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プロツアー『カラデシュ』

観戦記事

第7回戦:Ari Lax(アメリカ) vs. 山本 賢太郎(日本)

川添 啓一
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Corbin Hosler / Tr. Keiichi Kawazoe

2016年10月14日


アリ・ラックス/Ari Lax(ティムール「霊気池」) vs. 山本 賢太郎(ティムール現出)

 アリ・ラックスがこの前ホノルルを訪れた時は、非常に良い結果であった。

 2014年のプロツアー『タルキール覇王譚』で彼は、錚々たるトップ8の中、その名をプロツアー覇者のリストにしっかり刻み込むことになった。これは彼のマジック人生のハイライトであり、このラウンドでフィーチャーマッチに呼ばれたとき、ふとそれを思い出したのだった。

 だが、それはほんの一瞬の話である。この週末、まだ彼は4勝2敗であり、まだまだやらなければならないことがたくさんあるのだ。

 このことは山本賢太郎にも言えた。彼は人生4度目となる、プロツアー『マジック・オリジン』以来のプロツアーのトップ8を目指しているのだ。先のグランプリ・京都の準優勝を始めとして、彼は今年すでに4回グランプリのトップ8に残っており、今まさに脂の乗っている時期にハワイにやって来た。

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アリ・ラックスは前回のプロツアー・ホノルルの再来を狙うが、一方山本賢太郎は自身4回目のプロツアー決勝ラウンドを目指している

両者のデッキ

 本大会参加者の多くと同様に、ラックスはこの週末もっとも人気のあるデッキである《霊気池の驚異》デッキを使っていた。エネルギーを与える多くのクリーチャーを序盤に展開し、《霊気池の驚異》を素早く起動し、エルドラージの巨人――《絶え間ない飢餓、ウラモグ》や《約束された終末、エムラクール》を最速4ターン目に唱えようとするものだ。ラックスのバージョンでは青を加えてより重くし、また《有事対策》でコンボパーツを効果的に見つけられるようにしていた。

 他のプレイヤーがカラデシュでの発明を見せびらかす一方で、山本は『イニストラードを覆う影』と『異界月』のカードに信頼を置いていた。特に、彼は《老いたる深海鬼》と、その餌となる墓地の脅威である《秘蔵の縫合体》や《憑依された死体》、《改良された縫い翼》を活用していた。これら3種のクリーチャーは墓地から繰り返し戻ってくる彼の計画の屋台骨となっており、《安堵の再会》によって最速で3ターン目には盤面を作り上げられるのだ。この戦略は除去に対しても非常に強く、またインスタント・タイミングで行動できるがゆえに、山本のプレイに幅を持たせていた。

ゲーム展開

 メインデッキではお互いがあまり干渉しあわないため、ラックスが1ターン目に唱えた《霊気との調和》からすでにレースが始まっているであろうことを両者が理解していた。山本は2枚の《終わりなき時計》を起動し、一方ラックスは《有事対策》を3連発して、それぞれの墓地を満たしていった。

 そしてついに戦局が動き始めた。山本は《憑依された死体》で《秘蔵の縫合体》を墓地から釣り上げて圧力をかけ始めたのだ。しかしラックスは未だに準備を整えることに終始していた。彼は16ものエネルギー・カウンターを持っており、ライブラリーは25枚まで減っているにも関わらず、《霊気池の驚異》を発見できずにいたのだ。ゾンビたちが襲来し、ハワイのディフェンディング・チャンピオンはロープまで押し込まれた。

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ラックスは《霊気池の驚異》で最速の勝ち筋を探している

 その時、ついに《霊気池の驚異》が姿を現した。ラックスは自分のターンに起動し、《約束された終末、エムラクール》を引き当てた。それにより《コジレックの帰還》も誘発して山本の盤面を一掃し、ゲームを決めるかに見えた。

 しかしながら、相手のターンをコントロールするということは、その時点から次のターン終了まで相手をコントロールするということではない。山本はそのターンの終了時に《改良された縫い翼》を墓地から起動して盤面を回復し、次のターンにエムラクールによって失われる分を差し引いても勝利のために十分なクロックを用意した。

 これは、ラックスにとって次のターンが分水嶺となることを意味していた。山本が手札を公開すると、そこにあった《老いたる深海鬼》から難解なパズルへと向き合った。数秒の後、彼は頬を両手で軽く打って「わかったぞ!」と言った。

 そう、解いたのだ。まず2枚の《終わりなき時計》を起動して山本のライブラリーをさらに削った。その後、《老いたる深海鬼》を唱えるために盤面の《老いたる深海鬼》を生け贄に捧げ、墓地の《コジレックの帰還》を誘発させた。これで改めてクリーチャーを墓地に戻し、そして最後に《終わりなき時計》で墓地を全て山本のライブラリーに戻してターンを終了した。これは、山本に投了させるためには十分なものだった。

 第1ゲームは《霊気池の驚異》がその力を一発で見せつけて終わったが、第2ゲームは墓地デッキの本領発揮となった。《安堵の再会》で《秘蔵の縫合体》と《改良された縫い翼》を墓地に置いた山本は、それを3ターン目には墓地に戻し、そのまま《老いたる深海鬼》へとつなぎ、未だ何もプレイしていないラックスを光速で打ち倒した。

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山本のデッキは相手の動きに対応できる柔軟性に優れている

 両者は最終ゲームへと向かった。最初の動きは山本の2ターン目の《安堵の再会》だった。これはラックスの《否認》で打ち消されたが、追加コストで捨てられたカードの方がダメージとなった。《憑依された死体》は《秘蔵の縫合体》を伴って戦場に戻り、ビートダウンが始まってしまった。そして《老いたる深海鬼》が時間を止め、その次の一撃でディフェンディング・チャンピオンに残されたターンは1ターンとなったのだ。

 ラックスにとって幸運だったことは、彼が求めていた《霊気池の驚異》が手札にあったことだ。一方彼にとって不運だったことは、山本が《否認》を構えていたことだ。《霊気池の驚異》が墓地に置かれた時、ラックスは手を差し出して投了を宣言した。

 彼の物腰は事ここに至っても変わらなかった。

「大丈夫、結局これ何もしてないから」と、笑いながら自身のライブラリー6枚を山本に見せたのだった。

ラックス 1-2 山本
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RESULTS

対戦結果 順位
最終
16 16
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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