EVENT COVERAGE

リダイレクト

観戦記事

決勝:Luis Salvatto(アルゼンチン) vs. Gerry Thompson(アメリカ)

川添 啓一
chapman.jpg

Chapman Sim / Tr. Keiichi Kawazoe / Edit. Yusuke Yoshikawa

2018年2月4日


 465人のプレイヤーが、プロツアー『イクサランの相克』の勝利を目指してここビルバオに集結した。すでに計18回戦が終了し、ついに決勝の2人を残すのみとなった。

 ルイス・サルヴァット/Luis Salvattoの「ランタン・コントロール」とジェリー・トンプソン/Gerry Thompsonの「マルドゥ・パイロマンサー」がこのプロツアーの覇権をかけて争うことになる。サルヴァットにとっては自身初のタイトルが、一方のトンプソンにとっては9か月前のプロツアー『アモンケット』以来の勝利が目前に迫っていた。

「そんなにひどい相性じゃないけど、それでも決勝では他の人とやりたかったね」とサルヴァットはこぼした。「ジェリーは素晴らしいプレイヤーだし、その上アーティファクトも処理できて、序盤からプレッシャーをかけてくるんだから」

ptrix-f-thompson-salvatto.jpg
ルイス・サルヴァットがアルゼンチンに初のプロツアーのタイトルをもたらすのだろうか? それとも、ジェリー・トンプソンが初タイトルから1年足らずで2度目を手に入れるのだろうか?

ゲーム展開

 第1ゲームはトンプソンがマリガンでゲームを始めた。キープして「占術」したところで、サルヴァットはそのカードを上に置いたか下に置いたかを尋ねた。

「上さ!」トンプソンは雰囲気を明るくするべくそう答えた。「いいことだね、うれしいよ」

 サルヴァットの問いかけは無意味なものではなかった。トンプソンがそのカードを上に置いたということは、第1ターンの《伏魔殿のピュクシス》でそれを弾かなければいけないということだからだ。さらに続くターンには《写本裁断機》を展開し、《ミシュラのガラクタ》で見られたカードを削り落とした。そして《洞察のランタン》にも到達し、トンプソンのドローをめちゃくちゃにし始めた。

 《未練ある魂》が盤面に脅威を展開するも、サルヴァットは手札の最後のカードだった《罠の橋》を出し、おおむねロックを完成させた。

 「きっとこれがこのゲームで与える最後のダメージかな。18でいいかい? ここから勝てる可能性あるかな? ゼロかな?」トンプソンは聞こえる声でそうひとりごちた。

ptrix-f-salvatto.jpg
ランタン・コントロールを使うこと3か月、サルヴァットはついにこの非常に複雑なロックデッキを効率的かつ迅速に扱うようになった。

 「多分1%くらいだね」とサルヴァットは返した。「ここから勝つには、《コラガンの命令》が3枚全部ライブラリーの上に固まっていないといけないからね。しかも、そうなったとしても《写本裁断機》と《伏魔殿のピュクシス》で2枚を処理した後に《洞察のランタン》を生け贄に捧げて切り直させるから、その後もう1回すぐにそれを引き直さなきゃいけないんだ」

 この分析は的を射ていた。多少の逡巡ののち、トンプソンは皆の時間を無駄にしないことを決断した。「マリガンして、占術して、フェッチランド切って2つ呪文唱えただけか......」とトンプソンはぼやいた。「このゲーム、5アクションしかしてないよ。もうそのデッキはコントロールデッキっていうよりは、3ターンキルのコンボデッキじゃないか」

 第2ゲーム、またもトンプソンはマリガンを強いられた。「あーもう、このデッキはダメだな」と言いながら、さらなるマリガンに進んだ。一方サルヴァットもマリガンを選択したが、次の6枚には満足したようだった。

 両プレイヤーが「占術」を終えた後、サルヴァットは《ミシュラのガラクタ》でトンプソンのライブラリーの一番上を見に行った。

 「興味あるの?」トンプソンが問いかけた。「《若き紅蓮術士》さ。そんなに良くはないね」 しかしながら、サルヴァットはそれが着地するとすぐに《突然の衰微》で処理した。トンプソンが《思考囲い》を打つと、サルヴァットは手札に残った最後のカードだった《発明品の唸り》で《写本裁断機》を出した。

ptrix-f-thompson.jpg
トンプソンはどうにもならない状況に追い込まれたとき、笑いながら冗談を言わずにはいられなかった。

 トンプソンはようやく《騒乱の歓楽者》を唱えるだけのリソースを手に入れたが、有効なカードを引くことはできなかった。一方サルヴァットは牢獄を着々と建設していく。まず《真髄の針》2枚、そして《罠の橋》、2枚の《写本裁断機》といった具合だ。ここで、また両者は逆転の可能性について話し合った。

「今回はどのくらいだと思う?」 トンプソンは尋ねた。

「3%くらいじゃないかな」 サルヴァットは返した。しかしそこで彼は2枚目の《発明品の唸り》を引き、発言を翻した。

「すまない、たった今0%になったよ。」 《発明品の唸り》で《写本裁断機》か《伏魔殿のピュクシス》を追加すれば、トンプソンが勝つ目は完全に塞がれるのだ。

「3%よりは0%の方がマシだね、さっさと諦めて次にいけるからね!」

 そしてサルヴァットは第2ゲームも取り、両者はサイドボードを始めた。「ここから大逆転を決めないとな」とトンプソンは望みを賭ける。「最初の2本を落としたけど、その後3連勝すればいいんだ。準決勝でやったみたいにね」

 サルヴァットは微笑みながらデッキを差し出した。彼は今や、アルゼンチン初のプロツアー王者まで1ゲームを残すのみとなったのだ。

 彼が《洞察のランタン》を出していたため、引かれたカードはすべて全員の知るところとなっていた。トンプソンは《若き紅蓮術士》を出したが、これはすぐに《突然の衰微》で処理された。しかし、サルヴァットはマナ基盤が不安定であった。まだ「金属術」を満たしていないために《オパールのモックス》から色マナが出ず、《発明品の唸り》の{U}{U}{U}が捻出できなかったのだ。

 トンプソンが《コジレックの審問》を引いたとき、次のドローに《溶鉄の雨》が見え、彼はつい興奮のあまり声をあげた。トンプソンは《植物の聖域》を破壊し、サルヴァットのマナ基盤は《植物の聖域》1枚と《アカデミーの廃墟》のみ、そして手札は《発明品の唸り》1枚だけとなった。

 しかし、サルヴァットはここから《溶接の壺》と3枚目の《植物の聖域》を連続して引き込み、《発明品の唸り》から《罠の橋》を手に入れた。《若き紅蓮術士》、《騒乱の歓楽者》、そしてトークンの大群を率いながらも、トンプソンは最後の一撃を加えるためには何か解決策を引くことを待つしかなくなってしまった。

 一方、サルヴァットも《写本裁断機》や《伏魔殿のピュクシス》がないために、安全とは言えない状況だった。トンプソンにはまだ「脱獄」の可能性が残されていた。安全のために、彼は墓地の《洞察のランタン》をライブラリーの上に戻し、2枚目の《オパールのモックス》を引かないようシャッフルし直した。そして、今度は《ヴェールのリリアナ》がトンプソンのデッキの一番上に姿を見せると、同じことを繰り返してトンプソンにシャッフルを強いた。

 トンプソンは三度尋ねる。「さて、抜ける確率はどのくらいかな。」

「15%......でも僕は楽観的だからね」と言いながら《溶接の壺》を追加する。これは《罠の橋》の追加の保護となる。

「今どうなった?」

「ちょっとわからないね」サルヴァットは、勝利を確定する最後の「一里塚」を必要としていた。

「ほら、数字で言おうぜ!」

「5%くらいだと思うよ」とサルヴァットは呟いた。

「悪くない、5%は0%じゃないからね。」

ptrix-f-lastgame.jpg
トンプソンは2度目のタイトルへの扉が目の前で閉まって行くのを感じたが、それでも状況を楽しまずにはいられなかった。

 そして《古きものの活性》が《写本裁断機》を見つけると、サルヴァットは自らの答えを修正する。

「今3%になった」

 2枚目の《写本裁断機》が着地する。

「1%だ」サルヴァットはトンプソンに教える。

 今や、ここから「脱獄」する手段は唯一、複数のカードを一度に引くことだけであった。なぜなら、《写本裁断機》は同時に引かれる2枚目や3枚目のカードには干渉できないからだ。もしトンプソンが《信仰無き物あさり》や《騒乱の歓楽者》でカードを引くことができれば、まだ自由を手にする可能性があった。そのため、サルヴァットはこれらの2種類を処理する必要のある「生きた」カードだと判断していた。

 サルヴァットは何度か自分自身のライブラリーを削り、ついに《伏魔殿のピュクシス》を見つけて《信仰無き物あさり》を処理できるようになった。《写本裁断機》2枚も含めて、もはやトンプソンに逃れる術はなくなった。

「友よ、プロツアー優勝おめでとう」 トンプソンはそう言いながら、観衆の歓声の中、手を差し出した。

 最終的な勝利の喜びは、自分がベストを尽くしたこと、そしてすべきことを成したことを自覚したという達成感からくるものだ。この週末は、ルイス・サルヴァットの「ランタン・コントロール」による完璧なパフォーマンスによって締めくくられた。強敵を相手にした決勝戦を完封勝利したことは、彼の勝利をより甘美なものにしたことだろう。彼は即座にプラチナ・レベル・プロに昇格するだけでなく、2018年の世界選手権の出場権も手に入れることとなった。

ptrix-f-winner.jpg
ルイス・サルヴァット、プロツアー『イクサランの相克』優勝おめでとう!
  • この記事をシェアする