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グランプリ・シンガポール2017

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シンガポールの新興チーム、Team Gray Ogre Games~最高のコミュニティを目指して~

By Masashi Koyama

 プレイヤーを援助するスポンサー制度を導入しているチームと言えばどこが思い浮かぶだろうか。

 日本であれば「BIG MAGIC」や「晴れる屋」などがその代表格といえるだろう。ショップのロゴマークを胸にまとったプレイヤーたちは、グランプリやプロツアー会場の至るところで見ることができる。

 アジアに目を向けてみると、「Team Mint Card」が世界に名を轟かせている。リー・シー・ティエン/Lee, Shi Tianやヤン・ウィンチャン/Yam, Wing Chunなど、日本以外のアジア圏のトップ・プレイヤーたちがこぞって所属しているスーパーチームだ。

 では、それ以外のアジアチームはどうだろう? おそらく「Team Mint Card」以外の名前が浮かぶ人はほとんどどいないのではないだろうか。かくいう私もそうだった。

 シンガポールのゲーム店、「Gray Ogre Games」はその名を冠する「Team Gray Ogre Games」を結成した。このチームにはシンガポールのプレイヤーたちが集っており、メンバーのひとりであるフェリックス・レオン/Felix Leongはプロツアー『破滅の刻』でトップ8入賞を果たしている。

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写真左からJoshua Yang, Tay Jun Hao, Ernest Lim, Felix Leong, Lim Zhong Yi
(加えてFabien Liも所属、Lim, Zhong Yiは「Hareruya Hopes」にも所属)

 それだけでなく、メンバーは皆少なくとも今シーズン2つのプロツアーへの参加権利を持っており、彼らが過去に獲得したプロ・ポイントの総合は300を超える。

 「Gray Ogre Games」のオーナー、マーク・タン/Mark Tanは彼自身がワールド・マジック・カップ2012の代表経験を持つプレイヤーであり、シンガポールの地元プレイヤーによるチーム結成を熱望していたという。

「コミュニティが一番の理由でした。私は13歳の時にマジックを始め、たくさんの経験を得てきました。だからそれを還元したいと思ったんです。シンガポールのマジックを始めたばかりのプレイヤーはシャイな傾向にあると思います。若い頃の私のように。そして、シンガポールにはそういったプロになりたい若者がたくさんいます。でも、彼らはそのためのノウハウを知らないんです。だから経験豊富なプレイヤーを店に呼び込み、彼らの経験を吸収できるようにすることが必要だと考えたのです」

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「Gray Ogre Games」オーナー、マーク・タン

 自身もプロツアー経験を持つマークは、マジックを「コミュニティゲーム」と表現する。彼自身、マジックとともに成長するにしたがい、多くの友人を作り、海外を飛び回るようになるとシンガポールのマジックコミュニティを育てたいと感じるようになった。

 そしてマークは「Gray Ogre Games」を開店した。彼の店は週末に定員の72席が簡単に埋まるほどにファンを集め、わずか2年足らずでウィザーズ・プレイ・ネットワーク店舗の最高レベル、アドバンスプラスに到達し、ワールド・マジック・カップ予選やプロツアー地域予選を主催するまでに至った。

「日本のグランプリに行った時に、とても多くのプレイヤーが『晴れる屋』や『BIG MAGIC』などスポンサー契約を結んでいるショップのシャツを着ているのに驚きました。彼らは楽しんで日本のショップのプレイヤーとなっているように見えました。シンガポールにはこれまでそのような環境がなく、国のベストプレイヤーであるケルヴィン・チュウ/Kelvin Chewは国際的なチームに所属しています。だから私は自店に来ればプロツアーに参加したプレイヤーがその経験や物語を教えてくれる、地域に根ざしたコミュニティを作りたいんです」

 だが、シンガポールは小さな国であり、海外への渡航費はどうしてもかさんでしまう。そして、シンガポールでのグランプリは日本のように年に何度も開催されることはない。そのため、プレイヤーたちがプレミア・イベントに参加する機会は限られてしまい、プロとして成功を収めることはそう簡単ではない。そして環境が整っていなかったがゆえに、夢を掴んだプレイヤーは地元を飛び出してしまうことになってしまう。

 それゆえにフェリックスの成功は彼らにとって貴重なものだった。

「フェリックスは長年マジックをプレイしていて、プロツアーでの成功はまさに夢を叶えた瞬間でした。彼はとてもフレンドリーで、若いプレイヤーを喜んで助けてくれたり、アドバイスを与えてくれたります。それこそ、デッキのサイドボーディングのような細かいことまで教えてくれます。若いプレイヤーは彼を慕っていて、彼もまたそれに喜んで応じる。これが私の求めているものなんです」

 ひとつの成功を収めた「Team Gray Ogre Games」。今、彼らの背を追って新たなプレイヤーがどんどんショップを訪れているという。

「最近では、何とかそこそこの数の新たなプレイヤーたちが来店するようになりました。......とは言え、エントリーセットのデッキでフライデー・ナイト・マジックに参加したら『ティムール・エネルギー』にやられてしまいますよね。だから、スタッフと貸出用のランダムデッキをプレイしたり、他のボードゲームを遊んだり......とにかく楽しくコミュニティの一員になってもらえたらと考えています」

 このグランプリ・シンガポール2017には、彼らのコミュニティから初めてグランプリに参加するプレイヤーが大勢いるという。

 近い将来、もしかすると「Team Gray Ogre Games」のシャツを身にまとったプレイヤーが世界を飛び回っている姿を見ることができるかもしれない。そして、その経験がコミュニティに還元され、また新たな成功者を輩出する......。

 そんな未来を、彼らは今、多くの仲間とともに夢見ている。

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