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第42回:伊藤敦のデッキ構築劇場~世界選手権後のモダン攻略の糸口~
週刊デッキ構築劇場より

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週刊デッキ構築劇場

2011.12.12

第42回:伊藤敦のデッキ構築劇場~世界選手権後のモダン攻略の糸口~

演者紹介:伊藤 敦

 日本マジック個人ブログ界でも屈指の人気を誇り、『まつがん』のハンドルネームで知られる。
 「役割が近いカードはできるだけ種類を分散させる事によって、よりデッキの汎用性を動きの柔軟性を獲得できる」という銀弾理論をひっさげてトーナメントを駆け抜ける『銀弾の猛進者(シルバービリーバー)』。
 代表的なデッキは、銀弾理論の存在を世間に知らしめた銀弾キスキン、レガシーでも銀弾理論が有効であることを証明し、「敗北を知りたいデッキ」として連勝を重ねた銀弾マーフォーク、「3人あわせて3-9でサンキュー」で知られるプロツアー・京都09での使用デッキ青白GAPPOを銀弾理論でリファインした銀弾GAPPOことウルトラソリューション他多数。


 再び「強い日本」をアピールできた結果となった世界選手権も終わり、気づけば今年も師走に突入。

 年内の大きなイベントはThe Finals/Limits2011を残すのみとなった。

 そしてFinalsといえば(前回の構築劇場でも触れたが)モダン。
 つい先日、2012年夏に開催されるプロツアー・バルセロナの「予選の」フォーマットがモダンであることが発表となったわけだが、まだまだ黎明期といって差し支えない時期。
 いずれにせよ多くのFinals参加者にとって鬼門となるフォーマットだろう。

 そこで、前回の続きという意味も込めて、世界選手権後のモダン環境のメタゲームを俯瞰しながら、今後注目されると思われるアーキタイプに焦点を当てていこうと思う。


◎世界選手権前のおさらい・・・Zooと双子

 世界選手権前の段階では、『Zoo、双子、それ以外』という大きな三角形が意識されていた。

 禁止前のプロツアー・フィラデルフィア結果を残したデッキの中で、残っているのがZooと双子だけだったからだ。

 親和もそのまま残ってはいたが、《古えの遺恨》がある環境下でトップメタになるほどのパワーはなく、『警戒を怠ってはならないが3番手以下』という微妙なポジションだった。

 そういう状況下で世界選手権は開催され、はたして三角形の構図は浮き彫りとなった。

 メタゲーム・ブレイクダウン(→記事)を見ればわかるように、10%を超えて「勢力」となっていたのはやはりZooと双子。

 しかし両者の明暗は大きく分かれることとなった。

Sveinung Bjornerud - 15 points
世界選手権2011 / モダン[MO]
2 《
1 《
1 《平地
4 《燃え柳の木立ち
1 《地平線の梢
2 《聖なる鋳造所
2 《踏み鳴らされる地
1 《寺院の庭
1 《活発な野生林
4 《乾燥台地
4 《霧深い雨林
1 《地盤の際

-土地(24)-

4 《貴族の教主
4 《野生のナカティル
2 《クァーサルの群れ魔道士
4 《聖遺の騎士
4 《タルモゴイフ

-クリーチャー(18)-
4 《稲妻
4 《流刑への道
2 《稲妻のらせん
4 《罰する火
2 《遍歴の騎士、エルズペス
2 《ギデオン・ジュラ

-呪文(18)-
2 《クァーサルの群れ魔道士
1 《大祖始の遺産
2 《稲妻のらせん
2 《古えの遺恨
2 《焼却
3 《法の定め
2 《饗宴と飢餓の剣
1 《遍歴の騎士、エルズペス

-サイドボード(15)-


 全勝の《爆裂+破綻》Zooではなく、あえてこちらに着目したい。

 北欧+イギリス勢が持ち込んだ形。同型や『Zooをメタってくる中速』に対し強い《罰する火》コンボとプレインズウォーカーをメインからこれでもかと採用し、またサイドボードにはメタゲームを見据えた対双子の切り札《焼却》をしっかり確保している。

 92人、およそ28%(!)が選択した最多アーキタイプであるから、勝ちあがるZooもあれば運悪くぼこぼこにされてしまったZooもある。
 それでも勝つレシピには、きちんとした環境理解の裏づけがある。それを感じさせるリストだ。
 環境のいかなる変化にも対応できる、後出しで最強のZoo。だからこそ、Zoo使いは環境を常に正確に見極めておく必要がある。

 おそらくFinalsでも一大勢力となるであろうZoo。次はどのような形でプレイヤーを翻弄するのか、要注目である。

Tomohiro Kaji - 15 points
世界選手権2011 / モダン[MO]
4 《
1 《
4 《燃え柳の木立ち
3 《滝の断崖
3 《蒸気孔
1 《繁殖池
4 《霧深い雨林
4 《沸騰する小湖

-土地(24)-

3 《呪文滑り
4 《詐欺師の総督
2 《やっかい児
2 《鏡割りのキキジキ
1 《ザルファーの魔道士、テフェリー

-クリーチャー(12)-
1 《否定の契約
4 《手練
2 《払拭
4 《罰する火
4 《差し戻し
3 《知識の渇望
2 《炎渦竜巻
4 《欠片の双子

-呪文(24)-
4 《タルモゴイフ
3 《稲妻
1 《よじれた映像
3 《古えの遺恨
2 《焼却
1 《炎渦竜巻
1 《謎めいた命令

-サイドボード(15)-


 Zooの勝率がおおよそ5割で、『勝つべくして勝ち、負けるべくして負ける』という使い手とレシピの練度次第の結果だったのに対し。
 《欠片の双子》は49人が使用し、12点(4-2)以上を獲得できたのがわずかに6人。明らかに、双子は負け組だった。

 公式記事でお馴染みのKJ(鍛冶 友浩)や「シルバーコレクター」森田 雅彦といった一流のプレイヤーが使用してようやく勝ち越すことが可能になるレベル。普通のプレイヤーには荷が勝ちすぎる選択だったろう。

 もとより、双子はこのモダン環境随一のデッキパワーが高いアーキタイプであり、多くのプレイヤーが選択したことも頷ける。

 しかし。しかし今回はあまりに意識されすぎていた。

 プロツアー・フィラデルフィアでの鮮烈な優勝の直後ということもあり、フィールドの中では一番とも言えるくらいメタられていた。

 結果からすると、「自分がメタられている」ことを意識できていなかった双子使いたちが、真っ先にメタゲームの海に飲まれて沈んでいった、というストーリーが想像できる。

 それが事実だったかどうかはともかくとして、いずれにせよしばらくは双子にとって受難の日々が続くことだろう。

 そんな中で、《ザルファーの魔道士、テフェリー》やサイドの《タルモゴイフ》の採用など、相手のサイドカードを乗り越える工夫をしているこのKJのリストはさすがである。

 世界選手権では振るわなかったが、これからメタゲームが動けば、双子は環境に数少ないコンボデッキという立ち位置もあって、横から掻っ攫うには絶好のポジションとなりやすい。

 双子のデッキパワーの高さからすると、再び活躍する日もそう遠くないのかもしれない。


◎影の主役、第三勢力を徹底分析

 Zooの勝率は環境理解度に依存し、双子はどちらかといえば負け組だった。

 では勝ち組はどこに行ったのだろうか。
 ここで重要になるのが第三勢力、『それ以外』である。

 メタゲームブレイクダウンを見ると、Zooと双子以外は一見おのおの好きなデッキを持ち込んでおり、乱雑かつ指向性のない結果となってしまっているように見える。

 しかし、これから先のメタゲームを予測するのに、この『それ以外』を分析することが重要であることは言うまでもない。

 そこでより詳しく見てみると、『それ以外』の代表格は大きく分けて『(Zoo以外の)ビート』『コンボ』『中速緑黒系』『コントロール』に分類できる。

 そしてこの記事(リンク先は英語)の5分の3あたりにある表を見ればわかるのだが、一応有意なマッチ数をこなした中で勝率が高かったのは、Zooでも双子でもなく『《シルヴォクののけ者、メリーラ》コンボ』『中速緑黒系』『《神秘の指導》コントロール』の3つであることがわかる。

 というわけで、この段落ではその3つのデッキが世界選手権で勝ち組となった要因を探っていこうと思う。

Lukas Jankovsky - 15 points
世界選手権2011 / モダン[MO]
4 《
2 《
2 《草むした墓
2 《寺院の庭
1 《神無き祭殿
2 《黄昏のぬかるみ
2 《剃刀境の茂み
4 《新緑の地下墓地
3 《霧深い雨林
1 《湿地の干潟

-土地(23)-

4 《極楽鳥
3 《臓物の予見者
1 《貴族の教主
4 《根の壁
3 《シルヴォクののけ者、メリーラ
1 《潮の虚ろの漕ぎ手
4 《台所の嫌がらせ屋
1 《永遠の証人
1 《大爆発の魔道士
1 《残忍なレッドキャップ
1 《イーオスのレインジャー
1 《叫び大口
1 《目覚ましヒバリ
1 《太陽のタイタン

-クリーチャー(27)-
3 《思考囲い
4 《出産の殻
3 《召喚の調べ

-呪文(10)-
1 《ブレンタンの炉の世話人
1 《呪文滑り
1 《ガドック・ティーグ
1 《クァーサルの群れ魔道士
1 《エーテル宣誓会の法学者
1 《オルゾフの司教
1 《ヴィリジアンの堕落者
1 《ネクラタル
1 《強情なベイロス
1 《納墓の総督
1 《酸のスライム
3 《流刑への道
1 《思考囲い

-サイドボード(15)-


 全体で8人しか使用者がいないにも関わらず、6人を4-2以上に導いた脅威のデッキである。

 《シルヴォクののけ者、メリーラ》とサクり台である《臓物の予見者》が場に出ている状態で《台所の嫌がらせ屋》を無限頑強により循環させれば無限ライフ(有限だが工程を省略して好きな回数を言える)、《残忍なレッドキャップ》なら無限ダメージ(同左)が入る。

 もっとも、このデッキはプロツアー・フィラデルフィアの前段階でMagic OnlineのDaily Event等には既に姿を現しており、その頃と比べて特筆すべき新しいテクニックが加わっていたりはしていない。当時は『12Pos』tの存在によりデッキコンセプトが否定されてしまっていたが、禁止が反映された今、そのポテンシャルの高さが再び注目され始めているデッキである。

 デッキの構造がZooに強く、またコンセプトの中核である《出産の殻》が後述する緑黒系中速と《神秘の指導》デッキに強い上に、《召喚の調べ》による銀弾戦略でそもそもの対応力が非常に高いため、今回のような混沌としたメタゲームに強いデッキだったといえよう。

 双子デッキ相手はこちらだけほぼノーガードのスピード勝負となるため若干不利なのは否めないが、サイドボード後は《流刑への道》や《呪文滑り》で互角に戦えるようになると思われる。

 《罰する火》耐性もないのでコンボ達成自体は阻害されやすいデッキなのだが、それでも緑白黒グッドスタッフとして《目覚ましヒバリ》《太陽のタイタン》を駆使しながら『コンボの影をちらつかせつつビートする』というプランもあり、対峙してみると見た目以上に厄介な相手である。

 もっとも、好みが分かれるデッキなのでいきなりトップメタに躍り出るとは考えづらいが、今後は環境のトリックスターとして要所で見る機会が増えるかもしれない。

Ryo Jumonji - 15 points
世界選手権2011 / モダン[MO]
2 《
2 《
1 《草むした墓
1 《血の墓所
1 《踏み鳴らされる地
4 《燃え柳の木立ち
3 《黒割れの崖
2 《黄昏のぬかるみ
1 《怒り狂う山峡
3 《樹上の村
4 《新緑の地下墓地
1 《湿地の干潟

-土地(25)-

4 《タルモゴイフ
4 《朽ちゆくヒル
4 《台所の嫌がらせ屋
4 《血編み髪のエルフ

-クリーチャー(16)-
4 《コジレックの審問
4 《稲妻
2 《思考囲い
2 《罰する火
2 《破滅の刃
1 《終止
1 《喉首狙い
1 《大渦の脈動
2 《ヴェールのリリアナ

-呪文(19)-
2 《強情なベイロス
2 《最後のトロール、スラーン
2 《外科的摘出
2 《死の印
1 《強迫
1 《思考囲い
2 《罰する火
2 《原基の印章
1 《古えの遺恨

-サイドボード(15)-


 『緑黒系中速』は実際はアーキタイプとしてさらに『ジャンド』『《死の雲》』『《小悪疫》』と細分化していくが、ここでは世界選手権で実際に私も使用したジャンドを紹介しておこう(リストは5-1の成績を残した十文字氏のもの)。

 このデッキがやりたいことは明確で、ハンデスと除去と骨太なクリーチャー(もしくはアドバンテージエンジン)しか入ってないので、まず生半可なZooでは太刀打ちできない。そして《タルモゴイフ》《朽ちゆくヒル》と2マナ圏のクリーチャーが《罰する火》に強く、ハンデスから入られると双子もあっさり殴りきられてしまう。

 「普通のZooと普通の双子」というメタゲームを前提とする限り、緑黒系デッキは最高のパフォーマンスを発揮する。その意味で、世界選手権の段階ではベストに近いデッキ選択だったと思う。

 ・・・ということはしかし、これからのメタゲームの変化についていけない可能性を示唆している。
 世界選手権の時点ではまだプレイヤーの環境理解に差があったが、今後はZooも上述のようなプレインズウォーカーで粘り強く戦う形にシフトしていくだろうし、双子はひとまずその数を減らしていくだろう。

 つまりメタゲームが混沌としていく中で、緑黒系中速が「お客様」にしていたデッキが減っていってしまうことが予想されるのである。

 無論「ハンデス+《タルモゴイフ》」というレガシーでもお馴染みのA定食が強力であることは疑いないが、単体除去の有用性など、緑黒使いは自らのメタゲーム上の立ち位置を根本的に見直す必要性に迫られるだろう。

Jun'ya Iyanaga - 15 points
世界選手権2011 / モダン[MO]
1 《
1 《
1 《平地
1 《湿った墓
1 《神無き祭殿
1 《神聖なる泉
4 《忍び寄るタール坑
4 《涙の川
1 《闇滑りの岸
3 《孤立した礼拝堂
2 《悪臭の荒野
4 《湿地の干潟
1 《新緑の地下墓地
1 《死の溜まる地、死蔵

-土地(26)-

3 《瞬唱の魔道士

-クリーチャー(3)-
1 《否定の契約
1 《外科的摘出
4 《コジレックの審問
4 《流刑への道
4 《思考囲い
1 《真髄の針
1 《破滅の刃
1 《燻し
1 《疲弊の休息
4 《エスパーの魔除け
4 《神秘の指導
2 《滅び
1 《謎めいた命令
1 《けちな贈り物
1 《弱者の消耗

-呪文(31)-
4 《聖トラフトの霊
2 《死の印
1 《強迫
4 《機を見た援軍
1 《滅び
3 《遍歴の騎士、エルズペス

-サイドボード(15)-

 世界選手権の話題となれば、このデッキに触れないわけにはいくまい。優勝した彌永氏が3日目のモダンで使用したエスパーコントロールである。
 メインボードは非常に割り切った構成となっていて、なんといってもフィニッシャーらしいフィニッシャーが存在しない。

 《ザルファーの魔道士、テフェリー》と《ワームとぐろエンジン》を1枚ずつくらい差してもよさそうなものだが、別になくても相手からすればコントロールされきった時点で、3本目をやる時間があるかどうか常に判断に迫られることになる。
 「適当にハンデスして除去って《神秘の指導》撃ち始めたら相手が投了するだろう」という考えもあるのかもしれない。

 もっとも、このデッキは《神秘の指導》デッキとしてみるならばかなり異色のデッキで、本質としてはむしろ「サイドボードからの《聖トラフトの霊》+《遍歴の騎士、エルズペス》強すぎデックウィン」だろうと思う。

 中速以下の除去コンに対し、《聖トラフトの霊》はベストカードといって差し支えないほどの性能を発揮する。
 《遍歴の騎士、エルズペス》もまた単体で除去コンに強く、しかも《聖トラフトの霊》と揃ってしまえばあっという間に対戦相手を屠ることができる。

 このエスパーコントロールのサイドプランを見ていて、この環境の次なる方向性が見えてきたような気がする。

 まず前提として環境の速度は、かなり落ち着いているといえる。

 危惧されていた3キルデッキは、やはり禁止の影響か(ストームを除き)ほとんど成立しておらず、大体のデッキが「妨害込みで4~5キル」といった按配である。

 そしてメタ上のデッキの傾向としては、かなり「リソースの削りあい」に特化してきている。

 「ハンデス+除去」が無条件で強かったこれまでの時代は、3マナ以下で1対2交換がとれるこれらのカードがサブコンセプトとして機能するため、環境の影の主役だった。

 しかし、Zooと双子を同時に封殺するための「ハンデス+除去」という構成が一般的になり、1~3ターン目は消耗のための互いの通過儀礼になってくると、これまでサブコンセプトとして成立していたものが「標準装備」され、他のデッキと差をつけるために4~6ターン目の「リソース回収」の段階に焦点が当たるようになってきた。

 彌永氏のエスパーコントロールや《けちな贈り物》入りのヤソコンは、そのあたりを一歩先んじて見越した構成と言えるだろう。

 Zooがプレインズウォーカーを多めに積むようになってきたのも、そういった時代の趨勢に合わせてのことである。

 とすれば、この先はどうなるか。


◎新たなソリューションの方向性

 世界選手権が形作った、モダン環境の暫定的なメタゲーム。
 リソース消耗を強いる中速デッキが増え、4マナ圏のプレインズウォーカーや《神秘の指導》《けちな贈り物》が決定打になりつつある世界。

 それがFinalsを迎えるまでにどう変わっていくのか。

 1つは、互いのリソース消耗は織り込んで、もはや前提としてしまった究極形。徹底的な焦土戦術だ。

Loam Retrace(ネットデッキ)[MO]
2 《
1 《
1 《
4 《燃え柳の木立ち
4 《森林の墓地
3 《草むした墓
2 《踏み鳴らされる地
2 《火の灯る茂み
1 《血の墓所
4 《新緑の地下墓地
2 《霧深い雨林
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ

-土地(27)-

4 《タルモゴイフ
4 《台所の嫌がらせ屋
2 《永遠の証人

-クリーチャー(10)-
3 《カラスの罪
2 《炎の突き
4 《壌土からの生命
3 《罰する火
1 《喉首狙い
2 《四肢切断
2 《大渦の脈動
3 《燃え立つ復讐
3 《ヴェールのリリアナ

-呪文(23)-
3 《強情なベイロス
2 《墓所のタイタン
1 《思考囲い
3 《強迫
1 《カラスの罪
3 《古えの遺恨
1 《喉首狙い
1 《大渦の脈動

-サイドボード(15)-
Martyr Proc(ネットデッキ)[MO]
11 《平地
4 《トロウケアの敷石
2 《空の遺跡、エメリア
2 《霧覆いの平地
4 《幽霊街

-土地(23)-

4 《砂の殉教者
4 《セラの高位僧
2 《闘争の学び手
2 《運命の大立者
1 《雨ざらしの旅人
4 《戦隊の鷹
4 《イーオスのレインジャー

-クリーチャー(21)-
4 《流刑への道
2 《亡霊の牢獄
1 《忘却の輪
3 《神の怒り
4 《再誕の宣言
2 《遍歴の騎士、エルズペス

-呪文(16)-
1 《魂の管理人
2 《台所の嫌がらせ屋
4 《マナの税収
1 《亡霊の牢獄
1 《忘却の輪
4 《神聖の力線
1 《神の怒り
1 《ギデオン・ジュラ

-サイドボード(15)-

 実はその方向性は、「《壌土からの生命》+回顧」や「《空の遺跡、エメリア》and《再誕の宣言》」というエンジンによって既に形になっている。
 これらはリソース勝負に持ち込んだが最後、「俺のデッキの方が長く戦えるもんね」といえる仕様になっているので、そのようなゲーム展開には滅法強い。
 相手を積極的に倒した者ではなく、リングに最後まで立っていた者が勝者なのだと、そういう理念の下に作られたデッキと言えよう。

 だが、これも結局同型に当たれば泥沼の試合展開を呼び込むだけであり、いささか不毛なきらいもある。

 そこでもう1つ、別の新たな方向性を見出してみることにしたい。

 というわけで、ようやく今日の本題に入るわけだが。

 このようなストーリー(ベースは中速寄りで減速傾向、リソース消耗特化)を持ったモダン環境を定義した上で、そこにおけるソリューションがあるとすれば何か。

 そのヒントは、先にあげた彌永氏のサイドボードにある。

 世界選手権の段階でこの必殺プランがサイドボードに留まっていたのは、「ハンデス+除去」で消耗戦に持ち込むことこそが何をおいてもまずは急務であり、なおかつ最適解だったからだ。

 しかし、今やそのプランの独自性とポジション優位は失われた。情報は公開され、「どうやらそういう環境らしいぞ」とみんなわかってきたのだ。

 そしてどうやら、ハンデスから除去を撃ったりライフを得たりしてゲームを長引かせようとしてくる連中まで現れるようになってきている。双子は減り、Zooも「ハンデス+除去」戦略に耐えうる構成にシフトし始めている。

 それはすなわち、簡単に除去されたり無力化されてしまう、クリーチャーというパーマネントそのものの価値が下がっていくことに等しい。

 ならば、時代はコンボやコントロールなのか?

 それも一理ある。現に「《むかつき》+《天使の嗜み》」や「緑赤トロン」といったデッキも環境に存在している。

Ruben Snijdewind - 12 points
世界選手権2011 / モダン[MO]
3 《
1 《平地
1 《神聖なる泉
2 《湿った墓
3 《金属海の沿岸
2 《闇滑りの岸
1 《忍び寄るタール坑
2 《宝石鉱山
3 《湿地の干潟
2 《沸騰する小湖
1 《霧深い雨林
1 《すべてを護るもの、母聖樹
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ

-土地(23)-

3 《猿人の指導霊

-クリーチャー(3)-
4 《睡蓮の花
2 《否定の契約
1 《殺戮の契約
4 《天使の嗜み
3 《手練
4 《血清の幻視
1 《捨て身の儀式
1 《深遠の覗き見
4 《五元のプリズム
3 《ファイレクシアの非生
2 《神秘の指導
4 《むかつき
1 《燃焼

-呪文(34)-
1 《ヴェンディリオン三人衆
1 《ザルファーの魔道士、テフェリー
1 《殺戮の契約
1 《強迫
1 《万の眠り
1 《流刑への道
1 《沈黙
1 《思考囲い
1 《残響する真実
2 《蔓延
3 《神聖の力線
1 《貴族階級の嘲笑

-サイドボード(15)-
Eldrazi Tron(ネットデッキ)[MO]
3 《
1 《
3 《燃え柳の木立ち
1 《踏み鳴らされる地
4 《ウルザの塔
4 《ウルザの魔力炉
4 《ウルザの鉱山
2 《霧深い雨林
1 《ウギンの目

-土地(23)-

4 《根の壁
4 《草茂る胸壁
4 《桜族の長老
2 《難問の鎮め屋
4 《原始のタイタン
1 《無限に廻るもの、ウラモグ
3 《引き裂かれし永劫、エムラクール

-クリーチャー(22)-
4 《グルールの印鑑
2 《明日への探索
2 《木霊の手の内
4 《裂け目の突破
3 《召喚の罠

-呪文(15)-
2 《難問の鎮め屋
3 《ワームとぐろエンジン
3 《内にいる獣
3 《殴打頭蓋
3 《解放された者、カーン
1 《ボジューカの沼

-サイドボード(15)-


 だが、ちょっと待ってほしい。クリーチャーの価値が「除去されやすさ」「テンポの損ないやすさ」から下がっているものだとすれば、「簡単に除去されない」クリーチャーならばどうだろう。

 例えば《聖トラフトの霊》。例えば《遍歴の騎士、エルズペス》。
 おそらく世界選手権のときですらほとんどの試合でサイドインされたであろうこれらを、今やメインボードにまで引き上げてもいい時代が来ているのではないか。

 今のメタゲームが『「ハンデス+除去」戦略の流行がもたらす全マッチアップの中・長期化』という前提の上に成り立っているのなら。

 その根底を覆してしまえばいい。つまり。

 そう、「対処不能な(しにくい)パーマネントによる急戦」。

 それが今回着目した、もうひとつの方向性だ。

 親和デッキであれば、今までサイドボード要員だった《刻まれた勇者》をメイン採用するだけで大分変わってくる。またZooやジャンドのサイドボードに入っていた《最後のトロール、スラーン》も、マナ域の問題さえクリアできれば十分メイン採用もありうる。

 触りづらいという点ではエンチャントも一緒なので、双子が減ってメタゲームがカオスになった今、《血染めの月》も十分な力を発揮できる土壌があると思われる(《月の大魔術師》の方は対処されやすいので不可)。

 《台所の嫌がらせ屋》《罰する火》《ヴェールのリリアナ》《瞬唱の魔道士》が活躍する時代から、《聖トラフトの霊》《刻まれた勇者》《最後のトロール、スラーン》《血染めの月》の時代へ。

 これだけでも新しいデッキへのインスピレーションには十分な気もするが、しかしここで私が提示するのは、さらにもう1種類。

 環境の主要な除去をかわし、なおかつライフゲインをものともしない高いクロックで相手を葬り去る、そんな逸材がいたのだ。

 あるときは《野生のナカティル》や《聖遺の騎士》すらも止め、またあるときは人を5パンで殴り倒す。

 しかして、その正体は。

 それでは、本日のデッキをご覧いただこう。

『Domain Infect』[MO]
1 《
2 《草むした墓
1 《繁殖池
1 《湿った墓
1 《血の墓所
1 《寺院の庭
4 《墨蛾の生息地
4 《新緑の地下墓地
4 《霧深い雨林
4 《湿地の干潟

-土地(23)-

4 《ぎらつかせのエルフ
4 《疫病のとげ刺し
4 《荒廃の工作員
4 《ファイレクシアの十字軍

-クリーチャー(16)-
4 《変異原性の成長
4 《アラーラの力
4 《古きクローサの力
4 《地うねり
4 《コジレックの審問
1 《否定の契約

-呪文(21)-
4 《戦争の報い、禍汰奇
3 《呪文滑り
4 《思考囲い
4 《死の印

-サイドボード(15)-


 おっと間違えた、こっちはピーキーすぎて脳内で没になったデッキだった。

 改めて、ご覧あれ。

『Esper Junk』[MO]
4 《忍び寄るタール坑
4 《湿地の干潟
4 《涙の川
2 《孤立した礼拝堂
1 《氷河の城砦
1 《悪臭の荒野
1 《沈んだ廃墟
1 《秘教の門
1 《神無き祭殿
1 《神聖なる泉
1 《湿った墓
1 《死の溜まる地、死蔵
1 《平地
1 《

-土地(24)-

4 《前兆の壁
3 《呪文滑り
2 《瞬唱の魔道士
4 《ファイレクシアの十字軍
4 《聖トラフトの霊
4 《悪斬の天使

-クリーチャー(21)-
4 《コジレックの審問
1 《思考囲い
4 《流刑への道
2 《喉首狙い
1 《謎めいた命令
3 《遍歴の騎士、エルズペス

-呪文(15)-
3 《闇の腹心
1 《テューンの戦僧
1 《幻影の像
1 《太陽のタイタン
1 《強迫
1 《死の印
1 《虚無の呪文爆弾
3 《マナ漏出
2 《漸増爆弾
1 《ギデオン・ジュラ

-サイドボード(15)-


 これまでの話の流れから《ファイレクシアの十字軍》と《聖トラフトの霊》と《最後のトロール、スラーン》と《遍歴の騎士、エルズペス》と《血染めの月》を《霊気の薬瓶》の力で容赦なく同居させたカオスデッキを構築しようとしたが、ここまで真面目にやっておいて爆発オチでは読者が納得しないと思い、彌永氏のデッキからヒントを得てある程度真面目なデッキを急遽構築してみたのがこれだ。

 マナベースは例によって適当だが、微妙にいじったとはいえ元のデッキからの流用なので派手に間違っているということはないだろう。ただ土地の枚数自体が減っている上に《ファイレクシアの十字軍》の分だけ色拘束が厳しくなっているので、対消滅で割れるのは怖いが《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》など一考に価するかもしれない。

 「対処不能なパーマネントによる急戦」・・・そのコンセプトを実現する2種類の主役たち。

 毒と通常ダメージの両面から攻めるのは効率が悪く思えるが、「攻めの聖トラフト」「守りの十字軍」と考えればそこはかとなく正当化される気がしないでもない。

 実際、上で挙げた『Martyr Proc』のようなデッキに対して《聖トラフトの霊》では無力なところ、《ファイレクシアの十字軍》は無双すること間違いなしで、両方あわせての採用はデッキに意外な勝ち筋をもたらしてくれる。

 なお、「《ファイレクシアの十字軍》は《遍歴の騎士、エルズペス》で飛ばないじゃねーか!」というツッコミは聞き飽きているので勘弁願いたい。私だって本当は飛んで欲しかった。

 地上を止め、回避で殴る。この単純な動きをモダンで再現するのは実は極めて難しい。

 《ファイレクシアの十字軍》だけではZooの優良クリーチャーに対して心許ないので、この0/4軍団で《野生のナカティル》をがっちりキャッチする構えだ。

 また、これらは同時に《ヴェールのリリアナ》対策でもある。絶大な除去耐性を持つ《聖トラフトの霊》《ファイレクシアの十字軍》を唯一処理できてしまうこのプレインズウォーカーをケアするためには、脇にクリーチャーを先出ししておくことが肝要となる。

 他にも《呪文滑り》は双子にナチュラルに刺さるという地味な役割もあったりするわけだが、一番大きな採用理由が次に挙げるこれだ。

 スタンダード落ちしてから活躍の機会がめっきり減ったこのカード。

 モダンでもまだそれほど活躍していないが、《タルモゴイフ》などが絡む真っ当な殴り合いには滅法強く、単純なサイズという《罰する火》耐性もあるので生き残ればゲームが簡単になることは間違いない。

 ただモダン環境でしかもこのデッキだと《流刑への道》を食らう確率100%なので、ハンデスで露払いするか《呪文滑り》で優しく守ってあげよう。

 サイドボードは一応丸く作ったつもりだが、お試しで入れてみた部分だけ触れておこう。

 《苦花》は禁止なのに《テューンの戦僧》?と思われるかもしれないが、ハンデスの大敵《神聖の力線》対策である。

 また、さりげなく置いた《平地》からうっかり《血染めの月》が割れたりするときっと神に感謝できるだろう。

 《幻影の像》は《最後のトロール、スラーン》対策がメインだが、他にも《ファイレクシアの十字軍》をコピーできれば、元からターゲットになりにくいクリーチャーなので、毒殺確率が少しアップするかもしれない。


 いかがだっただろうか。

 我々がいつもプロツアーやグランプリの結果から事後的に観測する「メタゲーム」を、事前に類推・把握して言語化するのは極めて難しい。

 しかしそれは結局「XがYに強い」とか「フィールドにZが多い」といった客観的な事実から導き出される因果の集積なので、理詰めで考えればどれか1つは正解のラインにつながっていたりすることは多い。

 だから大事なのは、言葉にして、文章にして考えることだ。

 まあとにかく色々書いてきたが、まとめると要するに「何か環境的に強そうだから《ファイレクシアの十字軍》が使いたかった」なので、デッキの説得力が多少足りなくても許して欲しい。

 Finalsはカバレージライターとして参戦予定なので、参加者たちのモダンのデッキを楽しみにしつつ、今回はこのへんでお開き。

 それでは皆さん、名古屋で会いましょう!

The Finals 2011

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