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プロツアー『イニストラードを覆う影』

観戦記事

第6回戦:Jon Finkel(アメリカ) vs. Luis Scott-Vargas(アメリカ)

川添 啓一
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Marc Calderaro / Tr. Keiichi Kawazoe

2016年4月22日


ジョン・フィンケル/Jon Finkel(黒緑コントロール) vs. ルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargas(黒緑アリストクラッツ)

「ここで私らが二人してデッキを落としたら大惨事だろうね」 殿堂顕彰者であるジョン・フィンケルは、同じく殿堂顕彰者であるルイス・スコット=ヴァーガスにフィーチャーエリアでそう話しかけた。彼らは完全に違うアーキタイプではあったが、同じ黒緑という色のデッキを使っていたのだ。

 この二人のプレイヤーは、同じ部屋にいる他の多くのプレイヤーたちより色々なものを心に抱いている。二人はお互い砕けた態度で冗談を言い合いながら席についたが、それはさながら別のマジックのゲームのようで、「Scanners」のごとく(※訳注:超能力で頭が破裂するシーンで有名な映画)頭を爆発させるものだった。

「そう、《過ぎ去った季節》で《ズーラポートの殺し屋》を持ってきたり」 お互いに笑みを浮かべる。このジョークの背景には、お互いのデッキが《》と《》を除いてほとんど共通点がないということがあった。

 フィンケルのデッキは除去とドロー、手札破壊に加え、さらにドローするためのカードで満たされていた。非常に長引くゲームに向けて作られたこのデッキは、《過ぎ去った季節》という強力なカードに支えられていた。一度相手の攻勢を凌ぎ切ったら、《闇の誓願》で《過ぎ去った季節》を探し、今まで使ったカードに加えて《闇の誓願》までもを手札に戻すのだ。その後はもう一度《過ぎ去った季節》を探して繰り返すだけだ。

 対するルイス・スコット=ヴァーガスのデッキは小さいクリーチャー、そしてそれらを増やしたり強化したりする手段で満たされていた。これは黒緑アリストクラッツと言われるもので、この「アリストクラッツ」というのはプロツアー『ギルド門侵犯』を制したデッキのキーカード(Aristocratと名のついたものを覚えているだろうか)にちなんだ、小型クリーチャーを生け贄に捧げてアドバンテージを得るデッキの総称である。

 元々のデッキ名は《カルテルの貴種》と《ファルケンラスの貴種》によるものだったが、スコット=ヴァーガスはそのかわりに《ナントゥーコの鞘虫》で小型クリーチャーの軍勢を生け贄に捧げて利益を得ようとしていた。このデッキは、基本的に《先祖の結集》デッキから結集が抜けた形のものだ。

 フィンケルが尋ねる。「どっちが有利なんだろうな? 君は絶対このマッチアップを私より試しているだろう?」

 スコット=ヴァーガスは答える。「わからない。私たちはこのデッキを組んだが、でも机上のものでしかないからね。ただ言えるのは」 明確にして続ける。「そのデッキが悪いというわけではないが、他に対するより特別な時間を割いたわけでもないんだ」

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殿堂顕彰者が二人。フィーチャーマッチのスポットライトの下を最も快適に過ごす二人だろう。

 一見する限り、《衰滅》は1/1クリーチャーデッキを消し去るかもしれないが、《ズーラポートの殺し屋》やインスタント・タイミングでの《集合した中隊》、そして他の回復手段がスコット=ヴァーガスに勝利をもたらすかもしれない。

ゲーム展開

 ジョン・フィンケルは土地と手札破壊で占められた手札でスタートした。もしスコット=ヴァーガスの手からキーカードを抜き去ることができれば、あとは1/1を処理していくだけで、《衰滅》のような劇的なコントロール手段を待つ時間を得て、アリストクラッツがクリーチャーを送り込むのを止められるだろう。

 続くターン、フィンケルは《ナントゥーコの鞘虫》、《異端の癒し手、リリアナ》とスコット=ヴァーガスの手札を処理した。これらはフィンケルにとって戦場にいてほしくないキーカードであり、スコット=ヴァーガスもそれを知っていた。そのため、彼は手札破壊の対象になるたびに、手札を公開すると同時に予言としてこれらのカードを墓地に自ら置いたのだった。

 これらの結果、スコット=ヴァーガスの手は遅く慎重になったが、フィンケルは一方土地しか引けていなかった。この状況で、1/1は何の意味も持たないだろうか? 《エルフの幻想家》3体だとしても? それらは唱えられ、アタックを繰り返し、フィンケルのライフを14まで削っていた。スコット=ヴァーガスは《地下墓地の選別者》と《薄暮見の徴募兵》、そして《集合した中隊》から《ズーラポートの殺し屋》を引き当てて、《衰滅》への備えとした。

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フィンケルの黒緑デッキは《闇の誓願》と《過ぎ去った季節》からなる長期戦デッキだ

 殺し屋が殺され、その後盤面が《衰滅》で流されたが、スコット=ヴァーガスは容易に再展開した。すでに手札は幻想家たちによって補充されており、《膨れ鞘》も末裔を残していた。フィンケルのライフは残り7、しかも手札には何も残っていない。《風切る泥沼》で毎ターン1/1を討ち取って凌ぐ他になかった。

 しかしながらフィンケルのリソースは全てタップしており、ドローは土地に次ぐ土地で、しかも次の全体除去も手に入らなかった。たとえ《衰滅》がクリーチャー10体を倒したとしても、スコット=ヴァーガスの手には小さな影響しかないのだ。ルイスはジョンに致命的な一撃を与えた。

 マッチの開始前とは打って変わって、サイドボード中二人は極めて静かだった。まさにゲームモードといった装いだ。

 残念なことに、第2ゲームも第1ゲームと似た感じになってしまった。現象としては反対だが、結果は似たようなものだ。フィンケルは土地2枚の手札をキープした。手札にはドロースペルや足止めに恵まれた手札だったが、全てのアクションが3マナ以降だった。例えば《骨読み》や《破滅の道》、《衰滅》といったカードが、冷静なフィンケルを見つめていた。

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スコット=ヴァーガスの黒緑デッキは、多くの小型クリーチャーと《ナントゥーコの鞘虫》による戦線で強い一撃を見舞う

 一方、スコット=ヴァーガスはいつも通りの動きを見せ、多くの小兵たちを唱えた。フィンケルは一方いつもと違う動きになる。土地をプレイせず、終了フェイズにカードを捨てたのだ。

 フィンケルはせめてもの望みとして与えられるダメージが遅くなることを願ったが、《ナントゥーコの鞘虫》は次のドローで《》を引かなければスコット=ヴァーガスが軍勢の全てを生け贄に捧げて残りのライフを奪い去ることを示していた。

 ジョニー・マジックは笑みを浮かべながらカードを引いた。それは《風切る泥沼》だった。彼は土地を願い、実際神通力のごとく引き当てたが、しかしその願いは最悪の形で叶えられたのだった。

 フィンケルはその土地を置き、そして死んだ。

 二人はゲームの後、再び静かになった。確かにこの結果をもたらした原因のひとつは、フィンケルの不ヅキだっただろう。彼は多くの解答と土地を引くための3回のチャンスを持っていたが、そこにたどりつけなかったのだ。

 これもまた子どもたちに見せられる結果なのだ。アイドルだって、たまには乱暴な勝負をすることがあるのだ(訳注:彼についての有名な書籍「Jonny Magic & the Card Shark Kids: How a Gang of Geeks Beat the Odds and Stormed Las Vegas」の題を受けてのくだり)。

 フィンケルは座ってサイドボードを戻し始め、一方スコット=ヴァーガスは彼の勝利を示す報告用紙にサインをすると歩き去った。

フィンケル 0-2 スコット=ヴァーガス

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