレインズウォーカーもカード化されていない、強すぎるからカードにできないんだな」と後に事情を察して納得した。

 ……のだが、それから20年の時を経て『モダンホライゾン』でまさかのヨーグモス、カード化!しかもウルザやセラと一緒に!これは嬉しい限りだ。もう彼らがカード化されることは無いと諦めていたからね。

 ウルザもヨーグモスもまだ人間だったころをカード化したものであり、ヨーグモスは前述の若き医者だったころ!

 《スランの医師、ヨーグモス》はプロテクション(人間)が人間離れしていくフレイバーを表していて絶妙だし、クリーチャーを生け贄にしてカードを引いたり-1/-1カウンターをばら撒き、さらに増殖まで行う様がファイシス病の治療を謳いながらそれを都市部に蔓延させたヨーグモスの悪行を見事に再現しているように思えるね。カードとしても絶妙に使いたくなる性能だ。

 ついに、夢が叶う。ヨーグモスを軸とした黒単デッキ、組むぞ!

岩SHOW - 「その医者の名はヨーグモス」
モダン (~『モダンホライゾン』)[MO] [ARENA]
20 《冠雪の沼
2 《占術の岩床
-土地(22)-

3 《陰謀団の療法士
4 《墓所這い
3 《屍肉喰らい
3 《墓所破り
3 《戦慄の放浪者
3 《無情な死者
2 《恐血鬼
2 《アンデッドの占い師
4 《ゲラルフの伝書使
3 《スランの医師、ヨーグモス
-クリーチャー(30)-
2 《真冬
4 《致命的な一押し
2 《最後の望み、リリアナ
-呪文(8)-
1 《陰謀団の療法士
1 《萎縮した卑劣漢
1 《トーモッドの墓所
3 《外科的摘出
3 《思考囲い
2 《漸増爆弾
1 《減衰球
1 《仮定の粉砕
1 《真冬
1 《絶望の力
-サイドボード(15)-

 ヨーグモスの能力で《ゲラルフの伝書使》を生け贄に捧げる。伝書使の不死能力で、これに+1/+1カウンターが1個置かれた状態で戦場に戻ってくる。

 その後ヨーグモスの能力が解決され、-1/-1カウンターが適当なクリーチャーに置かれて、1点失い1枚ドロー。この状況下で、別の伝書使…Bとしよう。これを生け贄に捧げて能力をもう1回起動、対象にするのは+1/+1カウンターが置かれた伝書使Aだ。伝書使BはAと同様に帰ってきて、Aはその上に-1/-1カウンターが置かれてこれが+1/+1カウンターと相殺されて無くなる。不死能力は+1/+1カウンターが置かれていない時に誘発する。ということは、またAを生け贄に捧げればBがリフレッシュされ、Bを生け贄にAを……とループが生成される。伝書使は戦場に出ると相手のライフを2点失わせるので……こちらのライフに余裕があれば相手のライフを一気に削ることが可能だ!

 この死のコンボを狙えて、かつコンボ抜きでも戦える黒単のデッキを……ということで『モダンホライゾン』の新カードをてんこ盛りで作ってみたゾンビデッキだ。《墓所這い》や《戦慄の放浪者》、《無情な死者》などゾンビ軍団や《恐血鬼》などの墓地から簡単に戻せるクリーチャーをヨーグモスで投げつけて、相手のクリーチャーをプチプチと潰しつつドローを得て格差を広げていく……

 システムを組み立ててグルグル回しながら小型クリーチャーでペチペチ殴るというデッキが好きなので、こういうねちっこいデッキを組んでみたのだ。

 《陰謀団の療法士》も上記のクリーチャーとは相性が良い。

 戦闘前のメインフェイズにこれらを生け贄に捧げて相手の手札を確認&カード名指定で手札を捨てさせ、ゲームプランを崩してやろう。指定を外してもクリーチャーはすぐに戻ってくるので損はしないし、しつこく回してキーカードを封じてやろう。

 ヨーグモス以外のクリーチャー除去には、お馴染み《致命的な一押し》に加えて《真冬》を。

 すべてのクリーチャーが巻き込まれるが、自軍はすぐに蘇るのであまり気にしなくても大丈夫。これのために《》はすべて《冠雪の沼》にしてある。

 せっかくだから『モダンホライゾン』版のフルアート土地で統一してみるか……しかし『コールドスナップ』のイラストも綺麗だし、『アイスエイジ』の旧い枠でまとめるのもシブい……こういう選択肢を与えてくれるのは嬉しいね。《占術の岩床》で地味にアドバンテージを稼いで長期戦を楽しんでほしい。

 クリーチャー主体のデッキだが速攻を狙うビートダウンというわけでもなく、これやヨーグモスや《アンデッドの占い師》、そしてしぶとい死者どものおかげで、長期戦も戦える中速デッキになっている(と思う)。

 とにもかくにもヨーグモスその人をデッキに入れられるのは、20年待ちに待っていた至高のイベントだ。ウルザもまさしくそうで、この2人をフィーチャーしたフレイバーたっぷりのデッキで対戦なんてしてみたいものである。マジックって夢を叶えてくれるゲームだよなぁ。

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