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決勝:孫 博/Sun, Bo(中国) vs. 篠田 滉人(京都)

By 矢吹 哲也

 かつて栄華を誇った龍が滅びた世界で、タルキールに生きる戦士たちは戦いに明け暮れている。

 彼らが求めるのは「覇」の一文字。何世紀も続く戦の中で、戦いはもはや日常となり、次なる勝利を求めて戦いを欲する。

 それは、我々マジック・プレイヤーも同じだ。彼らのような命のやり取りとは異なるが、私たちも常により良い戦いを、より良い勝利を求めて大会に赴く戦士。

 プロツアー『ニクスへの旅』を制したパトリック・チャピン/Patrick Chapinは、優勝を決めた直後のインタビューで次のように語った。

「これで、世界選手権でプレイできるね」

 勝利は必ずしも終結を意味しない。それは、この決勝の舞台にあるふたりの戦士にも本能でわかっているはずだ。

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 トップ8に入賞した時点で、両プレイヤーともに、さらなる舞台――プロツアーへの参加権は獲得している。だがしかし、ここで「グランプリ・チャンピオン」の肩書を得て、世界に覇を唱えるのはどちらかひとりなのだ。

 マジック・プレイヤーの本能が、戦士としての本能が、彼らを戦いへ駆り立てる。

 どの世界であっても、生きることは戦いなのだから。

ゲーム展開

 この大一番で、不幸にも孫はマリガン・スタートになった。その後6枚の手札を1枚ずつめくって確認し、キープを宣言。

 動き出しは篠田。《射手の胸壁》が戦場に築かれ、続けて《苦しめる声》で手札を整える。孫も3ターン目「変異」からゲームを始め、《遠射兵団》を加えた篠田に向けてアタック。これを通した篠田が迎えたターン、彼の手札から《カマキリの乗り手》が飛び出し、反撃に向かった。

緑、黒、赤
白、青!

 孫はこれを《必殺の一射》で除去。「変異」クリーチャーで2点のダメージを加え、《スゥルタイのゴミあさり》を戦線に投入する。一方の篠田は《遠射兵団》で攻撃。《軍用ビヒモス》を盤面に加えて地上を固めた。孫は《スゥルタイのゴミあさり》で空から攻撃し、ターンを渡す。

 孫の展開が止まったのを見て、篠田は《悪寒》で「変異」クリーチャーを寝かせて攻撃。だが《遠射兵団》を孫は《打ち倒し》、思うようなダメージは通らない。さらに「変異」で繰り出した《頭巾被りのハイドラ》が《絞首》され、攻めの手がかりを失う篠田。それでも彼は《内向きの目の賢者》を盤面に追加し、《軍用ビヒモス》と《射手の胸壁》の能力でクロックを刻む。

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除去を多く搭載したマルドゥを操る孫は、篠田の攻勢を止めにかかる。

 続く篠田の攻撃に対し、孫は伏せていた《子馬乗り部隊》の「変異」を解く。生み出されたトークンが篠田の攻撃を防ぐが、《悪寒》が《内向きの目の賢者》の能力を誘発させ、ライフ差を16対5と大きく広げた。

 状況を打破する手段を求めて、《苦々しい天啓》を放つ孫。除去で篠田の攻め手をまた1体奪い、反撃を試みるが......

 ターンの終わりに《射手の胸壁》の能力で残り2点。篠田の手札から《灰雲のフェニックス》が「変異」で繰り出され、即座に表向きに。直接ダメージが孫のライフを削り切った。


 第2ゲームは互いに「変異」クリーチャーを繰り出すところからスタート。《悪寒》で孫の「変異」クリーチャーを縛った篠田は、土地を揃えていく。

 表になった《イフリートの武器熟練者》を《はじける破滅》で対処した孫は、《マルドゥの荒くれ乗り》を展開し反撃へ。しかし篠田は《内向きの目の賢者》に続けて《灰雲のフェニックス》を表向きで戦場に送り込み、さらに《アブザンの隆盛》を設置した。

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色とりどりの強力レアを多数擁する篠田。

 盤面と手札を吟味し、《ラクシャーサの秘密》を放つ孫。篠田の手札はちょうど2枚で、墓地に落としたカードを目にするなり孫は肩をすくめる。《頭巾被りのハイドラ》と《雪角の乗り手》を撃ち落とすビッグ・プレイだ。

 しかし篠田の反撃も大きい。+1/+1カウンターが置かれた《内向きの目の賢者》と《灰雲のフェニックス》の攻撃により、孫の残りライフはひと桁に。追い詰められた孫は戦場に並ぶ篠田のカードを今一度しっかりと確認し、熟考する。そして、《マルドゥの荒くれ乗り》と「変異」を解いた《シディシのペット》で攻撃。不利は明らかだが、最後まで諦めず人事を尽くす。

 篠田の反撃に対して、孫は《マルドゥの魔除け》を《灰雲のフェニックス》へ撃ち込んだ。《アブザンの隆盛》の効果でスピリット・トークンが現れ、《灰雲のフェニックス》も「変異」の状態で戦場へ戻る。篠田は最後に《アイノクの盟族》も戦線に加え、ターンを返した。

 ドローを見て、篠田を崩すことは不可能と悟った孫。惜しむように盤面を、手札を今一度見直し、それから右手を差し出した。

篠田 2-0 孫

 差し出された手を、篠田が笑顔で握る。その瞬間に沸く、ひときわ大きな歓声。

 試合のゆくえを見守っていた篠田の仲間たちが篠田以上に喜びを爆発させ、それをなだめるのが篠田という構図。長い戦いを終えた若き戦士は、仲間たちに囲まれて勝利を噛み締めた。

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 こうしてまたひとり、覇王が世界に名乗りを挙げる。

 次なる戦いの舞台は、プロツアー。より厳しい戦いが、彼を迎えてくれるだろう。

 篠田 滉人、グランプリ・静岡2015優勝おめでとう! この勢いで世界にその名を刻め!

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