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第8回:「神戸への道」エクステンデッド攻略 その3?包囲戦がもたらしたもの

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高橋優太の「このフォーマットを極めろ!」

2011.03.04

第8回:「神戸への道」エクステンデッド攻略 その3~包囲戦がもたらしたもの

 「神戸への道」と題してお送りしているエクステンデッド攻略、第3回です。

 前々回前回と1月までのデッキを紹介してきましたが、スタンダードが「ミラディン包囲戦」で大きく変化を遂げたのと同じく、エクステンデッド環境も包囲戦によって変化がありました。今回はその変化を見ていくことにしましょう。


 大きなインパクトをもたらしたもの、それは《饗宴と飢餓の剣》と《ミラディンの十字軍》の2つです。


饗宴と飢餓の剣

 スタンダードを「Caw-Go」一色に染めた剣。《石鍛冶の神秘家》《饗宴と飢餓の剣》どちらのマナコストも軽いため、エクステンデッドでも十分通用する強さです。

 《饗宴と飢餓の剣》の強いところは「土地アンタップ」能力で1ターンに複数回行動できる点で、カウンターを擁する青と相性が良いのは「Caw-Go」が証明しています。エクステンデッドには最高のリアクションスペルである《謎めいた命令》の存在もあり、一度「剣+青命令」が決まれば優位は揺るがないでしょう。またプロテクションの色もよく、フェアリーに対してもでも《苦花》トークンをすり抜けてダメージを与えることができます。


ミラディンの十字軍

 もしもこのカードがテンペストブロックだったら5マナなんじゃないかと考えてしまうくらい、コストに対して優秀すぎる性能を持ったクリーチャー。賛美や装備品との相性は抜群で、《遍歴の騎士、エルズペス》と組み合わせれば飛行10点ダメージ!

 《饗宴と飢餓の剣》と同様にプロテクションの色が良く、除去や《苦花》トークンに強い上に《炎渦竜巻》で流されないメリットもあります。Tier1のフェアリーに対して強いカードというのが大きいですね。

 ジャンド相手には《稲妻》でしか除去されず、《ミラディンの十字軍》を使うデッキは他に《稲妻》を使わなければいけない対象も多いため生き残り易く、これ1枚で勝てます。最近のトーナメントでジャンドを見なくなった原因は、プロテクション(緑)(黒)を持つ強力なカード2種類もが出てしまったためです。

 白マナの出るデッキでは《石鍛冶の神秘家》+《饗宴と飢餓の剣》+《ミラディンの十字軍》が定番になってきているので、これらの対策としてヴァラクートなら《火山の流弾》、フェアリーなら《蔓延》といったように、タフネス2以下の全体除去がオススメ。後述するエルフの存在もあります。


 ではミラディン包囲戦後に環境はどう変わったのか、各地の大会結果を見ていきましょう。


「ナヤ」
白赤緑ビートダウン「ARIA」 / ヒロサワ ユウイチロウ
プロツアー・名古屋予選 東神奈川 / ベスト4[MO] [ARENA]
3 《平地
2 《
3 《
3 《剃刀境の茂み
2 《銅線の地溝
2 《怒り狂う山峡
1 《活発な野生林
4 《乾燥台地
3 《新緑の地下墓地
1 《セジーリのステップ
1 《地盤の際

-土地(25)-

3 《貴族の教主
3 《極楽鳥
4 《獣相のシャーマン
4 《クァーサルの群れ魔道士
1 《石鍛冶の神秘家
4 《聖遺の騎士
3 《ミラディンの十字軍
1 《狡猾な火花魔道士
4 《復讐蔦
4 《血編み髪のエルフ

-クリーチャー(31)-
1 《バジリスクの首輪
1 《肉体と精神の剣
1 《饗宴と飢餓の剣
1 《骨溜め
1 《復讐のアジャニ

-呪文(5)-
2 《ガドック・ティーグ
2 《狡猾な火花魔道士
2 《台所の嫌がらせ屋
1 《不屈の随員
1 《静寂の守り手、リンヴァーラ
1 《悪斬の天使
1 《恨み唸り
1 《領土を滅ぼすもの
1 《自然の要求
2 《電弧の痕跡
1 《ボジューカの沼

-サイドボード(15)-

 1月後半あたりから、上位で見かけることが多いナヤ。ナヤ台頭の理由はズバリ「フェアリーに強い」デッキということです。

 《クァーサルの群れ魔道士》《獣相のシャーマン》《聖遺の騎士》、どれもマナコスト以上の働きをする優秀なクリーチャーであり、出されたら除去しなければいけないクリーチャー達です。そして速攻クリーチャーでありながらアドバンテージも併せ持つ《復讐蔦》《血編み髪のエルフ》の存在もあり、序盤から後半まで、フェアリーにとってはきついカードばかり。

 ナヤは《復讐蔦》の強さを最大限に引き出すデッキで、《獣相のシャーマン》経由で複数体落としてから《血編み髪のエルフ》で速攻クリーチャーの群れが押し寄せます。デッキの半分がクリーチャーなので、続唱すればほぼ確実に《復讐蔦》が戻ってきますね。

 しかし長所と短所は表裏一体で、《復讐蔦》中心のデッキ構築はナヤの弱点でもあります。デッキの大部分をクリーチャーに占められるため除去スロットを取れず、《悪斬の天使》や《誘惑蒔き》といった「マスト除去」クリーチャーは特に苦手です。

 これらに苦しめられないためにもサイド後は《流刑への道》を取ったり、もしくはヒロサワさんのデッキのように同系対策として《電弧の痕跡》を取るといったように、最低限の除去は必要ですね。《電弧の痕跡》はエルフ・バントにも強くなるのでオススメです。


聖遺の騎士》or《長毛のソクター》?

 《聖遺の騎士》はレガシーでも活躍するほどの優秀クリーチャー。ですが今のエクステンデッドは《寺院の庭》などのギルドランドは使えず、騎士の能力を活かすためには《》《平地》を多く入れる必要があります。

 ナヤは3色まんべんなく使うデッキであり、土地はなるべく《剃刀境の茂み》《銅線の地溝》を使いたいところですが、《聖遺の騎士》を入れると《セジーリのステップ》含めてマナベースに大きな負担がかかってしまいます。多色デッキはなるべくなら2色マナの出る土地を優先したいので、そうなるとどうしても《》《平地》の枚数に悩まされることになります。

 それならば、《》《平地》を多くする必要が無く、十分なサイズを持つ《長毛のソクター》の出番ではないでしょうか。
 白メタでタフネス2以下の全体除去が流行ってきており、フェッチランドがないと初期サイズ2/2は《蔓延》《火山の流弾》に巻き込まれやすいです。ナヤを使うプレイヤーは、選択肢として《長毛のソクター》も考えてみてください。


「バント」
_Batutinha_ (4-0)
Extended Daily #2104913 on 02/28/2011[MO] [ARENA]
5 《
2 《
1 《平地
4 《天界の列柱
1 《活発な野生林
3 《剃刀境の茂み
4 《霧深い雨林
3 《新緑の地下墓地
1 《乾燥台地

-土地(24)-

4 《極楽鳥
4 《貴族の教主
4 《水蓮のコブラ
4 《石鍛冶の神秘家
4 《聖遺の騎士
4 《ミラディンの十字軍
4 《失われたアラーラの君主

-クリーチャー(28)-
2 《エルドラージの徴兵
1 《肉体と精神の剣
1 《饗宴と飢餓の剣
4 《精神を刻む者、ジェイス

-呪文(8)-
4 《大貂皮鹿
4 《ロウクスの戦修道士
4 《流刑への道
3 《忘却の輪

-サイドボード(15)-
so_so_good (3-1)
Extended Daily #2104938 on 02/27/2011[MO] [ARENA]
4 《
1 《
1 《つぶやき林
2 《天界の列柱
1 《活発な野生林
2 《金属海の沿岸
4 《剃刀境の茂み
1 《秘教の門
4 《霧深い雨林
3 《新緑の地下墓地
1 《地盤の際

-土地(24)-

4 《極楽鳥
4 《貴族の教主
4 《クァーサルの群れ魔道士
2 《石鍛冶の神秘家
4 《ミラディンの十字軍
4 《聖遺の騎士
2 《刃砦の英雄
2 《悪斬の天使

-クリーチャー(26)-
1 《流刑への道
4 《バントの魔除け
1 《最高の時
1 《肉体と精神の剣
1 《饗宴と飢餓の剣
2 《遍歴の騎士、エルズペス

-呪文(10)-
4 《ブレンタンの炉の世話人
4 《大貂皮鹿
3 《流刑への道
4 《統一された意思

-サイドボード(15)-

 リアルの大会ではあまり見かけないものの、最近MOのエクステンデッドで多いのが「バント」。

 Batutinhaのデッキは依然あった徴兵バントに《石鍛冶の神秘家》《ミラディンの十字軍》を入れている形です。徴兵バントはマナクリーチャーばかりだったり重いカードばかりで、ブン回ったときとイマイチの回りの差が激しいという欠点を抱えていましたが、この2枚はマナ域もちょうど良くデッキにピッタリ収まります。マナクリーチャーばかりの状況でも《石鍛冶の神秘家》+装備品で継続的に攻めることができますし、《ミラディンの十字軍》は《失われたアラーラの君主》とのコンボで一撃26点ものダメージを叩き出します。

 so_so_goodのデッキは各色の強いカードを集めた、いわゆるグッドスタッフですね。ここでも《石鍛冶の神秘家》《饗宴と飢餓の剣》《ミラディンの十字軍》の3点セットは採用されており、もはや白いデッキなら定番ともいえます。

 またこのデッキでは《刃砦の英雄》も採用されています。1枚で7点→11点という強力なクロックを持ち、バントは除去の対象も多いため生き残り易い。《刃砦の英雄》はTier1であるフェアリー・ヴァラクート両方に対して強いカードであり、これから採用率も上がっていくと思います。ちなみに単独で攻撃して賛美を誘発させた場合、+1/+1修正を受けたあとでトークンを生み出すこともできます。

 ナヤ・バント、白緑のデッキに共通して言えることですが、最近の環境は《苦花》《虹色の前兆》《饗宴と飢餓の剣》などエンチャント・アーティファクトの使用率が高いため、それらを壊せる《クァーサルの群れ魔道士》をメインから4枚積めるのは大きなメリットですね。賛美によって《ミラディンの十字軍》が6点クロックになるのも大きいです。

 同様に《バントの魔除け》も装備品を壊せるカードとして価値が高まっていて、クリーチャー除去・インスタント限定の打消しとしても使える汎用性の高いカードです。


「青白石鍛冶」
アライ ケンイチロウ
グランプリ・神戸トライアル in 晴れる屋 / Top 8[MO] [ARENA]
5 《平地
3 《
4 《天界の列柱
4 《金属海の沿岸
2 《氷河の城砦
4 《秘教の門
2 《反射池
3 《地盤の際

-土地(27)-

4 《テューンの戦僧
4 《石鍛冶の神秘家
4 《ミラディンの十字軍
3 《ヴェンディリオン三人衆
1 《悪斬の天使
1 《太陽のタイタン

-クリーチャー(17)-
3 《流刑への道
2 《マナ漏出
2 《忘却の輪
4 《謎めいた命令
1 《バジリスクの首輪
2 《饗宴と飢餓の剣
1 《ジェイス・ベレレン
1 《精神を刻む者、ジェイス

-呪文(16)-
1 《悪斬の天使
1 《流刑への道
2 《剥奪
2 《漸増爆弾
4 《神聖の力線
4 《審判の日
1 《ジェイス・ベレレン

-サイドボード(15)-

 《饗宴と飢餓の剣》が強い理由は1ターンに複数回行動できる点で、スタンダードのCaw-Goが示すと通り、それを最も活用できるのは青いデッキです。ディスカード能力だけでも脅威なのに、その上で《謎めいた命令》を構えられたら、ほとんど逆転不可能のゲームになります。

 また《謎めいた命令》《精神を刻む者、ジェイス》のバウンス能力も《饗宴と飢餓の剣》と相性が良いです。《饗宴と飢餓の剣》が機能し始めると手札を前展開することが多いですが、手札を使い切ってきた相手のパーマネントを戻す+剣のディスカード能力で、実質破壊と同じ状態になります。

 スタンダードでは《饗宴と飢餓の剣》とセットで使われる《戦隊の鷹》ですが、エクステンデッドでは《苦花》の下位互換であり、ヴァラクートに対しても弱いため採用されていません。その代わりにこのデッキでは2マナクリーチャーに《テューンの高僧》が採用されています。今の環境でメインからエンチャントを使うデッキは「フェアリー」「ヴァラクート」しかないですが、このレシピは「それらTier1デッキに勝つ」という意思が伝わってきますね。


「フェアリー」
フジモト タイチ
グランプリ・神戸トライアル in 板橋 / Top 4[MO] [ARENA]
3 《
2 《
4 《忍び寄るタール坑
4 《闇滑りの岸
4 《人里離れた谷間
3 《沈んだ廃墟
4 《変わり谷
2 《地盤の際

-土地(26)-

4 《呪文づまりのスプライト
4 《ヴェンディリオン三人衆
4 《霧縛りの徒党

-クリーチャー(12)-
4 《苦花
4 《思考囲い
4 《コショウ煙
2 《喉首狙い
2 《マナ漏出
4 《謎めいた命令
2 《饗宴と飢餓の剣

-呪文(22)-
3 《絡み線の壁
3 《誘惑蒔き
1 《呪文貫き
2 《瞬間凍結
1 《喉首狙い
3 《蔓延
2 《地盤の際

-サイドボード(15)-

 フェアリーもまた、青白と同じ理由から《饗宴と飢餓の剣》と相性の良いデッキです。

 《忍び寄るタール坑》《変わり谷》2種類のミシュラランドは攻撃時にマナを多く使う欠点がありましたが、剣のアンタップ能力はそれを解消しています。《忍び寄るタール坑》に装備できれば速やかにゲームを終わらせることができるでしょう。

 青白もそうなんですが、瞬速を持ちながら相手の手札破壊をできる《ヴェンディリオン三人衆》は《饗宴と飢餓の剣》と相性が良く、4ターン目のエンドに出しながら5ターン目に装備→攻撃→そして《謎めいた命令》を構えるという動きができます。

 もともとフェアリーというデッキの7割がインスタントタイミングで使えるカードなので、マナを構えながら攻撃するというのはデッキの動きに非常にマッチしています。フェアリー同系でもプロテクション(黒)によって片方だけ《苦花》のゲームを逆転することができ、もはや《饗宴と飢餓の剣》はフェアリーの必須パーツとも言っていいですね。


「エルフ」
astarisk (3-1)
Extended Daily #2104934 on 02/28/2011[MO] [ARENA]
15 《
1 《巨森、オラン=リーフ
3 《地盤の際

-土地(19)-

4 《ラノワールのエルフ
4 《東屋のエルフ
4 《遺産のドルイド
4 《ジョラーガの戦呼び
4 《イラクサの歩哨
4 《茨森の模範
2 《エルフの幻想家
4 《傲慢な完全者
4 《エルフの大ドルイド
4 《背教の主導者、エズーリ

-クリーチャー(38)-
3 《暴走の先導

-呪文(3)-
4 《獣相のシャーマン
4 《復讐蔦
1 《白金の天使
4 《垂直落下
2 《活力の力線

-サイドボード(15)-

 これまたバント同様に、MO上で流行しているデッキ「エルフ」。

 3ターン目にすべての手札を使い切ることも可能なほど、すさまじい展開力が強みなデッキです。《ジョラーガの戦呼び》《茨森の模範》《エルフの大ドルイド》《背教の主導者、エズーリ》《傲慢な完全者》など強化能力を持ったクリーチャーも多く、単体除去1枚くらいでは全く止まらないほどのスピードを持ちます。

 ナヤ・バント・そして石鍛冶型の青白など、除去の少ないデッキ相手に有利で、メイン戦は高い勝率を誇りますね。展開が早いデッキなので相手の《饗宴と飢餓の剣》が機能しにくいのも、メタゲーム上の利点です。

 包囲戦から得たカードは《暴走の先導》。60枚中38枚がクリーチャーというこのデッキなら、3マナで実質3~4ドローの呪文になります。爆発的展開をするとその後の息切れが不安ですが、そこを《暴走の先導》で補っているといえます。

 とはいえクリーチャー主体のデッキ。全体除去にはからきし弱く、《火山の流弾》《蔓延》《炎渦竜巻》《審判の日》どれも「撃たれたら負け」くらいの被害を受けてしまう呪文です。このリストではサイド後全体除去に耐性をつけるためにも《獣相のシャーマン》《復讐蔦》コンビを採用しています。もともと38枚のクリーチャーデッキなので、ナヤ以上に《復讐蔦》の復活条件は楽ですからね。フェアリーが《吸血鬼の夜鷲》《誘惑蒔き》をサイドインしてくることを見越しての《垂直落下》も良い選択ですね。

 エルフには他にもスペル枠に《起源の波》《緑の太陽の頂点》を使った様々なパターンがあります。《起源の波》は《エルフの大ドルイド》からのビッグスペル、《緑の太陽の頂点》はブン回り強化・後半のロードなど選択肢は多いです。ただスペルを入れすぎるとエルフの利点であるブン回りが薄くなるので、合計5~6枚程度がちょうど良いように思えます。


 エクステンデッド特集、今回はミラディン包囲戦の加入でどう変わったかを紹介していきました。

 グランプリ・神戸も今月半ばに迫ってきました(※編注:地震の影響で4月23・24日に変更となりました)。来週も引き続き各地のイベントの結果を追っていく予定です。

 では、また来週。

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