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ワールド・マジック・カップ2014

戦略記事

ワールド・マジック・カップ2014、スタンダード・メタゲームブレイクダウン

矢吹 哲也
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Adam Styborski / Tr. Tetsuya Yabuki

2014年12月5日


 現在、スタンダード環境は多様性に溢れていて、様々な選択肢が存在する。素早くアグレッシブなものや強力なミッドレンジ、そして時間をかけるコントロールも、それらすべてが成功を収めているのだ。

 だがその均衡は、チーム共同デッキ構築・スタンダードでは少々状況が変わる。

 チーム共同デッキ構築・スタンダードでは、各チームは合わせて3つのデッキを組み上げることになる。しかし、このフォーマットには注意すべきことがあり、デッキに4枚までというルールが3つのデッキすべてに適用されるのだ。つまり基本的に、ふたりのプレイヤーが同じデッキを使用することはできない。なぜなら、そのデッキのキー・カードは大抵4枚必要になるからだ。お互いに両立できるアーキタイプを探し出したら、次はそれらが混ざり合うひとつ先のレベルに挑戦することになる。使った感触が良く、想定するメタゲーム上で有利なだけでなく、それぞれの機能にきちんと差異が生まれるようなデッキを作り上げたいところだ。

 プレイヤーたちにとって幸運なことに、『タルキール覇王譚』と『基本セット2015』、そして『テーロス』ブロックが織り成す現スタンダードには基本でない土地が豊富にあり、マナの問題は多少緩和されている。その結果、各国とも多色デッキを複数使用することができ、以下のようなメタゲームを生み出した。

アーキタイプ合計
アブザン・アグロ3
アブザン「星座」1
アブザン・ミッドレンジ28
アブザン・ウィップ15
黒緑「星座」11
青黒コントロール11
青赤コントロール1
エスパー・コントロール1
緑単「信心」3
ジェスカイ・アグロ4
「ジェスカイの隆盛」3
ジェスカイ・コントロール2
ジェスカイ・トークンズ13
マルドゥ・ミッドレンジ38
マルドゥ・トークンズ1
黒単アグロ1
赤単アグロ6
赤緑ミッドレンジ3
赤白アグロ2
シディシ・ウィップ13
兵士アグロ1
ティムール・ミッドレンジ22
白青コントロール8
白青「英雄的」24
合計216
その他アーキタイプ25

 すべてのアーキタイプについて言えることだが、デッキの数はそのデッキを使用している国の数である。チーム内での重複は考慮されていない。とはいえ、全体の80%を占めていた上位9つのアーキタイプを見てみよう。

上位アーキタイプ合計
マルドゥ・ミッドレンジ38
アブザン・ミッドレンジ28
白青「英雄的」24
ティムール・ミッドレンジ22
アブザン・ウィップ15
ジェスカイ・トークンズ13
シディシ・ウィップ13
黒緑「星座」11
青黒コントロール11

 他と大きく差を付けて、「マルドゥ・ミッドレンジ」が最も人気を集めるデッキとなった。約53%の国が選択したことから、全試合の半分はマルドゥが現れる計算だ。《嵐の息吹のドラゴン》や《軍族の解体者》のカード・パワーに、大量のトークンとそれらを支える火力が入るマルドゥは第1ゲームに強く、ゲーム後半にはプレインズウォーカーも繰り出して不意をつく。

 これに続くのが、見た目上は多くの色を共有しているアーキタイプ「アブザン・ミッドレンジ」だ。実際はその核となる部分が大きく隔たっているため、チーム共同デッキ構築・スタンダードにおいても構築しやすく、多くのチームが使用するに至った。プロツアー『タルキール覇王譚』にてアリ・ラックス/Ari Laxなどをトップ8入賞へ導いたことで有名なアーキタイプであり、また世界選手権トップ4入賞を決めたパトリック・チャピン/Patrick Chapinが選択し初日全勝を達成したことで、その名声を確立したデッキだ。《包囲サイ》や《風番いのロック》、そして強力な除去呪文の数々がアグレッシブなデッキを抑えるだけでなく、ゲーム後半にはプレインズウォーカーを呼び出すことも可能になる。

 なんか聞き覚えがあるって?

 《エレボスの鞭》を含むバージョンが参入したことで、アブザンは(色の上では)マルドゥよりポピュラーなものになった。しかし、この強力なアーティファクト・エンチャントを採用したタイプは、すでに存在するミッドレンジというよりは「黒緑『星座』」や「シディシ・ウィップ」のフレーバーを借りたものと言える。それらのデッキも強力なクリーチャーとカードを墓地に送る効果を擁し、《エレボスの鞭》の能力でアドバンテージを得ることでロング・ゲームを圧倒する。それらふたつの最大の違いは、ドローや妨害、あるいは墓地を肥やす手段のために色を足しているかどうかだが、どちらも世界選手権の予選ラウンド、スタンダード構築部門で人気を集めた。

 さらにその下、上位に食らいついたデッキふたつもまた、先述のマルドゥやアブザンとは大きく異なる。大きなスタンダードの大会でも大活躍を見せている「白青『英雄的』」は、《イロアスの英雄》のような「英雄的」を持つクリーチャーと《オレスコスの王、ブリマーズ》のような優秀なクリーチャーを用い、さらに《層雲歩み》や《タッサの試練》のように以前はリミテッドで見ることが多かった呪文が採用されている。スピードに加えて意外なまでの粘り強さもあるこのデッキは、オーラ・カードを連鎖させてカードをドローし、怪物的なサイズのクリーチャーを生み出すのだ。

 ティムール・ミッドレンジもまた頂点に肉薄したデッキであり、これまた毛色の違うものだ。《荒野の後継者》や《凶暴な拳刃》、そして《世界を喰らう者、ポルクラノス》のようなクリーチャーは、どれもそのマナコストに対して極めて優秀なものだ。火力呪文と軽くマナを生み出せるクリーチャーの組み合わせに続けて、大型クリーチャーで漫然と攻撃しているだけでも他を圧倒することができ、同様に遅いデッキには火力で即座にゲームを終わらせることだろう。

 残ったふたつは、「ジェスカイ・トークンズ」と「青黒コントロール」だ。前者は世界選手権トップ4入賞を決めた渡辺 雄也がスタンダードで選んだ武器で、「横に並べる」というアプローチのもとに《ジェスカイの隆盛》をコンボなしで使用し、小型のクリーチャーを致命的なサイズまで強化するのに用いている。「青黒コントロール」の方は、プロツアー『マジック2015』優勝のイヴァン・フロック/Ivan Flochに世界選手権で使用され、他のデッキにはないツールを有している。

 ここだけの秘密だが――最も人気を集めたデッキを除いて残りのカードで組むなら、今回ご紹介したものの多くがベスト・アンサーになり得る。今週はじめの世界選手権で様々なデッキが選ばれ、様々なカードが登場し、議論し尽くされた。フランス、ニースに到着した各国代表チームは、ひと足先に戦いに身を投じた世界最高のプレイヤーたちによって、本戦への備えができていたのだ。

 世界選手権で活躍したデッキがこの後どうなっていくのかは、また別の日のお話だ。

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RESULTS

対戦結果 順位
S2-3 S2-3
S2-2 S2-2
S2-1 S2-1
S1-3 S1-3
S1-2 S1-2
S1-1 S1-1
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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