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マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2017

観戦記事

チームシリーズ決勝:Genesis vs. Musashi 第1戦

矢吹 哲也
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Frank Karsten / Tr. Tetsuya Yabuki

2017年10月8日


 プロツアー・チームシリーズが発足した記念のシーズン、上位2チームの座を獲得しこの舞台に立ったのは、チーム「Genesis」とチーム「Musashi」だ。この2チームはこれから、チームシリーズ優勝トロフィーを掲げる者を決する戦いに挑む。

 チームシリーズ決勝では、各チームとも3人ひと組のグループに分かれる。各グループにチーム・シールド用のカード・プール(『イクサラン』ブースターパック12個)が配られ、彼らはそれを用いて40枚のデッキを3つ構築する。デッキ構築は、ジャッジ同席の中で木曜日の午前中に行われた。その後何人かのメンバーは世界選手権へ参加したが、今度はチームでの戦いに力を尽くすことになる。この日曜日の最初の試合では、各チームの第1グループが相対する。

プレイヤー紹介

 チーム「Musashi」が送り出した最初の3人は、現役最高峰の日本人プレイヤーたちだった。

  • 渡辺 雄也:プロツアー殿堂顕彰者。生涯獲得プロ・ポイント573点。プロツアー・トップ8入賞4回。
  • 覚前 輝也:彼のチームメイトと比較してしまってはプロツアーでの経験は少ないと言わざるを得ないが、すでに優勝2回を含むグランプリ・トップ8入賞3回を記録している。
  • 八十岡 翔太:プロツアー殿堂顕彰者。コントロール・マスターとして広く知られ、プロツアー『カラデシュ』では優勝を果たした。生涯獲得プロ・ポイント537点。

 チーム「Genesis」は、国際色豊かなメンバーを抱えている。最初の3人は――

  • トーマス・ヘンドリクス/Thomas Hendriks:オランダのゴールド・レベル・プロ。プロツアー『タルキール龍紀伝』ではトップ8に入賞。元メンバーのマイケル・メジャース/Michael Majorsがウィザーズ・オブ・ザ・コースト社で働くことになったため、シーズンの途中で入れ替わった。
  • セス・マンフィールド/Seth Manfield:世界選手権2015王者。プロツアー・トップ8入賞3回。北米開催のグランプリには、ほとんどすべて参加している。
  • ルーカス・ブロホン/Lukas Blohon:チェコ共和国出身のプロツアー『異界月』王者。現役のヨーロッパ・プレイヤーで最強の一角と言われる。
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2016-2017年プロツアー・チームシリーズ決勝に挑む「Musashi」と「Genesis」。最大3回戦にわたるチーム戦で最初の1勝を掴むのはどちらか。

A卓:トーマス・ヘンドリクス(白赤恐竜) vs. 渡辺 雄也(青緑マーフォーク)

 渡辺のデッキには《風と共に》と《翡翠の守護者》が2枚ずつ採用されており、それらが組み合わされば5/5飛行、呪禁というブロックも除去も難しい強力なクリーチャーが生まれる。そのコンボを安定して発揮できるよう、渡辺のデッキには《選択》も4枚搭載されていた。盤面が膠着した場合も、《川の叱責》を引き込みにいける。

 ヘンドリクスの方は《猛竜の相棒》や《縄張り持ちの槌頭》、《プテロドンの騎士》を複数枚採用しており、開幕から素早く攻め込める形に仕上がっている。《確実な一撃》や《火炎砲発射》のような赤の呪文が猛攻を支え、5/5飛行・呪禁クリーチャーとのライフ・レースも可能だろう。

 第1ゲーム、ヘンドリクスは《深海艦隊の扇動者》2体と《縄張り持ちの槌頭》で積極的な攻めに出た。渡辺のファースト・プレイは4ターン目の《翡翠の守護者》であり、5ターン目には《ティシャーナの道探し》を加えた。

 遅めの立ち上がりになった渡辺だが、《縄張り持ちの槌頭》の能力を《翡翠の守護者》と《潜水》で防ぐ。続けて《川の叱責》で盤面を一掃し多くの時間を稼いだ渡辺だが、しかしヘンドリックは素早く体勢を立て直し《イクサランの束縛》で道を開けると、《危険な航海》も意識して丁寧に致命打となる攻撃を組み立てたのだった。

 第2ゲームは、互いにブロックしにくい戦力によるライフ・レースが行われた。ヘンドリクスは《縄張り持ちの槌頭》を中心にした攻撃。渡辺は《風と共に》をエンチャントして空からの攻撃だ。渡辺は《繁雑な火炎砲》を盤面に加え、ブロックされないダメージ源をさらに増やした。

 鍵となったのは、ヘンドリクスが全軍で攻撃したターンだ。ここで彼は、強化呪文を唱えてダメージを致死量に届かせるか、《崇高な阻止》で《風と共に》がエンチャントされた《イクサーリの守り手》を無力化するかという選択肢に直面し、その後者を選んだ。これは《潜水》がなければ良い選択だったのだが、渡辺はそのインスタントを持っており、勝利を引き寄せたのだった。

 しかし第3ゲームは瞬く間に終幕することになった。ヘンドリクスは《猛竜の相棒》から《日の出の使者》、《プテロドンの騎士》と最高の動きを見せ、一方の渡辺は緑マナ源や《選択》のない手札をキープしてこのゲームを落としたのだった。

ヘンドリクス 2-1 渡辺

C卓:ルーカス・ブロホン(青黒海賊) vs. 八十岡 翔太(4色海賊)

 八十岡のデッキは、傑作だった。核となるのは《海賊のカットラス》と《巧射艦隊の略取者》を2枚ずつ備えた「青黒海賊」だが、チーム「Musashi」はそこへ「宝物」を生み出せるカード5枚と《氷河の城砦》を加えて、赤と白をタッチしたのだ。白のタッチ要素は《饗宴への召集》2枚。これは《選定された助祭》とも非常に良く噛み合っている。赤のタッチ要素は《蠱惑的な船員》と《稲妻砲手》、そして《ヴァンスの爆破砲》だ。

 ブロホンのデッキもまた、見た目は《海賊のカットラス》とそれを持ってこられる《巧射艦隊の操舵手》を備えた「青黒海賊」デッキだ。しかしその実態は、《溢れ出る洞察》デッキと言えるものだった。ブロホンのゲーム・プランは、《依頼殺人》や《財力ある船乗り》のようなカードで交換を取りながら盤面を抑え、7マナを揃えて《溢れ出る洞察》を放ち圧倒的なカード・アドバンテージ差で押し潰すというものなのだ。

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チーム・シールド用のカード・プールから興味深いデッキを作り上げたチーム「Musashi」。送り出した第1グループのメンバーは渡辺 雄也、覚前 輝也、八十岡 翔太だ。

 第1ゲーム、セス・マンフィールドと意見を交わしたブロホンは《》1枚と《選択》1枚のリスクの高い初手をマリガンし、よりよい6枚を手に入れた。ゲームは進行するにつれて盤面が膠着していく。その膠着を破るため、ブロホンは《不死の古き者》で空から攻撃した。

 しかし八十岡は、《蠱惑的な船員》というさらに強力な脅威を繰り出した。八十岡は《蠱惑的な船員》の能力を1ターンに2回起動できるほどのマナを持ち、ブロホンは自らのクリーチャーの力を身をもって知ることになった。《蠱惑的な船員》への解答はなく、ブロホンは自らのクリーチャーによる猛攻を前に屈するのだった。

 第2ゲームは26分間にわたる激戦だった。《溢れ出る洞察》が唱えられ、《ヴァンスの爆破砲》が「変身」し、この週末で最も面白いリミテッドの試合が繰り広げられたのだ。ぜひ生放送のアーカイブで試合の模様を観戦してほしい。

 さて、ゲームが中盤に入ると、八十岡の《蠱惑的な船員》が再び戦場を支配した。しかし今度はブロホンがなんとか解答を見つけ出した。八十岡が疑わしい攻撃を仕掛けると、ブロホンはここが勝機とばかりにダブル・ブロックで応じた。だがもちろん、八十岡に《蠱惑的な船員》を差し出すつもりはない――彼は《卑怯な行為》を持っていたのだ。それでもその後、ブロホンの「探検」持ちクリーチャーが《依頼殺人》を公開した。《蠱惑的な船員》はついに倒れたのだ。

 この時点で、恐らく八十岡は《ヴァンスの爆破砲》を用いてロング・ゲームを制することを見据えていたのだろう。しかしブロホンには圧倒的に強力なドロー呪文があった――《溢れ出る洞察》だ。これで彼は勝利に必要なリソースを一気に獲得し、彼の海賊軍団は複雑なターンや戦闘をいくつも乗り越えて勝利をもたらしたのだった。

 これで1勝1敗。だが勝負が決する戦いをすべてカメラで収めるため、この卓の最終ゲームは一度待つことになった。

B卓:セス・マンフィールド(青緑マーフォーク) vs. 覚前 輝也(白赤恐竜)

 覚前のデッキには、多くの恐竜シナジーが搭載されている。2枚採用した《キンジャーリの呼び手》は11枚もの恐竜のコストを軽減し、驚くべき序盤の動きを実現していた。またマナ域の頂点には《輝くエアロサウルス》が3枚控えており、《キンジャーリの呼び手》の他にも《恐竜暴走》や《猛竜の群れ》などの優れた部族カードが揃っている。

 マンフィールドのデッキには、《川潜み》や《水罠織り》、《嵐を変容する者》の複数枚投入など、多くのマーフォークが採用されている。さらに《川守りの恩恵》や《蔦形成師の神秘家》といった強力な緑の部族支援も備えている。

 第1ゲーム、先手の覚前は2ターン目《アダントの先兵》でゲームを始めると、続く3ターン目に《暴れ回るフェロキドン》を展開。マンフィールドは恐れず2/1の《見習い形成師》で3/3に対して攻撃。《塁壁壊し》の存在を匂わせる。覚前はこの攻撃をブロックせず、マンフィールドは戦闘後に《航路の作成》を唱えた。美しいまでのブラフが実を結んだのだ。

 これでわずかな心理的優位を得たマンフィールドだったが、しかしアグレッシブな「白赤」デッキに対して盤面への展開ではなくドローを進めたことには、大きな危険が伴う。覚前は《結束した角冠》を盤面に追加してコンバット・トリックを絡めながら攻撃の手を緩めず、マンフィールドを圧倒したのだった。

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2016-2017年チームシリーズの順位では後塵を拝したが、ここで逆転優勝を狙うチーム「Genesis」。第1グループのメンバーはルーカス・ブロホン、セス・マンフィールド、トーマス・ヘンドリクスだ。

 第2ゲームでは彼らの立場が逆転し、マンフィールドが素早いスタートを切った。1ターン目《クメーナの語り部》から2ターン目《川潜み》と展開すると、3ターン目は覚前が《キンジャーリの呼び手》でブロックしてきたところに《川守りの恩恵》を合わせた。

 覚前を守勢に立たせたマンフィールドは、このゲームの鍵となるプレイを見せる。彼が《葉を食む鞭尾》で攻撃すると、覚前は《日の出の使者》と《猛竜の群れ》でダブル・ブロック。ここでマンフィールドは《座礁》で2対1交換を取り、覚前の盤面からクリーチャーを一掃したのだ。ここから覚前は盤面を取り返せず、そのまま押し切られた。

 そして第3ゲームは、あっという間に終わりを告げた。両者とも土地が3枚で止まったものの、両者の違いは明白だった。マンフィールドの側には《川潜み》が2体おり、さらに彼はそれらを《蔦形成師の神秘家》で強化したのだ。ブロックされないマーフォークたちが、瞬く間にゲームを終わらせたのだった。

マンフィールド 2-1 覚前

 こうして、チーム「Genesis」の第1グループがチーム「Musashi」の第1グループを2勝1敗で下した。「Genesis」の第2グループ――ブラッド・ネルソン/Brad Nelson、マーティン・ミュラー/Martin Muller、マーティン・ダン/Martin Dangの3名が続く試合も勝利すれば、チームシリーズ・チャンピオンの座は「Genesis」のものだ。「Musashi」の第2グループ――行弘 賢、市川 ユウキ、山本 賢太郎の3名が勝敗をイーブンに戻せば、トロフィーを手にするチームを決める最終決戦が行われることになる。しかし現時点では、「『Genesis』の王手」だ。

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RESULTS

対戦結果 順位
最終
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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