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プロツアー『イクサランの相克』

戦略記事

デッキテク:グジェゴジェ・コワルスキの「赤緑エルドラージ」

矢吹 哲也
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Chapman Sim / Tr. Tetsuya Yabuki / Edit. Yusuke Yoshikawa

2018年2月2日


 グランプリ・トップ8入賞4回を記録し、ワールド・マジック・カップ2017ではポーランド代表のキャプテンとしてチームを決勝まで導いたグジェゴジェ・コワルスキ/Grzegorz Kowalski。プロツアーでの最高成績はプロツアー『イニストラードを覆う影』での第10位、生涯獲得プロ・ポイントは141点を数え、歴代最高のポーランド人プレイヤーの呼び声高い。ハイレベルな戦いを多く経験してきた彼が待望のモダン・プロツアーに革新的なデッキを持ち込んだのは、驚くことではないだろう。

 コワルスキのデッキリストは、今大会で集まったどのデッキとも異なるものだった。《難題の予見者》や《現実を砕くもの》が採用されているリストはあるが、そのほとんどが無色カードを中心にした「エルドラージ・トロン」だった。

 だがコワルスキは「ウルザトロン」を用いず、「赤緑エルドラージ」の形に仕上げた。無色マナと色マナを生み出す《カープルーザンの森》と《燃え柳の木立ち》を用いて、エルドラージとともに《稲妻》や《貴族の教主》、《漁る軟泥》、《古きものの活性》といったカードで脇を固めたのだ。おっと、最も注目すべきカードを挙げるのを忘れていた――《エルドラージの寸借者》を駆使している。

「チーム『ChannelFireball』や『Ultra PRO』、それから友人たちと調整を重ねたよ」と、コワルスキは語る。「最初にこのデッキを見つけたのはベン・ワイツ/Ben Weitzだったが、そのときは本気じゃなかった。しかし彼が試しにMagic Onlineで使ってみると、Competitive Leagueで5戦全勝できた。するとそのデッキリストがMagic Onlineの公式サイトやMTGGoldFishに公開され、イーフロウ(エリック・フローリッヒ/Eric Froehlich)による記事まで出てきたんだ」

 だが「メディア露出」があってもなお、コワルスキは自身のデッキ選択がレーダーの範囲外であることを信じ続けた。そのきっかけは、他の仲間たちがこのデッキから降りたからだという。「はじめは多くのチームメイトがこのデッキを気に入り、調整とテストにたくさんの時間を費やした。だがこのデッキへの理解度が深まりこれに対する戦い方を知るにつれて、勝率は大きく下がっていった。その結果、デッキを共有していた仲間の多くが本番数日前にデッキを変えたんだ」

 コワルスキは対戦相手を予想外の角度から不意打ちできるテクニックを多く搭載し、勝利を重ねた。例えば《四肢切断》だけでなく《稲妻》や《二股の稲妻》も採用して軽量呪文を増やし、彼のアグロ戦略を後押しした。《古きものの活性》は「基本的に《Demonic Tutor》」だと評価する彼だが、さらに《漁る軟泥》と《エルドラージの寸借者》に感謝しきりだという。

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ゴールド・レベル到達に必要なプロ・ポイントを狙うグジェゴジェ・コワルスキは、今大会に極めて興味深いエルドラージ・デッキを持ち込んだ。

 初日のメタゲーム分析で取り挙げたカード採用枚数ランキングでは、《漁る軟泥》は圏外だった。この事実が、「《漁る軟泥》は過小評価されている」と語るコワルスキの鋭さを物語っている。

「《漁る軟泥》は今の環境にかなり適しているから、みんなもっと使うべきだと思っているよ。《死の影》や《タルモゴイフ》をはじめとして、多くの戦略に対して効く」と、彼は墓地を利用するデッキを挙げていった。「青赤けちストーム」、「マルドゥ・パイロマンサー」、《瞬唱の魔道士》を使うデッキ、「ドレッジ」、「死せる生」......

「それから、『バーン』に対してもかなり強いし、エルドラージの同系戦でも活躍できる。6/6に育てて《現実を砕くもの》を止められるんだ!」

「《エルドラージの寸借者》は、クリーチャーを用いるデッキなら劇的に効く。クリーチャー中心のものじゃなくてもね」とコワルスキは続けた。「コントロール・デッキに対しては、1ターン目《貴族の教主》から2ターン目《エルドラージの寸借者》で4点。高速でクロックを刻める。『タイタン・シフト』のようなコンボ・デッキに対しても、《原始のタイタン》を奪って一緒に攻撃すれば9点だ。ゲーム序盤にダメージを与えているだろうから、それで決着は十分にあり得る話だよ。そうそう、《死の影》を除去するのにも《エルドラージの寸借者》は使えるんだ」

 こうして話を聞いていると、コワルスキのデッキ選択への自信が伺える。しかし話はまだ終わっていない。《死の影》がモダンの脅威として認識されると、彼はマナ基盤を見直したのだ。「『トロン土地』を用いていないのは、《燃え柳の木立ち》を使いたいからだ。対戦相手にライフを与えているだけで《死の影》を倒したこともあるよ」

 なるほど!

 コワルスキはドラフト・ラウンドが3勝3敗と奮わなかったが、モダン・ラウンドでは手応えを感じているようだ。昨日は4勝1敗を記録した彼は、ゴールド・レベル到達に向けて再びの好成績を狙う。「プロツアー前で22点。今期の目標はゴールド・レベル到達。今年はグランプリにも積極的に参加する予定だし、これまで以上に熱心に取り組むつもりだよ。ヨーロッパやアメリカだけでなく、6月のグランプリ・シンガポールにも足を伸ばそうかと思っている」

 それは素敵なことを聞いた。私はシンガポール出身なのだが、「ゴブリンの先達」はいかがかな? 私は彼に航空券やホテルの手配など、旅の助けを申し出てみた。その計画が実現するかどうかはさておき、コワルスキのことを知るチャンスが増えることは喜ばしい。今後も彼が研鑽を続ける限り、この類まれなる才能を持つポーランド人プレイヤーを目にする機会は多くやって来るだろう。

Grzegorz Kowalski - 「赤緑エルドラージ」
プロツアー『イクサランの相克』 / モダン (2018年2月2~4日)[MO]
1 《
1 《
1 《踏み鳴らされる地
2 《樹木茂る山麓
4 《燃え柳の木立ち
4 《カープルーザンの森
4 《魂の洞窟
4 《エルドラージの寺院
1 《ケッシグの狼の地

-土地(22)-

4 《貴族の教主
1 《極楽鳥
3 《漁る軟泥
4 《エルドラージの寸借者
4 《作り変えるもの
4 《難題の予見者
4 《現実を砕くもの
2 《終末を招くもの

-クリーチャー(26)-
1 《精神石
4 《古きものの活性
4 《稲妻
1 《二股の稲妻
2 《四肢切断

-呪文(12)-
1 《ウルヴェンワルドの足跡追い
2 《墓掘りの檻
2 《自然のままに
2 《大祖始の遺産
2 《古えの遺恨
1 《虚空の杯
1 《コジレックの帰還
2 《塵への崩壊
2 《仕組まれた爆薬

-サイドボード(15)-
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