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グランプリ・静岡2017春

戦略記事

デッキテク:三宅 恭平の「バント・霊気池の驚異」

By Hiroshi Okubo

 人間は不完全な情報を脳内で補足する能力――すなわち、想像力の優れた生き物である。

 しかしそれゆえに、その想像力がゆえにかえって想像力の余地を失ってしまうことがある。

 ――固定観念。

 たとえばこのカードを見たとき、スタンダードをよくプレイしている方ならおそらく真っ先に《絶え間ない飢餓、ウラモグ》や《織木師の組細工》を連想するだろう。そして、それらを組み合わせたデッキとしてティムール(青緑赤)カラーのデッキを思い浮かべるかもしれない。なぜならティムールカラーは《ならず者の精製屋》や《つむじ風の巨匠》といったエネルギーシナジーを持ったカードを多数採用できる非常に効率的なカラーリングであり、実際にティムール《霊気池の驚異》は数々のトーナメントで実績を残しているからだ。

 記憶と経験から導き出される類推。その答えが間違っていると言うわけではない。しかし、時として人は理論上あらゆる色で運用できるはずのこのカードを「これはティムールカラーのデッキで使用するものだ」と結論付けてしまうのである。極端な思考の省略。記号的な認識。本来は自由なはずの想像の余地を自ら制限してしまう自家撞着。固定観念。

 さりとて、だからこそ。その暗黙の制約を踏み越えていける者は、自らの見識の狭さを再確認させてくれる新鮮な刺激は、我々の好奇心をくすぐり、新たな知見を与えてくれるのだ。

 第10期・第11期連続ミスターPWC(※参考:晴れる屋の記事)の三宅 恭平(東京)は、まさにそんな「暗黙の了解」を超えていった1人だ。

 彼の操る「バント《霊気池の驚異》」では、《霊気池の驚異》から飛び出す《消えゆく光、ブルーナ》が《折れた刃、ギセラ》を揺り起こし、「合体」して戦場を駆る。その情景に、デッキ構築の新たな可能性の片鱗を垣間見た。

 なぜ彼は、数ある色の組み合わせの中から「バント《霊気池の驚異》」を組み上げたのか? それは果たしてどのようなデッキなのか? さっそくインタビューを行った。

三宅 恭平(東京)

三宅 恭平(東京)

ヤケクソデッキ、望外の強さ

――「これまで『第8期スタンダード神挑戦者決定戦(晴れる屋)』や『Planes Walker Cup Championship(PWC)』といった草の根トーナメントでこのデッキを回している三宅さんの姿を拝見していましたが、いったいこのデッキはいつごろから調整されていたのでしょうか?」

三宅「『霊気紛争』のゲームデーですね。プロツアーも終わって何かデッキを組もうと思って......僕はデッキを組むときにまずフィニッシュ手段を考えてからデッキを考えていくんですが、《悪夢の声、ブリセラ》をフィニッシャーに据えたコントロールデッキが組みたいと思ったのがきっかけです」

三宅「ただ、《屑鉄場のたかり屋》を使った『マルドゥ機体』が環境に存在する以上は速度面でもアドバンテージ面でも対応する側が不利に立たされることが多くてあまり悠長なゲームプランは立てにくかったので、だったら最速で目指すか、と考えて《霊気池の驚異》と組み合わせました」

――「なるほど(笑) 最初は《消えゆく光、ブルーナ》も《折れた刃、ギセラ》も4枚ずつ入れて構築されていたそうですね」

三宅 恭平(東京)

三宅「正直、ゲームデーで1日だけ楽しく遊べたらいいやと思っていたので構築は適当でしたし、ちょっとヤケクソというか、ウケ狙いみたいな感じでした。でも実際に回してみたら『あれ、これ意外と強いぞ』と。ゲームデー自体は結局5-1から2敗してしまったのでトップ8には残れなかったのですが、普段一緒にトーナメントに出る友人の仲田 諒さん(グランプリ・静岡2014優勝)もこのデッキを気に入ってくれて、仲田さんが強いって言うならもしかして本当に強いのかなって(笑)」

――「最初は三宅さんご自身も半信半疑だったわけですね」

三宅「今回のグランプリまで時間的な猶予はあったし、代わりのデッキが見つかるまでは回してみよう、くらいの軽い気持ちでした。当の仲田さんがこのデッキに見切りをつけてからも個人的にPPTQやPWCなどで回していて......決定的だったのは、BIGsのモリショーさんがこのデッキに興味を持ってくれたので、リストを教えたらこのデッキでプロツアー予備予選を突破していたんです」

――「これは本物だ、と気づいたわけですね」

三宅「ですね(笑) それからは2人で調整して、今回のグランプリに持ち込むに至りました」

バントであることの強みとポジショニング

――「やはり《霊気池の驚異》といったらティムール(青緑赤)カラーのイメージが強いですが、バント(緑白青)カラーで構築するのは大変だったんじゃないでしょうか?」

三宅「たしかにティムールカラーなら《つむじ風の巨匠》などのエネルギーとシナジーを持ったクリーチャーを採用できたり、《蓄霊稲妻》のような軽いインスタント除去にアクセスできるというメリットはあるのですが、バントカラーは《燻蒸》を採用できるという強みがあります」

――「たしかに確定全体除去の存在は白を使う理由の一つになりそうですね」

三宅「ええ。それに、運が良ければ《霊気池の驚異》からインスタントタイミングで《燻蒸》をプレイできるというハメパターンもあるので、バントにはバントの強みもあると思います。ただ、《ショック》も《蓄霊稲妻》も取れない都合上サヒーリコンボには明確に不利になりますが......」

――「なるほど。わりと致命的な気がしますが......」

三宅「そこでメインから《領事の権限》を採用することでかなり戦えるようになりました。三強と呼ばれていた『マルドゥ機体』、『黒緑《巻きつき蛇》』、『サヒーリコンボ』に対して五分〜有利といった相性なので、ポジションはとてもいいと思います」

――「『黒緑《巻きつき蛇》』に有利というのはなんとなくわかりますが、軽量除去がない分『マルドゥ機体』はやや厳しいのかと思っていました。意外とそうでもないのでしょうか?」

三宅「軽量除去の代わりとして《霊気溶融》を採用していて、これ1枚で《キランの真意号》や《大天使アヴァシン》まで止めることができるので、見かけ以上にやってくれますよ」

三宅 恭平(東京)

――「《霊気溶融》ですか......こんなカードよく見つけましたね(笑) では逆に、苦手なデッキなどはないのでしょうか?」

三宅「比較的最近出てきた『ティムール《電招の塔》』は、メインボードはまだしもサイドボード後には打ち消しとアーティファクト除去が山ほど入ってくるので非常に厳しいマッチアップですね。あとはrizer(石村 信太朗)さんの『ティムール《霊気池の驚異》』もメインボードの《絶え間ない飢餓、ウラモグ》の枚数の差が出るのでやや不利です。サイドボード後には《慮外な押収》で対抗できる余地はあるのですが、相手側にも同じことが言えるのであまり当たりたい相手ではありませんね......」

――「ありがとうございます。このあともがんばってください!」


 《悪夢の声、ブリセラ》の圧倒的な支配力と「合体」の爽快感を味わえるこのデッキ。見かけは冗談のようだが、実際に三宅はこの「バント《霊気池の驚異》」を操りインタビュー時点で6-0と最高の形で2日目進出を確定させていた。デッキの持つポテンシャルは疑う余地もないだろう。

三宅 恭平
グランプリ・静岡2017春 / スタンダード (2017年3月18〜19日)[MO]
6 《
4 《霊気拠点
4 《植物の聖域
3 《平地
1 《梢の眺望
1 《進化する未開地
1 《

-土地(20)-

2 《絶え間ない飢餓、ウラモグ
4 《ならず者の精製屋
3 《折れた刃、ギセラ
1 《サリアの槍騎兵
3 《消えゆく光、ブルーナ

-クリーチャー(13)-
4 《霊気との調和
3 《ウルヴェンワルド横断
3 《発生の器
2 《領事の権限
4 《織木師の組細工
2 《霊気溶融
1 《ガラス吹き工の組細工
4 《霊気池の驚異
3 《燻蒸
1 《ニッサの復興

-呪文(27)-
2 《領事の権限
2 《払拭
2 《霊気溶融
2 《否認
2 《不屈の追跡者
2 《慮外な押収
2 《保護者、リンヴァーラ
1 《罪人への急襲

-サイドボード(15)-

 アイディアは天から降りてくるのではなく、最初からそこにあるのかもしれない。まだ誰も見つけていないというだけで。

 デッキ構築の新たな可能性を示した三宅と《悪夢の声、ブリセラ》。彼らの活躍から目が離せない。

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