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ワールド・マジック・カップ2017

観戦記事

準々決勝:日本代表 vs. オーストリア代表

矢吹 哲也
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Blake Rasmussen / Tr. Tetsuya Yabuki

2017年12月3日


 ワールド・マジック・カップ2017を迎えるにあたり、他の代表チームより明らかに一段上の優勝候補とされるチームが3つあった。ひとつはブラジル代表。しかし彼らは初日の成績が2勝4敗と奮わず、あえなく敗退した。次にアメリカ代表。こちらは最終ラウンドでウェールズに敗北するまで戦いを続け、上位16チームに入ることができた。

 そして、日本代表。彼らは......いや、待った。日本代表は、今ここにいる。

 ふたつの巨星が堕ちるなか、日本代表は一進一退の航路を進みトップ8の岸へたどり着いた。彼らは最後の優勝候補として、負ければ終わりの決勝ラウンドへ挑もうとしている。歴代のマジック・プレイヤーで5本の指に入ろうかという渡辺 雄也と、他の殿堂顕彰者でさえも舌を巻く技術を持つ八十岡 翔太というふたりの殿堂顕彰者を擁し、そしてプロ・レベルの経験はまだ浅いもののグランプリ・トップ8入賞2回を記録し驚くべき勝率を誇る日本選手権王者の原根 健太によって構成されたこのチームに、優勝タイトルを獲得するために足りないものなどあろうか?

 長く壮大なチーム紹介を読んでいられない方のために簡潔に言うなら、日本代表にはトロフィー獲得が大いに期待されているということだ。

 そしてここで日本代表と対峙するのは、オーストリア代表。

 キャプテンのオリヴァー・ポラック=ロットマン/Oliver Polak-Rottmannは日本代表を前にしても俯くことはないプレイヤーだ。オーストリア選手権王者のエリアス・クロヒャー/Elias Klocherもグランプリ・トップ8入賞2回を記録している。だがオーストリア選手権準優勝でこのチームに入ったエイドリアン・ヨハン・シュレンク/Adrian Johann Schrenkは、旅慣れていない様子だ。このチームが日本代表を上回っているのは、過去のワールド・マジック・カップでの活躍だけと言える。

 私が何を言いたいか、わかるだろうか? つまりこの戦いはダビデとゴリアテ、カメとウサギ、小売店と大型百貨店、ジムで一番のバスケットボール・プレイヤーとマイケル・ジョーダン、そして私の陳腐な直喩とジェイムズ・ジョイス/James Joyceの見事な寓意のような戦いなのだ。

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スーパー・チームの中で唯一トップ8に残った日本代表。だがオーストリア代表は日本代表にないものを持っている。これまでのワールド・マジック・カップにおける実績だ。

ゲーム展開

 対戦組み合わせは以下の通り:

  • A卓:八十岡 翔太(ラムナプ・レッド) vs. エリアス・クロヒャー(4色コントロール)
  • B卓:渡辺 雄也(4色エネルギー) vs. エイドリアン・ヨハン・シュレンク(白青「王神の贈り物」)
  • C卓:原根 健太(白青「王神の贈り物」) vs. オリヴァー・ポラック=ロットマン(ラムナプ・レッド)

 この物語では、B卓の戦いは割愛させていただく。無論この戦いも熱戦であり、最終ゲームまでもつれ込んだ。しかしこの試合を決定づけたのは、A卓とC卓だった――それぞれの「ラムナプ・レッド」が大きな鍵となったのだ。そしてその戦いで、私たちは日本代表をトップ8入賞に導いた卓越した技術を目の当たりにすることになる。

 C卓ではポラック=ロットマンが苦しい戦いを強いられていた。原根が選択した第2のゲーム・プランが彼を苦しめたのだ。ポラック=ロットマンは「ラムナプ・レッド」らしい高速のスタートを切り、原根がカードを引いて捨てている間に素早く彼のライフを残りひと桁に減らした。それでも4ターン目《復元》が決まれば早くも原根の勝利が確定する状況ではあるのだが、彼はそれを引き込めなかった。だが原根は代わりに《排斥》を持っており、《熱烈の神ハゾレト》の攻撃を封じることに成功する。

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準々決勝でゴリアテに挑むオーストリア代表。

 ここからは、第2ゲームを含め原根の独擅場だった。彼は5ターン目に《発明の天使》を繰り出すと、続けて《聖なる猫》を展開しつつドローを進め、一方のポラック=ロットマンはガス欠に陥った。8ターン目を迎える頃には盤面はほぼ更地になっており、原根はここで《復元》を引き込むと《王神の贈り物》から《発明の天使》を戦場に呼び戻した。6/6絆魂の天使が冷徹に睨みを利かせ、第1ゲームの勝敗は決したのだった。

(次はA卓を見てみよう......)

 八十岡 翔太はポラック=ロットマンのように苦しめられていなかった。彼の繰り出した《熱烈の神ハゾレト》は戦場を駆け、エリアス・クロヒャーのデッキに《発明の天使》はなかった。《ヴラスカの侮辱》と《つむじ風の巨匠》で時間を稼いだクロヒャーだが、気づけば残りライフは3点となり、《ラムナプの遺跡》を前に立ち尽くしていた。八十岡のような高い技術を持つプレイヤーにとって、残り数点を削るのに多くの時間は必要なかった。

(次はC卓を見て、ときおりB卓を見て、私を見て、またC卓を見よう)

 八十岡がダメージを与えるのに力を尽くしていたのに対し、チームメイトの原根はダメージを受けないよう力を尽くしていた。第2ゲーム、マリガンを喫したポラック=ロットマンはその後もマナ・フラッドに悩まされ、強力な《聖なる猫》を前に攻め込めないでいた。《王神の贈り物》に備えて《削剥》を構え続けたポラック=ロットマンだが、原根はクリーチャーを展開し続けて身を守るプランの方が効果的であることを熟知していた。《博覧会場の警備員》や2枚の《排斥》、そして《領事の権限》を駆使した原根はライフを13点も残し、対するポラック=ロットマンは《》を引き続け首を振るのみだった。《領事の権限》が戦場に出てからしばらく時間がかかったものの、原根はついに「不朽」した《賞罰の天使》で勝利を得たのだった。

(一方B卓では渡辺 雄也とエイドリアン・ヨハン・シュレンクが1ゲームずつ取り合ったが、ここでは割愛する)

 そして全員の注目がA卓に集まった――コントロール・マスターとして広く知られる八十岡の、達人たるゆえんを見るために。

 このときの状況を説明しよう。4ターン目、クロヒャーのライフは残り20点。戦場には《つむじ風の巨匠》がおり、エネルギー・カウンターは6個ある。一方、「攻める側」の八十岡の盤面にはクリーチャーが1体(《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》)しかいない。「ラムナプ・レッド」と対峙するコントロール・デッキにとって、夢のような状況だ。

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持てる技術を存分に活かして着実に試合を運ぶ日本代表の八十岡と原根。

 しかし《つむじ風の巨匠》に《削剥》が撃ち込まれ、続けて《地揺すりのケンラ》が2体現れると、クロヒャーのライフは一気に削り取られた。さらにライフを落とそうと迫る攻撃を相打ちに取り八十岡の盤面を一掃したクロヒャーだったが、《地揺すりのケンラ》は「永遠」で戻ってくる。

 そしてここから、八十岡の卓越したプレイが繰り広げられる。赤いデッキを使うプレイヤーの大半が攻撃に向かうこの状況で、彼は待った。《屍肉あさりの地》を起動できない状態で《奔流の機械巨人》に突っ込む可能性を意識して、それを回避したのだ。八十岡は辛抱強く待ち、デッキは彼に土地を与え続けた。ポラック=ロットマンが陥ったのと同じマナ・フラッドの状況だが、八十岡はそれに価値を持たせたのだ。

 そしてついに、八十岡は《屍肉あさりの地》を残しつつ2枚目の《地揺すりのケンラ》を「永遠」できるだけのマナを揃え、クロヒャーに対応を迫った。果たしてその対応は《奔流の機械巨人》ではなく(彼はこのカードを持っていなかった)、《貪る死肉あさり》を繰り出しただけだった。わずかでもライフを回復しようとしたクロヒャーだが、八十岡は《屍肉あさりの地》を「起動できる」。クロヒャーの試みは失敗に終わった。

 八十岡の猛攻が始まった。だが彼は強力な攻撃を繰り出しつつも、残りの土地に徹底して注意を払った。土地の中には複数の《ラムナプの遺跡》があり、砂漠も豊富にあった。攻撃によるダメージはあとわずかで十分だった。残りは砂漠が削ってくれる。

 そして結果はその通りになった。クロヒャーは数点のライフを残したまま右手を伸ばし、これで日本代表が2試合を無敗で取り準決勝へ駒を進めた。

 結末があっけない? 最後に何かドラマを用意しているんじゃないかって?

 何もない。この試合にドラマは存在しない。ただ今大会最強のチームが冷静に、確実に、やるべきことをやっただけだ――勝利を得るというただひとつのことを。

日本代表がオーストリア代表を2連勝で下し、準決勝へ!

八十岡 翔太(日本・A席) - 「ラムナプ・レッド」
ワールド・マジック・カップ2017 トップ8 / チーム共同デッキ構築・スタンダード (2017年12月1~3日)[MO]
14 《
4 《ラムナプの遺跡
4 《陽焼けした砂漠
2 《屍肉あさりの地

-土地(24)-

4 《ボーマットの急使
4 《損魂魔道士
4 《地揺すりのケンラ
2 《過酷な指導者
2 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ
4 《アン一門の壊し屋
2 《暴れ回るフェロキドン
4 《熱烈の神ハゾレト

-クリーチャー(26)-
4 《ショック
3 《削剥
3 《稲妻の一撃

-呪文(10)-
3 《ピア・ナラー
2 《暴れ回るフェロキドン
1 《砂かけ獣
3 《栄光をもたらすもの
1 《削剥
4 《霊気圏の収集艇
1 《

-サイドボード(15)-
渡辺 雄也(日本・B席) - 「4色エネルギー」
ワールド・マジック・カップ2017 トップ8 / チーム共同デッキ構築・スタンダード (2017年12月1~3日)[MO]
3 《
1 《
1 《
1 《
4 《植物の聖域
4 《尖塔断の運河
2 《隠れた茂み
3 《根縛りの岩山
4 《霊気拠点

-土地(23)-

4 《牙長獣の仔
4 《導路の召使い
4 《ならず者の精製屋
4 《つむじ風の巨匠
2 《逆毛ハイドラ
2 《スカラベの神

-クリーチャー(20)-
4 《霊気との調和
1 《マグマのしぶき
4 《蓄霊稲妻
2 《慮外な押収
2 《木端+微塵
2 《反逆の先導者、チャンドラ
2 《秘宝探究者、ヴラスカ

-呪文(17)-
3 《多面相の侍臣
3 《チャンドラの敗北
3 《否認
1 《宝物の地図
1 《人工物への興味
1 《領事の旗艦、スカイソブリン
1 《反逆の先導者、チャンドラ
1 《王神、ニコル・ボーラス
1 《自然に仕える者、ニッサ

-サイドボード(15)-
原根 健太(日本・C席) - 「白青・王神の贈り物」
ワールド・マジック・カップ2017 トップ8 / チーム共同デッキ構築・スタンダード (2017年12月1~3日)[MO]
7 《
6 《平地
3 《灌漑農地
4 《氷河の城砦
2 《イプヌの細流
1 《敵意ある砂漠

-土地(23)-

4 《査問長官
3 《聖なる猫
4 《機知の勇者
1 《博覧会場の警備員
4 《発明の天使

-クリーチャー(16)-
4 《航路の作成
4 《巧みな軍略
2 《アズカンタの探索
4 《復元
2 《排斥
1 《燻蒸
4 《王神の贈り物

-呪文(21)-
3 《博覧会場の警備員
4 《賞罰の天使
2 《領事の権限
2 《ジェイスの敗北
2 《不許可
1 《排斥
1 《残骸の漂着

-サイドボード(15)-

Elias Klocker(オーストリア・A席) - 「4色コントロール」
ワールド・マジック・カップ2017 トップ8 / チーム共同デッキ構築・スタンダード (2017年12月1~3日)[MO]
1 《
2 《
1 《
1 《
4 《植物の聖域
4 《花盛りの湿地
1 《異臭の池
1 《水没した地下墓地
1 《泥濘の峡谷
2 《竜髑髏の山頂
4 《霊気拠点

-土地(22)-

4 《光袖会の収集者
4 《ならず者の精製屋
4 《つむじ風の巨匠
1 《豪華の王、ゴンティ
2 《スカラベの神
3 《奔流の機械巨人

-クリーチャー(18)-
4 《霊気との調和
4 《致命的な一押し
3 《本質の散乱
3 《蓄霊稲妻
1 《至高の意志
3 《ヴラスカの侮辱
2 《天才の片鱗

-呪文(20)-
3 《貪る死肉あさり
1 《豪華の王、ゴンティ
2 《チャンドラの敗北
2 《強迫
3 《否認
1 《蓄霊稲妻
2 《人工物への興味
1 《秘宝探究者、ヴラスカ

-サイドボード(15)-
Adrian Johann Schrenk(オーストリア・B席) - 「白青・王神の贈り物」
ワールド・マジック・カップ2017 トップ8 / チーム共同デッキ構築・スタンダード (2017年12月1~3日)[MO]
7 《平地
6 《
1 《灌漑農地
4 《氷河の城砦
4 《イプヌの細流
1 《敵意ある砂漠

-土地(23)-

3 《査問長官
3 《聖なる猫
4 《機知の勇者
4 《発明の天使

-クリーチャー(14)-
4 《航路の作成
4 《巧みな軍略
1 《アズカンタの探索
4 《復元
3 《排斥
3 《燻蒸
4 《王神の贈り物

-呪文(23)-
2 《賞罰の天使
1 《断片化
1 《呪文貫き
1 《ジェイスの敗北
3 《不許可
3 《飛行機械による拘束
2 《残骸の漂着
1 《霊気圏の収集艇
1 《領事の旗艦、スカイソブリン

-サイドボード(15)-
Oliver Polak-Rottmann(オーストリア・C席) - 「ラムナプ・レッド」
ワールド・マジック・カップ2017 トップ8 / チーム共同デッキ構築・スタンダード (2017年12月1~3日)[MO]
15 《
4 《ラムナプの遺跡
4 《陽焼けした砂漠
1 《屍肉あさりの地

-土地(24)-

4 《ボーマットの急使
4 《損魂魔道士
4 《地揺すりのケンラ
3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ
4 《暴れ回るフェロキドン
1 《アン一門の壊し屋
4 《熱烈の神ハゾレト

-クリーチャー(24)-
4 《ショック
4 《稲妻の一撃
3 《削剥
1 《反逆の先導者、チャンドラ

-呪文(12)-
4 《ピア・ナラー
3 《砂かけ獣
2 《反逆の先導者、チャンドラ
3 《栄光をもたらすもの
1 《マグマのしぶき
1 《削剥
1 《屍肉あさりの地

-サイドボード(15)-
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RESULTS

対戦結果 順位
最終
S2-3 S2-3
S2-2 S2-2
S2-1 S2-1
S1-3 S1-3
S1-2 S1-2
S1-1 S1-1
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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