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プロツアー『イクサランの相克』

戦略記事

デッキテク:フィーレン兄弟の「青赤パイロマンサー」

川添 啓一
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Frank Karsten / Tr. Keiichi Kawazoe / Edit. Yusuke Yoshikawa

2018年2月3日


 木曜の晩、まさに受付を終えた直後、2016年のワールド・マジック・カップでベルギー代表を決勝まで導いたパスカル・フィーレン/Pascal Vierenとピーター・フィーレン/Peter Vieren兄弟を見かけた。兄のピーターは、特に強力なデッキを構築することに定評のあるゴールド・レベル・プロとして有名だ。

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パスカルとピーターのフィーレン兄弟は、このプロツアー『イクサランの相克』で予想以上に強力な「青赤パイロマンサー」デッキを選択した。

 木曜日、「さて、何を使うんですか?」と尋ねた。「きっと同じデッキだろうけど、何かスペシャルなことは?」

「そうだね、2マナ0/4とか入ってるよ」とピーターは答えた。

「ふむ、《呪文滑り》? それとも《前兆の壁》?」

「違うね」

「うーん、《草茂る胸壁》かな?」

「それも違うね。じゃあヒントだ。昨シーズンのプロツアーのスタンダードでもよく使ったよ」

「わかった、《氷の中の存在》だ! それ、好きなカードだよ!」

Peter Vieren - 「青赤パイロマンサー」
プロツアー『イクサランの相克』 / モダン (2018年2月2~4日)[MO]
1 《
4 《冠雪の島
1 《冠雪の山
3 《蒸気孔
4 《沸騰する小湖
2 《溢れかえる岸辺
1 《霧深い雨林
1 《汚染された三角州
1 《尖塔断の運河
1 《硫黄の滝
3 《廃墟の地

-土地(22)-

4 《瞬唱の魔道士
3 《氷の中の存在
3 《若き紅蓮術士

-クリーチャー(10)-
3 《祖先の幻視
4 《稲妻
4 《選択
4 《血清の幻視
1 《呪文嵌め
2 《マナ漏出
2 《差し戻し
2 《焙り焼き
1 《削剥
1 《電解
3 《謎めいた命令
1 《論理の結び目

-呪文(28)-
1 《ヴェンディリオン三人衆
2 《儀礼的拒否
2 《払拭
1 《大祖始の遺産
1 《呪文嵌め
1 《削剥
1 《軽蔑的な一撃
1 《否認
2 《神々の憤怒
1 《電解
1 《溶鉄の雨
1 《塵への崩壊

-サイドボード(15)-

 「マルドゥ・パイロマンサー」デッキと同様に、このデッキは《若き紅蓮術士》と《稲妻》を擁している。一方「ジェスカイ・コントロール」と同様に、《血清の幻視》や《謎めいた命令》、そして《瞬唱の魔道士》も使っている。ただ、類似点はそのくらいだ。「青赤パイロマンサー」はその両者以上にドロー呪文に重きを置いた独自のアーキタイプで、白や黒のカードは使っていないのだ。

 2色に絞ったことで、マナ基盤の中に《廃墟の地》を使うことが可能になったのだ。「《廃墟の地》は実際重要だよ」とピーターはプロツアー中に語った。「これは《血染めの月》以上に効果的に、ビッグ・マナ系に対して刺さるんだ。皆《血染めの月》への備えはしているってのが問題なんだ。『トロン』とやった時、対戦相手は最後に手札で腐ってた2枚の《自然の要求》を見せてくれたよ」

「あと、『グリクシス死の影』みたいな3色デッキだと、大体みんな《血染めの月》をケアしてフェッチランドから《》を持ってくるんだ。こういう時も、向こうの基本土地がすぐに尽きる分、《廃墟の地》が効いてくるね、実質《石の雨》みたいになるから」

 このデッキをより正しく説明するなら、「ブルー・ムーン」や「青赤ブリーチ」デッキとの類似性の方だろう。「2マナの脅威を展開した後はドロー・ゴーするデッキなんだ」とピーターは言う。「《血染めの月》やコンボ要素が入ってないことを除けば、基本的に『ブルー・ムーン』と同じだね。青赤の打ち消しや除去、火力呪文で構成されているんだ。」

 彼がこのデッキを選択した理由の1つが、最近手に入った《選択》の存在にある。「《選択》は素晴らしいよ。《血清の幻視》4枚、《選択》4枚、そして《瞬唱の魔道士》4枚という構成は引きをしっかり制御して、的確な対応策を見つけることができるようになるんだ」とピーターは説明してくれる。彼にとって、(《裂け目の突破》+《引き裂かれし永劫、エムラクール》や《鏡割りのキキジキ》+《詐欺師の総督》を含む)コンボではダメで、2マナでの脅威展開の方が良いと感じられた。「《氷の中の存在》は過小評価されているよ。なんでわざわざ5マナ使ってコンボ決めなきゃいけないんだい? 僕のデッキなら土地2枚あれば足りるのに!」

 デッキビルダーとしての兄を信頼している弟パスカルは、75枚完全に同じデッキを使っている。彼はデッキ調整にも協力し、Magic Onlineのリーグでその強さを実証し、そして議論の相手ともなったが、結局彼自身はこのデッキに対してあまり大きな影響は与えていないらしい。「2枚目の《硫黄の滝》を《尖塔断の運河》に変えたのが最大の貢献かな」と言って笑っていた。

 最後にもう一つ、このデッキを使う上で何かコツはないかを聞いてみた。ピーターが勧めるのは「モダンで見られるホラー・クリーチャーを知っておくと良いだろうね」ということだ。「《氷の中の存在》を変身させたのに《騒乱の歓楽者》が残ったのを最初に見たときには本当に驚いたよ」 他にも、《呪文滑り》と《遺棄地の恐怖》という2種類のホラーはモダンでプレイされることがある。注意が必要だ。

 兄弟はどちらも2日目に進出し、モダン・ラウンド通算の成績は6勝4分けという素晴らしいものだった。ピーターは2日目に奮わなかったが、一方のパスカルは勝ち続けて今大会最初にトップ8の座を確定させるに至った。このデッキは本物だ!

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