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マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2016

観戦記事

第5回戦:Mike Sigrist(アメリカ) vs. Marcio Carvalho(ポルトガル)

青木 力
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Corbin Hosler / Tr. AOKI Chikara

2016年9月1日


マイク・シグリスト/Mike Sigristvs(世界ランキング14位/ティムール現出) vs. マルシオ・カルヴァリョ/Marcio Carvalho(バント・カンパニー)

 世界選手権で繰り広げられる試合はすべて記念碑的なものであるが、その年の最高峰のトーナメントにも際立つ対戦がある。

 たとえば、最後の無敗プレイヤー同士の対戦。

 世界ランキング第14位のマイク・シグリストは意気揚々と今大会へ挑み、プロ・マジックプレイヤーと双子の女の子の父親にして専業主夫というふたつの顔を持つ彼に運命は微笑み続けている。対するはドラフト・マスターのマルシオ・カルヴァリョ。彼は『イニストラードを覆う影』ブロック・ドラフトで行われたプレミア・イベントにおいて、驚くことに15勝0敗という完璧な成績を収めている。

 最後の無敗プレイヤーとなるために、両者は第5回戦で衝突する。

 このマッチは《集合した中隊》対《約束された終末、エムラクール》というスタンダード環境の2本柱の対戦となった。カルヴァリョはミラーマッチ用に《老いたる深海鬼》をメインに入れたバント・カンパニー。一方のシグリストは《約束された終末、エムラクール》という頂点へ向かって登り続けるティムール現出だ。

ゲーム展開

 最後の無敗プレイヤーになれるチャンスがあるマッチではあったが、シグリストは4枚までマリガンする不運に見舞われた。しかし2ターン目の《ヴリンの神童、ジェイス》に《巡礼者の目》が続けられる手札を見たシグリストは、奈落からの出口に爪を引っ掛けた気分になったことだろう。

 そうはさせじとカルヴァリョ。2ターン目の《無私の霊魂》が攻撃を始め、シグリストが《巡礼者の目》を相打ち目的で差し出してきたところに《ドロモカの命令》でカウンターを載せつつ、《ヴリンの神童、ジェイス》と格闘してシグリストのクリーチャーを両方とも墓地へ送る。

 《老いたる深海鬼》を現出する手段も、それを探す《ヴリンの神童、ジェイス》もないシグリストは、終了ステップに出てきた《呪文捕らえ》と《爪の群れの咆哮者》に殴られる。カルヴァリョがもう圧倒している戦場に《老いたる深海鬼》を追加すると、シグリストは諦めることに決めた。

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マルシオ・カルヴァリョがマイク・シグリストに何もさせなかった第1ゲーム。

 第2ゲームはカルヴァリョがマリガンしてしまい、土地が1枚のリスキーなハンドをキープする。計画は失敗し、2ターン目に土地が置けなかったことはシグリストの《節くれ木のドライアド》がビートダウンする青信号。2枚目の土地がカルヴァリョのもとに遅れて来たころには《墓後家蜘蛛、イシュカナ》と蜘蛛・トークンに直面している。《薄暮見の徴募兵》を送り込んだカルヴァリョだったが、《ウルヴェンワルド横断》が《老いたる深海鬼》を探してくると、第2ゲームはシグリストのものとなり、両者は決着の最終ゲームへ。

 そして第3ゲームは、最後にふさわしい展開を見せる。

 お互いにゆっくりとした立ち上がり。3枚の《進化する未開地》のカルヴァリョに対し、シグリストは2ターン目の《群れの結集》で土地、ソーサリー、アーティファクト・クリーチャー(《巡礼者の目》を墓地に送りはやくも昂揚を達成する。そのおかげで《ウルヴェンワルド横断》から《シヴの浅瀬》を持ってくることができた彼は、色マナを整えて《ヴリンの神童、ジェイス》。カルヴァリョの盤面には《巨森の予見者、ニッサ》のみで、《ヴリンの神童、ジェイス》の変身が次のターンに確定する。シグリストも《巨森の予見者、ニッサ》を戦場に出して、《束縛なきテレパス、ジェイス》分リードする。

 カルヴァリョが《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を出してシグリスト優位だった戦場をひっくり返す。続くシグリストのターンに《巨森の予見者、ニッサ》が相打ち、ゲームはプレインズウォーカーの戦いに。だが2014-15年度プレイヤー・オブ・ザ・イヤーのシグリストにとって厳しいことに、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》はその軍勢を引き連れてくる。シグリスト側も《墓後家蜘蛛、イシュカナ》がトークンを出しつつ《老いたる深海鬼》に繋がりそうだが、終了ステップに唱えられたカルヴァリョの《集合した中隊》がゲームを一気に動かす。

 《集合した中隊》が解決されると、《反射魔道士》が《墓後家蜘蛛、イシュカナ》をバウンスして《老いたる深海鬼》の脅威を取り除き、《無私の霊魂》がシグリストの《コジレックの帰還》から彼の軍勢を守る。カルヴァリョは静かにアンタップし、蜘蛛トークンを《石の宣告》で一掃。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》は手札にもう2枚あるため、攻撃ではなく紋章を得て《束縛なきテレパス、ジェイス》の忠誠値を残り1つに減らす。このプレイで《束縛なきテレパス、ジェイス》が戦場に残ってしまったものの、たった1ターンでカルヴァリョはゲームの主導権を握り返す。

 打開策が絶対に必要なシグリストは《群れの結集》で探しに行き、《巡礼者の目》を掘り当てる。これで《老いたる深海鬼》を続けられるようになり、彼は《コジレックの帰還》を墓地から追放してカルヴァリョの戦場を一掃し、《束縛なきテレパス、ジェイス》と5/6が残る。

 戦場は再びひっくり返り劣勢に置かれたカルヴァリョは、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》と《森の代言者》を再び送り込む。悪くない動きではあるが、シグリストによるビッグ・プレイの前座にすぎない。

 シグリストは生き残っていた《束縛なきテレパス、ジェイス》の忠誠値を0にして《ウルヴェンワルド横断》を墓地から唱える。探しだされた《約束された終末、エムラクール》がタップアウトで唱えられた。

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マイク・シグリストは手元に集中する。

 カルヴァリョは明確にエルドラージの影響下に入り、シグリストはできるだけ多くの損傷をカルヴァリョに与えようとする。まずは《森の代言者》を《約束された終末、エムラクール》に向けて攻撃させ、続けて《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を唱えて先に戦場にいた方を墓地に送る。出したばかりの《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》もすぐに2個目の紋章を作成して墓地へ。カルヴァリョは第3ゲーム早々に紋章を重ねる事を思いもしなかったのだろうが、戦場にクリーチャーがいない今となっては意味が無い。

 与えた損害に満足したシグリストはカルヴァリョに「通常の」ターンを返す。カルヴァリョはそのターンを《不屈の追跡者》と《森の代言者》で盤面を再編成するために使ったが、《約束された終末、エムラクール》の攻撃でライフは7に落ち込んでしまう。次のカルヴァリョのアップキープに《老いたる深海鬼》が土地を縛り、勝負あり。あってないようなドロー・ステップを挟んでカルヴァリョは手を伸ばし、シグリストが最後の無敗プレイヤーになったことを祝福する。

マイク・シグリストがマルシオ・カルヴァリョを2勝1敗で下す。
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RESULTS

対戦結果 順位
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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