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プロツアー『異界月』

観戦記事

第15回戦:Owen Turtenwald(アメリカ) vs. Lukas Blohon(チェコ)

川添 啓一
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Chapman Sim / Tr. Keiichi Kawazoe

2016年8月6日


オーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwald(ティムール「現出」) vs. ルーカス・ブロホン(白黒コントロール)

 スイスラウンドもついに最後の戦いへと到達し、懸かっているものも大きくなる一方である。3敗ラインでは、トップ8に進出するかどうかによってプロポイントや賞金、そして不朽の名声に大きな差が生まれるのだ。

 マッチポイント33点である両プレイヤーがフィーチャーエリアに呼ばれた。ここで勝てば、次のラウンドではインテンショナル・ドローを選択して日曜への進出を決められるだろう。一方、負ければ次のラウンドで勝って、その上でタイブレーカーの幸運を祈らなければならない。

 現在世界ランキング2位のオーウェン・ターテンワルドにとって、4回目のプロツアートップ8進出によって、プレイヤー・オブ・ザ・レース首位(世界ランキング1位でもある)のセス・マンフィールドを追い抜ける可能性がある事実を示していた。マンフィールドは既に7敗目を喫しており、リードの消失をもはや自力で止めることはできなかった。

 一方、同19位のルーカス・ブロホンは2度目となるプロツアートップ8を切望していた。彼にとって初のプロツアー・サンデーはプロツアー『闇の隆盛』の時であり、その次の機会を待ち望んでいた。加えて、チェコ共和国代表キャプテンや世界選手権出場権についても当落線上であった。

ゲーム展開

 《神聖なる月光》はティムール「現出」に対しては全くの役立たずであり、そのためブロホンは《最後の望み、リリアナ》を探すためにサイクリングとして使用した。ターテンワルドはその序盤を、《過去との取り組み》と《ニッサの巡礼》に費やした。《群れの結集》は多くのカードを墓地に落とし、ついに《約束された終末、エムラクール》のコストを{8}まで減らした。

 《ゲトの裏切り者、カリタス》は盤上唯一のクリーチャーであったが、それはターテンワルドの目には速いクロックとは映らなかったため、問題ではなかった。しかしながら、ある紋章が状況を一変させた。この数ターンの間《最後の望み、リリアナ》の処理に苦戦した結果、ブロホンはちょうどストーリーのように来る、エムラクールに匹敵する軍勢を得られるリリアナの奥義へとたどり着いたのだった。

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オーウェン・ターテンワルドはカリタスを脅威と見做していなかったが、カウンターが6個置かれたリリアナは確かに脅威だった。

 ターテンワルドはブロホンの手札に《破滅の道》2枚を見つけてうろたえた。なぜなら、対象が足りずに浪費させることができなかったからだ。自然なこととして、返しのターンでブロホンは覚醒コストでそれをエムラクールに使った。手札に《老いたる深海鬼》2枚を持っていたが、ターテンワルドは容赦無く増え続けるゾンビの軍勢の前に屈した。

 第2ゲームで、ターテンワルドは《崩れた墓石》から《発生の器》1個目を起動し、2個目を唱えた。ブロホンはその2個目を《苦渋の破棄》で追放した。これは、彼の白黒コントロールが十分すぎるほどの除去を持っているゆえの選択である。ここでの問題は、いかにゲームを早く終わらせうるクロックを見つけられるかどうかである。ターテンワルドは2枚目の《崩れた墓石》から《ニッサの巡礼》へとつなぎ、未だブロホンは4マナしかない状態で8マナへと到達した。

 5枚目の土地を置き、ブロホンが不要牌を取り除くべく《骨読み》を唱えると、《精神背信》を見つけた。ターテンワルドの手札からは《老いたる深海鬼》、《約束された終末、エムラクール》、そして《久遠の闇からの誘引》――《精神背信》や《知恵の拝借》と言った追放する呪文に対抗するために、彼がサイドボードとして取った――があらわになった。

 ブロホンはエムラクールを選択するほかなかったが、それはターテンワルドが《老いたる深海鬼》を素打ちできることを意味していた。このエルドラージのタコは現出なくしては8マナを要求するが、ターテンワルドは既に十分なマナを有しており、その「定価」を支払うことに何の問題もなかった。そして次のターン、ターテンワルドは《久遠の闇からの誘引》によって忘却の彼方から《約束された終末、エムラクール》を回収した。

 《精神隷属器》効果が発揮され、ブロホンは《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》や《闇の掌握》、《究極の価格》といった取るに足らない呪文に満ちた手札を開いた。最も価値のあるカードは、既にテーブルに存在する《荒廃した湿原》であった。ターテンワルドにとって不運なことに、この土地は「対象のプレイヤー」ではなく「対戦相手」に対してクリーチャーを生け贄に捧げさせるのだ。この問題を回避するため、ターテンワルドはより良い手として《乱脈な気孔》を除去することで起動に必要なマナを取り除いた。もしブロホンがアンタップインの土地をトップデッキしなければ、彼は《荒廃した湿原》を起動することはできないのだ。

 そして、彼はできなかった。ターテンワルドは更に次なるエムラクールを唱え、もう1枚の《乱脈な気孔》も自殺させた。言ってしまえばただ土地を2枚除去しただけのことであるのだが、これが効果的だったのだ! ブロホンはアンタップインの土地を見つけることができず、《無限の抹消》を引いてしまった。もちろん13/13は十分に致命的だったが、ターテンワルドのデッキをさらに見るために投了はしなかった。これが、第3ゲームに移る前に彼のした最後の決断である。

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打開策がなくとも、ルーカス・ブロホンはただで情報を得られる機会を見逃さない。

 両プレイヤーとも速やかに最初の7枚に見切りをつけ、新たな6枚を得た。ブロホンは《強迫》を唱えたが、ターテンワルドはそれを《侵襲手術》で阻止し、《過去との取り組み》を守った。続く《精神背信》が解決されると、《約束された終末、エムラクール》は追放されてしまった。

 今がチャンスと、ブロホンはより積極的な戦略を取った。《ゲトの裏切り者、カリタス》を唱えるだけでなく、《乱脈な気孔》も起動して5点のクロックを刻んだ。2枚目の《精神背信》は、ターテンワルドが《》、《コジレックの帰還》、そして《老いたる深海鬼》しか持っていないことを公開させた。このエルドラージのタコは追放され、ブロホンはさらに5点を追加した。

 ブロホンにとって不幸なことに、ターテンワルドはこの直後に2枚目の《コジレックの帰還》を引き当て、ブロホンの盤面を一掃してしまった。しかしながら、最後に笑ったのはブロホンであった。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》で立て直し、さらに状況が悪化する前に決着をつけたのだった。

オーウェン・ターテンワルド 1-2 ルーカス・ブロホン

 この勝利によって、ルーカス・ブロホンは12-3となりトップ8への望みを繋いだ。また、争っているオンドレイ・ストラスキー/Ondrej Straskyのトップ8の目が極めて薄いことから、彼のチェコ代表キャプテンの座にも到達できそうであった。敗れたターテンワルドは11-4となったが、まだトップ8の目が消えたわけではない。彼のタイブレーカーは現在トップであり、最終ラウンドで勝てば残れる可能性は高かった。つまり、マンフィールドはまだ祈り続けなければならないのだ。

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